背景・概要

事実萩原工業株式会社(岡山県)と三井化学株式会社は2025年5月13日、共同で開発を進めてきたインライン粘度計を用いた再生樹脂粘度自動均一化技術について、実証に成功したと発表した。

事実萩原工業のリサイクルペレット押出機に、三井化学のインライン粘度計と制御理論を組み込んで実験を実施し、粘度を目標値に制御できることを確認した。

技術的な詳細

事実本技術は、押出機内でリアルタイムに樹脂粘度を計測するインライン粘度計と、その計測値をもとに条件を自動調整する制御理論を組み合わせたものである。廃プラスチックの使用比率(配合)を変えずに、リアルタイム計測と自動制御によって目標粘度へ調整する。

事実従来は粘度を均一化するために2台の押出機を連結する「タンデム方式」が用いられていたが、本技術は1台の押出機で粘度均一化を実現する方式に発展させたものである。

分析再生樹脂は原料ロットごとに熱劣化度合いや混入異物が異なり、粘度(流動性)にばらつきが生じやすい。粘度が不安定だと成形不良や歩留まり低下につながるため、従来は原料配合を都度調整するか、複数台の押出機を連結して均す必要があった。本技術は配合を変えずにインライン計測と自動制御だけで粘度を均一化できる点が特徴であり、実現すれば設備台数を減らしながら品質を安定させられる可能性がある。ただし、対応可能な粘度変動幅や制御応答速度、対象樹脂種の範囲といった詳細は公表資料からは未確認である。

その後の展開:ライセンス契約と量産化

事実三井化学株式会社は2025年10月3日、萩原工業との共同実証(2025年5月13日発表)を経た再生樹脂粘度自動均一化技術について、ライセンス契約を締結し量産販売を開始したと発表した。

事実2025年5月時点では実機での実証実験の成功にとどまっていたが、約5カ月後にライセンス供与という形で第三者への技術展開・量産販売段階へ進んだことが確認できる。

分析実証実験の成功から半年足らずでライセンス契約・量産販売という事業化段階まで到達したスピード感は、押出機メーカー(萩原工業)と化学メーカー(三井化学)の協業による技術開発が、絵に描いた実証にとどまらず実際の事業モデルとして確立されたことを示している。ライセンス供与という形態を取ることで、萩原工業以外の事業者への技術普及も視野に入れた展開になっていると考えられる。

MI活用による製造効率化の取り組み

事実三井化学・萩原工業・丸喜産業・NECの4社は2025年10月7日、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)を活用した共同実証に着手したと発表した。本発表によれば、本技術に関する製造時間を従来比25%削減することを目指すとされ、削減の実現はこの実証の目標であり、確定した実績ではない。

分析ライセンス契約・量産販売開始からわずか4日後にMI活用実証着手の発表がなされており、粘度自動均一化という「品質安定化」の技術に、MIという「プロセス最適化」のデジタル技術を重ねて投入する動きが始まったことが分かる。目標が達成されれば、粘度均一化だけでなくその均一化プロセス自体の生産性向上にもつながる。押出加工技術が、ハード面(インライン粘度計・制御理論)とデジタル面(MI)の両輪で高度化しようとしている事例として注目に値するが、25%削減という数値はあくまで実証の目標値であり、実績として確定した段階ではない点に留意が必要である。

開発段階・実証/導入状況

事実2025年5月の実機実証、10月のライセンス契約締結・量産販売開始、同月のMI活用実証着手(製造時間25%削減目標)という3段階を経て、本技術は実証実験の段階を超え、ライセンス供与による量産販売という商用段階に達している。MI活用による効率化そのものは、目標を掲げた実証が始まった段階である。

分析「実証に成功」から「ライセンス契約締結・量産販売開始」まで一次情報で確認できることから、本稿では「普及開始過程」と判定した(この判定はライセンス契約・量産販売開始の事実に基づくものであり、MI活用実証の結果を待つものではない)。今後は、ライセンス供与先の拡大状況や、MI活用実証の結果・他工程への展開有無が、さらなる普及段階を左右する。

この動きの位置づけと今後の注目点

分析このニュースが重要なのは、再生樹脂の品質面での最大の弱点である「ロットごとの物性ばらつき」に対し、原料配合を変えずインライン計測と自動制御だけで対処する技術が、押出機メーカー(萩原工業)と化学メーカー(三井化学)の協業で実証され、その後わずか半年足らずでライセンス契約・量産販売という事業化段階まで到達した点である。設備投資を抑えつつ品質安定化を図る現実的なアプローチが、実際に事業として成立することを示した。

分析押出加工という技術の大きな流れの中では、押出機自体のハード面の進化(タンデム方式から1台方式への集約)に加え、インライン計測・自動制御というプロセス管理のデジタル化、さらにMIによる製造プロセス自体の最適化という3層の高度化が、短期間のうちに重層的に進んだ事例である。

分析今後は、萩原工業以外へのライセンス供与拡大の有無、適用樹脂種の拡大、MI活用実証が目標とする製造時間25%削減の達成有無とその他工程への展開、他の押出加工プロセスへのMI応用の広がりを注視すべきである。

実務への示唆

分析商社にとっては、再生樹脂の品質ばらつきという買い手側が最も懸念する課題に対する解決技術が、実証からわずか半年で量産販売段階に達した点は注目に値する。ライセンス供与という形態により、萩原工業以外の供給元でも同様の粘度自動均一化技術を採用した再生樹脂が流通する可能性があるため、原料調達先の評価基準の一つとして情報を継続的に把握しておきたい。また、MI活用による製造時間25%削減は現時点では実証の目標値であり実績ではないため、達成状況は今後の一次情報で継続確認したい。実現すれば、将来的に再生樹脂の価格競争力にも影響し得る要素である。