本記事では、一次情報で確認できた事実に 事実、報道が伝えている内容に 報道、筆者の解釈・推測に 分析 を付けています。英語・イタリア語資料からの引用はいずれも拙訳です。

先に、用語を7つだけ

本記事の中心にある言葉を、先に短く説明しておきたい。

  • PPWR──EUの容器包装・容器包装廃棄物規則(規則(EU) 2025/40)。事実欧州委員会の発表によれば2026年8月12日から適用が始まっている。第7条がプラスチック包装の再生材含有率の最低基準を定める条文である。
  • 実施法令(implementing act)と委任法令(delegated act)──いずれも本体の規則を受けて委員会が作る下位の法令だが、できることが違う。実施法令は、加盟国の代表が入る委員会手続を経て採択され、本体の規則を統一的に実施するための条件を定める。本体の規則そのものを書き換えることはできない。これに対し委任法令は、本体の規則の本質的でない部分を補い、また改正することができる。事実実際、PPWR第7条12項と13項は「本規則を改正するため(to amend this Regulation)」委任法令を採択する権限を委員会に与えている。今回の共同声明が働きかけている先は、このうち実施法令のほうである。
  • ミラークローズ(mirror clause)──域外から入ってくるものに、域内と同等の要件を求める仕組みの通称。今回の文脈では、第三国で回収・再生された材料をEUの含有率目標に算入してよいかを判断する仕組みを指す。判断の基準は、EUと同等の規律がそこに適用されているかどうかである。
  • ポストコンシューマー廃棄物──最終使用者の手を離れて排出された廃棄物。工場から出る端材(プレコンシューマー/消費前廃材)とは区別される。PPWR第7条の含有率は、ポストコンシューマー由来のものだけを数える。
  • End-of-Waste(廃棄物の終了)──廃棄物として扱われていたものが、一定の基準を満たすことで「廃棄物ではなく製品・原料」として扱われるようになる考え方。基準が国ごとに違うと、越境取引のたびに手続が増える。
  • 循環的材料利用率(CMU/circular material use rate)──ある経済圏で使われる材料のうち、再生材が占める割合を示す指標。EU統計局の指標で、EUは2030年に24%という目標を置いている。
  • オフテイク契約──生産される材料を、あらかじめ決めた数量・期間で買い取る長期の引取契約。設備投資の資金調達では、この契約の有無が採算の前提になることが多い。

共同声明は、誰が、何を求めたのか?

出したのはどの3団体か?

事実声明はブリュッセル発、日付は2026年9月2日。署名したのはFEAD(欧州廃棄物管理協会)、Plastics Recyclers Europe(PRE)、Recycling Europe(旧EuRIC)の3団体である。

事実PDF末尾の紹介によれば、FEADは21の全国協会を通じて3,000社超を代表する。50万人超の地域雇用と、年50億ユーロの投資を担うとしている。PREは欧州のプラスチックリサイクラーの声を代表する団体である。同PDFは業界の規模を売上91億ユーロ超、設備能力1,320万トン、約850拠点、従業員3万人超と記載している。Recycling Europeは24のEU・EFTA諸国の80の全国連盟・企業からなる。

事実なお「Recycling Europe」は新しい団体ではない。EuRIC(欧州リサイクル産業連盟)が2025年9月下旬に改称したものである(同団体の公表資料による)。旧名で記憶している読者のために付記しておく。

3つの要求は、それぞれ何か?

事実声明は冒頭で、欧州のプラスチックリサイクル産業が置かれた状況を声明側の認識として次のように整理している。工場閉鎖の増加、需要の減少、国際的な競争条件の不均衡、そして再生材含有率の検証可能性が必ずしも確認できない材料の輸入増である。分析これらはいずれも署名3団体の認識であり、本記事では独立に検証していない。検証可能性の確保という論点自体は、域内・域外を問わず業界共通の課題として整理できるものである。事実そのうえで声明は、第4四半期に見込まれるミラークローズの実施法令に、欧州優先(European prioritisation)を入れるべきだとする。示されているのは次の3原則である。

