30秒でわかる要約
何が起きたか:原油が週間で急反発しました。WTIは9月4日のニューヨーク終値で91.48ドル/バレル、前週比+9.7%です。中国のプライム樹脂(再生材ではない新品の樹脂)もほぼ全面高となり、PVCが約+11%、ABSが約+9%、PETが約+8%と大きく動きました。ただし発信元は「回復はコスト起因であり、川下の需要改善に支えられたものではない」「価格が販売数量より速く上がっている」と明記しています。一方で再生ペレットはアジア・欧州・米国とも軟調から横ばいでした。国内は国産ナフサ指標が96,202円/kL(前週比+4.05%)と反発しています。ただし四半期基準価格の想定値は7-9月期が104,800円/kLへ▲1,900円下方修正されました。
誰に関係するか:バージン材の建値改定に価格が連動する成形加工業者と調達部門、プライムとの価格差で相対競争力が動くリサイクル事業者・商社、東南アジア向けにスクラップや再生材を出している事業者
いつから影響するか:中国の樹脂価格は既に動いています。国内は四半期ごとの計算式で建値が改定されるため、9月の急騰がすぐ効くわけではありません。ただし想定値がどの月の何を反映して改定されたかは出典ページに示されておらず、どの改定にどう波及するかは当社としても特定できていません
商機:プライムが上がって再生材が上がらなかったぶん、相対的な価格差は広がった。東南アジアでは引き合いがPEフィルム・PS・ABSを中心に改善している。※ただし発信元が挙げた改善理由は3つあり、うち1つは「バージン値上がり観測」という価格要因。日本材が欧州材を置き換えるという記述は原文にありません
リスク:価格差が開いても低品位グレードは採算に乗らない可能性がある。前週の発信元レポートには、PETダスト由来ペレットがインド着け値510ドル/MTで成約したと報告され、運賃を引いた手取り410ドル/MTでは「ほぼ利益が出ない」との日本側コメントが載っている(1件の事例)。またこの原油高は地政学要因で、剥落すれば逆回転しうる
推奨アクション:①今回の上昇はコストが押し上げたもので、発信元自身が需要回復ではないと明記している。「相場が上がったから早めに手当てを」と急ぐより、自社の在庫日数と実需の見通しを先に確認したい。②国産ナフサ指標は上がっているが、四半期基準価格の想定値は下方向を示している。足元のスポットと先の建値見通しが逆を向いている。どちらの系列を見て判断しているのかを社内で揃えておきたい。③再生材の販売側は、東南アジアの引き合い改善が価格要因と供給要因の両方で説明されている点に注意したい。既存の取引先に直近の在庫状況を確認してみる価値はある。なお素材や仕向地によって答えは変わります。具体的な検討はお気軽にご相談ください。
主な出典:Fukutomi Recycling Limited(香港)Steve Wong氏の週次市況レポート2026年9月4日号・8月28日号、大景化学「ナフサ価格推移表」(2026-09-04更新)、三協化学「国産ナフサ価格チャート」(2026-09-01更新)、EUR-Lex(実施決定 EU 2026/1425)ほか。詳細は記事末の出典欄をご覧ください。
ℹ️ 今週は海外市況を2週分まとめて扱います
前回8月31日号で「入手できていない」とお伝えした海外市況の主データ源(Fukutomi Recycling Limited・香港のSteve Wong氏による週次市況レポート)の8月28日号は、前号の作成後に当社へ届いていました。今週さかのぼって収録し、あわせて9月4日号も入手しています。そのため本稿は海外市況を2週分まとめて扱います。
前回「更新なし」とした中国プライム樹脂・再生材の価格水準は、本稿で更新しています。
※以下、同レポートからの価格・引用は、Fukutomi Recycling Limited の許諾を得て掲載しています。和訳は当社によるもので、数値・記述の帰属先は同社にあります。
国内市況:スポットは上、建値の見通しは下。どちらを見るのか?
