今月の主な動き

1. PPWRが原則適用に入った(2026年8月12日)

事実規則(EU)2025/40(PPWR)は2025年1月22日に官報掲載、2025年2月11日に発効し、約18か月の移行期間を経て2026年8月12日から原則適用に入った。適用初日から効いている代表的な義務は、食品接触包装における懸念物質の制限で、とくにPFAS(有機フッ素化合物)の上限を超える包装はEU市場に上市できない。欧州委員会は2026年3月に実施ガイダンスとFAQを公表しており、8月にも包装の最小化(第10条)に関するFAQの更新が行われたと業界筋では伝えられている(一次情報での確認は取れていないため要確認)。再生材含有率義務やリサイクル可能性要件、統一表示は2028年・2030年以降の段階適用であり、「8月12日にすべてが始まった」わけではない点は誤解しやすい。詳細はPPWRの個別ページを参照されたい。

2. PPWR第7条の下位法令に向けた3件の証拠募集(8月17日〜9月16日)★新規ページ

事実欧州委員会は、PPWR第7条に基づく再生材含有率関連の下位法令の準備として、①算定・検証の調和、②プラスチックリサイクル技術の持続可能性基準、③域外再生材のEU輸入条件、の3件について証拠募集を実施している(本稿公開時点で受付中、締切は9月16日00:00ブリュッセル時間)。下位法令の採択期限は2026年12月31日、含有率義務の適用は2030年1月1日である。分析このうち③は、日本で製造した再生ペレットがEU顧客の含有率カウントに算入できるかどうかを左右するため、FENの立場からもっとも注視すべき論点である。新規ページ「PPWR第7条―再生材含有率の算定・リサイクル技術基準・域外再生材の輸入条件」を追加した。

3. リサイクル設計(DfR)基準の委任法令案(意見募集 8月4日〜9月18日)

事実PPWR第6条に基づくリサイクル設計基準・リサイクル可能性の性能等級について、委任法令案の意見募集が2026年8月4日に始まり、9月18日に締め切られる予定である(業界情報。Have your sayポータルでの一次確認を推奨)。プラスチック包装と紙系包装のカテゴリ単位の等級付けが対象で、詳細なDfR要件は2030年1月1日、または委任法令の発効から24か月後のいずれか遅い方から適用される。分析多層ラミネートの評価方法が争点になるとみられ、包装の仕様変更を検討中であれば、案の内容を確認したうえで判断する価値がある。

4. 実施決定(EU)2026/1425による算定ルールの刷新(対象期間外・キャッチアップ) ★新規ページ・既存ページに訂正が必要

事実飲料ボトルの再生材含有率の算定・検証・報告を定める実施決定(EU)2026/1425が2026年6月30日に採択され、7月3日に官報掲載、7月23日に発効して旧実施決定(EU)2023/2683を廃止・置換した。ケミカルリサイクル由来分の算定方法論が初めて導入されている。さらに7月20日には訂正(OJ L, 2026/90601)が公表され、Annex I(算定式)とAnnex II(報告様式)が全面差替えとなった(本稿時点で確認できた訂正はこの1本。Annex IIについて7月末付の追加訂正があるとの情報もあり要確認)。加えて本決定第1条は「再生プラスチック」をEU域内で再生されたものと定義しており、日本を含むEU域外で再生された材料は当面算入できない。OECD諸国由来の算入開始は2027年11月21日からとされている。分析当サイトのSUP指令 飲料ボトル再生材含有率のページは、旧実施決定(2023/2683)を現行として説明しており、記述が古くなっている。新規ページ「実施決定(EU)2026/1425」を追加したうえで、既存ページの訂正を推奨する。

5. 廃プラ輸出規制―2026年11月21日の段差 ★新規ページ

事実規則(EU)2024/1157(改正WSR)は2026年5月21日から原則適用に入り、廃プラスチックの輸出は事前届出・同意手続の対象となった。2026年11月21日からは非OECD諸国向けの廃プラ輸出が禁止され、少なくとも2029年5月21日まで続く。OECD諸国向けは継続できるが、2027年5月21日からは受入施設の独立監査が輸出者の義務となる。分析日本はOECD加盟国であるため禁止対象ではないが、手続と監査の負担は増える。新規ページ「改正EU廃棄物輸送規則―廃プラスチックの輸出規制」を追加した。

6. その他(ESPR/循環経済法/繊維EPR)

事実ESPR(規則(EU)2024/1781)については、鉄鋼製品のエコデザイン要件に関する委任法令の意見募集が2026年8月12日に締め切られ、採択は2026年第4四半期の見込みとされている。カーボンフットプリント、再生材含有率、デジタル製品パスポート(DPP)による情報開示が検討対象に含まれる。循環経済法(Circular Economy Act)は欧州委員会2026年作業計画で第3四半期の提案が予定されているが、欧州議会の立法追跡(2026年8月1日更新)では「announced」のままで、本稿時点で正式提案は確認できていない。繊維EPR(指令(EU)2025/1892)は国内法化期限2027年6月17日に向けた各国作業の段階で、この1か月に目立った新規の動きは確認できなかった。

分析食品接触用再生プラスチック規則(規則(EU)2022/1616)については、改正案が2026年4月15日にWTOへ通報され、2026年9月30日の採択が見込まれているとの情報がある(二次情報のため要確認)。伝えられている内容は、除染バッチごとの適合宣言(Declaration D)、リサイクラーによる入荷原料の由来(EU域内か域外か)と回収方式の把握、電子登録制度への一本化、輸入された再生プラスチック物品の通関ルールの明確化などである。事実であれば、PPWR第7条の「域外再生材の輸入条件」と同じ方向、すなわち「その再生材がどこから来たかを証明できるか」を問う制度設計が食品接触分野でも進むことになる。日本からEU向けに食品接触グレードの再生材を供給する事業者は、9月末以降の官報掲載を注視されたい。

実務への示唆

分析この1か月の動きは、EUの再生材政策が「目標を決める段階」から「数え方と、誰の材料を数えるかを決める段階」へ移ったことを示している。目標値(2030年の含有率)はすでに決まっており、いま争われているのは算定式・技術の線引き・域外材の扱いという実務ルールである。この段階で証憑体制を整えていない供給者は、基準が確定してから遡って証明することが難しい。そして「誰の材料を数えるか」については、SUP飲料ボトルではすでに答えが出ている——EU域内で再生されたものに限る、OECD諸国由来は2027年11月21日から、である。PPWR第7条の域外輸入条件が同じ設計思想で作られるかどうかは未確定だが、日本の供給者にとって「2027年後半」という時間軸は一つの目安になる。同時に、廃プラの国際物流はEUの輸出規制によって11月に大きな段差を迎える。「材料をどこから調達し、どこへ出すか」と「その材料がEUで数えられるか」は別々の規制で動いており、両方を並行して点検する必要がある。