EUのELV規則、9月14日に第6条の一部が適用開始──日本で再生した樹脂も算入されうるが、条件と監査が効き始めるのは2030年8月14日から
今週の注目トピックとして、EUの使用済み自動車規則(ELV規則)の適用開始日を取り上げる。理由は、この規則が「再生材をどこで再生したか」で線を引いたからだ。先に一つだけ断っておくと、9月14日に企業の義務が始まるわけではない。この日に動き出すのは、欧州委員会が下位法令をつくる権限と、期限つきの評価・報告の義務である。規則(EU) 2026/1738は2026年8月13日に発効した。本体の適用は2028年9月1日だが、再生材含有率を定める第6条のうち第4〜9項は9月14日から適用される。その第4項が、算入できる再生材を「EU域内の施設」、または2030年8月14日以降は「附属書XIIIの要件を満たす第三国の施設」で再生されたものとしている。日本は第三国にあたる。ただし前文は、これを締め出しではなく第三国材料に課す条件と監査の適用開始日として説明している。含有率の義務が始まるのは2032年9月なので、日本の材料が「義務があるのに算入されない」期間は条文上は生じない。
9月8日号で扱った包装規則(PPWR)が最初から同等性で開いているのとは、線の引き方が違う。ただし前文は、域内材料と輸入材料を非差別的に扱う趣旨を明記している。あわせて、この規則を見据えて動いている材料側の2社(住化ポリマーコンパウンズ、Envalior×SECARA)を並べて読む。
- 何が起きたか
- 事実規則(EU) 2026/1738(ELV規則)が2026年7月24日にEU官報で公布され、8月13日に発効した。第59条により本体の適用は2028年9月1日、ただし第6条4〜9項ほかは2026年9月14日から適用される
- 事実第6条1項=2032年9月1日以降に型式認証を受ける新型式は、樹脂の15%以上をポストコンシューマー再生材にする。2036年9月1日以降は25%以上に上がる
- 事実第6条2項=その目標の20%以上は、使用済み自動車由来か使用中に取り外した部品由来の再生材で満たす(15%×20%=樹脂重量の3ポイント相当)
- 事実第6条4項=算入できるのはEU域内の施設で再生されたもの、または2030年8月14日以降は附属書XIIIの要件を満たす第三国の施設で再生されたもの。第5項により第三国施設は5年に1回以上、独立第三者の監査を受ける
- 事実材料側の動きが2件。住化ポリマーコンパウンズ(住友化学子会社)が仏サンマルタン・ド・クローに機械式の再生PP拠点を建設。Envaliorと独SECARAが8月25日、廃車樹脂からPA6を作る触媒解重合の覚書を締結
- 誰に関係するかEU向けに再生ペレット・コンパウンドを供給する、または供給を検討している国内の再生事業者・商社・樹脂メーカー。および自動車部品を欧州に納める部品メーカー
- 課題・背景分析
- 再生材の「量」ではなく「どこで再生したか」と「同等性を示せるか」が算入可否を決める設計になった。日本国内で再生した材料には、附属書XIIIの要件と附属書XIVに基づく監査という条件がかかる。その条件の適用開始は2030年8月14日である。ただし前文第30項は、域内材料と輸入材料を非差別的に扱う趣旨を明記している
- 商機
- 事実第33条2項により、2032年1月1日から、加盟国は生産者または生産者責任組織を通じて、廃棄物処理事業者による廃車樹脂の30%以上のリサイクルを確保する。第34条は2029年9月1日から、附属書VIII Part Gの限度値を超える非不活性廃棄物を含むシュレッダー残渣の埋立受入を認めない
- 分析廃車樹脂を処理する側の設備需要が先に立ち上がる可能性がある。義務の水準として見ると、処理・回収側の達成義務のほうが新車側の下限より大きいためだ。ただし新車側の3ポイントは下限であって上限ではなく、欧州のリサイクル業界団体は逆に「需要側が弱いと供給側の投資が萎む」と主張している(本文参照)
- リスク
- 分析「EUの再生材需要が伸びるから日本から輸出できる」という読みは、第6条4項の前ではそのままには通らない
- 事実附属書XIIIは施設の条件だけでなく、廃棄物の出所となる国の枠組みまで評価対象に含めている
- 推奨アクション
- EU向けの再生材供給を検討している場合、供給形態の選択肢を「日本から輸出する」だけに置かない。域内拠点・域内パートナー経由も含めて比較する
- 2028年8月31日までに採択される計算・検証の実施法令が、実務の分かれ目になる。草案が出た段階で内容を確認する
- 自社工程で、原料の出所ごとにロットを分けて追跡できるか、投入量・産出量を工程ごとに記録できるかを先に点検する。附属書XIII Part Bが求めているのはこの種の記録である
- なお本記事は公開情報の整理であり、法律上の助言ではない。制度面の解釈・適合性の判断は専門家にご確認ください
先に、用語をそろえておきませんか?
| ELV | End-of-Life Vehicle。使用済みになった自動車のこと。本記事では「廃車」とも書く |
|---|---|
| 型式認証 | 自動車を市場に出す前に、車種(型式)ごとに基準適合を確認して受ける承認。EUでは規則(EU) 2018/858が定める |
| ポストコンシューマー廃棄物 | 消費者や事業者が実際に使い終わって出した廃棄物。工場で出る端材(プレコンシューマー)とは区別される |
| クローズドループ | 同じ用途に戻す循環。廃車の樹脂を再び自動車の樹脂に使うのがこれにあたる |
| マスバランス | 再生原料と化石原料が工程で混ざる場合に、投入量の比率に応じて「再生材由来」を製品へ割り当てる会計方法 |
| エラストマー | ゴムのように伸び縮みする高分子材料の総称。タイヤやシール部品に使われる。熱を加えれば再び成形できる熱可塑性エラストマー(TPE)もある |
| 熱硬化性樹脂 | 一度固めると加熱しても再び溶けない樹脂。分子どうしが橋渡しされているためで、溶かして作り直す機械式リサイクルには向かない |
| 生産者責任組織 | 拡大生産者責任(製品の廃棄段階まで生産者が責任と費用を負う仕組み)のもとで、複数の生産者から委託を受けて回収・処理の義務を代行する団体 |
| シュレッダー残渣 | 廃車を破砕して金属を回収した後に残る混合物。樹脂・繊維・ゴム・ガラスなどが混ざっており、ASRとも呼ばれる |
| 実施法令/委任法令 | EUの下位法令。実施法令は本体規則の実施方法を定めるもの、委任法令は本体規則の非本質的部分を補ったり改正したりできるもの |
| 解重合 | 樹脂の分子鎖を切って、原料の単量体(モノマー)まで戻す処理。ケミカルリサイクルの手法の一つ |
| カプロラクタム | ナイロン6(PA6)の原料となるモノマー |
| ドロップイン | 既存の設備・処方・認定をそのまま使える、置き換え可能な原料のこと |
| 附属書(Annex) | 規則本文の後ろに付く別表。条文が参照する具体的な要件・基準が書かれている |
そもそも9月14日に何が動き出すのか?
