背景・概要

事実ダウと東レの合弁会社であるダウ・東レ株式会社(本社:東京都品川区)は、樹脂・金属などの基材にコーティングまたは接着され分離が難しいシリコーンを化学的に分解・除去する技術ソリューションの提供を、2026年5月12日付で発表した。自動車部品のリサイクル比率向上は業界全体の重要課題であり、なかでもエアバッグはナイロンやポリエステル樹脂基材にシリコーンがコーティングされていることから、基材の再資源化に向けたシリコーン分解・除去技術の確立が求められていたという。

事実エアバッグ基材の水平リサイクル実現に向けた課題の一つは、リサイクル対象基材からのシリコーンの分解・除去であり、現行の物理剥離では水平リサイクルに求められるシリコーン除去率の達成が困難とされている。ダウ・東レは、シリコーン分野で培った知見・技術力を生かし、洗浄剤メーカーである株式会社武蔵テクノケミカルとの協業により、樹脂基材を傷めることなくシリコーンを選択的に溶解・化学分解する新規洗浄剤「MX-5500」を開発した。

技術的な詳細(シリコーン分解・除去の工程)

事実MX-5500の特長として、①処理後の基材中シリコーン含有量を0.01wt%以下に低減可能な高い除去性能、②対象基材の形状や厚みに依存せず処理が可能な基材適用性、③エアバッグの場合は液温60℃・処理時間5~10分程度という省エネルギー・短時間の簡易プロセス、④洗浄剤自体の再生・再利用が可能である点、の4点が挙げられている。

事実MX-5500洗浄剤は静置すると二層に分離する性質を持ち、活性化剤の効率的な回収・再利用が可能とされている。本技術は、ダウ・東レおよび武蔵テクノケミカルにより国内・海外ともに特許出願済みであり、MX-5500は武蔵テクノケミカルが生産し、ダウ・東レが顧客への技術ソリューション提供を担う体制となっている。

分析物理剥離ではなく化学的な選択溶解・分解というアプローチを取ることで、基材を傷めずに高い除去率(0.01wt%以下)を実現している点が特徴といえる。液温60℃・5~10分という条件は、既存の洗浄工程への組み込みを比較的想定しやすいプロセスと考えられる。

開発段階・実証/導入状況

事実発表時点で、シリコーンが使用される自動車部品を中心に、基材リサイクルの実用化を見据えた評価が進められているとされる。今後は自動車用途に加え、シリコーン除去が求められる多様な樹脂基材・用途への展開を進める方針が示されている。

分析技術・洗浄剤自体は開発を終え特許出願も済んでいるが、公表資料では「実用化を見据えた評価を進めている」段階との表現にとどまり、量産ラインでの本格導入や具体的な採用事例(自動車メーカー名・部品名等)は明らかにされていない。以上を踏まえ、開発段階は「実証実験中」と判定する。

この動きの位置づけと今後の注目点

分析エアバッグは自動車の安全部品として大量に使用される一方、シリコーンコーティングが水平リサイクルの阻害要因となってきた。シリコーンのグローバルリーダーを自任するダウ・東レが、洗浄剤の専門メーカーと協業して化学的除去技術を確立した点は、素材メーカーと洗浄剤メーカーの垂直連携によるリサイクル阻害要因の解消という、技術開発の一つのパターンを示す事例である。

分析今後の注目点は、①自動車部品での実用化評価の結果と量産採用の有無、②エアバッグ以外のシリコーン付着基材(電子部品・建材等)への展開状況、③処理コストや既存洗浄設備への導入のしやすさ、の3点である。

実務への示唆

分析シリコーンなど分離が難しいコーティング・接着剤が付着した基材のリサイクルを検討する事業者にとって、本件は「物理剥離で除去率が頭打ちになっている場合、化学的な選択溶解・分解というアプローチが選択肢になり得る」ことを示す事例である。処理温度・時間が比較的穏やかな条件で提示されている点も、既存設備への組み込みやすさという観点で参考になる。