- ナフサ
- 原油を精製して得られる油。プラスチックの大もとの原料になる。
- 通関CIF(つうかんシーアイエフ)
- 輸入品が税関を通ったときの価格。品物代に、運賃と保険料を足したもの。財務省の貿易統計として毎月公表される。
- 建値(たてね)
- 石油化学メーカーが公表する、樹脂の基準となる販売価格。実際の取引価格はここから交渉で決まる。
- 国産ナフサ基準価格
- 建値を決める土台になる、四半期ごとの公式なナフサ価格。年4回(2・5・8・11月)の建値改定は、この価格に連動する計算式で行われるのが一般的とされる。
- スポット価格
- その都度の取引で決まる価格。四半期でまとめて決まる基準価格とは動き方が違う。
事実国産ナフサ価格指標は、2026年9月4日時点で96,202円/kLである。同じページにナフサ現物863ドル/t、為替157.06円/ドルが併記されている。前週8月29日の92,461円/kL(為替159.51円/ドル)からは+3,741円/kL(+4.05%)となった。大景化学のナフサ価格推移表で確認している。
事実この前週比には、これまでと違う点がある。前週の値も今週の値も同じページの同じ系列で確認できた。本レポートとしてはじめて、同一の一次ソースどうしで週次の前週比を出せたことになる。前号までは比較対象がWeb検索の要約に基づく未確認値だった。
分析方向は海外の原油(WTI週間+9.7%)と整合する。ただし上げ幅は原油より小さい。この差を為替だけで説明することはできない。為替は159.51円/ドルから157.06円/ドルへ約1.5%円高に振れており、これが説明するのは差の一部にとどまる。残りは、ドル建てのナフサ自体が原油ほど上がっていないことによると考えられる。なお前週のドル建てナフサ価格は当社が同ページから取得しておらず、ドル建ての前週比そのものは確認できていない。
四半期の見通しは、なぜ逆に下を向いたのか?
事実三協化学のチャートページが2026年9月1日に更新され、7-9月期の四半期基準価格の想定値が106,700円/kLから104,800円/kLへ▲1,900円/kL(-1.8%)下方修正された。あわせて10-12月期の想定値95,900円/kLが新規に掲載された。7-9月期の想定値と比べると▲8,900円/kL(-8.5%)である。同ページの凡例は「黒字:確定・速報 青字:想定となります。」で、この2期はいずれも青字=想定値である。
事実ただし、この改定が何を反映したものかは、出典ページに示されていない。同ページの月次確定値は7月(104,331円/kL)までで、8月分の通関CIFは9月1日時点では公表されていない(財務省の月次貿易統計は翌月下旬の公表)。また当社の記録では、同社の想定値はナフサのスポット価格(MOPJ)と為替から作られている旨の記載が過去にあり、通関CIFの実績だけで決まるものとは限らない。したがって「7月・8月の実績が反映された」と書くことはできない。
分析当社としては、7月から8月にかけての下落局面が想定に織り込まれたのだろうと推測している。ただしこれは推測であり、根拠は示されていない。
分析前号で当社は「7-9月期の確定値は想定値を下回る可能性がある」と書いた。今回観測されたのは想定値の改定である。両者は別の命題であり、これをもって当社の見立てが的中したとは言えない。むしろ基準となる想定値が下がったぶん、確定値がさらにこれを下回る余地は狭まったとも読める。
分析そのうえで、実務的に押さえておきたいのは足元のスポットと先の建値見通しが逆を向いていることである。9月4日の指標は前週比+4.05%と上がっているのに、四半期基準価格の想定値は7-9月期・10-12月期とも下方向を示している。どちらの系列を見て判断しているのかを、社内で揃えておきたい。
分析なお通関CIFは、船積みから通関までのずれがあるため、スポット価格に対して遅れて反映されると考えられる。ただしこれは当社の理解であって、遅行の幅を検証したものではない。前号でも触れたとおり、改定月(2・5・8・11月)が参照する平均期間と暦の四半期が同一定義かも確認できていない。どの改定にどう効くかについて、当社は断定できる材料を持っていない。
| 指標 | 値 | 前週比・備考 |
|---|---|---|
| 国産ナフサ価格指標(2026-09-04現在) | 96,202円/kL | 前週比 +3,741円(+4.05%)/為替157.06円/ドル、ナフサ現物863ドル/t。前週8/29は92,461円/kL(為替159.51円/ドル) |
| 国産ナフサ基準価格(2026年1-3月期・確定) | 65,700円/kL | 大景化学の「Q平均」欄と三協化学の「基準価格」が同一値であることを今週確認 |
| 国産ナフサ基準価格(2026年4-6月期・確定) | 118,900円/kL | 同上 |
| 国産ナフサ基準価格(2026年7-9月期・想定値) | 104,800円/kL | 想定値が前回106,700円/kLから▲1,900円(-1.8%)に修正/確定値ではない |
| 国産ナフサ基準価格(2026年10-12月期・想定値) | 95,900円/kL | 7-9月期想定値比 -8,900円(-8.5%)/今週新規に掲載された想定値・確定値ではない |
| 月次通関CIF(2026年6月・確定) | 121,981円/kL | 三協化学の掲載値。大景化学は121,885円/kL、新電力ネットは121,980円/kL |
| 月次通関CIF(2026年7月) | 104,331円/kL | 三協化学と大景化学が同値。新電力ネットの60,800円/kLは本稿では採用していない(理由は下記) |
※1-3月期65,700円/kLと4-6月期118,900円/kLの段差が大きいのは、2026年4月以降にナフサ市況が急騰したためです(月次で4月101,754円/kL → 6月121,981円/kL)。誤植ではありません。
※各系列は算出基準・集計期間が異なるため、相互に単純比較できません。「国産ナフサ価格指標」は週次に近い頻度で動くスポット的な指標、「基準価格」は四半期ごとの公式値、「通関CIF」は月次の輸入価格です。想定値は確定値ではなく、今後改定されます。
先週の「1,000円の謎」は、結局どうなったのか?