この規則は、いつ発効して、いつから本体が適用されるのか?
事実規則(EU) 2026/1738は2026年7月8日に採択され、同年7月24日にEU官報L系列に公布された。正式名称は「車両設計に関する循環性要件および使用済み自動車の管理に関する規則」である。
事実この規則は、従来の2本の指令を廃止して一本に統合するものだ。廃止されるのは使用済み自動車指令(2000/53/EC)と3R型式認証指令(2005/64/EC)である。指令ではなく規則なので、加盟国が国内法に移し替える手続きを経ずに直接適用される。
事実第59条1項は「官報公布の翌日から20日目に発効する」と定める。公布日が7月24日なので、発効日は2026年8月13日にあたる。欧州委員会の8月12日付ニュースも発効日を8月13日としている。
事実第59条2項は「本規則は2028年9月1日から適用する」としつつ、そのあとに例外の列挙を置いている。そこに第6条4〜9項が入っており、これらは2026年9月14日から適用される。(第59条2項は「第6条11項」も列挙しているが、公布された第6条は第9項までで、第11項は存在しない。条番号のずれと見られる。)第4条3項、第5条2〜9項なども同じ日付だ。
では、9月14日に義務が発生するのか?
分析この日に企業へ新しい義務が課されるわけではない。9月14日に適用開始となる第6条4〜9項は、その大半が欧州委員会に対する宿題である。委員会が下位法令をつくる権限と、期限付きの評価・報告義務を定めた条項が並んでいる。
事実たとえば第6条5項は、計算・検証の方法を定める実施法令を2028年8月31日までに採択せよと委員会に命じている。第4項の第2段落も同じ形だ。世界貿易とEUのリサイクル産業・自動車産業への影響を2028年9月30日までに評価し、欧州議会と理事会に報告せよとしている。
分析それでもこの日付が読者にとって意味を持つのは、ルールづくりの時計が正式に動き出す日だからだ。含有率そのものの義務は2032年9月の型式認証からで、まだ6年ある。しかし、その義務をどう計算し、誰の材料を数えてよいかを決める作業は、この9月から2028年8月までの約2年間に行われる。意見を出せる場があるとすれば、そこである。
| 日付 | 内容 |
|---|---|
| 2026-07-24 | EU官報L系列に公布(2026/1738) |
| 2026-08-13 | 発効(第59条1項=公布の翌日から20日目) |
| 2026-09-14 | 第6条4〜9項、第4条3項、第5条2〜9項ほかが適用開始(第59条2項)。★同項は「第6条11項」も挙げるが、公布された第6条は第9項で終わっており、第10項・第11項は存在しない。条番号のずれと見られる |
| 2027-09-30 | 鉄鋼・アルミの再生材最低比率の実現可能性を委員会が評価する期限(第6条7項・8項) |
| 2028-08-31 | 樹脂の再生材比率の計算・検証方法を定める実施法令の採択期限(第6条5項) |
| 2028-09-01 | 本体の適用開始(第59条2項) |
| 2028-09-30 | 第6条4項の世界貿易・産業への影響評価の報告期限(第6条4項第2段落) |
| 2029-09-01 | シュレッダー重質・軽質残渣のうち非不活性廃棄物を含むものの埋立制限が開始(第34条。附属書VIII Part Gの限度値超過分) |
| 2030-01-01 | 再使用・回収95%、再使用・リサイクル85%の目標が本規則の下で適用。いずれも車両平均重量ベースで、バッテリーを除く(第33条1項) |
| 2030-08-14 | 第三国の施設で再生された材料の算入が可能になる(第6条4項(b))。附属書XIIIの要件と、附属書XIVに基づく第三者監査の要件も同日から適用(第6条5項第4段落) |
| 2031-08-14 | 再生材目標の達成見通しを委員会が評価する期限。メーカーの申告(第10条)に基づく(第56条6項) |
| 2032-01-01 | 廃車に含まれる樹脂の30%以上という年次のリサイクル目標が適用。加盟国が生産者・生産者責任組織を通じて、廃棄物処理事業者による達成を確保する(第33条2項) |
| 2032-09-01 | この日以降に型式認証を受ける新型式に、樹脂の15%以上の再生材が必要(第6条1項) |
| 2036-09-01 | 同じ要件が25%以上に上がる(第6条1項) |
いちばん重い論点は「どこで再生したか」ではないか?
第6条4項は、実際に何と書いてあるのか?
