FEN市況データ週次レポート 2026年8月24日号

米・イラン緊張の激化とホルムズ海峡の航行障害を背景に、Brent原油が93.78ドル/バレルとついに90ドル台に乗せました(週間+7.7%)。中国のバージン樹脂もABS+6.0%、PET+7.2%など広範に上昇しています。ただしこの上昇はコストと一時的な供給制約によるもので、川下需要の広範な回復を伴っていません。国内は週次のナフサ指標を今週も一次ソースで確認できませんでした。

国内市況:週次のナフサ指標は今週も一次ソースで確認できず

前回レポートで取り上げた「2026年4-6月期の国産ナフサ基準価格118,900円/kL、前期比+53,200円」について、今回の調査で前期の数値を確認できました。直前の2026年1-3月期が65,700円/kLであることを、ゴムタイムズ・knak.jp・三協化学の3ソースが一致して掲載しています。差額はちょうど+53,200円で、化学工業日報が報じた上昇額と整合します。ただし118,900円/kLそのものを掲載する無料ソースは見つかりませんでした。原典は購読契約が未了の記事で、全文を確認できていません(確度:中)。前期比+81%という異例の変動幅であり、2026年7月のホルムズ海峡再閉鎖に伴うナフサ急騰局面が反映された結果とみられます。

週次のスポット指標は今週も一次ソースで確認できませんでした。Web検索の要約では8月20日時点で90,952円/kL(ナフサスポット804ドル/t、為替159.19円/ドル)という値が示されました。ただし参照候補のいずれのページでも同じ数値を確認できていません。なお、この3つの数値はナフサの標準密度(約0.71t/kL)で換算するとほぼ再現でき、内部的な整合性はあります。それでも一次ページを特定できていない以上、本レポートでは未確認の参考値として扱います。

参考として得られた別系列の数値は2つあります。ワイコム社の「計算上ナフサ価格(10月前半入着分)」が82,265円/kL(ページ更新8月7日)。三協化学の2026年9月想定値が106,700円/kL(MOPJ 819.39ドル/t、平均TTS 162.32、記事更新7月31日)です。後者については、記載されたMOPJと為替から標準密度で換算しても106,700円/kLを再現できず、諸掛を含むなど別の算出前提がある可能性が高いとみられます。いずれも入着ベース・想定値であり、週次スポットとは算出基準が異なります。

確認済みの一次データだけでは、8月の国内ナフサ水準を確定できないというのが正直なところです。未確認の参考値(90,952円/kL)が正しければ、7月24日のピーク113,464円/kLからの反落が続いていることになります。ただし現時点で一次ページによる裏付けはありません。プラスチックパレット社は自社のオウンドメディアで、8〜9月は輸入完成フィルムを扱う卸・商社ベースで下落が浸透し、秋から冬にかけて国内メーカーの値下げ改定検討が本格化するという見通しを示しています(1社の見通しであり実施決定ではありません)。ただし今週Brentが90ドル台に乗せたことは、この反落シナリオへの逆風となり得ます。国内建値は四半期フォーミュラで動くため即座には反映されませんが、11月改定に向けた材料として注視したいところです。

日本容器包装リサイクル協会の落札結果は更新がありませんでした。令和8年度(2026年度)のプラスチック製容器包装について、再商品化の委託単価(加重平均)は70,344円/トンで、前年度比+4,263円/トンから変更ありません。これは再生材の販売価格ではなく、市町村が分別収集した容器包装を再商品化事業者に委託する際の単価です。

指標備考
国産ナフサ基準価格(2026年1-3月期・確定)65,700円/kL3ソース一致で確認(今回追加)
国産ナフサ基準価格(2026年4-6月期)118,900円/kL前期比 +53,200円/原典は全文未確認の購読記事(確度:中)
計算上ナフサ価格(10月前半入着分・別系列)82,265円/kLワイコム社算出・ページ更新8/7
国産ナフサ2026年9月想定値(別系列)106,700円/kL三協化学・記事更新7/31。記載のMOPJ・為替からは標準密度換算で再現できず要確認
容リ協 プラ製容器包装 再商品化委託単価(令和8年度・加重平均)70,344円/トン前年度比 +4,263円/更新なし(年次データ)

※4系列はいずれも算出基準・集計期間が異なるため、相互に単純比較できません。週次スポット指標(8/20時点で90,952円/kLとされる値)は一次ページを特定できていないため、この表には掲載していません。

