この記事に出てくる用語は、どう読めばよいか?

分析研究発表を扱うため、聞き慣れない語が出てくる。先にまとめて置いておく。

用語 この記事での意味
マテリアルリサイクル 使用済みプラスチックを溶かして、再び材料として使う再生の方法
水平リサイクル マテリアルリサイクルのうち、元と同じ種類の製品に戻すもの(例:シート→シート)
ケミカルリサイクル 樹脂を化学的に分解して、原料の段階まで戻す再生の方法
モノマー プラスチックを合成するための基礎原料。これが多数つながって樹脂になる
光触媒 光が当たることで化学反応を進める働きをする物質。反応そのものでは消費されない
第三級アルキルエステル エステル(酸とアルコールが結合した構造)の一種。今回の技術で「切れる場所」として使われる構造
ラクトン 環状のエステル化合物。今回の分解反応で、モノマーとは別に生じる物質
ポリアリレート(PAR) 耐熱性・強度に優れたエンジニアリングプラスチック(機械部品などに使われる高性能樹脂)の一種
ヤング率 材料の変形しにくさを示す値。大きいほど硬い
防炎剤 燃え広がりにくくするためにシートなどに加える添加剤
ペレット化 再生した樹脂を、成形しやすい米粒状の形に整える工程

※本表は読みやすさのために本記事が整理したものであり、各発表資料の用語解説をそのまま引き写したものではない。第三級アルキルエステル・モノマー・テレフタル酸については、山口大学らの発表資料にも用語解説が付されている。

山口大学らは、何を開発したのか?

事実研究グループの中心は、山口大学大学院創成科学研究科の西形孝司 教授である。共同研究には、産業技術総合研究所 触媒化学研究部門の谷口剛史 上級主任研究員、日本工業大学の小池隆司 准教授らが加わった。開発されたのは、新しいケミカルリサイクル技術「コアブロックテクノロジー」である。2026年8月20日に4機関の連名で発表された。

分析ケミカルリサイクルは、溶かして再成形するマテリアルリサイクルとは性格が違う。色や汚れの履歴をいったん切り離せる点が特徴になる。

従来、何が難しかったのか?

事実発表は、これまでのアプローチを2つに整理している。既存のプラスチックを分解する「直接分解法」と、分解の起点(トリガー)をあらかじめプラスチックに組み込む「分解トリガー法」である。

事実前者について発表は、「プラスチックの種類ごとに専用の化学反応が必要なためその開発には多くの時間と労力が費やされてきました」と述べている。後者についても「個々のプラスチックに適したトリガーを別々に設計する必要があり、同様の課題を抱えていました」と記載されている。

事実さらに発表は、分解のための化学反応(熱分解、水素化分解など)についても課題を挙げている。いずれの場合も「その分解に高エネルギー条件を必要とする場合があり、大量のエネルギー消費とそれに伴う温室効果ガス排出の観点からも問題となっています」という記述である。

分析ここは実務の感覚とよく合う。樹脂ごとに条件が違うということは、設備も条件出しも樹脂ごとに要るということである。多品種を扱う現場ほど、この「樹脂ごとに別物」という構造がコストになる。

「ユニバーサル分解コア」とは、何をするものか?

事実研究グループが設計したのは、第三級アルキルエステル構造を持つ「ユニバーサル分解コア」である。反応原理として発表が挙げているのは、第三級アルキルエステルの炭素-酸素結合が光触媒による一電子移動で選択的に切断される点である。その際には安定な第三級アルキルラジカルが生成する。この原理に基づき、テレフタル酸をベースとした分解コアが開発された。

事実この分解コアは両末端にカルボン酸を持つため、様々なモノマーと結合させることが可能である。発表は、構造の異なる3種類のプラスチックに共通して導入できることを実証したとしている。3種類とは、ポリアリレート(PAR)・ポリエチレンテレフタレート(PET)・ポリウレタンである。

事実なお発表の【研究のポイント】は、これら3樹脂を「など異種プラスチック」として挙げている。適用先を3種類に限定する記載ではない。実証データが示されているのが、この3種類である。

分析言い換えると、これは分子の中に「ここで切れる」という決まった場所を作っておくという考え方である。しかもその「切れる場所」の部品を、樹脂の種類をまたいで同じものが使える。分解の方法を樹脂ごとに開発するのではなく、分解の入口を規格化してしまう発想と読める。

どんな条件で、どれだけ分解できたのか?