事実第6条4項は、第1〜3項の義務を果たすための再生材について、こう定めている。対象はポストコンシューマー廃棄物から回収されたものに限られる。そのうえで、リサイクルされた場所が(a) EU域内に所在する施設であることが原則となる。または (b) 2030年8月14日以降は、附属書XIIIの要件を満たす第三国に所在する施設でもよい。
分析ここが9月8日号で扱った包装規則(PPWR、規則(EU) 2025/40)との書き方の違いである。PPWR第7条3項は、条文の最初から第三国での回収・再生を「同等の基準に従っていれば」認めている。所在地で場合分けをしたうえで日付を付ける、という書き方はしていない。
分析ELV規則の第6条4項は、条文の並びとしては域内を(a)に置き、第三国を(b)に置いて日付を付けた。ただしこれを「域内に閉じてから開く」と読むのは、条文の文言だけを見た読みである。前文はまったく別の説明をしている。
事実前文第28項は、自動車分野のグローバルバリューチェーンの重要性を認めたうえで、「本規則は、EU域外からの二次原料の調達を認めるべきである」と明記している。
事実前文第30項は立法者の意図をはっきり書いている。再生材の入手方法が環境面の便益を打ち消さないようにするための担保が要る、としたうえで、その担保は「域内で製造された再生プラスチックと輸入された再生プラスチックの双方について、非差別的な方法で」設けられるべきだとしている。そして目標に算入されるためには、「リサイクル工程がEU域内で行われるか域外で行われるかにかかわらず」、人の健康・気候・環境の保護に関して同等の条件に服すべきだと明記している。
事実そのうえで前文第31項は、「第三国でリサイクルされた材料に適用される条件は、監査要件を含め、2030年8月14日からのみ適用されるべきである」としている。あわせて欧州委員会は、市場の状況と貿易関係の推移に照らして、その条件がもたらす影響をより包括的に評価し、報告すべきだとしている。
分析つまり前文が言っているのは、「2030年8月14日から域外材料が入れる」ではなく、「域外材料に課す条件と監査が、その日から効き始める」である。第6条4項(b)の文言とは、力点の置き方が違う。本記事はこの2つの読みのどちらか一方を正しいと決める立場にない。実務上どちらで運用されるかは、2028年8月までに出る実施法令が決める。
分析ただし、どちらの読みでも実務的な結論はほぼ同じになる。含有率の義務が始まるのは2032年9月1日で、条件の適用開始(2030年8月14日)はその2年余り前にくる。日本の材料が「義務があるのに締め出される」という期間は、条文上は生じない。残るのは、附属書XIIIの要件を満たし、附属書XIVに基づく監査を受けられるかどうかという条件の問題である。
分析したがって、この規則を「日本を締め出すもの」と読むのは正確ではない。附属書XIIIが求めているのも「EU域内であること」ではなく「EU法と同等であること」だ。分岐があるとすれば、「いずれ開くのだから待てばよい」と読むか、「条件が効き始めたときに動けるよう準備する」と読むかである。この4年の使い方は、そこで変わる。
| 論点 | ELV規則((EU) 2026/1738) | PPWR((EU) 2025/40) |
|---|---|---|
| 域外材料の位置づけ | 第6条4項(b)=2030年8月14日以降に限って算入可 | 第7条3項=当初から同等性を条件に算入可 |
| 条件の単位 | 施設単位(附属書XIII Part A・Part B)+出所となる国の枠組み(Part A 3項) | 回収の基準と施設の排出規制。第10項で第三国の同等性の方法論を別に定める |
| 第三者検証 | 第6条5項=第三国施設は5年に1回以上、独立第三者の監査(附属書XIV) | 第8項の第三者監査は域内の再生材製造者を対象とする。域外は第10項の方法論による |
| 計算方法の下位法令 | 実施法令を2028年8月31日までに採択(第6条5項) | 意見募集が9月16日締切、採択予定は2026年第4四半期 |
この表はELV規則とPPWRの「書き方」を並べたものであり、どちらが厳しいかを本記事が評価したものではない。対象製品も義務の主体も異なる(ELV規則は自動車メーカー、PPWRは包装の製造・充填事業者)。
2030年以降、日本の施設は何を満たすことになるのか?
事実附属書XIIIはPart AとPart Bに分かれている。Part Aは、人の健康・気候・環境の保護についてEU法と同等の要件を満たしていることを示す基準だ。8項目が並んでいる。
- 事実廃棄物リサイクルの要件を満たし、環境保護に関する国内法令に従って活動していること
- 事実安全かつ環境上適正に設計・建設・運転され、当該廃棄物をリサイクルするための工程・技術・組織・インフラを備えていること
- 事実廃プラの調達元が、加盟国か、または環境保護と労働者の安全についてEU法と同等の基準に従う国であること
- 事実労働者と近隣住民の健康・安全リスク、および環境への悪影響を予防・低減する管理・監視の仕組みを備えていること
- 事実受け入れ・処理したすべての廃棄物の追跡可能性を確保し、残渣が認可施設にのみ引き渡されることを記録で示せること
- 事実省エネと温室効果ガス排出の抑制の措置をとっていること
- 事実直近5年分の廃棄物管理活動の記録を提示できること(操業5年未満の場合は操業期間分)
- 事実運営者または経営陣が直近5年間、廃棄物管理に関わる違法行為で有罪判決を受けていないこと
事実Part Bは、第6条1〜3項への適合を示す基準である。2点ある。1点目は、ポストコンシューマー廃棄物由来の材料を製造していることを証明できること。プレコンシューマー材や新規原料も扱っている場合は、両者を明確に区別できることを示す必要がある。そのうえで、算入対象としてはポストコンシューマー由来のみを供給すると担保しなければならない。
事実2点目が重い。対象は、廃車や修理された車両から出たポストコンシューマー廃棄物を扱う施設である。この施設はその廃棄物が分別収集され、他の由来の材料と混ざっていないことを示せなければならない。しかもこの条件は2つの局面にかかる。「施設に到着する前」と「リサイクル工程の全体を通じて」の両方で、追跡可能性が失われるような混合が起きていないことが求められる。
分析この2点目は、第6条2項のクローズドループ枠(目標の20%以上)と対応している。廃車由来だと数えてもらうには、廃車から出たと追跡できる状態で工程を通す必要がある。混合フローの中から後から「これは廃車由来です」と主張する形は、この条文の下では難しいと読める。ただし機械式以外のリサイクルには第6条5項第2段落によりマスバランスが適用され、前文第29項も不均質な破砕自動車廃棄物を想定していると明記している。どこまでが「追跡可能性を失わせる混合」にあたるかは、実施法令の書きぶり次第である。
分析設備の観点でいえば、要求されているのは新しい処理技術ではない。ロットを分けて流せる構成と、工程ごとに投入量・産出量を記録できることである。装置単体の性能よりも、ラインの組み方と計量点の置き方の問題になる。
附属書XIIIが見ているのは「施設」だけなのか?
