目次
1.押出機のスクリューとは
押出機には、熱せられた筒状のシリンダー(バレル)の中にスクリューが格納されています。このスクリューをモーターで回転させることで、樹脂をシリンダーのなかで溶融させ、様々な製品形状を作る役割の先端のダイにまで搬送する役割を果たします。
スクリューが1本の一軸押機とスクリューが二本の二軸押出機があります。スクリューの溝の深さや角度を変化させることで、様々な目的の練り込みを行うことが可能になります。
参考記事:二軸押出機とは?
押出機スクリューと生産量の計算について
2.一軸押出機とスクリュー
一軸の場合は 樹脂を加熱して溶かしてペレット形状に加工にすることがメインのシンプルなスクリューが多くなります。供給部、圧縮部、混錬部、計量部からなります。
上記のデザインは混練部がありません。ダルメージ(混練部)と言われる、樹脂がよく練られるようにスクリューがギザギザに加工されているデザインもあります。このデザインにはメーカーにより様々です。
混練部がないスクリューはフルフライトと呼ばれています。 リサイクル加工に使用されているスクリューの9割以上は一軸のスクリューになります。
参考記事:押出機のスクリュー材質について
3.二軸押出機とスクリュー
一方、二軸の場合は、一般的に一軸の場合よりも練りが良く、品質(均質性、分散性ほか)は向上します。 従いまして、異なる樹脂同士あるいは添加剤又は着色料顔料、カラーマスターバッチなどを混ぜて混錬し、均質に分散させるために使用する場合が多くなります。
この一連の練り込みの作業をコンパウンドといいます。
スクリューは様々な目的に応じた種類のコマにより構成されています。
コンパウンドというのは樹脂をよく練り、均一に分散させるということになります。 二つの軸の回転が同じ方向の場合(同方向)と、異なる場合(異方向)があります。
同じ場合:同方向(こちらのほうがよく練れる)
異なる場合:異方向
単体の樹脂を溶かしてペレットにする場合は、一軸押出機のスクリューを選定することが多いです。
また、異なる樹脂やカラーマスターバッチなどを入れて均質によく混ぜる場合は二軸押出機のスクリューを選ぶケースが多くなります。
一軸か二軸かという点の分類の仕方以外についても記します。 スクリューの長さ、太さ、あるいはスクリューのデザインによって分類をしてみます。これらの変数により、 製造されるペレットの物性は変わってきます。
参考記事:一軸押出機と二軸押出機では製造したペレットがどう違うのか?
4.押出機 スクリュー デザイン
もう一つの見方をご紹介していきたいと思います。 それは、スクリューのデザインです。目的に応じてスクリューのデザインを選ぶ必要があります。
フルフライトスクリューとは
例えばスクリュー途中で練る構造がなく、形状が樹脂を前へ前へと押すデザイン(これをフルフライトといいます)の場合、これにより樹脂は途中で止められることなくどんどんと前へ押し出されていくので、生産量をアップさせることが可能になります。
ダルメージとは
一方、一軸のスクリューであっても練りを加えたい場合や樹脂をよく混ぜたい場合は、途中にダルメージという練るための構造(混練部)を入れることがあります。 この時、シリンダーの中で樹脂はダルメージにより堰止められるような形になるので 生産量は若干落ちるというのが一般的になります。
従ってスクリューのデザインによっても生産量は変わります。樹脂を練ることが大事なのか、あるいは生産量を上げることが大事なのか、 あるいは練ることも生産量も両方大事なのか。
これによりスクリューのデザイン、形状、太さ、長さ、これらが決まってきます。 押出機を選ぶ、あるいは押出機のスクリューのデザインを選ぶということは、皆さんがどのような用途でペレットを製造するのかということを明確にしておけば、自ずと答えは出てくるということになります。
5.スクリューの構造と形状
スクリューは3つの部分に分けて考えることができます。
