欧州:2030年の目標は決まっている。決まっていないのは「数え方」のほう

事実欧州委員会は、EU包装・包装廃棄物規則(PPWR)の再生材含有率に関して、3本の法令案の証拠募集(call for evidence=法令案を作る前に、委員会が関係者から情報と意見を集める手続き)を公表している。フィードバック期間はいずれも2026年8月14日〜9月16日である。3本の内訳と種別は次のとおり(本記事執筆時点の欧州委「Have your say」の各イニシアチブページによる)。

法令案 種別 何を決めるか
(a) 再生材含有率の計算・検証ルールの統一
イニシアチブ18753
実施決定
Implementing decision
プラスチック包装の再生材含有率の要件を、EU全体で同じやり方で運用するためのルール。委員会採択は2026年第4四半期を予定
(b) プラスチックリサイクル技術のサステナビリティ基準
イニシアチブ19033
委任決定
Delegated decision
包装に使う再生プラスチックが「できるだけ大きな環境上の便益」を持つようにするための、技術側の基準
(c) EU域外からの再生材の輸入条件
イニシアチブ18752
実施決定
Implementing decision
EU域外で回収・リサイクルされたプラスチックを、EU域内と同等の方法で評価・検証・認証するための方法論的ルール

事実期限の表記について補足しておく。欧州委の各ページは期間の末尾を「16 September 2026(midnight Brussels time)」と記しており、これが16日の始まりを指すのか終わりを指すのかは、この表記だけでは確定できない。日本との時差は7時間(ブリュッセルが夏時間の間)なので、提出を検討する場合は日本時間で9月15日中に済ませておくのが安全である。なお(c)の募集には、既にコロンビアの個人からRecyClassやEN 15343といった既存の認証を挙げる意見が寄せられており、(a)にはスウェーデン環境保護庁やドイツ化学工業協会(VCI)も意見を提出している(いずれも欧州委ページ上の公開フィードバック、2026年9月4日時点)。

報道Packaging Europe(2026年8月下旬)によれば、(a)はPPWR第7条8項が求める実施法令、(b)は同条9項が求める委任法令にあたり、いずれも2026年12月31日までの採択が規則上求められている。委員会は、採択の時点でこれらが「検証可能かつ執行可能」であることを目指すとしている。一方で、ドイツのプラスチック包装協会のMartin Engelmann氏は、この証拠募集によって再生材含有率の要求が「少なくとも数か月」遅れると見込んでいると報じられている。なお欧州委のページ上で(a)の採択予定として示されているのは「2026年第4四半期」であり、12月31日という具体的な期日は上記の報道とPPWR第7条の解説に基づく。

報道PPWR第7条は、2030年1月1日から適用される再生材含有率の最低基準を、用途区分ごとに定めているとされる。同条には、医薬品・医療機器の包装、乳幼児食品の包装、堆肥化性プラスチック、危険物輸送用包装、包装単位の重量の5%未満のプラスチック部材などの適用除外も置かれていると解説されている(出典:ベルギーのコンサルタントRDC Environmentの解説ページ)。なお本記事執筆時点で、区分ごとの具体的な数値目標および除外規定の文言は一次条文で確認できていないため、本文では数値を挙げない。

分析ここで押さえておきたいのは、目標の数字と、その数字の数え方は別物であるという点である。2030年の含有率目標そのものはPPWR第7条に置かれているとされ、主要義務の適用も2026年8月12日から始まっている(タイル04海外トレンド8/14号参照。区分ごとの数値目標の条文は本号では一次確認していない)。しかし「何をもって再生材1トンと数えるのか」「マスバランス方式で割り当てた分をどう扱うのか」「EU域外から入ってきた再生材を認めるのか、認めるとして何を確認するのか」という運用の骨格は、これから決まる。目標だけが先に決まって、計算方法が後から来るという順序は、供給する側にとっては扱いにくい。契約で「再生材○%」と約束しても、その○%の測り方が後で変わりうるためである。

分析とくに(c)の「EU域外からの輸入条件」は、日本から欧州へ再生材や再生材入りの成形品を出す事業者に直接関係する。欧州委がこの法令案の目的を「EU域外で回収・リサイクルされた材料を、EU域内と同等の方法で評価・検証・認証する」と説明していることは、域外材をどう扱うかがこれから決まる段階にあることを意味している。現時点で欧州の取引先に再生材を供給している、あるいは検討している場合は、取引先が採用している認証スキームを確認しておくと、要件が固まったときの手戻りが小さくなると考えられる。実際に(c)の公開フィードバックでもRecyClassやEN 15343といった既存の認証が挙がっており、まったく新しい仕組みが一から作られるというより、既存の認証をどう位置づけるかの議論になる可能性がある。