事実そうではない。Part Aの第3項は、廃プラの出所となる国についての基準を置いている。全領域を覆う包括的な廃棄物管理の枠組みを持ち、環境上適正な廃棄物管理を保証する能力と意思を示している国であること、が求められる。そのうえで、次の3点を「特に考慮する」としている。
- 事実領域内で環境上適正な廃棄物管理を確保するために実施済み・実施予定の措置(拡大生産者責任制度、または汚染者負担原則を実施する同等の仕組みの導入など)
- 事実自動車由来のポストコンシューマー樹脂のリサイクル比率を高めるために実施済み・実施予定の措置と、その監視指標
- 事実国内市場に出される自動車に組み込まれるポストコンシューマー再生樹脂の比率を高めるために実施済み・実施予定の措置と、その監視指標
分析ここは日本企業にとって、意外に前向きに読める箇所である。日本には自動車リサイクル法という拡大生産者責任の枠組みがあり、1点目に対応する説明材料がある。2点目・3点目についても、政策側の動きがすでにある。
事実環境省は「自動車における再生材市場構築のための産官学連携推進事業」を実施している(同省報道発表 press_05525、2026–09–07)。補助対象は、再生材の品質保証のための分析装置と、回収量拡大・輸送効率向上のための破砕設備である。2026年9月7日に三次公募が公表され、締切は10月30日17時である。使用済自動車に係る資源回収インセンティブ制度も動いている。
分析つまり、附属書XIII Part A 3項が求めている「措置と監視指標」に相当するものが、日本側では別の政策目的で積み上がりつつある。2030年8月の窓が開くときに、これが説明材料として使える形に整理されているかどうかは、行政と業界団体の側の課題になる。個社の努力だけで満たせる条件ではない。
分析ただし、運用の形は条文からは読み切れない。附属書XIII Part A 3項が国単位の一括評価になるのか、施設ごとの立証の中で参照されるのかが分からない。第6条4項も第5項も、証明の主体を「メーカー」としており、国を評価する主体を明示していない。この点は2028年8月までに出る実施法令を待つことになる。
同じ規則の中に、第三国を同等性で受け入れる条文はないのか?
事実ある。第35条2項は、EUから第三国へ送られた使用済み自動車の処理について、「本規則に定める要件および他のEU法令に定める環境・人の健康の保護要件と同等とみなされる条件で処理が行われた」ことを、仕向地の所管当局が承認した書面証拠で示せる場合に限り、第33条の目標達成に算入されると定めている。
分析ここに2030年8月14日のような日付は付いていない。つまり同じ規則の中でも、算入の扱いは条ごとに違う。第6条は「施設がどこにあるか」+日付、第35条2項は「同等と認められる条件で処理したか」の書面証拠である。「この規則は地理で線を引いた」と一言でまとめるのは、正確ではない。
分析日本の事業者にとっては、これがもう一つの経路になりうる。EUで発生した廃車やその処理過程で出た廃棄物を日本で処理する形であれば、第6条の含有率とは別に、第33条の目標側に効く可能性がある。ただし廃棄物の越境移動そのものは規則(EU) 2024/1157に従う必要があり、所管当局の承認を伴う書面証拠が前提になる。本記事はその実現可能性までは検討していない。
もうひとつの非対称は、どこにあるのか?
廃車側には、どれだけの処理義務が課されるのか?
事実第33条2項は2032年1月1日からの年次目標を定めている。内容は、廃棄物処理事業者が廃車に含まれる樹脂の総平均重量の30%以上をリサイクルすることだ。加盟国はそれを確保する措置をとる。義務を負わせる相手は生産者、または指定された生産者責任組織である。
事実この目標では、リサイクルされた樹脂の重量と樹脂の総重量の両方から3種類が除かれる。エラストマー、クッション用ポリウレタンフォーム以外の熱硬化性樹脂、そして残留性有機汚染物質規則(EU) 2019/1021の附属書IVの閾値を超えて含有・汚染された樹脂である。
事実あわせて第34条が2029年9月1日から埋立を制限する。対象は、処理後に残るシュレッダー重質・軽質残渣のうち非不活性廃棄物を含むものだ。附属書VIII Part Gの限度値を超える場合は埋立受入が認められない。
新車側が吸収する義務は、どれだけなのか?
事実第6条1項の15%に対し、第6条2項は「その20%以上」を廃車由来または使用中に取り外した部品由来で満たすと定める。15%の20%なので、新型式の樹脂重量に対しては3ポイント相当になる。2036年からは25%の20%で5ポイントに上がる。
事実ここで重要なのは、条文が「20%以上(at least 20 %)」と書いていることだ。3ポイントは下限であって上限ではない。条文上は、15ポイント全部を廃車由来の再生材で満たしても適合する。
分析したがって、3ポイントという数字を「自動車が受け取れる量の天井」と読むことはできない。これは義務として必ず廃車由来にしなければならない床である。実際にどれだけ引き取られるかは、価格・品質・調達方針で決まる。
分析並べると、義務の水準として見たとき、処理・回収側に課される達成義務のほうが大きく見える。2032年の「廃車樹脂の30%をリサイクルする」義務に対し、自動車側の下限は「廃車由来を3ポイント」である。義務として確実に立ち上がる量は、押し出す側のほうが先に、かつ大きい。ただし前述のとおり3ポイントは下限なので、実際の引き取り量がこれで頭打ちになるわけではない。
分析この差が意味するのは、廃車由来の再生樹脂の出口が自動車の外側にも必要になる、ということだ。FENの読者に関わるのはこの点である。廃車を処理する側の設備需要は、自動車メーカーの調達計画よりも先に、しかも大きく動く可能性がある。なお第33条2項が法的な義務を負わせる相手は加盟国であり、加盟国が生産者・生産者責任組織を通じて処理事業者の達成を確保する、という組み立てである。費用の流れもこの経路に沿う。
ただし、30%と3ポイントは直接比べてよい数字なのか?
事実比べられない。分母と単位が違う。第33条2項は「廃車に含まれる樹脂の総平均重量」に対する年次の比率で、エラストマーを一括して除外する。第6条3項は「新型式ごとの樹脂重量」に対する比率である。除外するのはタイヤ由来のエラストマーと、クッション用ポリウレタンフォーム以外の熱硬化性樹脂に限られる。
事実前文第29項は、熱可塑性樹脂に再加工できるエラストマー(熱可塑性エラストマーを含む)は第6条の再生材目標の対象に含まれると明記している。タイヤが外れているのは、規則(EU) 2024/1781(ESPR)の優先製品にあたるためだと同項が説明している。
分析したがって、30%と3ポイントの比較は、方向性を示すものにとどまる。算術的に「10倍の余剰が出る」と読むことはできない。それでも、供給側の義務のほうが先に立ち上がるという向きは、条文の構造から言える。第33条2項は2032年1月1日から一律に、第6条1項は同年9月1日以降の新型式から順に効くためだ。
事実一方で、対象の広さでは第33条が上とは言えない。第2条3項・4項により、第6条も第33条も、M2・M3・N2・N3・O類とL類の車両には適用されない。どちらも乗用車(M1)と小型商用車(N1)が対象で、車種の範囲は同じである(M1・N1の特種用途車は2029年9月1日から)。材料の範囲はむしろ第6条のほうが広く、タイヤ由来以外のエラストマーを含む。
業界団体は、この非対称をどう見ているのか?