材料を前に送る供給部、溶融される圧縮部、溶融した樹脂を均一に前方に送る計量部からなります。ここに前述のダルメージが加わることもありますが、ここでは3つのゾーンの役割に絞ります。
スクリューには三つの役割があります。
①可塑化を行う: 可塑化とは樹脂の個体状態から溶融状態に至ること
②樹脂の送り : ホッパーで供給された樹脂がヘッドまで到達するようにヘッド側に押出していくこと
③樹脂の混練 : 樹脂が均質になるように練り込むこと
スムーズな可塑化を行いながら、いかに量を多くヘッドへ樹脂を送り出すかがスクリューに求められる役割となります。
1)供給部
材料(樹脂)がホッパーから入ってくるゾーンで、樹脂の状態としてはまだ固体の状態です。樹脂はここで余熱が与えられ、次の圧縮部で溶融される準備段階となります。
スクリューに多くの樹脂を取り込みたいときは溝を深くすると多くの材料をスクリューに供給することができますが、次の圧縮部などとのバランスが重要となります。 溶融していない樹脂の材料を前に送る役割を担う部分です。
樹脂を受け入れるホッパーの真下では、材料をスムーズにスクリューに取り入れるために、樹脂を溶かさないようにすることが大事です。
ホッパー真下のスクリュー部分で溶けてしまうと、材料の食い込みが悪くなり、吐出が落ちます。
一方で、この供給部分の役割としては、次に控えている圧縮部で行われる樹脂の溶融のためのコンディショニングをすることが大事になります。
コンディショニングとは何かと申しますと、圧縮部での溶融をスムーズにするために、予備加熱(プレヒーティング)を樹脂に施すことになります。
予備の加熱が十分に行われた樹脂が圧縮部に送られると、そのままスムーズに圧縮部に樹脂が溶けながら進入していきます。
ところが、予備加熱(熱伝導)が不十分な樹脂が圧縮部に入っていきますと、そこで樹脂が溶けるまでに時間を要して滞留することになります。
したがって、予備加熱(熱伝導)が不十分な供給部の長さだと、吐出量に影響がでるということになります。この供給部で樹脂が得る熱源はシリンダーのヒーターとなります。
参考記事: 押出機メーカーの選び方 メーカーの言いなりにならないためのポイントとは?
圧縮部前の予備の加熱のために、以下のことを考慮する必要があります。
スクリューの谷径の深さ
谷径が浅いと、材料がシリンダーからの熱を効率的に得ることができ、予備加熱が効率的に進みます。ただし、谷径が浅いということはスクリューが樹脂材料を一定時間に得る量が少ないため、吐出量は下がります。一方で、谷径が深ければ、スクリューに食い込む材料が増えるために吐出は増えますが、樹脂材料とシリンダーの間の距離があるため、熱伝導が弱くなります。
材料の特質などにより最適なバランスで設計することが大事です。
供給部の長さ
予備の加熱を行うには、長いほうが十分な予備加熱ができます。また、スクリューの谷径が浅く、材料に熱が早く伝わるのであれば供給部は短くてもよいと言えます。
一方で、スクリューの谷径が深く熱伝導が悪い場合は、より供給部の長さを長くして十分に予備加熱を加える必要があります。
<おまけ情報>
一般的に、樹脂はスクリューに供給される前に昇温させると、その生産量が上がることが知られています。これは、供給部で本来行うプレヒーティングが予め終わっているということになり、供給部での昇温がよりスムーズになるためです。
2)圧縮部
供給部から続くスクリューの溝の深さが段々と浅くなるゾーン。浅くなることで、樹脂は、以下の二つの熱源から熱を得て溶融します。
①シリンダーの熱を得ての溶融
②圧力とスクリューの回転による剪断熱による溶融
上記の2種類の溶融が起こる部分。 回転数を上げると剪断熱が多く発生し、ヒーターによる外部加熱によらず、剪断熱による溶融でより省エネの運転が可能になります。前述したように、供給部から送られてきた材料を圧縮し、溶融および混錬をしていきます。
圧縮部では急激に圧縮される急圧縮と緩やかに圧縮される緩圧縮があります。