米国:連邦が「表示」と「マスバランス」の標準づくりに動いた

報道Resource Recycling(2026年9月1日)によれば、米下院エネルギー・商業委員会の商業・製造・貿易小委員会は2026年9月1日、PACK Act(Packaging and Claims Knowledge Act/HR 6832)のマークアップ(法案の逐条審査と修正の手続き)を完了し、同法案を前に進めた。消費者保護に関する十数本の法案を扱う会合の一部として審議されたという。同法案の内容は、容器包装について「リサイクル可能」「堆肥化可能」「再利用可能」という任意の表示を行う場合に、ISO/IEC 17065:2012に基づく第三者認証の取得を求めるもので、連邦取引委員会法(FTC法)を改正して不正確な表示を禁じる。あわせて同じ表示について異なる要件を課す州法・地方法を先占(プリエンプト=連邦法が州法に優先し、州の規制を無効にすること)する規定を置き、成立から18か月以内にFTCが実施ガイダンスを出すこととされる。表示を行うこと自体を義務づけるものではない。

報道同記事によれば、Amcor、Dow、General Mills、Keurig Dr Pepper、Mondelez、Consumer Brands Association、Plastics Industry Association、American Beverage Associationなど40を超える業界関係者が支持を表明している。一方Packaging Dive(2026年9月上旬)は、共同提案者が共和党16名と民主党1名(カリフォルニア州選出のAdam Gray議員)である点、および天然資源防衛協議会(NRDC)などの環境団体が「真の連邦基準になっておらず、パッチワーク(州ごとにばらばらの規制)の問題を解決しない」と批判している点を報じている。次は委員会全体での審議に進み、業界団体AMERIPENは9月中の委員会審議と上院の対応法案の提出を見込んでいるとされるが、10月の休会と11月の中間選挙が日程上の制約になるとも報じられている。

報道同じ小委員会では、Recycled Materials Attribution Act(RMAA/HR 7502、提案者はニューヨーク州選出のNicholas Langworthy議員)も可決された。ケミカルリサイクルを含むリサイクルおよび再生材含有の表示について連邦基準を定めるもので、第三者認証システムと信頼できる証拠に裏付けられる場合にマスバランス方式による帰属を認める内容とされる。

分析この2法案が同じ日に同じ小委員会を通ったことには、意味の重なりがある。PACK Actは「何をリサイクル可能と表示してよいか」を、RMAAは「その再生材をどう数えて自社製品に帰属させてよいか」を扱う。表示と帰属という、証明の入口と出口を同時に連邦のレベルに引き上げようとしていると読める。ただしこの2つは厳密には別の軸である。本号の主題である「再生材だと証明する方法」に正面から当たるのはRMAAのほうで、PACK Actが規律するのは容器包装がリサイクルできるかどうかの表示であり、再生材が何%入っているかの証明ではない。両者を「証明」で一括りにするのは、あくまで整理のための便宜である。先週号で取り上げたカリフォルニア州SB343の執行差止め(2026年7月14日、施行予定日は10月4日。日付の出典は前号8/28号に掲げたResource Recycling 2026-07-15記事および法律事務所の解説)は、この動きの背景でもある。

報道Packaging Diveによれば、業界団体AMERIPENのLynn Dyer氏は、SB343について「そこで何が起きるかまだ分からないし、それは1つの州にすぎない」と述べ、州の司法判断にかかわらず連邦法の必要性は変わらないとの立場を示している。

分析米国向けに再生材や再生材入りの容器包装を供給している日本企業にとっては、ここは見立てを変える材料になりうる。これまでは、カリフォルニア州SB54、オレゴン州RMA、ワシントン州SB5284といった州ごとの制度に個別対応するのが前提だった(各州法の内容と施行時期はタイル02法制度・補助金の個別ページを参照)。連邦の表示法が成立すれば、少なくとも表示については共通のルールに寄る可能性がある。ただし現時点では小委員会を通過しただけであり、成立を前提にした準備は早い。むしろ実務的には、州ごとの対応を作り込みすぎないという判断のほうが現実的だろう。共通して求められるのは、州法であれ連邦法であれ「第三者が検証できる形のデータ」だからである。