事実欧州のリサイクル業界団体EuRIC(2025年後半にRecycling Europeへ改称)は、2025年6月18日付の声明で、まさにこの点を指摘している。「60か月で廃車樹脂の30%というリサイクル目標が設定されているのに、72か月後の新車に求められる廃車樹脂由来の再生材含有率は3.75%にすぎない」と述べ、「この不整合は信頼性と投資家の信認の両方を損なうおそれがある」としている。
事実同団体は、再生材含有率目標を25%から15%へ下げたことを「後退である」とした。リサイクル事業者・メーカー・投資家に誤ったシグナルを送るという批判である。
事実ただし同じ声明は、第三国材料の扱いについては規制側を評価している。同団体は「輸入に対するミラー条項の導入」と、「EU域内であれ域外であれ、再生材含有材料を製造する施設に第三者監査を求めること」を歓迎すべき一歩だとしている。
分析これは本記事の見方への反証として重要である。業界団体自身は、第6条4項と附属書XIII・XIVを「地理による線引き」ではなく「公平な競争条件のためのミラー条項」と受け止めている。前文第28項・第30項と同じ向きである。
事実そしてもう一点、本記事の「商機」の読みとは逆向きの主張がある。同団体のマリア・ベラ・デュラン氏(シニア・テクニカル・マネージャー)は「リサイクル率を高められるのは、自動車メーカーが新車に再生プラスチックを使うと約束した場合だけであり、循環性は共有された責任でなければならない」と述べている。また、需要側の引き取りが保証されないまま品質要件だけが厳しくなると、リサイクル能力の拡大に必要な投資シグナルが損なわれるとしている。
分析本記事は「押し出す側の義務が先に立ち上がるので処理設備の需要が動く」と読んだが、EuRICの見立ては逆で、「需要側が弱いと供給側の投資は萎む」である。どちらが実際に起きるかは、2032年に向けて自動車メーカーが下限の3ポイントを超えて引き取るかどうかで決まる。設備投資を検討する場合、義務の水準だけでなく、実需の引き合いを併せて見る必要がある。
分析ただし1点、注意が必要である。この声明は2025年6月、理事会の立場が示された段階のもので、最終条文へのコメントではない。「3.75%」は当時の案(15%のうち25%が廃車由来)から出る数値である。官報に載った最終条文では第6条2項が「20%以上」なので、計算すると3ポイントになる。EuRICが指摘した不整合の向きは最終条文でも残っている、というのが本記事の読み取りである。
では、材料の作り手は何をしているのか?
機械式で域内に量をつくると、どうなるのか?──住化ポリマーコンパウンズの例
事実住化ポリマーコンパウンズ(Sumika Polymer Compounds)は住友化学の子会社である。同社はフランス南部サンマルタン・ド・クローの既存拠点を拡張している。新設するのは自動車用の再生PP(ポリプロピレン)を製造する設備だ。同社サイトの発表は2025年3月付で、起工式は3月6日である。
事実拠点はブワ・ド・ルーズ工業団地内で、1989年から操業している。新設は5,000平方メートルの建屋で、年1万トンの廃プラを再生PPペレットに変える能力を持つとされる。3年で30名を新規採用し、総勢約85名になる計画だ。
事実公的支援が入っている。フランス国が「France 2030」の枠組みでADEME(環境・エネルギー管理庁)経由で支援している。これがプロジェクト費用の30%にあたると、Invest in Provenceは記載している。加えてPACA地域圏(Sud)が「Sud Développement」で30万ユーロを補助している。
報道投資額には資料間の差がある。地域機関の発表は総額1,500万ユーロ、Plastics Newsは見出しで「€13m」(1,300万ユーロ)と表記している。ADEMEの事業概要としてPolyesterTimeが伝える数値は、プロジェクト総額2,140万ユーロ、France 2030からの公的支援600万ユーロである。対象範囲がより広いと見られる。本記事はいずれか1つを採用する判断はしていない。
報道能力についても報道がある。フランス拠点で年1万トン超の再生PP、トルコの既存拠点と合わせて年2.5万トン超だとPolyesterTimeは伝えている。原料は自動車産業の工程内廃棄物と廃車から回収された樹脂が主とされる。
分析ここで注目したいのは投資額ではなく、立地である。日本の樹脂メーカー系のコンパウンド会社が、自動車用再生材の設備を日本ではなくフランスに置いた。第6条4項の書き方を踏まえると、EU域内に再生工程を持つことは、供給先が含有率目標に算入できるという意味を持つ。
分析ただし、この投資は2025年3月に起工しており、規則の最終条文(2026年7月採択)より前の判断である。したがって「第6条4項に対応するために建てた」と言い切ることはできない。規則案の段階から域内立地の意味は見えていた、という程度にとどめておきたい。
事実ただし、当事者は規制を動機として明言している。同社のリュドヴィック・セイナーヴ社長は、「使用済み自動車の処理に関する新しい欧州規制によって引き起こされる、高性能プラスチックコンパウンドの需要増を見越して」この拠点を立ち上げるとしている(拙訳)。
分析ここで言及されているのは規則全般であって、第6条4項の域内・域外の線引きではない。それでも、規制が需要を作るという読みで設備投資が動いていることは、この一文からはっきり読み取れる。
分子まで戻すと、何を避けられるのか?──Envalior×SECARAの例
事実エンジニアリングプラスチックのEnvaliorと、ドイツのSECARAが2026年8月25日、覚書(MoU)の締結を発表した。廃車由来の樹脂から自動車用グレードのPA6(ナイロン6)をつくる経路を、共同で試験・検証する。
事実SECARAの触媒解重合は、技術樹脂を構成分子まで分解する。同社の説明では、ガラス繊維・難燃剤その他の添加剤や汚れを含む大規模な産業系混合廃棄物を扱えるように設計されている。得られるのはドロップイン品質のモノマー、PA6の場合はカプロラクタムである。