事実発表は、3種類すべてのプラスチックが同一の光触媒条件で分解されたと記載している。条件は室温・常圧・365nm光照射である。分解効率は最大99%、反応時間は2〜4時間だったと確認されている。

事実この反応では、分解後にモノマーと、分解トリガー部位から生じるラクトンが得られる。発表は「モノマーは元のプラスチックを作る際に再利用され、ラクトンはアップグレード品としての使用が期待されます」としている。

事実物性についても記載がある。従来の分解トリガー法では、分解性を付与すると物性が低下するという課題があった。これに対し発表は、ポリアリレートに本コアを導入した場合について、同等の引張強度、ヤング率、透明性を維持できることを実証したとしている。理由として挙げられているのは、コアが元のプラスチックの骨格(ベンゼン環)と構造的に類似している点である。

事実ここには、発表の中で主張の粒度に差がある。【研究のポイント】は、この分解コアが「ポリアリレート・ポリエチレンテレフタレート・ポリウレタンなど異種プラスチックに元のプラスチックと同等の強度や耐熱性を維持しつつ、分解性を導入することができます」としている。一方、【研究成果】で具体的なデータが示されているのはポリアリレートの引張強度・ヤング率・透明性のみである。PET・ポリウレタンの物性値と、耐熱性の測定値は、今回の発表資料には記載がない。

事実実際の再生工程も示されている。成形した透明なポリアリレートフィルムを破砕し、開発した光触媒反応を行うと、反応後にモノマーが沈殿してくる。沈殿したモノマーはろ過により簡単に回収できるとされ、これによりケミカルリサイクルが完結すると記載されている。

事実発表の【今後の展望】は、この先の見通しも示している。選択的切断により原料のモノマーがほぼ純粋な状態で回収可能であり、この回収モノマーを再び重合させることで「プラスチックの繰り返し再生産が可能となります」という記述である。

事実コスト面についても言及がある。分解コアのベースとなるテレフタル酸は、発表の説明では「世界で年間数千万トン生産されている汎用かつ安価な化学物質」である。発表は、産業規模での実用化におけるコスト面での優位性も備えているとしている。

項目 発表に記載されている内容
分解条件 室温・常圧・365nm光照射(3樹脂すべて同一条件)
分解効率 最大99%
反応時間 2〜4時間
対象樹脂 ポリアリレート(PAR)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリウレタン(いずれも分解コアを導入したもの)
回収物 モノマー(沈殿→ろ過で回収)と、トリガー部位由来のラクトン
物性 ポリアリレートで、引張強度・ヤング率・透明性が同等と実証
研究資金 JST 戦略的創造研究推進事業 ALCA-Next(課題番号:JPMJAN23C6)

出典:山口大学・科学技術振興機構・産業技術総合研究所・日本工業大学の発表資料(2026年8月20日)より作成。※光触媒の種類・使用量、溶媒、処理スケール、単位あたりのコスト、実用化の時期は今回の発表では触れられていない。

では、いま市中にある廃PETも分解できるようになったのか?

分析そうではない。ここは読み違えやすい部分なので、先に結論を書いておく。今回の技術の対象は、分解コアを組み込んで新たに作られたプラスチックである。

事実発表の【研究成果】は次のように書いている。「省エネルギーなLED光で駆動する光触媒で分解可能なプラスチックを開発しました。このプラスチックには、光触媒分解性コアという『分解の起点となるコア』を導入することで、ケミカルリサイクルできるように設計しています」。

分析発表にPETの名前が出てくるため誤解しやすい。しかし、いま市中で回収されているPETボトルがLED光で分解できるようになった、という話ではない。ここを取り違えると、既存の回収物に対する影響を実際より大きく見積もることになる。

分析とはいえ、意味が小さいという話でもない。分解性を仕込みながら物性が落ちない点、そしてコア部品が樹脂をまたいで共通に使える点は、材料設計の側の選択肢を増やす。東レが8月21日に発表したCFRPの材料選定技術も、リサイクル性と力学特性を両立する樹脂を選ぶという同じ方向の話だった。「戻せる素材を選ぶ」から「戻せるように設計する」へ、という軸が続けて具体化してきている。

発表自身が挙げている、いまの状況は?