分析RMAAがマスバランス方式を認める方向であることは、日本のケミカルリサイクル事業者にとって前向きな材料になりうる。ただし「認める」と「無条件で認める」は違う。前述のとおり第三者認証システムと信頼できる証拠が条件とされており、そうであれば認証の取得と証拠の保全が、そのまま参入条件になると考えられる。この点は、後述する国内のデンカの事例とも重なる。

国内:割当先を広げたデンカ、資本で入ったGX推進機構、押出機で回したキリン・日本製鋼所

事実デンカは2026年8月26日、連結子会社の東洋スチレンで使用済みポリスチレンを原料とする「リフレッシュ ポリスチレン®」の本格供給が開始されたことを受け、ケミカルリサイクル由来のサーキュラー属性を割り当てたスチレン系製品群を順次拡大すると発表した。これにより、従来のポリスチレンに加えて、二軸延伸ポリスチレンシート(BOPS)・食包シート、および連結子会社デンカポリマーが製造する食品容器へも属性の割り当てが可能になる。割り当てはISCC PLUS認証のマスバランス方式に基づく。同社のポリスチレン・ケミカルリサイクルプラントは千葉工場(千葉県市原市)内にあり、2024年3月19日竣工、投資額約40億円、処理能力約3,000トン/年である。詳細はタイル04国内トレンド9/2号を参照。

事実同じ週、GX推進機構は2026年8月24日、JEPLANに対する出資を決定したと公表した。出資額は機構・JEPLANいずれの公表資料にも記載がなく非公表である。機構の資料は本案件を「JEPLANによる非食品用途原料の活用拡大やCRプロセスの高度化を支援するもの」と位置づけ、要旨では「我が国の自律性を高める危機管理投資」という産業基盤の観点も示している。JEPLANの北九州響灘工場は年産1,000トンの準商用設備である。

事実技術面では、キリンホールディングスと日本製鋼所(JSW)が2026年9月2日、二軸混練押出機「TEX®シリーズ」を用いた実機設備でPETアルカリ解重合技術の実証に成功したと発表した。成果として挙げられているのは、解重合率95%以上、生産性250kg/時間以上での安定運転、量産設備の設計に必要な知見の取得の3点である。両社はこれを、二軸混練押出機を用いたアルカリ解重合法について「量産プロセスを想定した国内初の実証例」と位置づけているが、この「国内初」は、新聞・企業情報データベース(日経テレコン、G-Search、Dialog、LexisNexis)による調査(2026年7月13日時点)に基づくという注記付きであり、押出機を反応の場に使う発想そのものは、同発表のJSW側の記述によれば同社が使用済みアクリル樹脂のモノマー化で既に確立しているとされる。今後は非食品用途PETを含む幅広い原料への適用を検証するとしている。詳細はタイル04国内トレンド9/4号を参照。

分析この3件は、規模も主体もばらばらだが、向いている方向は揃っている。いずれも「使用済みの材料が到達できる出口の格を上げる」話である。デンカは使用済みポリスチレン由来の環境価値を食品容器まで割り当てられるようにした。GX推進機構が支援するJEPLANは、非食品用途の廃PETを飲料ボトルへ戻すことを狙う。キリン・日本製鋼所は、非食品用途PETを含む幅広い原料への適用を今後の検証課題に挙げている(後二者は狙い・検証段階であり、達成された事実ではない)。出口が上がれば、そこへ入れる材料の受け入れ基準も上がる。単一樹脂で、異物と着色の少ない材料の価値が相対的に高まる方向だと考えられる。裏を返せば、樹脂を分けきる工程と異物を落とす工程が、これまで以上に値段に直結するということでもある(光学選別機の解説はこちら、再生樹脂ペレットの価格・相場はこちら)。

分析ここで、マスバランス方式一般について押さえておきたい点がある。この方式は、その製品が物理的に再生材でできていることを意味しない。帳簿の上で環境価値を割り当てる仕組みである。前節で触れた米国のRMAAも、欧州委が証拠募集にかけている計算・検証方法も、突き詰めればこの「帳簿上の割当をどこまで、どういう条件で認めるか」という論点に行き着く。日本企業がマスバランスで再生材を訴求する場合、国内では通っても輸出先で通るとは限らない段階にある。取引先への説明では、物理的な含有率と割り当てられた環境価値を分けて示しておいたほうが安全だろう。