海外市況:Brentが90ドル台へ、中国樹脂は広範に上昇

Dr.Steve(Steve Wong氏、Fukutomi Recycling Limited・香港)の週次メルマガ2026年8月21日号によれば、原油は週を通じて上昇しました。要因は米・イラン間の緊張激化、イラン産原油の供給減、ホルムズ海峡の航行障害です。8月21日のアジア市場で、WTIは86.83ドル/バレル(8月14日81.25ドルから+6.9%)。Brentは93.78ドル/バレル(同87.07ドルから+7.7%)となりました。ニューヨーク時間の引けはさらに高く、WTI 87.06ドル、Brent 94.39ドルです(本稿の前週比はいずれもアジア市場終値どうしの比較です)。

中国のプライム(バージン)樹脂は広範に上昇しました。Dr.Steveのベンチマーク表ではABSが10,550RMB/MT(+6.0%)、PET(ボトル級)が8,200RMB/MT(+550、+7.2%)。PA6が13,300RMB/MT(+600)、PCが11,250RMB/MT(+350)、PPが9,680RMB/MT(+250)です。地域別スポットでもHDPEフィルム8,695RMB/MT(+105)、LDPEフィルム10,461RMB/MT(+256)、LLDPEフィルム8,451RMB/MT(+221)と上げました。華東のGPPSは9,300RMB/MT(+400)、HIPSは9,750RMB/MT(+350)です。一方、ベンチマーク表のPVCは4,650RMB/MTで、主要汎用樹脂の中では最も弱い水準にあります。PMMA・POMのベンチマークは横ばいでした。

本号からDr.Steveは「自身のベンチマーク表」と「別途提供を受けた地域別スポット評価」を明確に区別して記載しています。両者は水準が大きく異なる品目があります。たとえばPMMAはベンチマークが13,250RMB/MTに対し、華東の地域値は約19,500RMB/MTです。Dr.Steve自身が「別のグレード・市場基準として扱い、直接比較しないこと」と注記しているため、本レポートも両系列を分けて扱っています。

地域別の温度差は大きくなっています。欧州はベンゼン・スチレン高でPSが大幅高、ABSも堅調となりました(Trinseoが8月の値上げを発表)。一方でPE・PPは需要低迷と潤沢な供給が重く、原油が90ドルを超えてもコスト転嫁が進んでいません。米国は8月21日時点でHDPE・LDPE・PP・PSの輸出価格がいずれも下落しました。輸入オファー高を受けたPETのみ上昇しています。中東はサウジがPE・PPの国内建値を3か月連続で引き下げましたが、下げ幅は7月より縮小しました(欧州・米国・中東の各社動向は、いずれもDr.Steveが引用するPlastics Information Europe・Polymerupdate等の報道によります)。

今週の中国の上昇は、読み方を間違えやすいところです。数字だけを見れば「需要が戻った」と受け取れます。しかしDr.Steve自身が「コスト起因であり需要主導ではない」と繰り返し述べています。実際、PP・ABSでは週後半に買い手の抵抗が出て、高値での成約が難しくなりました。ポリオレフィン大手の在庫もむしろ増えています。Dr.Steveは原油についても、米シェール・UAE・ベネズエラからの追加供給が上昇を打ち消す可能性があり、上昇ペースは緩む余地があると見ています。原油が反落すれば、この樹脂高も戻る可能性があります。調達側としては、高値を追って一括で仕込むより、必要量ベースの分割購買で平均単価をならすほうが理にかなう局面と考えられます。

中国プライム樹脂の週間値動き(Dr.Steveベンチマーク表)

樹脂価格(8/21)前週比(8/14比)
ABS10,550 RMB/MT+600(+6.0%)
PET(ボトル級)8,200 RMB/MT+550(+7.2%)
PA613,300 RMB/MT+600
PC11,250 RMB/MT+350
PA6617,550 RMB/MT+300
PP9,680 RMB/MT+250(+2.7%)
PE8,850 RMB/MT+200
PS8,470 RMB/MT+120
PVC4,650 RMB/MT+50(前週4,600比)/8/20の4,700からは−50
PMMA13,250 RMB/MT±0
POM7,900 RMB/MT±0(7月末の8,200は下回ったまま)