分析この組み合わせの狙いは「認定をやり直さないこと」にある。発表は、既存の重合設備にそのまま投入できる原料をつくると説明している。自動車部品の材料は、量産に入る前に長い評価・承認の工程を通る。原料の素性が変わると、その工程をもう一度回すことになりかねない。分子まで戻せば、その手戻りを避けられるという整理だ。
事実Envaliorのアルトゥール・フェルク氏(サーキュラー・低炭素ソリューション責任者)は、「技術的・品質的な制約により、機械式リサイクル単独では、要求の厳しい用途においてELV規則のクローズドループ要件を満たすには十分でない」と述べている(拙訳)。
この発言の読み方について。限定は「要求の厳しい用途において」であり、機械式リサイクル全般を否定したものではない。また同社はエンジニアリングプラスチックのメーカーであり、解重合による高純度モノマーの供給が事業機会になる立場である点も踏まえて読みたい。なおEnvalior公式サイトの当該ページ本体には到達できていないが、Renewable Carbon Newsが同社リリースを全文転載しており(発表元の日付は2026–08–25、掲載は9月2日)、発言は同転載版で確認した。
事実段階については慎重に見るべき材料がある。SECARAは技術スケールアップ企業で、扱う樹脂はPA6、PA66、ポリカーボネートである(同社サイト)。報道設立は2024年とされるが、同社サイトに設立年の記載は見当たらない。同社サイトが示す道筋は、2026年にトン規模のパイロット、2028年にキロトン規模のデモ/初号機、2031年以降に年5万トン超の工業規模である。
事実資金面の支援先が同社サイトに列挙されている。EUのEFRE/JTF、ノルトライン=ヴェストファーレン州の助成、2026年2月のGrüne Gründungen NRW(60万ユーロ)である。ほかにBMW、EXISTプログラム、ヴェルナー・ジーメンス財団、RWTHアーヘン関連のプログラムが支援・連携先として掲載されている(資金提供か事業連携かは同サイトからは判別できない)。
分析したがって現時点では、工場ではなく覚書である。現時点で公表されているのは覚書までで、生産量・時期・投資額などは今後の発表を待つ段階である。パイロットからデモへ進む過程で明らかになる部分が大きい。2031年以降の工業規模という自社の道筋は、含有率義務が始まる2032年9月にちょうど間に合う想定に見える。ただし実際に間に合うかどうかは、今後の資金調達と実証の結果による。
この2つは、競合しているのか?
分析狙っている枠が違う、と読むほうが実態に近い。第6条は2つの枠を重ねて置いている。15%というポストコンシューマー再生材の枠(第1項)と、そのうち20%以上という廃車由来の枠(第2項)である。前者は量で、後者は素性で決まる。
| 論点 | 住化ポリマーコンパウンズ(仏) | Envalior×SECARA(独) |
|---|---|---|
| 手法 | 機械式リサイクル(再生PPペレット) | 触媒解重合(PA6→カプロラクタム) |
| 対象樹脂 | PP=内外装に多い汎用樹脂 | PA6=ガラス繊維入りの機能部品に多い技術樹脂 |
| 段階 | 建設・立ち上げ(2025年3月起工、稼働は2026年見込みと地域機関が記載) | 覚書(2026年8月)。パイロットはトン規模 |
| 公表能力 | 年1万トン超(仏)。トルコ拠点と合わせ年2.5万トン超と報道 | 発表なし。自社サイトの道筋は2031年以降に年5万トン超 |
| 効きうる枠(本記事の読み取り) | 第6条1項の15%の量。原料に廃車由来が含まれる範囲で第2項にも効きうる | 混合廃棄物を扱える設計のため、第2項の廃車由来枠に効きやすい |
| 立地の意味 | EU域内=第6条4項(a)に該当 | EU域内=同(a)に該当 |
| マスバランスの扱い | 機械式のため第6条5項第2段落のマスバランス規定の対象外 | 機械式以外のため同規定の対象。計算方法は実施法令待ち |
「効きうる枠」は条文の構造からの本記事の読み取りであり、両社が発表で述べたものではない。実際にどの枠に算入されるかは、2028年8月31日までに採択される実施法令の計算・検証方法によって決まる。
事実第6条5項第2段落は、機械式以外のリサイクル方法で得た再生樹脂にはマスバランスの会計方法を適用すると定めている。前文第29項は、その理由をこう説明している。ケミカルリサイクルを含む機械式以外の方法にも道を開くため、である。あわせて、不均質な破砕自動車廃棄物のような専用技術の特性を考慮するとしている。
分析言い換えると、規則は最初からケミカルリサイクルを想定して書かれている。9月5日号で扱ったカリフォルニアAB 2253が管理方式の列挙で配分方法を絞ったのに対し、ELV規則はまだ方法を指定していない。どの配分方式が認められるかは、実施法令の内容次第である。
日本の事業者にとって、実務的な含意は何か?
分析1つ目。「EUで再生材需要が伸びるから、日本から再生ペレットを輸出する」という組み立ては、この規則の下ではそのままには通らない。日本の施設で再生した材料をこの含有率目標に算入させるには、附属書XIIIの要件を満たし、附属書XIVに基づく第三者監査を5年に1回以上受ける必要がある。それを自社で引き受けるのか、域内拠点・域内パートナー・域内での委託再生に切り替えるのか、並べて比較する話になる。
分析2つ目。算入されないことは、売れないことと同じではない。含有率目標に数えられなくても、自動車以外の用途、あるいは自主的な再生材利用のために買う相手はいる。ただしその場合、規則が生む「算入できる材料」のプレミアムは載らない。価格の前提が変わる。
分析3つ目。国内の廃車樹脂を扱う設備需要は、EUの動きとは別に、日本側の政策で先に動いている。9月9日号で扱った環境省の三次公募(分析装置・破砕設備、締切10月30日17時)はその例である。EUの窓が開くのを待つ話と、いま国内で使える補助の話は、時間軸が別だと整理しておきたい。
分析4つ目。点検すべきは装置よりも記録である。附属書XIII Part Bが求めているのは、分別収集された廃車樹脂が他の由来と混ざらずに工程を通ったことの立証だ。破砕・洗浄・選別・押出の各工程で、ロットを分けて流せるか、投入量と産出量とロスを工程ごとに計量できるか。ここが整っていれば、2030年の窓が開いたときに動ける。
続報で注目したいのは、どこか?
