通常、プラスチックリサイクルで使用される押出機は98%以上、スクリューが一本の一軸押出機が使用されます。
リサイクル分野では高度な混練技術を要するケーズはバージン原料よりも少なく、用途もハイレベルなものはそれほど多くないためです。
しかしながら、最近では通常の商品にリサイクル原料を使用するニーズが高まってきました。特にEU市場ではリサイクル原料の使用が法制化されるなど、より高度な使用方法が模索されています。
そのような中で、プラスチックリサイクル分野でスクリューが二本ある二軸押出機が注目され始めました。
ICMA社のリサイクル用二軸押出機の構成
生産量:2,500kg/h
1.重量フィーダー:リサイクル原料や添加剤、着色用マスターバッチ、フィラーを計量して投入
2.供給スクリュー:上記の異なる材料を供給フィーダーに搬送
3.供給フィーダー:材料を押出機に押し込みます
4.二軸押出機:ICMA社の3ベント二軸押出機 スクリュー径112mm L/D48 モーター691kw
5.脱臭装置:ウォーターストリッピングシステム(2セット)でVOCを60~90%低減
6.FIMICレーザーフィルター:全自動異物除去フィルター(2セット)
7.ギアポンプ:1台
8.ペレタイザー:水中カット方式
9.振動ふるい:ペレットの分級装置1台
10.サイロタンク:1
二軸押出機(リサイクル用)の特徴と利点
二軸スクリューによる高品質ペレット
二軸押出機をリサイクル用途に応用しています。スクリューが1本の一軸押出機に比べてスクリューが二本の二軸押出機は樹脂の混練性が圧倒的に優れています。
リサイクルペレットの品質を向上させるための添加剤、改質剤、フィラー、顔料などを均質に混練することが可能になります。
一軸押出機では達成できない混練性で、自動車産業向けなどの高品質なペレットを加工することが可能になります。
同社の二軸押出機では、特に混練性が高い「同方向」の回転により高い混練性能を有しています。
二軸押出機の同方向回転により、よりファインに均質に混練された樹脂になります。
二軸押出機の優れた脱気性能
リサイクルペレット(特に容器リサイクル系の再生ペレット)の大きな問題点の一つである脱気性能が二軸押出機は一軸押出機に比べて優れています。
一軸押出機にもベントや真空ポンプなどで脱気する機能はあるのですが、スクリューが一本の一軸押出機の内部はほぼ真空状態に近く、発生したガスの抜け道がないのです。
一方で、二軸押出機は、「同方向回転」により樹脂が練られる際に樹脂内部の気泡が樹脂表面に到達して破裂して外部に出てきます。さらに、二軸押出機では内部に空気が通る隙間が存在しているので発生したガスが逃げる抜け道があります。
この混練と内部の隙間により、一軸押出機に比べて圧倒的な脱気性能を有しています。
脱気は以下のように行われます。
臭い成分の低減
上記の二軸押出機の優れた脱気性能に加えて、ICMA社はウォーターストリッピングといわれる技術を採用して臭い成分の大幅な低減に成功しています。(下図ご参照)
ウォーターストリッピングシステムとは、押出機の内部に水を噴射します。200℃前後に加熱されている押出機の内部に噴射された水分は瞬間的に水蒸気となり気体化します。
この気体化した水蒸気が真空ポンプで回収される過程で、内部で発生しているVOCガスなどと一緒にシリンダー外に排出されます。その結果、臭い成分を60~90%低減することが可能になります。
この低減率については、VOCの種類や、噴射する水分の割合などにより変化します。
通常、水分は吐出量に対して1-1.5%程度を噴射します。
上図でサンプル番号の意味は以下となります。
サンプル1:元材料のVOC
サンプル2:3ベントによる自然脱気
サンプル3:少量の水分添加による脱気
サンプル4:適量の水分添加による脱気 ← ベストサンプル
質量フィーダーによる精緻なコンパウンド
5種類以上の材料を連続的にコンパウンドすることが可能になります。この供給については質量フィーダーを使用して供給しますので、精緻なコンパウンドを行うことが可能になっています。