この圧縮部分で重要なのは、樹脂が完全溶融をすることになりますが、溶融のための熱源には二つあります。
外部熱源
つまりシリンダーに巻かれた電気ヒーターを熱源として、その熱により溶融が促進されます。
せん断熱
樹脂が圧縮でせん断される中で、樹脂自身から発せられる熱により温出が上昇します。スクリューが回転することで得られる機械的エネルギーによりせん断されます。
急圧縮のほうがせん断熱が発生しやすく、自己発熱します。一方で緩圧縮はより外部熱による溶融によるところが大きくなります。
圧縮部では上記の2つの熱により溶融されますが、このときに水分やガスなどが発生する場合があります。このガスはベントと呼ばれる脱気口から抜けていきます。大量に発生する場合にはそこに真空ポンプなどを接続して真空引きし、脱ガスの効果を高めます。
実際には、押出機内部での樹脂の溶融は、ヒーターの熱よりスクリューの回転による機械的エネルギーによるせん断熱が主な熱源となっています。ヒーターはシリンダーの場所により、ほとんど稼働中は加熱の役割をしない部分も存在しています。
3)計量部
溝の深さは圧縮部と同じで、ダイから押し出す前のゾーンとなります。樹脂はほぼ溶融され、ダイスから一定量を安定して押し出していく役割を担います。前述の圧縮部で完全溶融された樹脂が、この部分で均一にムラなく混錬されます。滞留することなく前部にあるヘッド部分に送っていく役割を担います。
1軸のスクリューは、供給部、圧縮部、計量部から成ります。混練をより加える場合には、ダルメージという混練を促進させる構造をデザインすることもあります。
4)ダルメージ
一軸スクリューに樹脂を混錬する切り込みのデザインのこと。一般的に、ダルメージが入ると生産量はやや下がる傾向にある。
6.スクリューのエレメント
主に二軸押出機の場合は、スクリューにコマを取り付けて、押出量を多く保つと同時に、混練をよく行えるよう組み合わせて使用する。 取り外しが可能で、目的に応じて調整が可能である。
コマは多種類あり、目的に応じて使い分ける。例えば、樹脂をより長い時間シリンダー内に滞留させたいような場合は、逆回転のコマを入れることで滞留時間を延ばすことができる。
7.スクリューの圧縮比
押出機のスクリューで供給部と計量部の1ネジの空間容積の比のこと。
圧縮比は,一般的な押出機ではでは2:1~3:1が通常であるが、例えばフィルム粉砕品のようなかさ比重の軽い材料などは、投入口近くの供給部の容積を大きくすることで圧縮比を4:1~5:1に設定することもあります。
スクリューの溝の深さの目安となる値であり、供給部分の溝の深さと圧縮部分の溝の深さの比で表されます。圧縮比が小さいと樹脂圧も低く、押出量も低い傾向になります。
逆に、圧縮比が高いと剪断熱の発生も増え、圧力も高まりますが、逆に滞留した樹脂のヤケなどの現象の原因にもなる可能性があります。 圧縮比はスクリューの直径やL/Dとのバランスを考慮して設定されます。
参考記事:押出機スクリューと生産量の計算について
8.シリンダー(バレル)
スクリューを格納する筒状の鋼材です。周りにはヒーター(熱源)が巻かれ、樹脂に外部から熱を伝えて溶融を促進させます。
9.スクリューの長さL/D
スクリューの長さは、cm(センチメートル)やmm(ミリメートル)ではなく、L/D(エルバイディー)で表記されることがほとんどです。 Lとはスクリューの長さ、Dとはスクリューの直径です。 ですので、例えば100mmの直径のスクリューのL/Dが、34だったとします。
すると、実際の長さは100mm×34で、3,400mmということになります。 一般的に、押出量はスクリューの回転数を上げると増大する傾向にありますが、回転を上げすぎると、樹脂の溶融のための滞留時間が不足し、完全溶融を果たせません。
この場合は、L/Dを36や40などに長く変更することで、回転数を上げても完全溶融を可能にする長さに変えるなどの調整が必要です。