- 第6条5項の実施法令(期限2028年8月31日)の草案。計算・検証方法と、マスバランスの配分方式の扱いが実務の分かれ目になる
- 第6条4項第2段落に基づく、世界貿易とEU産業への影響評価の報告(期限2028年9月30日)。域外材料の扱いが動くとすれば、ここが起点になりうる
- 附属書XIII Part A 3項の国単位の基準が、どのような手続で運用されるか。日本が説明材料をどう整理するか
- 第6条6項の一時的な適用除外の委任法令。特定の再生樹脂の入手困難や価格高騰が発動要件として明記されている。第56条6項の2031年評価の項目も「再生プラスチックの十分な入手可能性」「目標達成の技術的・経済的困難」であり、立法者が備えているのは余剰ではなく不足の側である点は、本記事の「押し出す側が先に大きい」という読みへの反証として押さえておきたい。PPWR第7条13項も第一次の要件はほぼ同文だが、そこに「人・動物の健康、食料供給の安全、または環境に重大な悪影響が生じる例外的な場合」という要件が重ねられている。その分、ELV規則側のほうが発動しやすい書き方である
- 第6条7項・8項の鉄鋼・アルミの再生材比率(評価期限2027年9月30日、委任法令は2028年9月30日まで)。樹脂だけの話では終わらない
- SECARAのパイロットからデモへの移行、および住化のフランス拠点の稼働開始の公表
この内容が最も影響する業界ポジション
- 第1位:素材メーカー(樹脂メーカー・コンパウンドメーカー)──自動車向けに再生ペレット・再生材入りコンパウンドを供給する立場。供給先がその材料を再生材目標に算入できるかどうかが、取引の前提を左右する。域内に再生工程を持つかどうかの判断が直接効く(直接影響)
- 第2位:プラスチックリサイクル事業者(回収・選別・中間処理・再生)──附属書XIII Part Bの追跡可能性の立証と、附属書XIVに基づく第三者監査を受ける立場。工程ごとの投入・産出記録がそのまま提出資料になる。EU側の第33条とは別に、日本国内でも政策側から廃車樹脂の処理設備需要が立ち上がりつつある(直接影響)
- 第3位:輸出入業者・商社──日本で再生した材料をEU向けに動かす立場。域外材料が含有率目標に算入できるかどうかが、取引条件と価格の前提そのものを変える。施設単位の要件と第三者監査という条件が2030年8月14日から効くため、供給形態の設計を先に見直す必要がある(直接影響)
「ELV規則」はEUの車両設計の循環性要件および使用済み自動車の管理に関する規則(EU) 2026/1738の通称です。「PPWR」はEUの容器包装・容器包装廃棄物規則の通称です。「Envalior」「SECARA」「住化ポリマーコンパウンズ」「Sumika Polymer Compounds」「住友化学」「EuRIC」「Recycling Europe」「ADEME」「France 2030」「BMW」「RWTH Aachen」「EXIST」「ヴェルナー・ジーメンス財団」「Grüne Gründungen NRW」「Sud Développement」「Invest in Provence」「PolyesterTime」「Plastics News」「Renewable Carbon News」その他、本文中に記載の会社名・団体名・制度名・技術名称は、各社・各機関の商標または登録商標である場合があります。本記事は、当社が公開情報に基づいて独自に整理・解説したものです。当社は本文中の各社・各機関と資本関係・提携関係にはありません。また本記事は法律上の助言ではありません。
出典(一次情報/参考報道)
【一次情報】EUR-Lex 規則(EU) 2026/1738 本文(官報L系列、2026年7月24日公布、2026年7月8日採択。第6条1〜9項の再生材含有率と第三国施設の条件、第33条1項・2項の再使用・リサイクル・回収目標と廃車樹脂30%のリサイクル目標、第34条の埋立制限、第35条2項の域外処理の算入条件(同等と認められる条件で処理した旨の書面証拠があれば第33条の目標に算入されること)、第2条3項・4項の適用除外(第6条・第33条がともにM1/N1限定であること)、第56条6項の2031年評価、第59条の発効日と適用日の構造(および同条2項が挙げる「第6条11項」が公布条文に存在しないこと)、附属書XIII Part A・Part B、附属書XIV、前文第28項・第29項・第30項・第31項・第82項──いずれも条文本文を全文抽出して確認)→ 【一次情報】EUR-Lex 規則(EU) 2026/1738 ELIページ(法令の識別情報の確認に使用)→ 【一次情報】欧州委員会「New rules for a more circular European automotive sector」(2026-08-12。発効日が2026年8月13日であること、樹脂の再生材目標が2032年に15%・2036年に25%であること、鉄鋼・アルミの目標が2033年であることの出所)→ 【当事者公式】Envalior「Envalior and SECARA collaborate to deliver circular PA6 for automotive applications in line with coming regulations」(2026-08-25。★本記事は当該ページ本体に到達できておらず、内容は下記のRenewable Carbon掲載版に依拠している)→ 【当事者発表の掲載媒体】Renewable Carbon News 掲載のEnvalior・SECARA共同発表(覚書の対象、SECARAの触媒解重合がガラス繊維・難燃剤・添加剤を含む混合廃棄物を扱う設計であること、ドロップイン品質のカプロラクタムであること、Envalior社の規模、SECARAがEU EFRE/JTFおよびNRW州の支援を受けていること、担当者の見方の出所)→ 【当事者公式】SECARA 公式サイト(対象樹脂がPA6・PA66・PC であること、2026年パイロット(トン規模)→2028年デモ/初号機(キロトン規模)→2031年以降に年5万トン超という自社の道筋、Grüne Gründungen NRWの60万ユーロ(2026年2月)およびBMW・EXIST・ヴェルナー・ジーメンス財団・RWTHアーヘン関連プログラムの支援の出所)→ 【当事者公式】Sumika Polymer Compounds Europe「International Investment in France」(2025年3月付。総額1,500万ユーロ、年1万トン、5,000平方メートル、30名採用で総勢約85名、France 2030/ADEME による支援、Sud地域圏の30万ユーロの出所)→ Invest in Provence「Sumika Polymer Compounds is investing €15 million to open a recycling facility in Provence」(2025-03-13。起工式が3月6日であること、France 2030による支援がプロジェクト費用の30%にあたること、稼働見込みが2026年であることの出所)→ PolyesterTime「Sumika’s Bold Automotive Plastic Recycling Push in France」(2026-08-26。