事実前号で当社は、公表されている算出方法(四半期3か月の通関CIF平均+2,000円/kL、百円未満を四捨五入)で4-6月期を検算すると、公表値118,900円/kLに約1,000〜1,100円/kL届かない、と報告した。今週その位置づけが決着した。
事実まず、前号で最優先の宿題としていた「大景化学の『Q平均』は三協化学の『基準価格』と別物か」に答えが出た。大景化学のQ平均欄は1-3月期=65,700円/kL、4-6月期=118,900円/kLで、三協化学の四半期基準価格と同一値だった。「そもそも別系列だったから合わなかった」という切り分けは成立しない。
事実そのうえで、三協化学のチャートページに次の注記があることを確認した。「国産ナフサ価格の3カ月平均の値は、輸入ナフサ欄の3か月分を足して3で割った単純平均の値ではありません。」単純平均で計算する限り一致しないのが正しい挙動であり、この差は異常ではなく仕様どおりだったことになる。
分析1-3月期が約100円差で「たまたま」近かったのも説明がつく。1-3月期は月次のばらつきが3,501円幅と小さく、平均のとり方の違いが効きにくい。一方4-6月期は21,978円幅と大きく、差が桁で開いた。
分析ただし「正しい算出式そのもの」は依然として分かっていない。三協化学の注記は「単純平均ではない」と言っているだけで、数量加重平均(各月の輸入量の大小を反映した平均)であるとは書いていない。前号で挙げた加重平均の仮説は、確度が上がっただけで確定ではない。
分析検証のため2026年1〜6月のナフサ月次輸入数量を探したが、4月分(114万4,188kL、前年同月比-47.0%)しか特定できず、5月・6月は無料で参照できる範囲では取得できなかった。参考として、4月は3か月のうち最も単価が安い月でありながら数量が前年比で半減している。数量加重平均であれば4月のウェイトが3分の1を下回り、加重平均は単純平均より高く出る。公表値が計算値を1,100円上回っている向きとは矛盾しない。方向が整合するというだけで、検証されたとは言えない。
事実月次通関CIFの帰属も確認できた。三協化学の月別表で6月=121,981円/kL、7月=104,331円/kLが掲載されており、6月は三協化学121,981/大景化学121,885/新電力ネット121,980と、3ページの差は100円未満だった。
事実ただしこの3ページは独立した情報源ではない。いずれも財務省貿易統計の再掲であり、一致は「同じ原統計を写した3ページの表示が揃っている」という意味にとどまる。多数決で正しさを決められる関係ではない。新電力ネットの7月値60,800円/kLを本稿が採用しないのは、多数決ではなく、同ページの更新日(2026年8月7日)が7月分貿易統計の公表前にあたり、月間の確定値でも速報値でもない可能性が高いためである。当社は財務省の原統計に当たれていないため、104,331円/kLは「正しい」ではなく「採用する」値として扱う。
事実日本容器包装リサイクル協会の落札結果は、ページ最終更新日が令和8年4月7日から令和8年8月31日に変わっていたが、掲載内容は直近3年分のままで、令和8年度の加重平均70,344円/トンにも変更はなかった。この単価は、市町村が分別収集した容器包装を再商品化事業者に処理委託する際の委託単価であり、再生材そのものの販売価格ではない。単位も円/トン(≒70円/kg)で、本稿の他の表(円/kL、USD/MT、EUR/MT)とは異なる。
海外市況:原油が+9.7%。樹脂の全面高は「買い時」なのか?