共同声明が求めている3原則の要点(2026-09-02。表の整理は本記事による。全文は共同声明PDF(全2ページ)を参照)
要求 対象 内容
①「Made in Europe」の再生材 EUで製造または充填される包装 含有率目標への適合は、欧州で回収・リサイクルされたポストコンシューマー廃棄物由来の再生プラに依拠すべきとする。ここでいう「欧州」は脚注でEU27+英国+EFTA(アイスランド・リヒテンシュタイン・ノルウェー・スイス)と定義されている
②強固なミラー措置 EU域外で製造・充填される包装 EU市場に置かれる場合、再生プラが目標に算入されるのはEUと同等の要件・基準への適合が立証できるとき、または欧州産再生材を使うときに限るべきとする。同等性は二層とする。(A)国別評価=①EUのルールに沿った環境上適正な廃棄物管理を保証でき、かつ②同等の循環経済措置を有する第三国のみを対象とする(評価主体は欧州委員会)。(B)施設別検証=認可された国に所在する認証済み施設のみを対象とし、独立第三者認証は有効期間1年とする。廃棄物船積規則(廃棄物の越境移動を規律するEUの規則。輸出先の受入体制を国単位で審査する仕組みを持つ)のアプローチに倣うとしている
③執行・市場監視・透明性 バリューチェーン全体 統一された検証手続を実施法令で定め、加盟国は輸入包装への実効的な管理と抑止力のある統一制裁を導入すべきとする。あわせて、ポストコンシューマー廃棄物と再生プラの出所を各段階で検証できるトレーサビリティの確保を求め、その手段として管理の連鎖モデルの活用も選択肢に挙げている(原文は “potentially via a chain of custody model”)。適切な文書化と独立第三者検証が執行を支えるべきだともしている

事実要求①には根拠が添えられている。使い捨てプラスチック指令(SUPD)の実施決定 (EU) 2026/1425 の下で欧州優先のアプローチが加盟国に広く採用されている、という説明である。声明はそれをPPWRの実施枠組みで恒久的に拡張すべきだとする。

その根拠とされた先行法令は、実際には何を書いているのか?

分析この実施決定は、本サイトが9月5日の記事で扱ったものと同じである。使い捨て飲料ボトルの再生材含有率の計算・検証・報告のルールを定めた法令だ。声明が要求①の唯一の根拠に挙げているため、条文本文を確認した。結論から言うと、この法令は地理で締める前例とは読みにくい。

事実実施決定 (EU) 2026/1425 第1条1号(拙訳・要旨)──「再生プラスチック」とは、リサイクル前はポストコンシューマープラスチック廃棄物であり、域内でリサイクル(選別を含む)により製造されたプラスチックをいう。2027年11月21日以降は、次のいずれかでリサイクル(選別を含む)されたポストコンシューマープラスチック廃棄物も含むものとする。(a) OECD理事会決定が適用される第三国。ただし規則(EU) 2024/1157 第45条5項・6項に基づく評価と決定において、当該国がプラスチック廃棄物の環境上適正な管理の要件を満たさないと結論された場合を除く。(b) 再生プラスチックが、人の健康と環境保護に関するEU基準と同等の方法で各施設において処理されたポストコンシューマープラスチック廃棄物から得られることを確保する協定・取決めをEUと締結した第三国。

分析つまり、この先行法令は域外を恒久的に締め出すものではない。2027年11月21日という日付を置いたうえで、OECD理事会決定が適用される国と、EUと協定を結んだ国に開く設計になっている。前文(第18項)はその理由も説明しており、OECD適用国の廃棄物管理の水準とインフラの能力に差があること、および廃プラの貿易フローへの影響が不確実であることを挙げている。時間で区切ってはいるが、向きは同等性である。

事実そして、日本はOECD加盟国である。分析この先行法令の枠組みで言えば、日本で再生された材料は2027年11月21日以降、(欧州委員会の評価で要件を満たさないと判断されない限り)使い捨て飲料ボトルの目標に算入されうる立場にある。これはPPWR第7条の実施法令の話ではないが、EUが域外材料をどう扱ってきたかを知るうえで、日本の事業者が最初に押さえるべき事実だと考えている。共同声明が同じ法令を「欧州優先の前例」として挙げていることとは、読みの向きが異なる。声明の説明は声明側のものであり、本記事は条文本文を採った。

PPWR第7条の条文は、実際には域外材料をどう扱っているのか?