同社説明としての「1,300万ユーロ超」、ADEME事業概要としての総額2,140万ユーロ・France 2030から600万ユーロ、年1万トン超の再生PP、トルコ拠点と合わせ年2.5万トン超、原料が自動車の工程内廃棄物と廃車由来であることの出所)→ Plastics News「Sumika invests €13m in French automotive PP recycling ahead of ELVR targets」(★本記事は当該ページに到達できておらず、見出しと検索結果の要約のみに依拠している。投資額の表記が資料間で分かれる旨の根拠として挙げる)→ 【当事者公式】EuRIC「Council position sends mixed signals on ELV circularity」(2025-06-18。「60か月で廃車樹脂の30%のリサイクル目標に対し72か月後の新車には3.75%しか求められない」という指摘、「信頼性と投資家の信認を損なう」という表現、25%から15%への引き下げを後退とする批判、および輸入に対するミラー条項とEU域内外を問わない第三者監査を歓迎するという評価、マリア・ベラ・デュラン氏の「自動車メーカーが新車に再生プラスチックを使うと約束した場合にのみリサイクル率は高められる」という発言の出所。★理事会の立場の段階の声明であり最終条文へのコメントではない)→ 【一次情報】欧州議会「Circular economy: deal on new EU rules for the automotive sector」(共同立法者の合意内容、クローズドループ枠が目標の20%である旨の確認に使用)→ 【一次情報】環境省 報道発表「令和7年度補正予算循環型社会形成推進事業費補助金(自動車における再生材市場構築のための産官学連携推進事業)の三次公募について」(2026-09-07。公募期間・締切10月30日17時必着、補助対象が分析装置と破砕設備の2本立てであることの出所)→ 【当事者公式】EuRIC「EuRIC becomes Recycling Europe: A new name for a stronger voice」(EuRICがRecycling Europeへ改称したことの確認に使用)→ FEN PlaPedia「EUの再生材に『欧州産優先』を──業界3団体が共同声明。ただしPPWR第7条は、域外材料を『同等性』を条件に認めている」(2026-09-08。PPWR第7条の域外材料の扱いと、包装側の実施法令の意見募集)→ FEN PlaPedia「再生材の『数え方』を法律が指定する──カリフォルニアAB 2253が知事の手元へ」(2026-09-05。マスバランスの配分方式をめぐる論点)→ FEN PlaPedia「環境省の自動車再生材補助が3回目の公募へ、締切は10月30日17時」(2026-09-09。国内の自動車再生材の政策と、分析装置・破砕設備への補助)EUR-Lexの再使用条件:© European Union, 1998–2026(eur-lex.europa.eu)。EUR-Lexの再使用方針に従い、出所を表示して利用しています。訳出は本記事によるもので、公定訳ではありません。
出典の性質について:EUR-Lexの規則本文(官報)、欧州委員会のニュースページ、欧州議会のプレスリリースは一次情報である。Envalior、SECARA、Sumika Polymer Compounds Europe、EuRICの各ページは当事者による公表資料である。Invest in Provence は地域投資促進機関の公表資料である。PolyesterTime、Plastics News は二次情報である。
確認できていない点:①Envalior公式サイトの当該ページ本体には到達できていない。ただしRenewable Carbon Newsが同社リリースを全文転載しており(発表元の日付は2026-08-25、掲載は9月2日、更新9月9日)、担当者の発言はこの転載版の逐語から訳出した。発表日2026-08-25の根拠はこの転載版の記載のみである。②Plastics Newsの2記事(住化・Envalior)はいずれもページ本体に到達できていない。投資額が資料間で分かれるという事実の根拠としてのみ用いており、同紙固有の記述は本文に採用していない。③住化のフランス拠点の投資額は1,500万ユーロ/1,300万ユーロ超/プロジェクト総額2,140万ユーロと資料間で分かれる。対象範囲・基準時点が不明のため、いずれかを採用する判断はしていない。④同拠点の稼働開始の実績は確認できていない。地域機関の記載にある「2026年」は見込みである。⑤トルコ拠点の個別の能力は報道に記載がなく不明。⑥SECARAの本社所在地は、NRW州およびRWTHアーヘンとの関係が同社サイトから読めるが、正確な住所は確認していない。設立年についても同社サイトでは明示を確認できず、2024年という記載は第三者資料に基づく。⑦附属書XIII Part A第3項の国単位の基準について、評価の主体・手続・様式は条文に明示がなく、実施法令待ちである。⑧第6条4項が2026年9月14日から適用開始となることの実務上の効果について、本記事は「委員会のルールづくりの権限と期限が動き出す」と読んだ。これは条文の構造からの読み取りであり、公式な解説に基づくものではない。⑨第33条2項の30%と第6条1項・2項から計算した3ポイントは、分母・単位が異なるため算術的に比較できない。本記事は方向性の比較にとどめている。⑩EuRICの声明は2025年6月18日付で、理事会の立場の段階のものである。同団体が最終条文について同じ指摘を維持しているかは確認していない。⑪条文の訳出は本記事によるもので、公定訳ではない。⑫日本が附属書XIIIの要件を満たしうるかどうかについて、本記事は評価していない。⑬EUの規則では、前文(recital)は立法の趣旨を示すものであって、それ自体が義務を定める条項ではない。本記事は前文第28項・第30項・第31項を立法者の意図として引用しており、実際の適用は第6条4項と附属書XIIIの文言によると整理している。⑭第6条4項(b)の「2030年8月14日から」を、域外材料の算入開始日と読むか、域外材料に課す条件の適用開始日と読むかについて、本記事はどちらか一方を正しいと判断していない。公式な解説は本記事の調査範囲では見つかっていない。⑮第6条4項第2段落の報告期限は条文本文では2028年9月30日、前文第31項では2028年8月14日となっており、資料内に齟齬がある。本記事は条文本文を採用した。⑯EuRICが最終条文についても同じ指摘を維持しているかは確認していない。同団体サイトには2025年11月付の別の共同声明があるが、本記事では確認していない。⑰第35条2項に基づく経路(EU由来の廃車を域外で処理して第33条の目標に算入する形)について、本記事は条文の存在を示したにとどまり、日本での実現可能性・手続・採算は検討していない。
更新の可能性:本記事は2026-09-10時点の情報です。第6条5項の実施法令(2028年8月31日期限)、第6条4項に基づく影響評価の報告(2028年9月30日期限)、第6条6項の適用除外の委任法令、鉄鋼・アルミに関する委任法令により、状況は変わりえます。輸出・投資・認証に関する判断の前には、最新の一次情報と専門家の確認をお願いします。
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