長いスクリュー:生産量は上げやすく、練りも短いスクリューより良い。樹脂の劣化やヤケも起きやすい。
短いスクリュー:熱履歴が少なく、劣化を抑えることができるが、生産量は上げにくい。
例えば 押出機のスクリューが長い場合、この時樹脂は一般的によく練ることができると言えます。 また押出機のスクリューが短い場合、この場合は 樹脂をそれほど練らずに出しても良い場合と言えます。
分かりやすく言えば、溶けやすいLDPE などは、樹脂の再生加工による樹脂の熱劣化を防ぐために、わざとスクリューの長さ(L/Dエルバイディーで表現することが多い)を短くして樹脂を早く出すこともあります。 熱劣化しないように、溶かしてすぐに出すためのデザインをすることがあります。
押出機のスクリューは、長い方が生産量を上げることがしやすくなります。 それは何故かと言えば スクリューを長くしますと スクリューの回転数を大きく上げることができるからです。 長いスクリューであればあるほど樹脂は中を通過する時間がかかることになります。
それは、樹脂をシリンダーの中でよく溶かすことができるということです。 距離が長いので、押出機のスクリューの回転数を上げても樹脂が溶ける時間が十分あるので、スクリューの回転数を上げることができるわけです。
10.押出機 スクリューの太さ
太いスクリュー:生産量が上がるが、材料替えやトラブル時のロスも大きい。
細いスクリュー:材料替えの掃除も容易で少量生産などに適しているが、生産量は上がらない。
押出機のスクリューの太さは、生産量と大きく関わってきます。スクリューの 径が100 mmの機械が一時間で300 kg 生産するところ、 120 mm にスクリューを太くすることで 生産量が400 kg から500 kg に増加します。 押出機のスクリューが太いものを選ぶことで生産量を増加させることが可能になります。
11.押出機のスクリュー素材
スクリューの材質は樹脂に合った素材を選定します。
樹脂がスクリューの表面を滞留することなく、滑らかに流れるような、鏡面を持つ鋼材を選定することが大事になります。
以下で、様々な鋼材や表面処理の方法について整理していきます。
窒化処理
押出機のスクリューは、常時樹脂材料が充填されており、中には炭酸カルシウム、グラスファイバーなど摩耗を促進するフィラーが入った材料もあることから、耐摩耗性に優れていることが重要です。
同時に、腐蝕に対しての耐性も同時に備えておく必要もある。プラスチックの再生加工では、樹脂にPVCなどの腐食を促進する成分が含まれていることも十分に考慮するとよいでしょう。
一般的な再生加工の押出機のスクリューでは窒化処理したスクリューを使用することが一般的です。腐蝕や摩耗への耐性が向上し、長寿命化につながります。
これがされていないスクリューは価格は安くても、腐蝕や摩耗が激しく、スクリューの交換頻度が高くなり、結果としてコストが高くつく事態となります。
素材は一般的にSACM645(アルミニウムクロムモリブデン鋼)を使用しています。SACM645は窒化処理を施すとその耐摩耗性が大きく向上するので、一般的な素材であればスクリューとして適した素材です。窒化処理といえばSACM645とも言えます。
焼き入れ処理
更に耐摩耗性を備えなくてはならない場合は、焼き入れ処理が耐摩耗性を大きく向上させることができる。GF30%程度であれば、このくらいのグレードで十分。
ステンレス鋼
素材にステンレス鋼を使用し、さらに各種の処理を併用することで、機能を大きく向上させることが可能になる。
ステンレス鋼+窒化処理:耐腐蝕性と耐摩耗性を双方高めることが可能となる
スレンレス鋼+焼き入れ:窒化処理よりもさらに耐摩耗性を高めながら、耐腐蝕性を高めることが可能になる。
粉末金属焼き入れ
耐摩耗性を大きく向上させたい場合には、粉末金属の焼き入れを行うことで、通常の焼き入れを上回る耐摩耗性を得ることが可能になる。表面が硬貨することで、樹脂の剥離性も向上させることができる。