条文は「同等性」で扉を開けている

分析ここが本記事でいちばん確かめておきたかった点である。声明の見出しだけを読むと「EUは再生材を欧州産に限定しようとしている」と受け取れるが、規則の本文はそう書いていない。EUR-Lexで第7条の条文を確認した。

事実第7条3項(拙訳・要旨)──本条の適用上、再生材は次のポストコンシューマープラスチック廃棄物から回収されたものでなければならない。(a) 本規則または指令2008/98/EC・指令(EU) 2019/904を国内法化した規則に従って域内で回収されたもの、または第三国において、高品質リサイクルを促進するための分別収集の基準であって本規則および上記各指令に相当するものに従って回収されたもの。かつ (b) 該当する場合には、指令2010/75/EUが適用される域内の施設でリサイクルされたもの、または、リサイクル作業に伴う大気・水・土壌への排出の防止・低減に関する規則が適用され、それが同指令に基づく排出限界値・環境性能水準と同等である第三国の施設でリサイクルされたもの。

事実同じ構造は他の項にもある。第9項は、リサイクル技術のサステナビリティ基準を委任法令で定めるとする。そのうえで再生材は、(a)当該基準を満たす技術を用いる域内の施設、または(b)当該委任法令の基準と同等の基準に従う技術を用いる第三国の施設でリサイクルされたものとする。

ただし、条文は手続を二本立てにしている

事実ここは正確に押さえておきたい。計算・検証の方法論を定める第8項は、その対象を明示的に限定している。原文は「域内で(within the Union)リサイクルおよび回収されたポストコンシューマープラスチック廃棄物から回収された再生材の割合」の計算・検証の方法論を、2026年12月31日までに実施法令で定める、という書き方である。同項が言及する第三者監査の対象も「EU域内の再生材製造者」とされている。

事実そして第10項が、まさに今回の実施法令の根拠である。「第三国で回収またはリサイクルされた場合に適用される規則の同等性を、第三者監査を含めて評価・検証・認証するための方法論」を、2026年12月31日までに実施法令で定めると書かれている。評価で考慮するものも列挙されている。環境と人の健康の保護の水準、環境上適正な方法でリサイクルが行われることを担保する基準、そして資源効率や品質基準といった高品質リサイクルの基準である。

だとすると、声明の要求はどこに位置するのか?

分析つまり条文は、域外材料を認めたうえで、手続を二本立てにしている。域内で回収・再生されたものは第8項の計算・検証の方法論に、域外で回収・再生されたものは第10項の同等性の方法論に、それぞれ振り分けられる。要求①は、この二本立てのうち、EUで製造・充填される包装については域内側の経路に一本化せよ、という提案として読める。第8項の「域内で」という文言は、その主張の足がかりになりうる。

分析整理するとこうなる。要求②と③は、第10項が委員会に委ねた「同等性の評価・検証・認証の方法論」の中身の提案である。二層構造にするか、認証の有効期間を1年にするか、統一制裁を求めるかは、まさにこれから方法論として決める部分にあたる。声明が意見募集の期間中に出てきたのは自然な動きだといえる。

分析これに対して要求①は、性質が違う。「EUで製造・充填される包装については欧州産に依拠させよ」というのは、同等性の判定方法の話ではない。同等であっても域外材は使えない、という地理的な線引きである。第7条3項が「または第三国において…」と明示的に道を開けている以上、これは条文の説明ではない。条文が開けた扉を下位の法令で狭めてほしいという提案として読むのが素直だろう。実施法令は基本法令の本質的要素を変更できないのが原則である。どこまで書き込めるかは法的な論点として残る。ここは本記事の読み取りであり、法律上の助言ではない。実際にどう扱われるかは、採択される実施決定の文言と、その後の解釈を待つほかない。

