ベントアップとは、押出機のシリンダーにあるベント口(脱気孔)から溶融した樹脂材料が上昇して外部に排出されてしまう現象のことです。(上の写真では、右側のベントから白い樹脂が出てきています)
その原因と対策について簡単にまとめました。(動画あり)
目次
1. 押出機のベントアップの原因
2. ベントアップの対策
1.押出機のベントアップの原因
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通常、シリンダーのベント口付近は、設計によりシリンダー内部の可塑化した樹脂の圧力が高くならないようにされています。
しかしながら、シリンダーの先端部分、特にダイスやスクリーンフィルターでの目詰まりなどを原因として、樹脂圧が高まる現象が発生します。
背圧が上昇することが原因となり、開口しているベントから樹脂が押し出されてきます(ベントアップ)。
スクリーンフィルターが詰まる(原因)
↓
樹脂が滞留する
↓
樹脂圧が高まる
↓
ベントアップ:ベントから樹脂が出てきてしまう(結果)
また、スクリーンが詰まらなくても、スクリューまたはシリンダーが摩耗している場合もベントアップが起こり得ることになります。
スクリューとシリンダーの間の隙間が大きくなることで、スクリューが回転しても樹脂を前に押出す圧力が低下し、樹脂が逆流してくることがあります。
また、一般的に二軸押出機はスクリューとスクリュー、またはスクリューとシリンダーの間に隙間があることから、一軸押出機よりもベントアップがしやすいと言われています。
参考記事:
サージングの原因と対策についての記事はこちら
ストランドカットとホットカットの違いとは?
動画解説はこちら
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2.ベントアップの対策
噴出してくる樹脂をそのままにすると、脱気ができないばかりか、あまりに多量の樹脂を放置すると押出機に大きなダメージを与えることになり、多大な時間と場合によっては大きな経済的損失につながります。
漏れてきた樹脂が電気配線や機械に絡まってしまい、更に冷えて固まってしまうことがあります。そうなると除去作業は一大事です。
そのため、ベントアップの原因についての解決策が必要となります。
1)樹脂圧計をチェックする
ベントアップはたいていスクリーンフィルタの目詰まりが原因であることがほとんどです。
スクリーンフィルタが詰まると測定している樹脂圧が上昇した際、一定以上の上昇でアラームを設定しておくのも解決策となります。変化を初期段階でキャッチできますが、変動の激しいリサイクル材(水分が入るなど)などの場合は紛らわしくなる可能性もありそうです。
2)設定温度を上げる
樹脂がバレルのなかで溶けずに、スクリーンまで到達している場合は、バレルの設定温度を上げましょう。
ベントからわずかに見える樹脂から、状態を見極めて設定温度を調整します。
3)フィルターを交換する
スクリーンフィルターの目詰まりを原因としてベントアップすることがほとんどですので、その場合はスクリーンフィルターを交換すればベントアップはおさまります。
4)ブレーカープレートを清掃する
ハチの巣に長い間に付着物がついたり、コンタミが詰まったりしていることが原因の場合があります。
ハチの巣をドリルなどで清掃したり、焼いたりすることで解消する場合があります。
参考記事:
ニップローラー フィルム供給の作業を無人化!
ルーダー加工 単軸押出機での再生ペレット生産
ペレタイザー 高品質なのに低価格 最新技術搭載のPOLYSTAR
5)自動でフィルターを交換する
スクラップに異物が原因となり、フィルターの詰まりで樹脂圧は必ず高まります。その際に、樹脂圧が高まったときに自動でフィルターが交換されれば、手間がかなり省けます。
ただし、網の交換自体は人手による作業となるので、やはり手間はかかります。
そのため、フィルター表面の異物を「連続式」で除去できる最新技術を以下に説明します。
レーザーフィルターを導入する
目詰まりが激しいスクラップが原因であれば、しょっちゅうフィルター交換が発生して生産効率が落ちてしまいます。
レーザーフィルターは、フィルター上をブレード(上記写真の黄色)が回転して異物を連続的に除去するので、ベントアップを防ぐのに確実な効果があります。つまり、原因(異物の事)を連続的に除去します。
連続的に除去するので、フィルター交換は1週間に一度で済みます。
高価ですが、異物の多いスクラップをペレット加工する際には、人手をかけずにフィルター交換できることは大きなメリットとなります。
市場回収のスクラップを加工するリサイクル工場では今注目のフィルターです。
参考記事:
レーザーフィルターとは
スクリーンチェンジャー比較 4つのフィルターを比較検討!
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