事実発表の【社会的な背景】には、いくつかの数値が示されている。プラスチックは年間4億5,000万トン以上生産されており、「世界でリサイクルされているプラスチックはわずか9%に過ぎず、12%が焼却、79%が埋立処分されています」。さらに「プラスチックの構造が強固なためにそれを分解できる化学反応が限定的であることから、日本でのケミカルリサイクルの普及率はわずか3%しかありません」と記載されている。

事実これらの数値について、発表資料には出典の記載がない。また同発表は、この解決には「分解の省エネルギー性に加え、プラスチックの種類によらず共通の分解技術を開発することが急務となっています」と続けている。

分析数値そのものは本記事で裏取りができていないため、研究グループがどの状況認識に立っているかを示すものとして扱いたい。そのうえで押さえておきたい点がある。研究側が普及の制約として名指ししているのは「分解できる化学反応が限定的である」ことである。そして急務としているのは、共通の分解技術の開発である。技術の側から見た難所がどこにあるかの、当事者による整理として読める。

萩原工業・鹿島・竹中工務店の実証は、何を確かめるのか?

事実萩原工業株式会社・鹿島建設株式会社・株式会社竹中工務店の3社が発表を行ったのは、2026年8月6日である。建設現場で使用する防炎シートの水平リサイクルに関する実証事業を開始した、という内容である。3社は「防炎シートの水平リサイクルは建設業界において初めての試み」と記載している。

事実この「初めての試み」は、発表資料の中で3社の認識として述べられているものである。第三者調査による裏づけは記載されていない。

分析そのため本記事でも、3社の見解として扱う。

事実発表は水平リサイクルを、「使用済み製品を回収、再原料化して、再び同じ種類の製品を製造するリサイクル」と定義している。マテリアルリサイクルの一種という位置づけである。3社は、廃プラスチックなどを燃焼させて熱回収するサーマルリサイクルなどに比べてCO2排出量が少ない、と説明している。環境負荷の小さい先進的なリサイクル手法だとしている。ただし、この比較の根拠となる算定条件やLCA等の定量データは、今回の発表資料には示されていない。水平リサイクル一般についての位置づけの説明として読むのが妥当である。

スキームは、どう組まれているのか?

事実発表が記載している流れは次のとおりである。鹿島および竹中工務店が「リサイクル可能な素材で製造された当社製防炎シート」を購入し、実際の施工環境で使用する。使用後の防炎シートは各建設現場で分別回収され、萩原工業のリサイクル施設へ搬入される。萩原工業が再製品化し、再製品化された防炎シートを鹿島および竹中工務店が再び購入して各建設現場で使用する。3社はこの資源循環スキームを継続的に運用し、実現可能性を検証する。

分析この構造には特徴がある。作り手・使い手・戻す先の3者が最初から固定されている点である。誰が排出し、誰が処理し、誰が買い戻すかが決まっているため、材料の素性が最後まで分かる。逆に言えば、この輪の外から同じ材料を持ち込んでも、同じように受け入れられるとは限らない。

工程 担い手 発表に記載されている内容
製造・販売 萩原工業 「リサイクル可能な素材で製造された当社製防炎シート」を販売
使用 鹿島建設・竹中工務店 実際の施工環境で使用
分別回収 鹿島建設・竹中工務店 各建設現場で分別回収し、萩原工業のリサイクル施設へ搬入
再製品化 萩原工業 「ブルーシートのリサイクルで培ってきた特殊洗浄や再生ペレット化などを進化させた自社技術」により再製品化
再使用 鹿島建設・竹中工務店 再製品化された防炎シートを再び購入し、各建設現場で使用

出典:萩原工業株式会社の発表(2026年8月6日)より作成。※シートの樹脂種別、実証の期間、対象となる現場の数、取り扱う数量、再生材の配合率、リサイクル施設の所在地、公的補助の有無、価格条件は、いずれも今回の発表では触れられていない。

防炎剤の何が、水平リサイクルを難しくしていたのか?