事実あわせて、声明を一方的な排除論として読まないための記述も引用しておきたい。声明の結語は「PPWRの再生材含有率目標がその環境上・産業上の目的を果たせるのは、欧州で製造された、またはEUで適用されるものと同等の基準の下で製造された高品質の再生プラスチックへの真の需要を生み出す場合に限られる」という形で締めくくられている。要求②にも「同等性を立証できるとき、または欧州産再生材を使うとき」という並列が置かれている。分析要求①の地理的限定はEU域内で製造・充填される包装に限った話であり、声明全体としては同等性ルートを否定していない。

分析とはいえ「条文が開いているから安心」と読むのも早い。同等性の扉は開いているが、そこを通る手順がまだ存在しない。第10項の方法論はこれから作られる。日本の分別収集制度や事業所の排出規制が「同等」と評価されるかどうかは、方法論の粒度次第で結論が変わりうる。扉が開いていることと、通れることは別である。

意見募集は、いま何が起きている場なのか?

事実欧州委員会のHave your sayに掲載されているイニシアチブ18752は、表題を「Packaging and packaging waste – conditions for importing recycled materials into the EU for use in packaging(容器包装・容器包装廃棄物──包装に用いる再生材をEUへ輸入する際の条件)」とする。要旨には「本法令は、EU域外の国で回収またはリサイクルされたプラスチック材料が、EUで当該材料について整備されている制度と同等の方法で評価・検証・認証されることを確保するための方法論的規則を定める」と書かれている(拙訳)。種別は実施決定、担当委員会はC37000(委員会内部の管理コード)、文書番号はAres(2026)7896043(4ページ)。意見募集期間は2026年8月14日から9月16日まで、委員会の採択予定は2026年第4四半期である。

すでに集まっている意見は、どちらを向いているのか?

事実2026年9月8日時点で、このイニシアチブには12件のフィードバックが掲載されている。本記事では12件すべてを確認した。内訳は、事業者団体1(ベルギー)、企業2(いずれも英国)、NGO・地域振興機関1(オーストリア)、研究機関1(ベルギー)、EU市民5(ドイツ3・ベルギー1・スペイン1)、EU域外市民2(コロンビア・インドネシア)である。

事実主な内容は次のとおりである。

  • FECC(欧州化学品流通業の団体、9月7日)──輸入再生材にEUと同等の条件を課すという目的そのものは支持したうえで、国際サプライチェーン、既存の認証制度の承認、中小企業にとって実行可能な要件に配慮した「比例的でリスクベースの、実行可能な検証枠組み」を求めている。
  • Centexbel-VKC(ベルギーの研究機関、8月18日)──域外の再生材はRecyclass、Polycert Europe、GRSといったEU認定の制度に従って認証されるべきだとする。
  • Rubies Masquerade(英国の企業、8月18日)──欧州のブランドオーナーや輸入者は、再生事業者から直接ではなくアジアの成形加工事業者を通じて完成した包装を調達しているため、数階層上流の可視性が限られると指摘する。既存の認証・管理の連鎖スキームを承認し、ブランドオーナーが各自で同じ再生事業者を監査する事態を避けるべきだとしている。
  • ecoplus(オーストリア、8月25日)──域外のプラスチック再生材を承認するための、強固で追跡可能な枠組みを作るという委員会の目的を歓迎するとしている。
  • ドイツの輸入商社の立場からの投稿(8月27日)──情報収集の目的は歓迎しつつ、第7条8〜10項の措置は追加の情報・文書化の負担が大きいとして厳しく評価している。
  • コロンビア(8月31日)・インドネシア(8月18日)からの投稿──前者はRecyclassやEN 15343といった既存の認証・規格を挙げ、後者は東南アジアの回収インフラの立場から、域外での回収・選別・リサイクルを検証する統一ルールを歓迎するとしている。