事実WTI原油は2026年9月4日のニューヨーク終値で91.48ドル/バレル、前週8月28日の83.40ドルから+9.7%である。Brentは約96.28ドル/バレル(同89.31ドルから+7.8%)。要因は3つ挙げられている。米国とイランの戦闘再燃、イランによる湾岸航路への攻撃、ホルムズ海峡経由の原油フローがさらに阻害されるとの懸念である。加えて米国の商業原油在庫が450万バレル減少した。
事実その前週(8月21日→8月28日)は逆に-4.2%だった。イランとオマーンのホルムズ海峡をめぐる協議、サウジアラビアの出荷増、イラクの代替輸出ルートが目先の供給不安を和らげたためとされる。2週間で下げてから大きく上げ返した形である。
事実発信元の見通しは両方向である。軍事的なエスカレーションやエネルギーインフラへの攻撃があればWTIは95ドル超もありうる一方、航行環境の改善や合意の進展があれば地政学プレミアム(紛争リスク等で価格に上乗せされている分)が剥落し85〜90ドルに戻る、としている。
| 指標 | 2026-09-04 | 前週比(2026-08-28比) |
|---|---|---|
| WTI原油(ニューヨーク終値) | 91.48 USD/バレル | +8.08(+9.7%)/同日のアジア市場終値は約91.30ドル |
| Brent原油 | 約96.28 USD/バレル | +6.97(+7.8%)/原文は「approximately」と概数表記。%は当社算出 |
※本稿はニューヨーク終値の系列で統一しています(8/21=87.06、8/28=83.40、9/4=91.48ドル)。8月21日号までの本レポートはアジア市場終値で記録していたため、そちらと接続する場合は9月4日のアジア市場終値約91.30ドルをお使いください。
※原油価格は本稿では発信元レポートの単独ソースによります。公開市況で容易に確認できる指標のため、実務では取引所・報道の値もあわせてご確認ください。
中国のプライム樹脂は、どこまで上がったのか?
事実8月31日から9月4日の週、中国のプライム樹脂は11品目すべてが上昇した。上げ幅が大きい順にPVC約+11%、ABS約+9%、PET約+8%である。汎用樹脂の上げ幅が大きく、エンジニアリングプラスチック(PC・PA6・PA66・POM・PMMA)は+1.7〜+4.9%と相対的に小幅にとどまった。
| 樹脂 | 2026-09-04 | 前週比 | 前週比% |
|---|---|---|---|
| PVC | 5,050 RMB/MT | +490 | +10.7% |
| ABS | 11,600 RMB/MT | +950 | +8.9% |
| PET(ボトル級) | 8,600 RMB/MT | +600 | +7.5% |
| PE | 9,400 RMB/MT | +550 | +6.2% |
| PS | 8,950 RMB/MT | +450 | +5.3% |
| PC | 11,850 RMB/MT | +550 | +4.9% |
| PP | 10,000 RMB/MT | +450 | +4.7% |
| POM | 8,300 RMB/MT | +300 | +3.8% |
| PA6 | 14,300 RMB/MT | +500 | +3.6% |
| PMMA | 13,400 RMB/MT | +250 | +1.9% |
| PA66 | 17,700 RMB/MT | +300 | +1.7% |
※出典:Fukutomi Recycling Limited(香港)Steve Wong氏の週次市況レポート 2026年9月4日号。同社の許諾を得て掲載しています。和訳は当社によるものです。
※RMB=人民元、MT=メトリックトン(1,000kg)。為替は1米ドル=6.7099人民元。これらは付加価値税(VAT)込みの中国国内価格です。後段のUSD/EUR建て再生材ベンチマークとは通貨・課税・受渡条件がいずれも異なるため、差額を直接計算することはできません。
※前週比の金額は発信元が本文に示した「8月28日比」の値です。%は当社が算出しました(原文に%の記載はありません)。うちPET・PS・POMは原文が8月28日の水準を直接明記しているためそれを分母に、他8品目は原文が増分のみを示すため「9月4日の値−増分」で逆算した値を分母にしています。分母が概数由来のため、小数第1位までの表示にとどめています。
※PVCについては、同レポートが併記する第三者アセスメントが「1か月で約+9.7%」としており、当社算出の週次+10.7%とは整合しません。系列が異なるため直接比較はできませんが、数値の頑健性には留保が必要です。なおABS(第三者7日間+8.1%)とPMMA(同週+1.56%)は当社算出値と概ね整合しています。
事実ただし発信元は、この上昇を需要回復と読むことを明確に否定している。「回復は依然としてコスト起因であり、エンドユーザー需要の広範な改善に支えられたものではない」「価格が販売数量より速く上がっている」と本文に記されている。個別にも、PEは補充を終えた川下工場が高値への抵抗を強めたこと、PPは高い原料価格が川下からの逆風を生み週後半に商いが細ったこと、PVCは実需が同じペースでついてきていないことが指摘されている。
分析つまり今回の全面高は、川下が値上げを受け入れた結果ではなく、原料コストの上昇が押し上げたものと読める。「相場が上がったから早めに手当てを」と急ぐより、自社の在庫日数と実需の見通しを先に確認しておくほうが、この局面では実務的ではないだろうか。
分析加えて、この原油高は地政学要因によるものである。発信元自身が「合意の進展があれば85〜90ドルに戻る」と両方向のレンジを示している。上げの根拠が需給ではなく供給リスクである以上、剥落したときの逆回転も同じ速さで起こりうる。
分析なお、ここまでの中国の人民元建て価格が、そのまま国内の調達価格に効くわけではない。国内のバージン材の建値は前半で見たとおり四半期の国産ナフサ基準価格に連動して決まる仕組みであり、中国のスポット価格とは別の経路である。中国の数字は、アジア全体の需給の向きを読むための材料としてご覧いただきたい。
再生材:プライムとの価格差は開いた。それは追い風なのか?
