背景・概要

事実花王とライオンは2020年9月、プラスチック包装容器の資源循環に向けた連携を発表し、日用品の詰め替えパック(軟包装フィルム)を対象とした水平リサイクル(パックからパックへの再生)技術の共同開発に取り組んできた。花王は和歌山研究所にパイロットプラントを導入し、実証を重ねてきたとしている。

事実2023年5月16日、花王はこの技術を具現化したと発表し、同月29日から花王「アタック ZERO 詰め替え用」・ライオン「トップ スーパーNANOX ニオイ専用 詰め替え用超特大」を、再生材を一部使用した仕様で一部店舗にて数量限定発売した。

技術的な詳細(洗浄・選別工程)

事実花王の発表資料によれば、工程は大きく「選別」「破砕・洗浄」「フィルム化」に分かれる。選別工程ではアルミ箔を含むパックを事前に除去し、レーザーフィルターを用いてPET・ナイロンなど異なる樹脂を物理的に除去する。破砕・洗浄工程では「洗浄粉砕機にて破砕後、洗浄する」とされている。

事実インクや接着剤の扱いについては、「フィルム化工程で悪影響をおよぼさない程度まで細かくする」という記載があるのみで、化学的な剥離・除去方法(薬剤の種類や処方)についての詳細は、公開資料からは確認できない。

分析公表内容から判断すると、この技術は薬剤による積極的なインク剥離というより、異物の物理的選別精度を高め、残存するインク・接着剤片を「無害化できる程度まで微細化する」アプローチに近いと考えられる。フィルム表面のインクを溶剤・薬剤で選択的に剥離する技術(本タイル05で別途取り上げている剥離洗浄技術)とは異なるアプローチである点に留意したい。

開発段階・実証/導入状況

事実2023年5月の技術具現化・製品数量限定発売を経て、2024年6月8日からは花王・ライオン・寺岡精工の3社が、詰め替えパック専用の店頭回収機「ぱくパックボックス」をイトーヨーカドー曳舟店に設置し、回収面での実証実験を開始している。

分析再生技術・製品化は既に実現しているが、原料となる使用済みパックの安定回収網はまだ実証実験段階にあるため、開発段階は「普及開始過程」と判定する。回収量が増えるかどうかが、今後のスケールアップの鍵になる。

この動きの位置づけと今後の注目点

分析このニュースが重要な理由は、競合関係にある大手日用品メーカー2社が、資源循環という協調領域で回収・リサイクル技術を共同開発した点にある。単独では十分な回収量を確保しにくい軟包装フィルムのリサイクルにおいて、業界横断的な協働モデルの先行事例となっている。

分析技術の大きな流れの中では、フィルムtoフィルムの水平リサイクルを実現する「選別・洗浄技術の高度化」と、「安定回収網の構築」という2つの課題のうち、前者が先行して解決されつつある段階にある。今後は後者(回収量の拡大)が全体のボトルネックになる可能性が高い。

分析今後の注目マイルストーンとしては、①「ぱくパックボックス」の設置拠点拡大の状況、②再生材配合製品が数量限定から通常販売に移行する時期、③他の日用品メーカーの追随や、洗剤・化粧品以外のカテゴリへの展開、の3点が挙げられる。

実務への示唆

分析軟包装フィルムのリサイクル事業を検討する事業者にとって、本件は「異物選別の精度向上」と「回収インフラの整備」がセットで進む必要があることを示す事例である。洗浄設備単体の性能向上だけでなく、店頭回収など上流の仕組みづくりも含めた事業設計が求められる。