現在、中部地方の新設プラスチックリサイクル工場の設備を設置しております。1時間で1トンの破砕・洗浄・脱水・乾燥までが可能な本格的なプラスチックリサイクルラインになります。
設置中のリサイクルプラント概要
処理能力:破砕と洗浄・乾燥 1,000kg/h
押出造粒 600kg/h
前処理工程
粗破砕 ⇒ 金属除去 ⇒ 粉砕 ⇒ 高速洗浄 ⇒ 比重選別 ⇒ 脱水・乾燥 ⇒ ストックタンク
破砕・粉砕工程 1,000kg/h
スクラップを粗破砕
金属などを除去する磁力選別を行ってから粉砕
粉砕機に金属が入ってしまうことを防ぐために、磁力選別を行います。
洗浄工程 1,000kg/h
汚れが付着したプラスチックを洗浄します。
脱水・乾燥工程 500kg/h×2台
洗浄した樹脂、特に軟質のフィルムの脱水と乾燥は大変な作業ですが、この脱水乾燥機で水分率30%以上のスクラップを水分率3%以下に脱水乾燥します。
押出・造粒工程 600kg/h
ホッパー ⇒ 押出機 ⇒ レーザーフィルター ⇒ ペレタイザー(ストランド)
造粒工程
押出機で造粒していきます。600kg/hの能力です。
現在はこのような、市場回収品(ポストコンシューマー材)のリサイクルの需要が高まっています。
洗浄しても異物が残っているために、レーザーフィルターを接続して省力化を図ります。
プラスチックリサイクルの現状
昨今の大きな気候変動を受けて、世界的に気候変動への取り組みが強化されつつあります。(私的には気付くの遅すぎですが)
ヨーロッパなどでは製品を作る際はリサイクル原料を使用することが法律で決められたり、金融機関や機関投資家が企業に二酸化炭素の排出について改善を求めるようなニュースも多く聞くようになりました。
残念ながら、日本の企業は(一般的に)周りの雰囲気を見て方針を決めているような雰囲気で、住友商事などは機関投資家に指摘をうけてから石炭火力事業からの撤退をあわてて決めたりと、いまいちな対応が見受けられます。
そうは言っても、日本でも今までリサイクルできていなかった材料、特に市場回収品(ポストコンシューマースクラップ)を以下にリサイクルするかについて、以前よりかなり多くの取り組みが出てきました。
冒頭でお話したリサイクル工場は、一般企業が容器リサイクル法の枠組みのなかではなくポストコンシューマー材料に取り組むために自己投資をしたものです。
長期的なトレンドとしては、プラスチックのスクラップは国境をまたぐことはできなくなっていくのではないでしょうか。
✅ オーストラリアは2022年6月30日からすべてのスクラップの輸出を禁止しました。
✅ フランス大手船会社が2022年6月1日からHSコード3915のプラスチックスクラップの船への積載を受け付けないことになりました。追随している船会社も出てきているようです。(関連記事)
上記はほんの一例ですが、このような背景から、「自国で発生した廃棄物は自国で処理する」という流れは長期的には強まると思います。
2017年までは主に中国や東南アジアが廃棄物リサイクルの分業を請け負っていたわけですが、将来的には、リサイクル産業は地場産業となっていくと思われます。
プラスチックリサイルの課題
ポストコンシューマー材料に関して論点を絞りますと、その費用(コスト)は大きな課題の一つとなります。
これまで50年ほど続いてきたリサイクルのメインは工業端材です。工場から発生した大量の汚れていない端材をそのまま再生していました。汚れがないので洗浄もなく、コストは低く抑えることができます。
プラスチックリサイクルとコスト
一方でポストコンシューマー材をリサイクルしようとしますと、どうしても汚れを落とすために洗浄が必要になってきます。この「洗浄→脱水→乾燥」の工程に大きな設備投資と高いランニングコストがかかります。
プラスチックリサイクルのメリットとデメリット
環境問題は単純ではありません。材料リサイクルが全てにおいて二酸化炭素の排出を抑制するかというと、必ずしも当てはまりません。
環境問題には多くのトレードオフがあり、問題を複雑にしています。
トレードオフの事例
✅ リサイクルがしにくい、食品包装用の複合プラスチックがやり玉に上がることがしばしあります。
しかし、これをリサイクルしやすい単層(1種類だけの樹脂を使うこと)にすると、酸素を通さないなどのバリア性がなくなり、食品の消費期限が早まり食品ロスの大量発生が予想されます。
✅ 適切な事例かどうかわかりませんが、しまむらがレジ袋を買取回収しています。
しかし、それなら自分で持参したレジ袋に入れてもらえばいいわけでして。その方が二酸化炭素排出は抑制されるでしょう。
環境問題の解決に向けて、単純な解決策はないように思います。
弊社としては、とにかく事業を通じて貢献できそうなプロジェクトに積極的に関わっていきたいと考えております。