スクリューの回転数を調整するだけの定量フィーダーでは、精密な質量の測定と供給はできません。質量フィーダーを使用することにより、より高品位な材料を供給することが可能になります。
完全自動で異物除去 (FIMIC レーザーフィルター)
レーザーフィルターで最も実績があるFIMIC社レーザーフィルターを搭載しています。2台のレーザーフィルターを連結して、1台目で大きな異物を除去、2台目のフィルターで細かい異物を捕捉して除去します。これで180メッシュの異物除去が連続的に可能になります。
特に容器リサイクルペレットは一般的に30~60メッシュくらいでの異物除去が一般的ですが、ICMA社の当該機種では180メッシュでの異物除去が可能になります。このレベルで異物除去を実施できるリサイクル工場はほとんどないため、容器リサイクルペレットの高度利用にも資することができます。
高い生産能力 2,500kg/h
ICMA社の二軸押出機は最大10トン/時の生産能力の機種も提供可能です。ご紹介している機種については、2.5トン/hの生産能力となっています。これは、容器リサイクルペレットの製造において150メッシュスクリーンを使用した異物除去を行うために使用するレーザーフィルターの最大処理能力が2.5トン/hであるためです。
異物を連続的に除去するレーザーフィルターの能力の制限がなければ14トン/hの機械をご提供することも可能です。
今後、ヨーロッパと同様にリサイクルペレットを一定割合使用する法律が整備されることが予想されます。その時に使用される押出機は今までのようなサイズの押出機では到底需要に応えることができません。
日本の産業がリサイクルペレットを一気に使用し始めるときに対応できる押出機は2トン/h以上の機種で大量に生産できないと需要に応えることは難しいでしょう。
このことは、すでにヨーロッパ市場ですでに起こっている動きに合わせてICMA社が大型二軸押出機の販売実績を重ねていることから、日本でも同様の状況になることが大いに予想されます。
EU市場の背景と展望
ヨーロッパでは自動車産業にリサイクル材を使用する際、通常のリサイクル用押出機の生産能力では需要をまかなうのが難しく、大型の二軸押出機が必要とされています。
近年、ヨーロッパでは製品製造時にリサイクル原料を使用することが法制化されており、ICMA社は化学メーカーや自動車メーカーの要求に応じて、PCR材のリサイクルに適した仕様を提供し、実績を積んできました。
日本でもリサイクル原料の使用が法制化されることが検討されており、ICMA社がヨーロッパで培った高度リサイクル技術が日本市場においても必要性が高まっています。
日本の市場では、自動車用リサイクル分野、家電リサイクル分野、容器リサイクル法制下での再生ペレット生産など、多岐にわたる分野での展開を想定しています。
ICMA社の会社概要と製品の特徴
ICMA SAN GIORGIO S.p.A.は1907年に創業し、1967年から二軸押出機の生産を開始しました。現在では、二軸押出機の老舗専業メーカーとして知られ、大型の二軸押出機を得意としています。主な顧客はヨーロッパの化学メーカー等です。
近年ではリサイクル分野でのコンパウンド用途などで実績を積み重ね、自動車産業向けのリサイクルコンパウンドで実績をあげています。
ヨーロッパ市場では二軸押出機の老舗として知られているイタリアICMA社が、自動車業界向けのリサイクル設備としての供給実績を伸ばしています。
イタリアICMA社(イクマ社) (ICMA SAN GIORGIO S.p.A. 所在地:Via Madonnina, 75, 20010 San Giorgio su Legnano MI, Italy)は、プラスチックリサイクル分野においてヨーロッパの自動車産業などで求められる、異物やVOCなど臭い成分の除去などの特徴を備えています。
テストセンター
ICMA SAN GIORGIO S.p.A.は、テストセンターを所有しており、そこで自社材料を持ち込んでテストを実施することが可能です。(有償)その設備にはレーザーフィルターや水中カットペレタイザーなども含まれています。お客様は事前にテストを実施し、効果を確認した上で発注を行うことが可能です