※為替はUSD 1=RMB 6.7216(Dr.Steve記載)。PP・PETの%は8/14の9,430/7,650からの当社算出で、原文に%の記載はありません。この表は「Dr.Steveベンチマーク系列」であり、下記の地域別スポットとは水準が異なります。

中国の地域別スポット評価(前号から継続する系列)

樹脂価格(8/21)前週比備考
PS(GPPS・華東)9,300 RMB/MT+400
PS(HIPS・華東)9,750 RMB/MT+350
PE(LDPEフィルム)10,461 RMB/MT+256
PE(LLDPEフィルム)8,451 RMB/MT+221
PE(HDPEフィルム)8,695 RMB/MT+105
PA66(華東)18,000 RMB/MT+200前号17,800からの当社算出
PET(ボトルチップ・華東週平均)7,561 RMB/MT+2.9%8/20までの週平均
PVC(電石法5型・華東)4,480〜4,600 RMB/MTエチレン法は4,850〜5,000 RMB/MT
PC(華東・国産材)12,300〜14,550 RMB/MTメーカー出荷価格は+400〜600 RMB/MTの引き上げ
PMMA(華東 / 華北)19,500 / 19,200 RMB/MT系列変更の可能性・前週比は算出せず
POM(華東・華北 / 華南)8,500 / 8,700 RMB/MT系列変更の可能性・前週比は算出せず

※PMMA・POMは前号の水準(華東PMMA 14,700/POM 7,700〜7,800)と乖離が大きく、ソース側でグレードや集計基準が変わった可能性があるため、前週比を算出していません。

再生材:問題は「玉がない」ことではなく「着地コストが合わない」こと

アジアの再生PET(rPET)について、Dr.SteveはOPISの2026年7月評価を引用しています。レギュラーフレークが約858ドル/MT、プレミアムフレークが約934ドル/MT、ペレットが約1,158ドル/MTです(8月21日時点の値ではなく、約1か月前のデータである点にご注意ください)。米国の買い手の関心水準は1,200ドル/MT CNF(運賃込み・輸入関税込みの条件)だといいます。日本産の適格rPETを800ドル/MT程度で調達できたとしても、海上運賃と関税でマージンがほぼ消えます。アジアから米国西海岸への運賃は5,700〜6,250ドル/40フィートコンテナです。別途、航路やタイミングによっては40フィートあたり8,000ドルを超える例も報告されています。REACH・RoHS非適合の再生PS/ABSペレットは550ドル/MT程度にとどまります。

需要側の構造変化も報告されています。Dr.Steveによれば、インドは2026年4月から硬質プラスチック包装に30%の再生材含有率義務を導入しました。低IV(重合度が低く、繊維向けに適した規格)のrPETペレットが、ポリエステルステープルファイバー向けの受け皿として機能しつつあります。またDr.Steveが引用するS&P Globalの見解によれば、アジアの再生PE需要は一部ブランドオーナーが再生材含有目標を引き下げたことで2026年前半にかけて弱含みました。ただしバージン材が上昇する局面では、再生材の相対競争力が改善するとされています。黒色・濃色グレードは建設・産業用途で、天然色や高品位グレードよりむしろ堅調だといいます。

Dr.Steveの表現を借りれば、アジアの再生材市場は素材にも買い手にも困っていません。困っているのは着地コストです。この構図は日本の再生材事業者にも直接効いてきます。FOB(積地渡し=運賃・保険は買い手負担)の交渉に成功しても、運賃と関税を積んだデリバード(着地渡し=運賃込みの最終価格)で採算が合わなければ商談は流れます。ただし、Dr.Steveはアジア域内の需要自体も弱いと繰り返し述べています。原文が明確に受け皿として挙げているのはインドの繊維向け低IV rPETです。運賃負担の小さい国内需要と、こうした具体的な出口をどれだけ押さえられるかが、当面の収益性を左右しそうです。

項目水準備考
rPET レギュラーフレーク(アジア)858 USD/MTDr.Steveが引用するOPIS 2026年7月評価
rPET プレミアムフレーク(アジア)934 USD/MT同上
rPET ペレット(アジア)1,158 USD/MT同上
rPET 米国買い手の関心水準1,200 USD/MTCNF・輸入関税込み
rPET 日本産の調達可能水準800 USD/MTDr.Steve記載の概算
rPS/rABS(REACH・RoHS非適合)550 USD/MT適合材との価格差が大きい
海上運賃(アジア→米国西海岸)5,700〜6,250 USD40ftコンテナ。別途、航路・時期により8,000ドル超の例も