事実制度・資金の面では、先週号で取り上げた2つの補助公募が引き続き受付中である。実証補助(脱炭素型循環経済システム構築促進事業のうちプラスチック等資源循環システム構築実証事業)の三次公募は2026年9月15日16:00締切、設備補助(高度化設備導入等促進事業)の追加公募は2026年9月25日12:00必着である。いずれもjGrants(国の補助金の電子申請システム)による応募で、採択件数・採択率は本記事執筆時点で公表されていない(制度として非公表と決まっているわけではなく、現時点で確認できないという意味である)。

報道また、8月21日に再開した中央環境審議会・産業構造審議会の合同会議で設置された3つのタスクフォース(①持続可能設計 ②徹底回収・サプライチェーン最適化 ③再生プラ・バイオプラの価値創出)について、ESG Journal(2026年8月)は、各タスクフォースが2026年度内に2回開催され、2027年3月頃の合同会議で成果を集約する予定だと報じている。第1回の開催日は9月15日と9月29日に分けて予定されている(前号8/28号参照)。

本号で取り上げた設備投資2件は「食品グレード」を狙う。ただし同じ国で閉鎖も起きている

報道ドイツでは、RCSグループが2026年8月28日、ノルトライン=ヴェストファーレン州ヴェルネで7,500万ユーロの新工場の起工式を行った。敷地は6.5ヘクタール、処理対象はHDPEのキャップ類・PS・PETトレー・PET飲料ボトルで、年約10万トンを見込む。とくに重点を置くのが、食品包装にも使えるHDPE再生材である。完成は2027年末から2028年初め、新規雇用は約60名。公的補助の有無は各報道に記載がなく不明である。詳細はタイル04海外トレンド9/3号を参照。

報道同じドイツで、ヴェオリアはザクセン=アンハルト州ベルンブルクのPET・HDPE再生2社(MultiPet、Multiport、合計の年間処理能力は約7万トン、従業員122名)を2025年末で閉鎖したと報じられている(letsrecycle.com 2025年8月8日。ヴェオリアの公式発表は本記事執筆時点で未確認)。理由は「廃プラの処理コストが高く、バージン材の価格が低いままであるため、採算が根本的に損なわれた」ことだとされる。またS&P Globalの記録として、再生HDPEペレットはバージンHDPEに対し478ユーロ/トンのプレミアム(この数値の時点は出典記事に明示がなく特定できていない)、2025年4月時点の食品グレード再生PETのスポット価格はバージン相当品より580ポンド/トン超高いとされ、英国のプラスチック包装税(2025年に223ポンド/トン)はこの価格差の半分にも満たないと報じられている(いずれもChemistry World 2026年1月8日記事が引用した数値で、時点が本号の市況とは異なる)。

報道北米でも同じ方向の投資がある。カナダのEFS-plasticsはアルバータ州レスブリッジ工場の1,200万米ドルの拡張を完了した(2026年8月31日報道)。HDPE・PP・PETを1本の洗浄ラインで扱い、PETフレークの能力は2026年秋に立ち上がる見込みで、3樹脂すべてで食品グレードの再生材(PCR)を作れるようになるのは2027年からを想定している。これはチャレンジテスト(汚染物質をわざと材料に染み込ませ、洗浄工程でどこまで除去できるかを確かめる試験)を実施中で、米FDAのLNO(無異議書簡=FDAがその工程での食品接触用途に異議を唱えない旨を示す文書)取得に向けた申請を準備している段階での見込みである。設備・建設のコストは、計画時から据付時までの間にインフレの影響で15〜25%上振れしたという。詳細はタイル04海外トレンド9/1号を参照。

報道対照的に、軟質フィルムの出口を調べた調査もある。環境NPOのDelterraとコンサルタントのEunomiaは、家庭系ポリエチレンフィルム再生材を吸収しうる用途を年約80万米トン(ショートトン。メートル法では約73万トン)と試算した(2026年8月下旬公表、資金はアムコアとクラフト・ハインツが拠出。いずれも軟質包装の供給側・使用側であり、潜在需要が大きいと示すことに利害を持つ立場である点は割り引いて読みたい)。40を超える用途を評価して8用途に絞り込んだ結果、そのうち約60万米トン(全体の75%)は3用途(工業用ライナー、不透水の建築用膜、濃色のごみ袋)に集中するという。調査は同時に、これが潜在需要の試算であって既に購入されている量ではないことを明記している。なお「北米でPEフィルムを機械的にリサイクルできる再生事業者は30社に満たず、そのうち低グレードの家庭系材料を扱えるのは半数未満」という市場構造の数値は、本記事執筆時点でPolyesterTime1媒体のみで確認したものであり、参考値として扱う。

