EU非OECD諸国への廃プラ輸出禁止まで3カ月、ベルギーで受け皿確保の動き本格化/北米初のRecyClass認証取得でトレーサビリティ需要がグローバル化
今回は「規制の締め切りが実際にビジネスをどう動かすか」を、2026年6〜7月に発表された2つの海外事例から見ていく(速報ではなく、この間の複数動向を横断して整理する解説記事)。EUの改正廃棄物輸送規則により、非OECD諸国への廃プラスチック輸出が2026年11月21日から禁止される。発効まで3カ月というタイミングで、ベルギーのEPR団体Valipacが地場リサイクラーと国内受け皿の確保に動いた一方、業界団体は構造的な不振を理由に緊急支援を要求している。同じ時期、カナダのTrioworldが北米で初めてEU発の再生材トレーサビリティ認証「RecyClass」を取得しており、欧州規制が生んだ”証明する文化”がどこまで広がるかにも注目したい。
- EU改正廃棄物輸送規則(WSR)が2026年5月21日に全面適用開始(デジタル廃棄物輸送システム「DIWASS」も稼働)。同規則により、非有害廃プラスチックの非OECD諸国向け輸出は2026年11月21日から2029年5月21日まで全面禁止(適用除外の申請枠は規定されておらず、2029年5月21日以降に環境上適正な廃棄物管理能力を示した国から順次再開対象に追加される仕組み)。※プラスチック以外の非有害廃棄物については別途、2027年5月21日から欧州委員会が承認した非OECD国のみへの輸出が認められる制度があり、2025年2月21日の申請締切までにインドネシア・マレーシア・タイ・フィリピン・ベトナム等24カ国が申請しているが、これは廃プラスチック禁輸とは別制度である点に注意。
- 国際リサイクル事務局(BIR)が2026年7月に発行した業界報告書「World Mirror」は、欧州プラスチックリサイクル業界の構造的な不振を指摘。主因として、中国を筆頭とする石化拡張によるバージン樹脂の供給過剰と、改正WSRに伴う輸出手続きコスト増(留置料・遅延損害金・検査費用)を挙げる。業界団体Plastics Recyclers Europe(PRE)やEuRIC(European Recycling Industries’ Confederations)は欧州委員会に緊急融資措置と貿易防衛措置(関税賦課等)の導入を要求していると報じられており(EuRIC会長Sophie Sicard氏の発言時期は本記事執筆時点で一次確認できていない)、Alpla CEOのPhilipp Lehner氏は2026年6月26日のPRSEカンファレンス講演で「関税が最もシンプルな対応策」と述べている。
- ベルギーの拡大生産者責任(EPR)団体Valipacは2026年6月30日、地場の家族経営リサイクラーRaff Plastics(Houthulst)との提携を発表。工業用フレキシブルコンテナ「ビッグバッグ」の国内リサイクル能力を年6,000トン確保した。ビッグバッグは複合素材で処理が難しく、現在97%が非OECD諸国でリサイクルされているとされる。Valipacは2026年初から国内外24社に処理能力を打診し、Raff Plasticsを選定した。
- これとは別に、2026年7月13日、スウェーデン本社のフィルムメーカーTrioworld(欧州・北米・南アジアに18拠点)が、カナダ・オンタリオ州Ajax工場で北米初となるRecyClass「再生プラスチックトレーサビリティ認証」を取得したと発表。認証対象はLoopストレッチフィルム3製品で、いずれも30%以上のポストコンシューマーリサイクル(PCR)材含有を第三者監査で検証している。
EU非OECD諸国への廃プラ輸出禁止|発効まで3カ月、ベルギーで受け皿確保の動き本格化
事実EUの改正廃棄物輸送規則(Waste Shipment Regulation、WSR)は2026年5月21日に全面適用が始まり、廃棄物の輸出入手続きを電子化するデジタル廃棄物輸送システム「DIWASS」も同日稼働した。同規則により、非有害な廃プラスチックのOECD加盟国向け輸出は通知手続きの対象となる一方、非OECD諸国向け輸出は2026年11月21日から2029年5月21日まで全面禁止となる。この期間に適用除外を申請する制度は規定されておらず、2029年5月21日以降、環境上適正な廃棄物管理能力を欧州委員会に示した非OECD国から順次、輸出再開の対象国リストに加えられる仕組みである。