事実プライムが上がった一方で、再生ペレットは総じて軟調から横ばいだった。中国は黒・混色グレードを中心に需要が鈍く確定注文に紐づく購買が中心、欧州は包装・建設・自動車・汎用射出のいずれも需要が限定的、米国は夏場の回収増で原料が潤沢になりrHDPE・rPPが軟化した、とされる。
| 地域 | 品目 | 水準 | 備考 |
|---|---|---|---|
| アジア | rPE(ナチュラル) | 750 USD/MT以下 | 中国。この水準以下なら概ね受け入れられる、との記述 |
| アジア | rPP(ナチュラル) | 550〜650 USD/MT | 中国 |
| アジア | rLDPE(高透明・良質) | 900 USD/MT超 | ベトナム。輸入フィルム原料が既に420 USD/MT超、低嵩比重ゆえ輸入・物流コストが約280 USD/MTに達しうる |
| アジア | rABS・rHIPS/rPS | 700〜900 USD/MT | — |
| アジア | rPC(ナチュラル) | 1,300〜1,450 USD/MT | 高品位PCRは1,600〜1,700 USD/MT |
| アジア | rPET(非食品グレード) | 850〜1,000 USD/MT | 透明食品グレードは原文が「substantially higher」とのみ記し、具体値は不明 |
| 欧州 | rLDPE(フィルム級) | 900〜1,000 EUR/MT | — |
| 欧州 | rPP(射出級) | 850〜950 EUR/MT | — |
| 欧州 | rHDPE | 1,050〜1,800 EUR/MT | グレー・黒1,050〜1,200/白1,400〜1,550/ナチュラル1,650〜1,800 |
| 欧州 | rPET(透明・食品グレード) | 1,650〜1,750 EUR/MT | 飲料シーズンの需要減速で軟化 |
| 欧州 | rABS(黒)・rHIPS(黒) | 750〜1,050 EUR/MT | rABS黒850〜1,050/rHIPS黒750〜950。色・原産地・耐衝撃性・難燃剤含有・REACH/RoHS適合で大きく変動 |
| 米国 | rLDPE(ナチュラル) | 1,300〜1,700 USD/MT | — |
| 米国 | rPP(ナチュラル) | 1,000〜1,400 USD/MT | — |
| 米国 | rHDPE(ナチュラル) | 1,900〜2,500 USD/MT | 混色グレードは大幅に下 |
| 米国 | rPET(食品グレード) | 1,400〜2,000 USD/MT | — |
| 米国 | rABS・rHIPS/rPS | 1,000〜1,500 USD/MT | rPCは1,800〜2,600 USD/MT |
※出典:同上(Fukutomi Recycling Limited、同社の許諾を得て掲載)。
※r=recycled(再生材)の意。いずれも発信元による地域ベンチマークで、確定した成約価格ではありません。実際の価格はグレード・色・数量・技術仕様・契約条件・引渡条件で変わります。地域ごとに通貨が異なる点にもご注意ください。
事実米国のスクラップ側では、夏場の回収量が多い一方で国内需要が弱く、玉が潤沢である。2026年7月の全米平均でPETボトルベールが3.2セント/lb(約70 USD/MT)、クリーンなGrade AのPEフィルムが15〜16セント/lb(330〜350 USD/MT)、清浄・乾燥で白主体のPPフレコンが11〜14セント/lb(240〜310 USD/MT)だった。汚れたGrade CのPEフィルムは価値がほぼゼロかマイナスで、低嵩比重と高い運賃が輸出を阻んでいるとされる。
価格差が開けば、再生材は売れるのか?