事実なお、食品接触用途の再生プラスチックには、既存の確認・認可の仕組みがある。EUでは規則(EU)2022/1616により、認可された工程で作られたものでなければ市場に出せない。米国ではFDAのLNO(無異議書簡)を取るのが一般的な実務である。日本では食品衛生法に基づき、器具・容器包装への再生プラスチックの使用について個別の確認を経る扱いとされている(日本と米国の運用の詳細は本号では一次確認しておらず、EUのみEUR-Lexの条文を出典に挙げている)。

分析これら3地域の仕組みは性格が違うものの、いずれも「認可・確認を経なければ食品用途には出せない」という点では共通しており、証明の枠組みとしては既に動いているものだと言える。投資が食品グレードに向かうのは、この既存の枠組みが、そのまま値段のつく理由になっているからだと読める。認可を取るのに時間と費用がかかる出口は、参入が限られるぶん価格を維持しやすい。ただし、より直接的には、食品・飲料ブランドの再生材調達目標が需要側で先行していることの反映だという説明もできる。どちらか一方に断定する材料は本号にはない。いずれにせよ、今週欧州委が証拠募集にかけた「含有率の数え方」はこれから決まるため、食品グレードで作ったものが含有率の計算上どう評価されるかは別の論点として残る。今週動いたのは、食品接触の枠組みそのものではなく、それとは別に走る「再生材含有率の計算方法」と「リサイクル可能表示のルール」のほうである。

分析ただし、この1年のうちに、同じドイツで投資と閉鎖の両方が起きていることは、「食品グレードを狙えば採算が合う」という単純な話ではないことを示している(RCSの起工は2026年8月28日、ヴェオリアの閉鎖は2025年末で、約9か月の開きがある。市況の前提も同じではない点は割り引いて読みたい)。ヴェオリアが挙げた閉鎖理由は、処理コストの高さとバージン材の低価格だった。日本でも、樹脂の建値の土台になる国産ナフサ(原油から作られる石油化学製品の基礎原料)の基準価格が下がっている。7-9月期の想定値は106,700円/kL(キロリットル)で、4-6月期の118,900円/kLから-10.3%である(市況データ週次レポート8/31号)。ナフサは樹脂そのものの価格ではなく原料の指標であり、ドイツの樹脂価格と直接比較できるものではないが、バージン材のコストが下がる方向にあるという点では同じ向きを示している。バージン材が安い局面では、証明で付けた価値がコスト差を埋めきれるかどうかが、より厳しく問われる。設備計画を検討する場合は、バージン材が安いまま推移した場合の感応度を計画に一行入れておきたい。

分析軟質側については、硬質の話をそのまま当てはめないほうがよい。Delterra/Eunomiaの調査が示す3用途(工業用ライナー、建築用の不透水膜、濃色のごみ袋)は、いずれも透明度や色の均一性を強く問われない。食品グレードという「上」を狙う戦略が成り立つのは、いまのところ硬質のほうである。国内でフィルム再生材の出口を探す場合も、外観要求の低い工業・建設・農業側から当たりをつけるほうが現実的だと考えられる。