事実なお、プラスチック以外の非有害廃棄物については別の制度が並行して存在する。こちらは2027年5月21日から、欧州委員会が承認した非OECD国のみへの輸出が認められる仕組みで、2025年2月21日の申請締切までにインドネシア・マレーシア・タイ・フィリピン・ベトナム・シンガポール・インド・バングラデシュ・パキスタン・ナイジェリア等24カ国が輸入資格の申請を行ったことが欧州委員会から公表されている。この24カ国リストは廃プラスチックの全面禁輸(2026年11月21日〜)とは別制度である点に注意が必要である。
事実こうした規制の節目を前に、国際リサイクル事務局(BIR)は2026年7月、業界報告書「World Mirror」を発行し、欧州プラスチックリサイクル業界が直面する構造的な問題を報告した。報告書が挙げる主因は、中国を筆頭とする石化産業の設備拡張によるバージン樹脂の供給過剰と、改正WSRに伴う輸出手続きコストの増大(留置料・遅延損害金・検査費用等)である。業界団体Plastics Recyclers Europe(PRE)やEuRIC(European Recycling Industries’ Confederations)は、欧州委員会に対し国内リサイクル産業への緊急融資措置と、バージン材・リサイクル材の関税コード導入や貿易防衛措置(関税賦課等)を要求していると報じられている(EuRIC会長Sophie Sicard氏の関連発言について、本記事執筆時点で発言時期を一次資料で確認できていない)。大手容器メーカーAlplaのCEO、Philipp Lehner氏は2026年6月26日、業界カンファレンス「PRSE」の講演で「関税が欧州リサイクラーの競争条件を是正する最もシンプルな手段だ」と述べた。
事実こうした業界全体の危機感とは別に、個別の企業・団体レベルでは具体的な受け皿確保の動きも始まっている。ベルギーの拡大生産者責任(EPR)団体Valipacは2026年6月30日、地場の家族経営リサイクラーRaff Plastics(ベルギー・Houthulst)との提携を発表した。対象は工業用フレキシブルコンテナ「ビッグバッグ」で、複数の樹脂・素材が組み合わさった複合構造のため処理が難しく、現在は97%が非OECD諸国でリサイクルされているとされる。Valipacは2026年初から国内外の24社に処理能力の打診を行い、評価の結果Raff Plasticsを選定、年6,000トンのビッグバッグを国内でリサイクル・ペレット化する体制を確保した。
分析輸出禁止の発効まで3カ月というタイミングでこの提携が発表されたことは、規制が実際に発効してから対応するのではなく、発効前に国内処理能力を仕込んでおく動きが本格化していることを示している。Valipacの事例は年6,000トンという限定的な規模だが、ビッグバッグに限らず「非OECD諸国頼みだった複合素材」は他にも存在するとみられ、欧州の他のEPR団体・大手ブランドオーナーも同様の対応を迫られる可能性が高い(分析)。一方でBIR報告書が指摘する通り、受け皿を用意しても、バージン樹脂の供給過剰という価格競争力の問題が解決するわけではなく、「国内で処理できる体制」と「採算が合う体制」は別問題である点には注意が必要である。
分析日本企業への波及という観点では、2つの方向性が考えられる。1つは、欧州の中小リサイクラーが複合素材の処理能力増強を迫られる中で、選別・洗浄・粉砕等の実務に強みを持つ日本製設備・技術の商談機会が生まれうる点である。もう1つは、非OECD諸国(東南アジア等)への欧州発廃プラの流入が絶たれることで、東南アジア域内のリサイクル業の需給構造・原料価格が変化する可能性がある点であり、東南アジアで原料調達や事業展開を行う日本企業は、供給減による現地相場の変化や、非OECD域内での新たなリサイクル投資の動きを注視する価値がある。ただし、これらは現時点では規制発効前の予測であり、11月21日以降の実際の物流・相場の動きを見た上で判断する必要がある。
北米初のRecyClass認証取得|欧州発トレーサビリティ標準がグローバル化する兆し
事実2026年7月13日、スウェーデン本社のフィルムメーカーTrioworld(欧州・北米・南アジアに18の生産拠点を持つ、ポリエチレン・ポリプロピレンフィルムの製造企業)が、カナダ・オンタリオ州のAjax工場で北米初となるRecyClass「Recycled Plastics Traceability(再生プラスチックトレーサビリティ)認証」を取得したと発表した。認証対象はLoopストレッチフィルムの3製品(Axis Loop、VMaxx Loop、StretchMax Loop)で、いずれも30%以上のポストコンシューマーリサイクル(PCR)材含有を第三者監査により検証している。Ajax工場はここ数年でEUR7,000万を投資し、年13.5万トン超の生産能力を持つ。2025年には67層のナノストレッチフィルム生産ラインも増設している。