東南アジア:受入規制と輸出禁止が同時に効き、原料調達難が顕在化

Dr.Steveは今週、ベトナム・マレーシアのリサイクラーから原料不足の引き合いが増えていると報告しています。主因として挙げられているのは、欧州のサプライヤーによる駆け込み輸出の反動です。2026年5月21日、EUの改正廃棄物出荷規則が第三国向け輸出に事前同意(PIC=相手国の事前の同意取得)を要求する運用を開始しました。その適用前に輸出が前倒しされたといいます。2026年11月21日以降は、EUからOECD非加盟国への廃プラスチック輸出が全面禁止となります。

今週はこの現象の制度的背景を補足調査しました。マレーシアは2025年7月、バーゼル条約を批准していない国(米国が該当)からの廃プラスチック輸入を禁止したと報じられています。加えて輸入基準として、単一ポリマー純度99.5%以上、非プラスチック夾雑物2%以下、食品・油分・E-wasteはゼロトレランスという条件が課されているといいます。ポストコンシューマー廃棄物(一般消費者が使用後に排出した廃棄物)の輸入は実質的に困難になっています。ベトナムも、包装メーカーの原料調達を輸入スクラップから国内の認証回収網へ移行させる政策を進めているとされます。EU側の輸出禁止については、マレーシア・ベトナム向けの年間輸入量のうち約14万トンが影響を受ける可能性があるとの試算があります。これらの規制・試算はいずれも二次情報を経由して参照しており、原典は未確認です(詳細は記事末の注記をご覧ください)。

受入側の規制強化と供給側の輸出禁止が同時に効いている点が、今回の原料調達難の本質と考えられます。従来この業界には「採算さえ合えば輸送の方法は見つかる」という発想がありました。しかしコンテナが税関で止まれば、デマレージ(超過保管料)・保管料・返送運賃が一気に積み上がります。規制リスクの評価が、採算計算と同じ重みを持つ段階に入っています。Dr.Steveが示す方向性は明快で、廃棄物の輸出を減らし発生源の近くでローカルにリサイクルする流れです。日本の事業者にとっては、国内フィードストックを確保し、現地でフレーク・ペレットまで加工したうえで「未処理廃棄物ではなく再生原料として」輸出できる体制を持つことが、中期的な競争力の分かれ目になりそうです。自社の調達・販売網でどう備えるかは、扱う素材や取引先によって答えが変わります。具体的な検討はお気軽にご相談ください。

この記事が最も影響する業界ポジション

  1. 1位:企業の原材料を調達する部門・商社(直接影響)— 原油急騰を起点としたバージン樹脂の上昇と、それが需要主導ではないという判断材料は、調達タイミングと購買量の意思決定に直結するため。
  2. 2位:プラスチックリサイクル業者(直接影響)— 再生材の採算が運賃・関税を含む着地コストで決まる構図と、東南アジアの原料調達難・EU輸出禁止という需給変化が、販売先と仕入れルートの両面に効くため。

一次情報・出典

本記事は2026年8月24日時点の情報です。相場は日々変動しますので、実際の調達判断の際は必ず最新の一次情報をご確認ください。

確度に関する注記:国産ナフサの週次スポット指標(8/20時点で90,952円/kLとされる値)は一次ページを特定できておらず、本文でも参考値として扱っています。国産ナフサ4-6月期の118,900円/kLは、原典が購読契約未了の記事のため本文を確認できていません。マレーシアの輸入規制(2025年7月の措置および純度99.5%等の基準)、ベトナムの国内回収網移行政策、Bain & Companyの約14万トンの試算、国内建値の見通しは、いずれも二次情報(検索結果の要約・記事の要約)を経由して参照しており、原典の全文は未確認です。Bainの試算はEU輸出禁止の適用前に公表されたもので、2026年の実際の貿易量を反映していません。

本記事は公開情報・受信メルマガを基にした市況の整理であり、個別の取引価格を保証するものではありません。実際の調達・販売価格は取引先・時期・数量により異なります。なお海外の価格水準は、香港の再生原料商社Fukutomi Recycling Limitedの発行する週次メルマガに基づく単一ソースの評価であり、価格報道機関が公表する指標値ではありません。同社は市場参加者であるため、その点を踏まえてご覧ください。

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