詳細解説

分析再生材がバージン材より売りにくい最大の理由は、必ずしも平均物性が低いからではない。ロット間ばらつきと未知物質混入の不確実性が高いからである。顧客は一回の良好な試験片ではなく、数年間にわたり同じ成形条件で同じ製品を作れることを買う。品質管理と品質保証は異なる活動と分けて考える必要がある。

三菱電機の技術は、比重・静電・異物除去等を組み合わせ、混合プラから主要樹脂を高純度回収する。外部向け実証機の意味は、排出源の異なる原料でも純度、回収率、処理能力のバランスを検証できることにある。ただし「99%以上」は万能な品質保証ではない。何を分母とし、どの異物を測り、どの粒径・含水条件かを確認しなければならない。残り1%が同系樹脂か、金属・PVC・難燃剤かで用途への影響は大きく違う。

実務的な保証体系は、原料承認から追跡までの六層で作る。原料承認では排出工程、樹脂、添加剤、過去用途を把握する。受入では外観、臭気、水分、金属、ハロゲンなどをリスク別に測る。工程では比重液、温度、圧力、フィルター差圧、選別機設定を記録する。出荷ではMFR、密度、灰分、色差、引張・衝撃、規制物質等から用途に必要な項目を選び、CoAを発行する。

商機は分析の外注だけでなく、品質リスクを取引可能にする仕組みにある。小規模リサイクラー向けの共同ラボ、迅速XRF・FTIR・DSC、ロットブレンド設計、データ台帳、第三者監査、返品時の原因解析を月額で提供できる。商社は複数供給元を同一仕様へ統合し、代替供給を保証できる。品質データが価格差の根拠になれば、再生材を相場品から仕様品へ変えられる。

規制では、再生材が廃棄物を離れた後に化審法上の化学物質か製品かを判断する局面がある。食品接触、自動車、電気電子、玩具、建材では別の安全・含有化学物質要件も加わる。「再生材だから規制が緩い」と考えず、最終用途から逆算する。顧客の禁止物質リストは法規制より厳しい場合がある。

新規参入者は、全項目を毎ロット検査してコストを膨らませるのではなく、FMEA等で危険度を付ける。排出工程が固定されたPIRは頻度を下げ、混合PCRは強化する。異常時の隔離量を小さくするロット設計、測定器校正、保存サンプル、原料変更の事前通知を契約化する。品質保証の完成度が採用用途と利益率を決める

顧客仕様を作る手順

最初からバージン材の全項目をコピーせず、部品の機能と故障へ結び付く重要品質特性を顧客と選ぶ。MFRの許容幅を狭くすれば成形は安定するが、ブレンド・検査費が上がる。色差や臭気が不要な非意匠部品に高い規格を課すと商用品率が下がる。必須、管理、参考の三階層に分け、試験方法、試験片状態、判定値、頻度を仕様書へ記す。

初期流動では各ロットを広く検査し、物性間の相関と工程能力を確認する。例えば灰分と密度、MFRと衝撃の関係が安定すれば、迅速項目で異常を検知し、詳細試験を抜取へ移せる。測定系解析で試験者・装置のばらつきを確認し、サプライヤーと顧客の測定差による誤判定を防ぐ。

クレームと変更管理

不適合時はロット番号から原料拠点、受入、設備条件、検査、出荷先まで追跡し、24時間以内に影響範囲を仮確定できる体制が望ましい。原因が再生材特有か、成形条件・設計かを共同で解析する。返品全量を再処理できるとは限らないため、隔離、廃棄、代替納入、顧客停止損失の上限を契約で定める。

原料供給元、配合、添加剤、設備、試験法、包装を変更する際は、影響度に応じて通知・再承認する。改善目的でも無断変更は信頼を失う。品質コストは検査費だけでなく、予防、評価、内部不良、外部不良に分ける。検査を増やすより上流分別と工程安定へ費用を移し、外部不良を減らすことが利益につながる。最終的に品質保証はコストセンターではなく、用途格上げと長期契約を可能にする販売機能である。

最初の90日で行うこと

最初の30日で主要顧客の仕様とクレーム履歴、供給原料の変動を集める。次の30日で測定法を統一し、代表ロットの物性・規制物質・成形結果を対応付ける。最後の30日で暫定仕様、検査頻度、異常時処置、変更通知を顧客とレビューする。高価な認証取得は対象用途が確定してから行う。

警戒すべき兆候は、検査合格でも成形不良が続く、原料変更が追跡できない、規格外を再混合して原因が消える、品質部門が出荷停止権を持たないことである。解消前に高付加価値用途へ広げない。品質投資の回収は、値上げだけでなく返品・停止損失の減少と契約期間延長で測る。