
リサイクル原料を
自動車用材料として使うには
脱炭素・循環型経済への移行で急務となる「リサイクルPP(ポリプロピレン)」の自動車採用。市中回収の廃プラ(PCR材)を自動車用材料化するための課題と、具体的な解決策を解説します。
世界的な脱炭素化とサーキュラーエコノミー(循環型経済)への移行に伴い、自動車業界でも「リサイクルプラスチック」の採用が急務となっています。中でも、自動車部品の多くを占めるPP(ポリプロピレン)のリサイクル原料化は、多くの自動車メーカーが注力する最重要課題の一つです。
しかし、市中で回収された廃プラスチックを自動車用材料として実装するには、極めて高い技術的・品質的なハードルが存在します。本記事では、リサイクル原料(特にPCR材:ポストコンシューマーリサイクル材)を自動車用PPとして活用するための課題と、その具体的な解決策について詳しく解説します。
1. 自動車向けリサイクルPP市場の厳しい現実
リサイクルプラスチックと一口に言っても、その品質やグレードは千差万別です。自動車業界が求める水準は極めて高く、市場に流通している廃プラスチックの現状とは大きな乖離があります。
自動車グレードに達する廃プラは「ごく一部」
日本国内で排出される廃プラスチックのうち、素材として生まれ変わるマテリアルリサイクルに回るのは約2割(22%)にとどまります(出典:プラスチック循環利用協会「2023年 プラスチックのマテリアルフロー」)。さらに、そのリサイクル材の中から自動車部品の厳しい要求スペックに適合するのは、ごく一部にとどまるのが実情です。自動車業界で求められる材料は、いわば「エリート中のエリート」のみであり、適合する材料の入手自体が非常に困難な状況にあります。
回る廃プラ(2023年)
適合する廃プラ
価格と供給量の壁
自動車用PPとして需要が高い材料の価格相場(目安)は以下の通りです。
| 用途・グレード | MFR目安 | 価格相場(目安) |
|---|---|---|
| バンパー材 | MFR30程度 | 50〜60円/kg前後(※塗装の有無で変動) |
| バッテリーケース材 | MFR10〜20程度 | 90〜100円台前半 |
品質の高いリサイクル材は引く手あまたである一方、廃プラスチックは「意図して生産できるもの」ではないため、供給量(調達力)に上限があるという宿命を抱えています。急激な増産要求に応えることが難しく、品質とコストのバランスを取りながら安定調達する目利き力が不可欠です。
2. なぜ市中回収の廃プラ(PCR材)は自動車に使えないのか?
自動車メーカーが現在最も開拓を目指しているのが、容器包装リサイクル法などで回収される「市中回収の廃プラスチック(PCR材)」の活用です。しかし、これらを自動車部品に20〜30%配合しようとすると、以下の3つの致命的な壁に直面します。
3. リサイクル原料を自動車用PPとして活用するための解決策
これらの高いハードルを越えるため、最前線のリサイクル現場やコンパウンド(樹脂配合)工程では、高度なテクノロジーの導入が進んでいます。
【設備的アプローチ】欧州発の高度なコンパウンド技術
環境先進国であるヨーロッパのコンパウンドメーカーでは、PCR材を直接投入して高品質な自動車用ペレットを製造する「一気通貫」の二軸押出システムが標準化しつつあります。
- 押出機内で水分添加と真空引きを繰り返し、残留VOC(臭いの原因物質)を 60〜90%低減
- PCR材を直接投入する「一気通貫」の二軸押出システム
- 高品質な自動車用ペレットを安定製造
- 2段構えの自動レーザーフィルターでPCR材の不純物を確実に除去
- 異物のないクリーンな樹脂を精製
- 連続運転で安定した品質を実現
さらに光学式カメラ選別機により、完成したペレットを1粒ずつ全量検査(毎時1〜9トン)。黒点・形状不良・ヒゲのあるペレットを自動で弾き出し、品質を担保します。
ウォーターストリッピング
フィルターで異物除去
ペレット全量検査
【材料的アプローチ】最新の流動性改善と強度補強
物性の低いフィルムグレードのPCR材を自動車で使えるレベルに引き上げるため、独自の配合ノウハウが活用されています。
4. 自動車メーカーとリサイクル業界の歩み寄り
「リサイクル原料を使いながら、バージン(新品)樹脂と全く同じ物性と無臭を求める」——現在の自動車メーカーの要求水準のままでは、PCR材の本格的な導入は限界があります。
今後は、高度な脱臭・異物除去装置への投資や、新しいバイオマス改質剤・コンパウンド技術の開発といった「リサイクル側の技術革新」が進むと同時に、自動車メーカー側も「物性の要求水準をある程度緩和し、リサイクル材の特性に合わせた部品設計を行う」という歩み寄りが不可欠です。
廃プラスチックを価値ある自動車部品へと生まれ変わらせるためには、素材開発・機械設備・完成車メーカーが一体となった、新たなサプライチェーンの構築が求められています。
よくある質問(FAQ)
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