事実発表の【背景】は次のように述べている。「建設現場で発生するプラスチック廃棄物の一つである使用済み防炎シートは、含有する防炎剤の問題から水平リサイクルが困難とされていましたが、当社の技術開発によって、その実現に向けた技術的課題の解決に目処が立ちました」。

事実再製品化の方法として記載されているのは、「ブルーシートのリサイクルで培ってきた特殊洗浄や再生ペレット化などを進化させた自社技術」である。技術の具体的な内容や、防炎剤に対して何を行うのかは、今回の発表では触れられていない。

事実ここで押さえておきたいのは、「防炎」が制度上の概念だという点である。防炎規制は消防法に位置づけられており、防炎性能基準に適合したものが「防炎物品」と呼ばれる。工事用シートは、消防法施行令第4条の3に定める防炎対象物品に含まれる(東京消防庁)。建築基準法に基づき建築材料を対象とする「難燃」とは、制度上の位置づけが異なる。

分析つまり再生品を再び防炎シートとして販売するには、再生後の材料であらためて防炎性能を成立させ、確認する工程が要ることになる。これが、この案件で技術的な難所とされているものの正体だと読める。加えて、添加剤入り樹脂の再生では、加工温度や滞留時間が添加剤の挙動に影響しうることも一般に知られている。

分析萩原工業が具体的に何をどう手当てしたのかは、今回の発表からは判別できない。素材の側を作り替えたのか、処理工程の側を作り込んだのか、あるいはその両方なのかも書かれていない。実証段階での開示範囲としては自然であり、続報で明らかになる部分と見ておきたい。技術の中身が示された段階で、添加剤入り樹脂の再生に効く要素が具体化してくるはずである。

分析そのうえで、FENの読者にとって見逃せないのは工程の名前である。特殊洗浄と再生ペレット化——つまり洗浄と押出の作り込みが、この案件の技術的な中身として名指しされている。添加剤入り樹脂を戻す局面で効いてくるのが、装置と条件出しの側であることを示す事例と読める。

なぜ、技術ではなくサプライチェーンを検証するのか?

事実発表は、技術的な目処が立ったと述べた直後にこう続けている。「一方で、水平リサイクルを実用化するには、技術的に可能であるだけでなく、使用済みの防炎シートを継続的に回収し、安定的にリサイクル工程に投入できる仕組みが必要です」。そこで3社は、実証の範囲を防炎シートのリサイクルだけに留めなかった。リサイクルに関わるサプライチェーン全体としての実現可能性も検証する実証事業に取り組むこととした、としている。

分析この一文は、実証の性格を素直に説明している。確かめようとしているのは「戻せるか」ではなく「集め続けられるか」である。ゼネコン2社が入っているのは、まさに継続的な排出と分別を担う側だからだと読める。技術の目処が立ったあとに残る仕事が回収の側にある、という構図がそのまま実証の設計になっている。

事実背景としてはもう一点、法制度への言及がある。2022年4月に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が施行されたことである。発表は、プラスチック製シートなどについても水平リサイクルを含めたマテリアルリサイクルの推進が求められている、としている。

2件を並べると、何が読めるのか?

分析研究成果と現場の実証という、レイヤーの違う2件である。それでも並べる意味があるのは、打たれている手が同じ形をしているからである。山口大学らは分子の中に切れる場所を仕込んだ。一方、萩原工業らが技術的課題の解決として挙げているのは「ブルーシートのリサイクルで培ってきた特殊洗浄や再生ペレット化などを進化させた自社技術」である。こちらで名指しされている手当ては、処理工程の側にある。共通しているのは、対象を特定の樹脂・特定の製品に絞ったうえで、循環を一本の輪として成立させようとしている点である。

分析そのうえで、両者の力点の違いは押さえておきたい。残る難所をどこに置いているかが、2件で一致していない。萩原工業らは「継続的に回収し、安定的にリサイクル工程に投入できる仕組みが必要」と明記し、実証の設計そのものを回収の側に振り向けた。対して山口大学らの発表は、普及率が3%にとどまる理由を「分解できる化学反応が限定的である」ことに求めている。そのうえで「共通の分解技術を開発することが急務」としている。同発表に「収集」「分別」「サプライチェーン」への言及はなく、難所は技術の側に置かれている。

分析この食い違いは、どちらかが間違っているという話ではない。研究の段階と実証の段階では、当事者から見えている壁が違うということである。技術がまだ立っていない段階では技術が壁になり、技術に目処が立った段階では材料が集まるかどうかが壁になる。2件を並べると、その順番がそのまま見える。研究の側の成果が現場に届くころには、同じ関門を通ることになる。