今後の締切・節目の一覧

事実本号で取り上げた期限を、日付順にまとめておく。いずれも本記事執筆時点(2026年9月4日)の情報であり、変更の可能性がある。

期限・時期 何が締まるか/何が起きるか 関係するのは
2026-09-15 16:00 環境省 実証補助(脱炭素型循環経済システム構築促進事業のうちプラスチック等資源循環システム構築実証事業)三次公募の締切 リサイクル困難なプラの実証テーマを持つ事業者
2026-09-16
欧州委表記は「midnight Brussels time」。時差7時間のため日本時間で9/15中の提出が安全
欧州委員会のPPWR再生材含有率に関する証拠募集(3法令案とも同じ期間)のフィードバック期限 欧州向けに容器包装・成形品・再生材を出荷している事業者
2026-09-15 / 09-29 プラ資源循環の3タスクフォース 第1回(2日に分けて開催予定) 容器包装の設計・回収・再生材の価値づくりに関わる事業者
2026-09-25 12:00必着 環境省 設備補助(高度化設備導入等促進事業)追加公募の締切 選別・洗浄・再資源化の設備導入を計画している事業者
2026-10-04 米カリフォルニア州SB343の施行予定日(執行は差止め中で、施行時期は未定) 北米向けにリサイクル可能性を表示している事業者
2026年第4四半期
規則上の期限は12/31とされる
EUの(a)計算・検証ルールの実施決定の委員会採択予定((b)技術基準の委任決定も同時期の見込み。業界からは遅れを見込む声) 2030年の含有率目標を前提に調達契約を組んでいる事業者
2027年 カナダEFS-plasticsが3樹脂での食品グレードPCR供給開始を想定(FDAのLNO取得が前提) 北米の再生材調達を検討している事業者
2027年末〜2028年初 独RCSのヴェルネ新拠点(年約10万トン)の完成予定 欧州の再生材需給を見ている事業者

まとめ:ルールが書かれている最中に、投資判断をする局面にある

分析今週の材料を一本の線でつなぐなら、「再生材だと証明する方法」が、欧州と米国で書き換えられようとしているということになる。欧州は含有率の計算・検証ルールと、リサイクル技術の基準と、域外材の輸入条件を。米国は表示の第三者認証と、マスバランスによる帰属を。目標の数字や制度の枠組みは既に出そろいつつあるが、その内側の「数え方」と「示し方」はまだ固まっていない。日本については、この週に公権力がルールを書き換えた動きは見当たらない。そのかわり、デンカのマスバランス拡大のように、同じ論点が既に企業の実務のレベルで表面化している。公的なルールづくり(欧米)と、企業の運用(日本)という層の違いは、混ぜずに見ておきたい。

分析ここで、この見立てが成り立たない可能性も挙げておきたい。この3つが連動していると言える根拠は、実のところ乏しい。欧州の証拠募集は、PPWR第7条8項・9項が2026年内の法令採択を求めていることから逆算された事務日程である。米下院のマークアップは、10月の休会と11月の中間選挙を前に消費者保護関連法案をまとめて処理するという議会の会期上の都合による。デンカの発表は、東洋スチレンでの本格供給開始という自社の設備事情に紐づく。三者に共通する外的な引き金は、本号の材料からは見出せない。「同じ週に起きた」という事実は、週ごとに材料を集めて記事にするという本レポートの作り方が生む見かけ上の同時性にすぎない可能性がある。読者としては、3つを一つの潮流として扱うより、それぞれ別の時計で動く事象が、たまたま同じ論点に触れていると受け止めたほうが、判断を誤りにくい。本号がこの3つを並べているのは、因果関係を主張するためではなく、同じ論点に備えるなら準備の中身は共通する、という実務上の理由からである。

分析この状況は、投資判断の立場からは扱いにくい。本号で取り上げた設備投資2件は、証明の要求が最も厳しい食品グレードを狙っているが、含有率をどう数えるかというルールのほうは、まだ書かれている最中だからである。しかもバージン材は安くなっており、コスト差を埋める材料は「証明された環境価値」以外に多くない。ヴェオリアの閉鎖理由が示すとおり、そこが崩れると事業の前提が直接動く。

分析とはいえ、待っていれば固まるという性格の話でもない。欧州の法令採択は2026年第4四半期の予定だが、業界からは遅れを見込む声が出ている。米国の2法案は小委員会を通っただけで、中間選挙を挟む。国内の補助金締切は9月15日と9月25日であり、こちらは待ってくれない。ルールが固まるのを待つのではなく、どのルールに落ち着いても使えるものから先に整えるという順序が、いまは合理的だと考えられる。

分析具体的な出発点は3つある。第一に、自社が扱う材料の出所・数量・樹脂別内訳を記録する仕組みを整えること。EUの計算・検証ルールがどう決まっても、米国の帰属ルールがどう決まっても、元になる実測データは共通で要る。第二に、マスバランス方式を使う場合は、物理的な含有率と割り当てられた環境価値を分けて説明できるようにしておくこと。欧州の(a)、米国のRMAA、そして国内の企業実務のいずれでも、この区別が論点になっている。第三に、9月15日・9月25日の補助金締切に間に合う計画があるかを、いま棚卸ししておくこと。制度の議論が動いている最中でも、資金の窓は別の時計で動いている。