事実発信元は8月28日号で、プライムPS・ABSの値上がりでプライムと再生材の価格差が広がり、コンバーター(成形加工業者)が再生ペレットを再検討する動きが出ている、と述べている。これはPS・ABSについての定性的な判断であり、上の2つの表の数字を差し引いて得られる結論ではない(前述のとおり通貨・課税・受渡条件が異なる)。
事実同じ8月28日号には、逆方向の事例も載っている。PETダスト・微粉から作られたペレットがインド着け値510 USD/MTで成約したと報告され、運賃約100 USD/MTを差し引くと供給者の手取りは約410 USD/MT。日本のサプライヤーが「電力と加工のコストが高く、この水準ではほぼ利益が出ない」とコメントした、という記述である。
分析プライムが上がっても、低品位グレードの再生材価格は加工原価を割り込んだままでありうる。価格差の拡大が効いてくるのは、そもそも原価を回収できている品質帯に限られるのではないか。ただし上記は報告された1件の取引であり、これをもって全体を語ることはできない。
分析立場によって、この価格差の意味は逆になる。再生材を売る側にとっては値上げを通しにくい局面が続く一方、再生材を買う側にとっては、バージン材が上がるなかで相対的に有利な条件を取りやすい局面ともいえる。再生材への切り替えを検討している調達部門にとっては、比較検討を始めるタイミングとして悪くない。
日本材に効いているのは、価格なのか供給元の入れ替わりなのか?
事実日本からの廃プラスチック輸出は2026年6月に約5,100万kgだった。仕向地はマレーシア約1,900万kg、ベトナム約900万kgで、台湾とフィリピンも重要な仕向地とされる(数量の記載はない)。発信元は日本材について、輸出前に日本国内でクリーンな粉砕品や再生ペレットまで加工する例が増えていること、ナチュラル・透明のPC、PMMA、PETGが最も売りやすく混色・難燃グレードは需要が限られること、日本の工場発生材は他のアジア産に比べ清浄で品質が安定する一方、価格は高いままであることを挙げている。なおこの輸出数量の出所は本文に明記がなく、発信元の記述のみに基づく。
事実マレーシア・ベトナム・インド・インドネシアでは、PEフィルム・PS・ABSを中心に前週から引き合いが改善した。発信元は理由を3点挙げている。(1)原油・原料高でバージン樹脂の値上がり観測が強まった、(2)伝統的な閑散期が終わった、(3)これまで輸入していた欧州材を使い切ったリサイクラーが在庫の積み増しを始めた、である。
事実背景として、発信元は8月28日号で、2026年5月21日以降EUからの域外向け廃プラ輸出にPIC(事前情報通報)が必要になったこと、そのため欧州が東南アジア向けにベール廃プラ(圧縮して梱包した状態の廃プラスチック)を大量供給し続けられるという想定はもはや現実的でないことを述べている。ただしこのEU規制についての記述は同レポートに基づくもので、当社はEUの官報・原規則に当たって確認していない。
分析ここから、日本材にとって効いているのは価格差よりも供給元の入れ替わりのほうかもしれない、という読み方ができる。欧州材が制度上細り、現地の在庫が尽きた。その穴を埋める候補として、清浄で品質が安定している日本材が浮かび上がる構図である。
分析ただし、この読み方は選択的であることを断っておきたい。発信元が挙げた3つの理由のうち(1)は「バージン値上がり観測」という価格要因であり、「価格ではない」という当社の読みと正面から食い違う。加えて同じレポートには、日本材は「価格は高いまま」という記述と、米国も同じ6月に約4,100万kgを輸出しているという記述がある。欧州材の空白を日本材が埋めるという記述は原文にはない。
分析また当社は、この「欧州材の枯渇」がマレーシア・ベトナムの輸入統計に実際に表れているかを確認していない。したがって「日本材に追い風」と断定はできず、注視すべき兆候として扱う。なお素材や仕向地によって答えは変わります。具体的な検討はお気軽にご相談ください。
📌 マレーシアの輸入規制について、発信元が誤解を正しています
発信元は9月4日号で次のように述べています。「マレーシアは米国からの廃プラスチック輸入を禁止し、その他の国からの適格な輸入にはSIRIM(マレーシア規格・工業研究所)の承認を要求している。すべての原産国に同じ全面禁止を課したわけではない」。あわせて、多くのリサイクラーがEUの輸出規制の影響を十分に把握していない、とも指摘しています。
同レポートによれば、マレーシア向けは2025年7月1日以降、HSコード3915(廃プラスチックの分類番号)の輸入がSIRIM発行のCertificate of Approval(承認証)で管理されており、書類審査・船積前検査・受入基準への適合が必要とされます。手続きは重いものの、閉じているわけではありません。
※このマレーシアの制度についての記述も同レポートに基づくもので、当社はマレーシア当局の一次資料を確認していません。実務でのご判断の際は必ず原典をご確認ください。
EU:日本産の再生材は、EUのカウント対象から外れるのか?