観点 山口大学ら(コアブロックテクノロジー) 萩原工業・鹿島・竹中工務店(防炎シート)
段階 研究成果の発表(論文公開) 実証事業の開始
手当てが名指しされている場所 分子の構造(分解コアの導入) 処理工程(特殊洗浄・再生ペレット化を進化させた自社技術)※素材側の詳細は今後の開示に期待
戻し方 ケミカルリサイクル(モノマーまで分解) マテリアルリサイクル(洗浄・ペレット化して同じ製品へ)
主な障壁として挙げられているもの 樹脂ごとに分解法が要ること、高エネルギー条件 防炎剤の存在。加えて、継続的な回収の仕組み
対象 分解コアを組み込んで作られたプラスチック 萩原工業製の当該防炎シート
FENの読者との接点 将来、入ってくる材料の性質が変わりうる 特殊洗浄・再生ペレット化という、いまの工程そのもの

出典:両発表資料より作成。※本表は2件の位置づけを整理したものであり、優劣を比較するものではない。段階も対象も異なるため、数値での比較は行っていない。

回収・選別を担う事業者にとって、何が変わりうるのか?

分析クローズドループ型のスキームが増えると、中間処理を担う側の立ち位置は少し動く。材料の素性が最初から分かっているぶん、選別で見分ける仕事は減る。代わりに、どの現場から出たどの製品がどのスキームに属するかを、排出の段階で分けて管理する仕事が増える。萩原工業らの実証で、ゼネコン側の役割として「各建設現場で分別回収」が明記されているのは、この作業が実証の対象そのものだからだと読める。

分析もう一点、シート類という材料の性質も押さえておきたい。防炎シート・ブルーシート・養生材は、建設現場で継続的に、まとまった量が出る。かさばり、汚れ、破れがあり、これまで熱回収に向かいやすかった材料でもある。この領域で水平リサイクルの経路が立ち上がるなら、回収と前処理を引き受けられる事業者にとっては、扱える品目が増える局面になりうる。

逆に、慎重に見ておくべき材料は何か?

分析今回の2件から「難しい材料も戻せるようになった」と結論するのは、材料に対して踏み込みすぎである。留意点を5つ挙げる。

  • どちらも対象が限定されている。山口大学らの技術は分解コアを組み込んだプラスチックが対象である。萩原工業らの発表の【背景】は、「使用済み防炎シート」一般について技術的課題の解決に目処が立ったとしている。ただし実証で回すのは同社製シートに限られる。他社製の防炎シートに同じ処理が適用できるかは述べられていない。
  • 研究成果と事業化は別である。コアブロックテクノロジーは論文として公開された研究成果であり、処理スケール・単位あたりのコスト・実用化の時期は今回の発表では触れられていない。企業との連携についても記載がない。
  • 防炎剤への手当ての中身は、これからの開示にかかる。萩原工業の技術は「特殊洗浄や再生ペレット化などを進化させた自社技術」とのみ記載されている。再生品で防炎性能をどう成立させ、確認するかも今回の発表の範囲外である。
  • 実証の規模が公表されていない。期間・現場数・数量・配合率のいずれも記載がなく、どの程度の量が回るスキームなのかは判断できない。
  • 背景数値に出典がない。山口大学らの発表に示された世界のリサイクル率9%や日本のケミカルリサイクル普及率3%は、資料に出典の記載がなく、本記事では確認できていない。

分析そのうえで、方向としては見ておく価値がある。添加剤が入っているから戻せない、樹脂が違うから同じ方法では扱えない——この2つは、廃プラの現場でよく聞く制約である。その両方に対して、別々のレイヤーから手が入り始めている。すぐに取引条件が動く話ではないが、数年単位で入ってくる材料の性質が変わりうる、という前提で自社の工程を見ておくと備えになる。

いま、何から手を付けられるか?

分析できることは多くないが、順序ははっきりしている。まず、自社が扱うシート類の棚卸しである。防炎シート・ブルーシート・養生シートについて、月次でどれだけ入ってきて、どの程度の汚れと異物があり、いま何に回しているかを数字にしておく。クローズドループ型のスキームに声がかかるとしたら、聞かれるのはこの数字である。

分析次に、自社の洗浄と押出の工程が、添加剤入りの材料に対してどこまで対応できているかを整理しておきたい。今回の実証で技術の中身として名指しされているのがこの2工程だからである。ここが強い事業者は、メーカー主導のスキームに前処理として組み込まれる余地がある。

分析そのうえで、設備の追加投資は引き取り先の条件が見えてから決めたい。2件とも受入条件も価格も公表されていない現時点では、どこまで工程を作り込むべきかを判断する根拠がない。候補となる相手と話をしてから工程設計に入る順序を勧めたい。