事実★12件のうち、「欧州産に限る」という地理的な限定を求めるものは1件もない。大勢は、同等性という枠組みを前提としたうえで、既存の認証制度を使うことと、検証の負担を実行可能な水準に収めることを求めるものである。分析共同声明の要求①は、現時点で公開されている意見の場では、まだ支持の広がりを見せていない。もっとも意見募集は9月16日まで続き、団体からの本格的な提出はしばしば締切間際に集中する。この観察は現時点のものである。なお日本の団体・企業からの投稿は、この12件の中には見当たらなかった。

分析本サイトは9月4日の業界レポートで、この意見募集を含む3本の法令案の存在を既に整理している。含有率の計算・検証、リサイクル技術のサステナビリティ基準、域外材料の同等性の3本である。今回あらためて取り上げるのは、段階が一つ進んだからだ。「募集が始まった」段階から、「業界が具体的に何を書き込ませたいかを表明した」段階へ移っている。制度の議論では、法令案の存在よりも、そこに誰がどの文言を入れようとしているかのほうが実務に効くことが多い。

チェルノッビオの調査は、この要求に何を与えるのか?

何が発表されたのか?

報道イタリア・チェルノッビオのヴィラ・デステで、第52回Forum TEHA(旧アンブロゼッティ・フォーラム)が9月4日から6日まで開かれた。そこでTEHA GroupとCONAI(イタリア包装国立コンソーシアム)の共同調査が発表されている。題名は「Una nuova politica industriale europea per l’Economia Circolare(循環経済のための新しい欧州産業政策)」である。イタリアのEco dalle Città(9月7日)とFormiche.net(同)、およびPolyesterTime(9月8日)が内容を報じている。

TEHA-CONAI調査の主な数値(報道による。原典レポートには到達していない)
項目 数値
欧州のリサイクル分野の年間経済効果 5,550億ユーロ(Formiche.netは「5,500億ユーロ超」と概数で記載)
付加価値 2,220億ユーロ(同じくFormiche.netは「2,200億ユーロ」)
雇用 300万人超
二次原料の利用による追加売上 主要製造サプライチェーンで3,250億ユーロ
包装の回収・選別・リサイクルへの投資効率 1ユーロあたり1.66ユーロの経済・環境・社会的便益
循環的材料利用率(CMU) 2024年 12.2%/2030年の拘束目標 24%(6年で約96.7%の伸びが必要)
プラスチックリサイクルの設備能力 年1,350万トン。うち3年間で約100万トンを喪失(理由として挙げられているのは「産業側の需要の弱さと、安価なバージンポリマーとの厳しい競争」)
再生プラスチック原料の価格 2022年から2024年にかけて32%下落(1トンあたり472ユーロ→321ユーロ)。同期間のプラスチックリサイクル率は約40%で横ばい
二次原料の輸入 欧州の二次原料の輸入の40%超がEU域外に由来する。一方でEUは、分別収集された未処理の廃棄物については純輸出国であり続けている
End-of-Waste基準の不統一による摩擦コスト 年1億2,000万ユーロ

数値の食い違いと出所について。上表の数値はいずれもPolyesterTime(2026年9月8日)の記事を出所とし、経済効果・付加価値と循環的材料利用率はFormiche.net・Eco dalle Città(いずれも9月7日)でも確認した。設備能力について、本調査は年1,350万トン、同じ週の共同声明でPREは1,320万トンとしている。基準年・対象範囲(樹脂の種類や国の範囲)が両資料から特定できないため、どちらが正しいかは本記事では判断していない。

報道同調査は政策の優先順位として①加盟国間でEnd-of-Waste規則を標準化すること ②義務的な再生材含有率クオータと長期の産業オフテイク契約を導入すること ③移行金融と税制優遇を配置することを挙げる。また2026〜2027年に予定される4つの施策が、二次原料のサプライチェーンに直接影響するとしている。挙げられているのはCircular Economy Act、European Products Act、Critical Raw Materials Centre、公共調達改革の4本である。Formiche.netによれば、フォーラムではCONAI会長のイニャツィオ・カプアーノ氏や、環境・水資源・競争力ある循環経済を担当する欧州委員のイェシカ・ロスヴァル氏らが発言している。

なぜ、この調査を共同声明と並べて読むのか?