GF(グラスファイバー)を50%以上含有する材料については、この処理を行われているスクリューを使用する。
12.スクリューによる剪断
樹脂の溶融は、外部熱源のヒーターと、スクリューの回転により起こされる剪断により行われます。一般的に樹脂の粘度が高い樹脂(ドロドロ)の場合、剪断熱はより多く発生します。
もう少しわかりやすく言いますと、樹脂がスクリューにより混練される際に「剪断熱」が発生します。これは、モーターの動力エネルギーがスクリューの回転を通じて樹脂に移行してそのエネルギーが「剪断熱」として発熱するのです。
つまり、モーターエネルギーが伝わって、樹脂自体から熱が発生することになります。
なので、このときはヒーターの熱ではなく、樹脂から出る剪断熱で温度が上昇する現象が起こるのです。
そして、剪断がかかった樹脂は粘度が低下(ドロドロ→シャバシャバに)します。 スクリューの圧縮比(どれだけ強く樹脂に圧力をかけるか)により剪断の度合いが変わります。圧縮比がより低い場合剪断はより少なく、より高い圧縮比の場合(摩擦が大きくなるので)はより剪断がかけられます。
13.押出機のスクリュー洗浄
樹脂替え、材料替え、色替えなどにおいて、スクリューを洗浄する必要が生じるときがあります。一般的に洗浄剤(パージ材とも言う)を使用して洗浄する場合もあれば、シリンダーからスクリューを抜いて、手作業(ブラシによる作業)や薬品、バーナーで焼くなどして清掃する場合もあります。 スクリューには長い期間に付着した炭化物などが蓄積して、悪影響をもたらす場合もあります。
スクリュー洗浄の裏技
スクリューを本当に綺麗にするには抜いた上で清掃することが一番です。
スクリューを抜かずに清掃するには、パージ材と呼ばれる専用の洗浄剤を使用しますが、価格が高くなります。
そこで、リサイクル業者や一部のコンパウンド会社が手軽に実施できる清掃方法が、HDPE樹脂を使用した清掃です。
HDPEの樹脂は非常に粘性が高く、スクリューで前方に搬送されるなかで、スクリューにこびりついた樹脂、ヤケ、焦げなどを絡めとってくれます。HDPEを再生したあとはスクリューが前より綺麗になっているということはよくあることです。
なので、パージ材を購入する代わりにHDPEで代替えするという裏技があるのです。
とは言え、本当に綺麗にするにはスクリューを抜いて清掃したり、パージ材を使用することをお勧めします。あくまで簡易的手法であるということでのご紹介です。
14.押出機のスクリュー 摩耗
スクリューは通常ある程度の摩耗に耐えられるように、鋼材を窒化処理、表面研磨などを施して摩耗に備えています。 しかしながら、それでも素材によってはスクリューやシリンダーが摩耗によりダメージを受けることもしばしばです。
わかりやすいところでは、樹脂に混ぜる炭酸カルシウムやタルク(つまり石の粉)を添加した場合は、スクリューの摩耗は樹脂のみの場合に比べてはるかに摩耗が進みやすくなります。
同様に、樹脂を強化する目的で混ぜるグラスファイバー(GF)も大きなダメージを与える素材として知られています。 リサイクルの分野であれば、泥や土の汚れを洗浄しないで、あるいは洗浄してもある程度残ってしまった土や砂がスクリューの摩耗を促進します。
多量の紙(セルロース)も摩耗を促進する方向に働きます。 スクリューが摩耗すると、徐々に生産量が下がっていきます。新品当時に比べて、生産量が下がっている場合は、スクリューの摩耗を疑うことも必要かもしれません。 その他、スクリューがダメージを受けるのは、腐蝕性のガスによる腐蝕摩耗などがあります。これには耐腐蝕性の鋼材を使用するなどで対処するしかありません。
リサイクル現場では金属によるダメージも度々見られます。ボルト、ナット、時にはハンマーなどがスクリュー内部に入ってしまい、大きく傷を付けてしまうことがあります。スクリューとシリンダー同士が当たって摩擦でダメージを受ける場合もあります。
15.押出機 スクリュー抜き方