事実今週の地域ローテーション補完はEUである(2巡目の開始)。きっかけは、当社が購読している業界メルマガの8月号ダイジェストが「EU:非EU産rPETが再生材使用目標のカウント対象から除外へ―新実施規則の施行」というトピック見出しを掲げていたことである。見出しだけでは日本産再生材の扱いが判断できないため、一次資料に当たった。
事実該当するとみられるのはCommission Implementing Decision (EU) 2026/1425(2026年6月30日採択、EU官報掲載2026年7月3日)である。使い捨てプラスチック指令 Directive (EU) 2019/904 の第6条・第13条に基づき、容量3L以下のPET飲料ボトルの再生プラスチック含有率について、算定・検証・報告のルールを定めるものである。
事実ここで注意が必要なのは法的根拠である。この実施決定は使い捨てプラスチック指令に基づくもので、PPWR(包装・包装廃棄物規則、Regulation (EU) 2025/40)第7条の再生材含有率義務とは別の枠組みである。両者を混同しないようにしたい。
事実第三国(EU域外)で再生された材料の扱いについて、第1条(1)は「2027年11月21日以降は、OECD決定適用国において再生された使用済プラスチック廃棄物も対象に含める」旨を定めている。その適用にあたっては、規則(EU)2024/1157(廃棄物輸送規則)に基づく欧州委員会の事前評価が前提となる。OECD決定適用国以外の第三国については、EUとの間で環境上適切な管理がEU基準と同等であることを担保する協定・取決めが必要とされている。
分析日本はOECD加盟国であり、通常はOECD決定の適用国に含まれると解される。ただし条文の文言は「OECD決定適用国」であって「OECD加盟国」ではなく、両者が一致することを当社が条文上で確認したわけではない。この前提が成り立つ限りにおいて、日本産材料は「2027年11月21日以降にカウント対象になりうる」経路の側に立つ。「非EU産は一律に除外」という理解は、この実施決定の条文からは導けない。
分析ただし、日本産rPETがすぐにEUのボトル向け含有率にカウントされるという話でもない。押さえるべき条件は3つある。①対象がPET飲料ボトルに限られること、②2027年11月21日より前は域外材が算入されないと読めること、③欧州委員会の事前評価という条件が付くことである。実務的には「早くても2027年11月以降、かつ評価次第」という位置づけになるのではないか。
事実なお、参照したメルマガの見出しと実施決定の条文は、そのままでは重なりません。見出しと条文のどちらも成り立つ読み方があり、たとえば見出しが2027年11月21日までの経過期間の扱いを指している可能性も考えられます。当該メルマガの市況報告本文は当社が購読しておらず確認できていないため、本稿は一次資料である実施決定2026/1425の条文に沿って整理しました。実務でご判断の際は必ず官報原文をご確認ください。
事実地域ローテーション(EU→中国→東南アジア→その他)は2巡目に入った。次回は中国である。
📌 この記事が最も影響する業界ポジション
- 1位:企業の原材料を調達する部門・商社直接影響 — 国産ナフサ指標が前週比+4.05%と反発した一方、四半期基準価格の想定値は7-9月期・10-12月期とも下方向を示している。足元のスポットと先の建値見通しが逆を向いている局面であり、発注タイミングと値決め交渉の材料が変わるため。
- 2位:プラスチックリサイクル業者直接影響 — 中国プライム樹脂が最大で約+11%上昇した一方、再生ペレットは軟調にとどまった。加えて東南アジアの引き合いが改善しており、その理由に価格要因と供給要因の両方が挙げられているため。
- 3位:樹脂メーカー・素材メーカー間接影響 — 7-9月期の基準価格想定値が▲1,900円/kL下方修正され、10-12月期の想定値も新規に示された。建値の説明材料が変わるため。
📎 一次情報・出典
国内
- 大景化学株式会社|ナフサ価格推移表(ページ更新2026-09-04。国産ナフサ価格指標96,202円/kL、為替157.06円/ドル、ナフサ現物863ドル/t、月別通関CIF、Q平均欄=1-3月期65,700/4-6月期118,900円/kL)
- 三協化学株式会社|国産ナフサ価格チャート(ページ更新2026-09-01。四半期基準価格 7-9月期104,800/10-12月期95,900円/kL=いずれも想定値。月別確定値 6月121,981/7月104,331円/kL。凡例と「単純平均ではありません」の注記)
- 新電力ネット|ナフサの価格推移(通関統計/財務省貿易統計の再掲・ページ更新2026-08-07。7月値60,800円/kLは更新日が7月分統計の公表前にあたるため本稿では採用せず)
- 日本容器包装リサイクル協会|落札結果概要(ページ最終更新が令和8年8月31日に変わったが、令和8年度の加重平均70,344円/トン=再商品化の委託単価に変更なし)