分析二つは別々の主体による別々の文書だが、言っていることの向きは同じである。共同声明は「欧州のリサイクル産業は前例のない危機にある」と書く。一方の調査は、リサイクルを環境サービスではなく欧州の産業インフラとして位置づける。どちらも、リサイクルを環境政策の枠から産業政策(industrial policy)の枠へ移し替えようとしている。そして産業政策の枠に入れば、当然のように出てくるのが需要側への介入である。調査が挙げる政策優先の②が「義務的な再生材含有率クオータと長期オフテイク契約」であることは、その典型といえる。

分析共同声明の要求①は、この需要側介入をさらに一段進めたものと読める。需要を法律で作る(含有率目標)ところまではPPWRで済んでいる。次に問われるのは、その需要を誰が満たせるかである。「欧州産に限る」は、作られた需要の供給者を地理で指定する提案にほかならない。CMUが12.2%で足踏みし、設備能力が3年で100万トン失われたという数字は、この提案に政治的な説得力を与える材料になる。

ただし、欧州で起きているのは供給不足ではない

分析ここは誤読しやすいので、はっきり書いておきたい。能力が失われていると聞くと「欧州は再生材が足りない」と読みたくなる。報道だが調査が能力喪失の理由に挙げているのは、産業側の需要の弱さと、安価なバージンポリマーとの厳しい競争である。同じ期間に再生プラスチック原料の価格は32%下がり、リサイクル率は約40%で横ばいだった。事実共同声明も冒頭で挙げているのは「需要の減少」である。足りていないのは材料ではなく、それを買う需要のほうだ。

分析この見立ては、要求①の動機をより正確に説明する。需要が細り価格が下がった市場で、法律が作った数少ない確実な需要が含有率目標である。その需要を誰と分け合うかは、域内の事業者にとって死活問題になる。「欧州産に限る」という要求は、供給不足への対処ではない。限られた需要の配分をめぐる提案として読むほうが、実態に近いと考えている。

分析では、目標そのものが緩む可能性はどうか。事実第7条13項は最低率の調整を認めている。ただしその要件は、条文上「人・動物の健康、食料供給の安全、または環境に重大な悪影響が生じる例外的な場合」に限られる。入手困難や価格の問題だけでは足りない。より現実的な経路は第12項のほうである。同項は2028年1月1日までに、適切なリサイクル技術が認可されていないか実際に十分利用できない場合の適用除外の要否を評価するとしている。必要なら委任法令で第1項(b)(d)の範囲・時期・水準に例外を設ける権限も委員会に与えられている。「地理で絞る」と「目標を調整する」は、同じ規則の中に同居している。どちらが選ばれるかは、本記事の時点では決まっていない。

日本企業には、どう関係するのか?

分析立場によって効き方が違うため、分けて整理したい。

立場別に見た影響の入り口(本記事による整理)
立場 共同声明の要求が通った場合 条文どおり同等性で進んだ場合
EU域内で製造・充填される包装に、日本から再生材を供給している 要求①の直撃を受ける。供給先がその材料を含有率目標の計算に使えなくなる可能性がある 第7条3項の「同等の分別収集」「同等の排出規制下の施設」に該当することを示せれば算入されうる
日本で製品を包装に詰め、完成品としてEUへ輸出している 要求②の対象。国レベルの同等性評価と施設レベルの第三者認証(1年更新)の二段が要る 同じく第10項の方法論に沿った同等性の立証が要る。手順の重さは方法論の中身次第
国内向けに回収・選別・再生を手がけている 直接の適用対象ではない。ただし国内材を欧州向けに回す選択肢が狭まる 同じく直接の適用対象ではないが、記録体制が輸出時の資産になる
再生ライン・ケミカルリサイクルの設備投資を検討している どちらの場合も、投入と産出を工程ごとに記録できるかどうかが共通の要件として残る。要求③のトレーサビリティも、第10項の「第三者監査を含む検証」も、求めているのは同じ性質の証跡である

