カーボンニュートラル・CO2排出量算定
経産省の製品別CFPルール支援:再生材の削減効果を比較可能にする
- 何が起きたか
- 経産省は2024年度、GX促進に向けたカーボンフットプリントの製品別算定ルール策定支援を実施。公平な比較には業界で統一された製品別算定ルールが不可欠との方針を示した。
- 誰が関係するか
- 経済産業省、業界団体、素材・製品メーカー、LCA事業者、再生事業者、第三者検証機関
- いつ発表・実施されたか
- 2024年度事業。基礎となるCFPレポート・ガイドラインは2023年3月公表で、3年原則外だが現行制度の基礎資料として補足参照。
- 商機(最重要)
- 一次データ収集、排出係数管理、製品別算定、第三者検証、顧客向けPCFデータ連携、削減施策の限界削減費用分析がサービス市場になる。
- 新規参入者へのリスク・教訓(最重要)
- 焼却回避を全量控除する、バージン材と機能が違うのに同量比較する、回収・洗浄・残渣を落とすなどの過大評価は信用を失う。比較主張には同一ルールと第三者確認が必要。
- 推奨アクション
- 「販売可能ペレット1kg」など機能単位と境界を先に固定し、電力、燃料、歩留まり、残渣、輸送の一次データを月次取得する。
詳細解説
分析再生材のCO2削減効果は、営業上の重要な価値になったが、算定条件で結果が大きく変わる。回収からペレットまでか、製品成形・使用・廃棄まで含むか。廃棄物を排出者と再生材のどちらへ配分するか。焼却回避を控除するか。再生材が置き換えるのは同じ樹脂・同じ性能か。これらを決めずに削減率だけを比較すると、数字は精密でも意思決定を誤る。
経産省が製品別算定ルールを支援する背景は、共通ルールがなければ公平な比較は難しいためである。リサイクラーにとってCFPは報告業務ではなく、どの工程改善が顧客価値を生むかを示す原価管理に近い。環境省の2025年度公開資料に収録されたCicroMate実証では、アパレル資材のPCR含有率別にCFP削減率が試算されているが、これは当該実証条件の値であり、他製品へ一般化すべきではない。
算定の実務は目的、機能単位、境界、配分、データ、比較の順で設計する。目的が顧客への製品データ提供なら、販売可能ペレット1kgを機能単位にし、回収・輸送・選別・洗浄・造粒・包装・残渣までを含める。バージン材代替を主張するなら、物性と用途が同等かを確認する。低品質材1kgを高機能バージン材1kgと比べてはいけない。
一次データとして電力、燃料、水、薬品、原料重量、製品重量、残渣、輸送距離・積載率を月次で取る。設備の定格電力ではなく実測を使い、立上げ・停止・再加工も含める。再生材では歩留まりが結果を大きく左右する。原料1kg当たりでは効率的でも、販売可能品の歩留まりが低ければ製品1kg当たり排出は増える。電力係数や輸送条件の変更履歴を残す。
商機は、算定代行よりデータ改善にある。スマートメーターを工程別に設置し、ロットごとのCO2と原価を同時に可視化する。顧客が求めるデータ形式へ変換し、第三者検証に耐える証憑を整える。複数原料・複数設備を持つ会社には、低炭素ロットを高付加価値用途へ割り当てる運用支援ができる。
リスク低減には、削減主張のレビュー責任者を営業部門から独立させる。比較対象、年度、地域、電力、配分、除外項目を開示し、不確実性レンジも示す。設備投資はCO2削減量だけでなく、円/t-CO2の限界削減費用と顧客の支払意思を比較する。CFPを測る目的は大きな削減率を作ることではなく、監査可能で調達判断に使える数字を供給することである。
リサイクル固有の算定論点
廃棄物の負荷を排出製品と再生材へどう配分するかで結果は変わる。カットオフ、経済配分、代替法等を目的とルールに合わせて選び、都合の良い方法だけを採らない。回収品に上流負荷ゼロを置いても、回収・選別以降の負荷は計上する。焼却回避効果を別途示す場合は、ベースラインの焼却方式、発電・熱利用、地域を明記し、再生材製造の製品CFPと二重に差し引かない。
複数回循環する材料では、最初の製品へ便益を全て与えるか、次の製品へ移すかを統一する。再生材含有率とリサイクル可能性は異なる指標であり、含有率が高くても使用後に再生できない設計はあり得る。CO2以外に水、資源、毒性等のトレードオフがある場合、CFPだけで環境優位を断定しない。
顧客へデータを売る仕組み
顧客は年一回の平均値だけでなく、調達ロットや製品単位の一次データを求める方向にある。計量器、電力計、燃料、運送伝票、廃棄物記録をロットIDへひも付け、原票を保存する。排出係数は名称、版、地域、年度を管理し、更新時に過年度比較が不連続になった理由を説明する。
サービス価格は算定レポートだけでなく、データ接続、月次更新、第三者検証対応、顧客質問、削減提案を分ける。再生材販売価格へ埋め込む場合も、高度な一次データを求める顧客には追加費用を設定する。低炭素ロットを識別できれば、脱炭素価値の高い顧客へ優先販売し、改善投資の回収を早められる。算定を規制対応の負担から、品質・原価と並ぶ商品データへ変えることが商機である。
算定導入の90日計画
最初に顧客へ用途を確認し、境界・データ粒度・検証を決める。代表製品一つで工程図とデータ表を作り、計量できない項目は推計方法と改善期限を記す。二か月目に実測で試算し、寄与の大きい電力、歩留まり、輸送を特定する。三か月目に証憑を独立者がレビューする。
削減率が小さくても隠さず、どの工程を変えれば改善するかを示す。顧客比較用と社内改善用でモデルを乱立させず、共通データから目的別レポートを作る。基準年更新や設備変更時の再算定ルールを持ち、都合の良いロットだけを環境製品として表示しない。
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