- 三菱UFJリサーチ&コンサルティング|今月のグラフ(2026年6月)前年から半減した4月のナフサ輸入量
- FEN|再生樹脂ペレットの価格・相場(掲載時点は2022年4月現在。自社の参考価格であり、本稿では週次の実勢データとして扱っていません)
海外
- Fukutomi Recycling Limited(香港)Steve Wong氏|週次市況レポート “Market Update as of September 4 2026″(当社受信2026-09-07)および “Market update as of 28 August 2026″(同2026-08-31)。本稿の海外の価格・引用はいずれも同レポートに基づき、同社の許諾を得て掲載しています(和訳は当社)
- EUR-Lex|Commission Implementing Decision (EU) 2026/1425 of 30 June 2026(官報掲載2026-07-03。使い捨てプラスチック指令に基づくPET飲料ボトルの再生材含有率の算定・検証・報告ルール)
背景情報
- 当社が購読している業界メルマガの8月号ダイジェスト(2026-09-02受信):「EU:非EU産rPETが再生材使用目標のカウント対象から除外へ―新実施規則の施行」等のトピック見出しを掲載。市況報告の本文は当社が購読しておらず未確認のため、見出し以外の数値は本稿に反映していません。EUの項目のみ上記の一次資料に当たって検証しました
- 大手化学メーカーの技術メルマガ(2026-08受信):カーボンニュートラルの解説が中心で、価格データは含まれません
本記事は2026年9月7日時点の情報です。相場は日々変動しますので、実際の調達判断の際は必ず最新の一次情報をご確認ください。
■確度に関する注記:【海外の価格】中国プライム樹脂の前週比%は当社が算出したもので、原文には%の記載がありません。PET・PSは原文が8月28日の水準を明記していますが、他の品目は「9月4日の値−原文が示した増分」で逆算した値を分母としています。逆算した8月28日水準を8月21日号のベンチマークと突き合わせると、PCについてのみ増減の向きが8月28日号本文の定性記述と合いません。同レポートには発信元自身のベンチマークと第三者アセスメントが併記されており、両者は水準が異なるため系列をまたいだ比較はできません。PVCについては第三者アセスメントが「1か月で約+9.7%」としており、当社算出の週次+10.7%と整合しません。中国プライム樹脂の価格はVAT込みの中国国内価格で、USD/EUR建ての再生材ベンチマークとは通貨・課税・受渡条件が異なります。原油価格も同レポートの単独ソースです。【規制】EUのPIC義務(2026年5月21日〜)およびマレーシアのCOA制度に関する記述は、いずれも同レポートの記述に基づくもので、当社は官報・所管当局の一次資料を確認していません。実施決定(EU)2026/1425については官報テキストを直接確認していますが、解釈は当社によるもので法的助言ではありません。同決定の「OECD決定適用国」とOECD加盟国が一致することは、当社が条文上で確認したものではありません。参照した業界メルマガの見出しと同決定の条文は重ならず、当該メルマガ本文は当社未購読のため差を解消できていません。【スクラップ・再生材】日本からの2026年6月の廃プラ輸出数量(約5,100万kg)は出所が本文に明記されておらず、同レポートの記述のみに基づきます。「東南アジアで欧州材の在庫が尽きつつある」という記述は現地ヒアリングに基づく定性的なもので、輸入統計での裏取りはできていません。インドの510 USD/MTは報告された1件の取引です。【国内】四半期基準価格の想定値がどの月の何を反映して改定されたかは、出典ページに示されておらず当社も特定できていません。国産ナフサ基準価格の正しい算出式も不明で、単純平均でないことが確認できたにとどまります。数量加重平均の仮説は、2026年5月・6月のナフサ月次輸入数量を取得できていないため未検証です。月次通関CIFを掲載する3ページはいずれも財務省貿易統計の再掲であり、独立した情報源ではありません。一致は独立検証を意味しません。当社は財務省の原統計を直接確認できていません。通関CIFがスポットに遅れて反映されるという理解も、遅行幅を検証したものではありません。
本記事は公開情報・受信メルマガを基にした市況の整理であり、個別の取引価格を保証するものではありません。実際の調達・販売価格は取引先・時期・数量により異なります。
海外市況の価格・引用は Fukutomi Recycling Limited(香港)の週次市況レポートに基づき、同社の許諾を得て掲載しています。原典の内容についての責任は同社に、和訳についての責任は当社にあります。
また、EUの実施決定に関する記述は当社が公開されている官報テキストから整理したものであり、法的助言ではありません。輸出入の可否や再生材含有率のカウントについてご判断の際は、必ず官報原文および専門家にご確認ください。