分析実務上いちばん伝えたいのは、この表の最下段である。「欧州産に限る」になるか「同等性で通す」になるかは、日本の一事業者には動かしがたい。しかしどちらに転んでも、工程ごとの投入・産出の記録が要る点は変わらない。要求③は管理の連鎖モデルによる出所の証明を求めており、第10項も第三者監査を含む検証を前提にしている。制度の行方を待ってから記録体制を作り始めると、その分だけ準備に使える時間は短くなる。制度の分岐に賭けずに済む投資が、ここにはある。

分析もうひとつ、時間の見立てを添えておきたい。含有率目標そのものの適用は2030年1月1日である(または第8項の実施法令の発効から3年のいずれか遅い方)。計算・検証ルールの適用開始は2029年1月1日(または同24か月のいずれか遅い方)となる。つまり、いちばん近い拘束的な期限は2030年ではなく2029年1月1日で、残りは約2年4か月である。記録体制の整備はこちらに合わせて計画したい。いま急ぐ必要があるのは二つだと考えている。意見を出すかどうかの判断(9月16日)と、年内に採択される実施法令の文言を読む準備である。

何がまだ決まっていないのか?

  • 共同声明は業界団体の要望であり、欧州委員会の見解ではない。委員会が要求①を採用するという材料は、本記事の調査範囲では見つかっていない。
  • 実施決定の草案(draft act)はまだ公開されていない。Have your sayのページでは草案への意見募集は「Upcoming(予定)」の段階である。
  • 採択時期は予定にとどまる。条文上の期限は2026年12月31日である。報道ただし、ドイツの包装業界団体の関係者が数か月の遅れを予想したと報じられている(委員会は同種の期限をしばしば徒過してきた、という趣旨)。
  • TEHA-CONAI調査の原典レポートには到達していない。本記事の数値はいずれも報道経由であり、算定の前提・対象範囲・基準年は確認できていない。
  • PREとTEHA-CONAIで欧州の設備能力の数値が食い違う(1,320万トン/1,350万トン)。どちらが正しいかは判断していない。
  • 実施決定 (EU) 2026/1425 が定める2027年11月21日の扱いは、あくまで使い捨て飲料ボトルの目標についてのものである。PPWR第7条の実施法令が同じ設計を採るかどうかは決まっていない。また、規則(EU) 2024/1157 第45条に基づく欧州委員会の評価の結果も、本記事の時点では公表されていない。

続報で注目したいのは、どこか?

分析第一に、9月16日以降に公開されるフィードバックの顔ぶれである。域外の団体・企業がどれだけ投稿したかは、委員会が「実務上の制約」をどれだけ材料として持てるかに直結する。第二に、実施決定の草案の文言である。とくに注目したいのが、同等性の判定の単位だ。国単位で行われるのか、施設単位で行われるのか、あるいは両方なのか。ここで日本の事業者にとっての手続の重さがまるで変わる。共同声明は両方を求めているが、条文の第10項自体は判定の単位を特定していない。

分析第三に、第8項の実施法令(計算・検証の方法論)と第9項の委任法令(リサイクル技術のサステナビリティ基準)の中身である。この3本は同じ期限で並走しており、しかも相互に参照し合っている。第9項の基準が厳しければ、第10項の「同等」の水準も自動的に上がる。域外材料の扱いは、地理の議論だけでなく、技術基準の議論からも決まる。第四に、Circular Economy Actの動きである。TEHA-CONAI調査が挙げた4施策のうち、二次原料の需要に最も近いのはこれだと考えている。

分析より大きな流れとしては、再生材をめぐる論点が「どう数えるか」から「誰が供給してよいか」へ広がりつつあることを押さえておきたい。本サイトは9月5日の記事で、米カリフォルニアが再生材含有率の「数え方」を法律で列挙した動きを扱った。今回のEUの議論は、その一段先にある。数え方が定まると、次に問われるのは供給者の資格である。設備の能力を上げる投資と、その出力を「再生材だ」と説明できる体制への投資は、これまで以上に別の予算として立てておいたほうがよい。