事実RecyClassは、EN15343:2007およびISO22095:2020(コントロールブレンディングモデル)に準拠した非営利の認証スキームで、再生材の出所・含有率のトレーサビリティを第三者監査で検証する。欧州では急速に普及しており、2024年時点で設置リサイクル能力の58%(HDPE/PP)〜75%(PET)をカバーする、欧州域内の主要なトレーサビリティ標準に成長している。今回のTrioworldの事例は、このRecyClass認証が北米で初めて適用された事例となる。
分析これまでRecyClassは、欧州のPPWR等の規制対応を背景に欧州域内で普及してきた認証である。今回、欧州本社を持つTrioworldがカナダ拠点で取得したことは、企業が自社のグローバル拠点に欧州基準を横展開した事例と見ることもできるが、同時に、再生材トレーサビリティへの要求が欧州の規制主導だけでなく、北米の顧客企業(FMCG・小売等)側の自主的な調達要件としても広がりつつある可能性を示唆している(分析。本記事執筆時点では北米での同種の認証取得事例が他に確認できておらず、これが業界全体の潮流であるとまでは断定できない)。
分析技術的な制約としては、再生材の含有率・出所を原料調達から出荷までの製造工程全体で追跡するには、マスバランス管理の仕組みと、それを裏付ける監査対応体制の構築が必要であり、認証取得には一定の投資と時間を要する。日本への波及という観点では、欧州・北米向けに再生材製品やフィルム製品を輸出する日本企業にとって、将来的に取引先から同様のトレーサビリティ認証を求められる可能性があり、実際に要求される前に、自社のマスバランス管理・追跡体制がどの程度の水準にあるかを点検しておくことが、認証取得を求められた際の対応スピードを左右すると考えられる(分析)。
2つの動きに共通する視点
非OECD諸国への輸出禁止という規制の締め切りと、北米への認証拡大という2つの動きは、一見別の話題だが、いずれも「欧州発のルールが、域外の実務にどう波及するか」という同じ問いにつながっている。輸出禁止は域内の受け皿不足という物理的な制約を生み、認証の広がりは域外企業に新たな取引条件を課す形で波及する。どちらも規制そのものより、規制が実際の事業判断(どこで処理するか、何を証明する必要があるか)をどう変えるかを見極めることが、新規参入・提携を検討する上での実務的な出発点になる。
📎 一次情報・出典
European Commission「New Waste Shipment Regulation and DIWASS platform go live」(2026-05-21)→ European Commission「First non-OECD countries request eligibility to import non-hazardous EU waste」(2025-02-24)→ Recycling Today「Plastic’s recycling landscape remains troubling」(BIR World Mirror, 2026年7月)→ Plastics News「The case for tariffs to salvage Europe’s plastics recycling industry」(2026-06-26)→ Recycling International「Partnership ready for EU plastic scrap export ban」(2026-06-30)→ Recycling International「EPR body ‘urgently seeks’ recycling capacity for big bags」→ Recycling International「Trioworld scores North American first in recycled plastics certification」(2026-07-13)→ Recycling Today「Trioworld receives RecyClass Certification at Ontario facility」→ RecyClass「RecyClass certifies over half of Europe’s plastic recycling capacity」→海外の規制動向・認証取得についてご相談はありますか?
欧米向け輸出やトレーサビリティ体制の整備について、専門スタッフがご相談に対応します。
無料相談・資料請求はこちら →