詳細解説

事実SUP指令(EU)2019/904は、対象となる使い捨て飲料ボトルについて、2025年からPET主体ボトルに25%以上、2030年から全対象ボトルに30%以上の再生プラスチック含有を、加盟国市場で上市されたボトルの平均として求めている。この「平均をどう数えるか」を定めるのが実施決定であり、従来は2023年11月30日採択の実施決定(EU)2023/2683が機械的リサイクルを中心に扱っていた。今回の実施決定(EU)2026/1425はこれを廃止・置換し、ケミカルリサイクルによって得られた再生材の算定方法論を初めて導入した。基本の算定式は、市場に上市されたPETボトルに含まれる再生プラスチック重量を当該ボトルのプラスチック重量で除して百分率で表すもので、ボトル本体・キャップ/蓋・ラベル/スリーブの各構成部品に分けて集計する。2026年7月20日に公表された訂正(OJ L, 2026/90601)では、Annex I(算定式)とAnnex II(報告様式)が全面的に差し替えられているため、参照する版に注意が必要である(本稿時点で確認できた訂正はこの1本。Annex IIについて7月末付の追加訂正があるとの情報もあり、EUR-Lexの訂正一覧で最新版を確認されたい)。

事実実務上もっとも重い論点は、再生材の地理的由来である。本決定第1条は「再生プラスチック」を、リサイクル前にポストコンシューマー廃プラスチックであり、かつEU域内で再生(選別を含む)されたものと定義している。すなわち、EU域外で再生された材料は当面この目標の算定に含められない。2027年11月21日からは、OECD決定が適用される国で再生された材料も算入対象に加わるとされている(当該廃棄物がOECDの要件に沿って環境上適正に管理されたことの証明が前提)。非OECD国由来については、EUと同等の環境・健康保護水準を相互に認める取決めがある場合に限られると説明されている。

分析実務上の意味は二つある。第一に、これまで「独自判断で計上しない」のが安全とされてきたケミカルリサイクル・マスバランス由来分について、EUとして数え方の土俵ができた。解重合PETや熱分解由来原料をEU向けに供給する事業者には、証憑と検証を整えれば市場が開く可能性がある。ただしこの商機は、当面EU/EEA域内で再生を行う事業者に開いたものである。第二に、日本から供給する立場では、2027年11月21日までは「供給はできるが顧客の含有率にはカウントされない」という状態が続く。EU顧客がSUP目標の達成を優先する局面では、域内材が価格面で優位に立つ可能性がある。逆に、この2027年11月というタイミングが読めていれば、それまでにOECD要件に沿った環境上適正な管理の証明(回収経路、選別・処理工程、残渣処理先の記録)を整え、切替時点で候補に入れる準備ができる。飲料ボトル用途のケミカルリサイクル材は、本決定とは別に規則(EU)2022/1616に基づく食品接触適合が必要である点にも注意したい。新規参入を検討する企業は、含有率目標そのもの(25%/30%)と、算定・検証ルール(本実施決定)と、食品接触適合(2022/1616)の3つが別々に動く構造を押さえておきたい。なお条文解釈にわたる判断は、専門家への確認を推奨する。