プラスチックリサイクルは仕入れと販売のバランスが難しい

プラスチックリサイクルビジネスの仕入れと販売のバランスについてお話をしてみたいと思います。

【動画解説】ページの一番下にこのページの動画版があります

プラスチックリサイクルの仕入れは意外と難しいということは別のページでお話させていただきました。

それから、プラスチックリサイクルの販売についても、別のページで解説しています。

仕入れと販売のバランスが難しい

ここでは、この仕入れと販売のバランスをとるのがプラスチックリサイクルの場合は、非常に難しいということお伝えしたいと思います。

プラスチックリサイクルを始めたいという方のためにお話をさせていただきます。決して脅す目的で書くのではなく、「こういう留意点があるんだ」ということを理解していただくために書きますので、内容にビビらないでください。

さて、プラスチックのスクラップというのは、当たり前ですが生産されているものではありません。
スクラップが目的で生産されているわけではなくて、あくまで生産の目的は製品となります。
スクラップの発生量は、その製品の生産量に比例してきます。

したがって、その製品の生産が安定しているか、していないかが仕入れの安定のポイントとなります。
安定している場合もあるのでが、安定していない場合も結構あるわけです。

参考記事 プラスチックリサイクルビジネスの収支計画の立て方

仕入れが不安定になるとき

ですので、プラスチックリサイクルビジネスを始めて、ある原料ソースをつかみ、そのソースをベースにビジネスプランを立てようとしているとします。

そのときそのスクラップが、果たして安定して発生している材料かどうか、確認が必要になります。

参考記事:プラスチックスクラップの仕入れに必要な検討ポイントとは?

ひょっとしたら、その材料を使う製品の売れ行きが悪いかもしれません。

ひょっとしたら、その会社がライバル会社の競争に負けて、生産量を落とすかもしれません。

あるいは、その業界自体がピークを過ぎて減産するかもしれません。

欲しいと思った季節にはスクラップ発生が足りないかもしれません。

生産工場が海外に移転してしまうかもしれません。

あるいは、その再生原料は人気があって、奪い合いで後から好条件を出した業者に奪われるかもしれません。

ちょっと意地悪で悪いケースばかり書き連ねましたが、よくあることなのです。

まったく逆もあります。

仕入れが過多になるとき

こちらの再生材料を使用する製品があまり販売が芳しくなく、生産量もそれほどでないときに、上記のケースとは逆に、スクラップの供給が過多となる場合もあるのです。

そうしますと、定期的に仕入れていたスクラップ(あるいは再生原料)が余ってきます。

しかし、あなたはそれを買うのを止めるのは難しい場合があります。

供給が限られる再生原料、サプライヤーがせっかく提供してくれている材料を「今要りませんので」と断りますと、サプライヤーも、その原料を売る先を見つけなくはなりません。一度離れてしまいますと、また需要が戻った時に「また買いたいので発注します」と言っても、もう相手にしてくれないということも起こりうるのです。

それが怖いので、再生原料(あるいはスクラップ)を購入する側は、需要が低くても買い続けなくてはならないケースが意外と多いのです。

一度断った材料を再度供給を要求しても、もう手遅れ。「新しいお客さん見つけたので売れません」と言われたら、今度は次のサプライヤーを探さなくてはなりません。

仮に新しくサプライヤーがいても、そのサプライヤーには既存客がいます。新規のあなたに販売してくれる供給余力があるとは限りませんし、単価も既存のライバルよりも高く買わないと供給してくれないでしょう。

また、仮に供給してくれたとしても、その再生材があなたの製品に適する物性がどうかもわかりません。

再生原料は物性も様々です。だから、一度適した材料を見つけたら、安易に変更もできなければ、(要らないときも)購入を断ることが難しいのです。

そうしますと、毎月生産より購入のほうが多くなり、原料倉庫がだんだん膨れてくるわけです。

仕入れの再生原料(スクラップ)はありますが、売れるのはちょっとしか売れないわけです。

1ヶ月目はまだ倉庫が空いてるから買えました。でも2ヶ月の購入で倉庫が埋まってしまってから、さらに3か月4か月5ヶ月ってどんどんどんどん在庫が増えていくわけなんです。

仕入れが過多になると資金繰りにも影響

スペースだけの話ではありません。仕入れを続けて在庫が増えるということは、そこに仕入れ資金も寝てしまっているということです。

当然資金繰りに関係してきます。

バランスをとるための調整弁が必要

さて、プラスチックのリサイクルビジネスというのは、仕入れも注意して見ていなくてはなりませんし、販売量も注意して見ていなくてはなりません。

両方のバランスを見なければいけないところが、普通の製造業と異なります。

バージン原料を使っている製造業なら、必要なときに必要なだけオーダーすればいいのですが、再生原料はサプライヤーの都合で購買しなくてはいけない場合が多いのです。

スクラップ(あるいは再生ペレット)を供給している会社が何を求めているかと言うと、毎月安定して発生したスクラップ(あるいは再生ペレット)を購入してくれるユーザーです。サプライヤーが気持ちよく販売できるように、購買側は様々な対策をしなくてはなりません。

もちろん、倉庫がいっぱいになっても買い続けるには、他社に転売するという能力やネットワークも必要です。どこかに調整弁を備えていないと、安心して仕入れを継続できません。

参考記事:樹脂ペレットを誰に売るべきか?

海外輸出などはこの調整弁に使われることが多いかもしれません。海外のバイヤーとのコミュニケーションを日ごろから取っておく必要があるのは、こういう調整の必要がでたときにスムーズに買ってもらうためです。

これからリサイクルビジネスに参入しようという方は、このバランスをとるということも必要になる場面(特に樹脂の市況が悪化したとき)があります。


村井健児

株式会社ファー・イースト・ネットワーク 代表取締役
慶應義塾大学経済学部卒業、三菱銀行(現三菱UFJ)にて法人融資、株式会社宣伝会議にて環境雑誌に関わる業務を経て、2002年からプラスチックリサイクル業界で経験を積む。
2006年株式会社ファー・イースト・ネットワーク創業。プラスチックスクラップ売買、再生樹脂ペレット売買、リサイクル用機械・プラントの輸入販売を行う。

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