清掃、メンテナンス、異物の除去など、スクリューを抜く必要が出てくる場合があります。その場合は、専用の治具などを使用して抜き取ります。押出機のラインの下流部分を移動させて作業する必要が出る場合もあるので、1日仕事となる場合もあります。 金属などが入ってかじってしまい、抜けない場合は専門業者を呼んだほうがよいでしょう。
スクリュー抜き方動画
抜いたスクリューの戻し方動画
16.押出機のスクリュー 素材
スクリューの素材は耐摩耗性、耐腐蝕性などを考慮して、選ばれた鋼材に窒化処理に加えて表面研磨などを施しています。 しかし、より硬い、摩耗を促進するような素材(炭カル、タルク、GFなど)を加工する場合は、より耐摩耗性に優れた素材や表面処理を選定する必要があるでしょう。
また、ガスの発生で腐蝕が起こる場合は耐腐蝕性の材料を選定します。 樹脂の種類、フィラー、発生するガスの種類により素材を選定します。 また、生産量を増やしたい場合はスクリューの表面を樹脂が滑りやすい素材を選定することで、吐出の増大が期待できます。
更に詳しい記事:押出機 スクリュー材質についてのページ
押出機は非常にシンプルに装置ではありますが、シンプルだけに奥が深いです。 特に、スクリューの設計については素材、長さ、太さ、溝の深さ、デザイン含め、無限の組み合わせがあります。
押出機のスクリューの種類について非常に大雑把に分類をしてみると一軸と二軸押出機のスクリューがあります。 表面を窒化処理加工やメッキ加工を施すことも多くあります。
参考記事:
サージングの原因と対策についての記事はこちら
ベントアップの原因と対策についての記事はこちら
17.押出機 スクリューのQ&A
1)押出機のスクリューの構造はどのようになっていますか?
押出機は樹脂を溶融するための機械です。効率的に溶融するためにスクリューは3つの役割に分かれています。簡単にいいますと、①スクリューの入り口で材料を一定に取り込む部分、②剪断熱も利用しながら樹脂を融かしていく部分、③ダイス方向に一定量を押出ていく部分です。
2)ダルメージとはなんですか?
上記の3つの目的に加えて、樹脂を「もっとよく混錬したい」というときに、ダルメージという縦線を入れたデザインの部分を加えます。
3)スクリューで生産量をあげるにはどうすればいいですか?
1)スクリューの長さ
簡単に言えば、長くして回転数を上げれば生産量は上がります。単純に回転数を上げるだけでは、樹脂が溶けずにダイスまで到達してしまいます。
また、MFRの低い粘りの強い樹脂などでは、モーターが樹脂に負けている場合もあるので、より馬力の大きなモーターにすると生産量が上がる場合もあります。
2)スクリューの溝の深さ
スクリューの溝を深くして、供給される樹脂がより多くスクリューに入るようにすると生産量は上がります。
参考記事:押出機スクリューと生産量の計算について
4)スクリューは太いほうがいいのですか?
上記の生産量との関係で言いますと、スクリューは太い方が時間当たりの生産量は上がります。しかし、太くすればいいというものででもなく、生産量が多い分、生産ロスも大きくなります。
生産するロットが小さいのに口径の太いスクリューの押出機を導入しても、材料替えが頻繁になり、かえって効率が下がります。
プラスチックリサイクルの分野であれば、スクラップの数量の確保が十分にできているかどうかもポイントです。
細かな材料替えを伴う場合は太いスクリューだと小回りがききません。
5)スクリューは摩耗するのですか?
します。ただし、樹脂100%の場合は摩耗もかなりゆっくりと減ります。
問題は、炭酸カルシウムやタルク、ガラス繊維など、フィラーと呼ばれる摩耗を促進するようなものを練り込むときに摩耗が早く進みます。
リサイクルの現場では、砂、土、紙(セルロース)などが含まれているとこれも摩耗を促進します。
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