定量供給機とは
定量供給機とは、決まった分量の原料(スクラップやペレット)を連続的に、次工程に供給をする装置のことです。主に貯留部分、搬出装置、排出部で構成され、原料供給が安定するため製品品質の安定化に繋がります。
この記事では、定量供給機の仕組みや構成、工場への導入メリット、機械購入時のポイントや注意点などを詳しく解説します。
また実機の写真や図面も交えながら使用例も紹介していますので、是非参考にしてください。
定量供給機の導入には生産プロセスの安定化、製品品質の向上、省人化といった大きなメリットがあります。一方で機器仕様において検討しなければならない項目や、既存プロセスとの適合性も考えておく必要があるため注意も必要です。
この記事を通して定量供給機のメリットや活用方法を知っていただき、皆様の工場運営の改善や効率化に寄与すれば幸いです。
定量供給の手段
定量測定の手段として大きく2つに分けられ、重量式と容積式に分類できます。ここから更に細分化できますが、今回はプラスチック生産プロセスで主に使用されている測定に絞って紹介いたします。
計量スケール方式(重量式)
ロードセルまたは計量秤を使用し、原料荷重を測定して供給する方式です。
精度が高く、液体、粉体、顆粒などさまざまな材料に適しています。
重量式はバッチ式と連続式に分けられ、連続式はさらにロスインウェイト式(重量測定と制御された排出メカニズムを組み合わせたもの)やベルトスケール式(ベルト負荷荷重を測定し、供給量が一定となるようにベルト速度を制御するもの)に分けられます。
スクリュー方式(容積式)
スクリュー機構を使用して材料を搬送・吐出します。
制御されたスクリューの回転により、各サイクルで供給される原料の量を正確に制御でき、スクリューに沿って材料が均一に移動するため、一貫した流れで安定性が高いです。
またペレット、顆粒、リグラインド、フレークなど、さまざまなプラスチック材料を扱うことができるのもメリットの1つです。
ここからは、プラスチックリサイクルの現場でよく使用されるスクリュー方式について説明していきます。
定量供給機(スクリュー方式)の構成
定量供給機の構成は以下となります。
1)ホッパータンク:スクラップ(原料)の貯留部分
プラスチック材料の貯蔵庫の役割を果たし、スクリューへの原料供給を安定化します。
ホッパータンクの設計には、ブリッジや原料の蓄積を防止する機能を含み、原料がブリッジしないように撹拌翼が中で回転しています。この撹拌は同時に材料を均質化します。
2)スクリュー:原料を定量搬送する
等間隔でフライトを備えた、らせん状の形状で、一定速度で回転し原料を定量搬送します。
スクリューの設計はさまざまで、ピッチ、直径、フライトの構成などは、計量される材料の特性に合わせて調整されます。
3)シュート:原料の排出口
搬送された材料を次工程に排出します。排出機構には、単純な開口部、バルブ、または他のタイプの制御された排出口があります。
定量供給機を導入するメリット
原料を一定量で連続的に供給ができる
原料供給が安定することで供給過多や供給不足を防ぎ、製品品質が安定し不良品の発生率が低下します。
ホッパータンク内撹拌によるトラブル防止
フィルム系や比重の軽いプラスチック粉砕品の場合、ホッパータンク内でブリッジが起きやすくなりますが、定量供給機ではホッパータンク内で常に撹拌しているのでブリッジが起きません。
また原料ムラがあるまま押出機に送ると生産能力の低下などトラブルの原因になりますが、常に撹拌していることで材料が均質化し、下流の加工工程で安定した生産を実現することができます。
人件費の削減
原料供給プロセスを自動化することで、原料取り扱いと計量にかかる手作業が無くなります。
「原料を一定量で連続供給」「ブリッジ防止」「均質化」、これらを手作業で対応しようとすると、1~2名は現場に張り付きで実施する必要があります。
定量供給機を導入することで、既存作業を行っていた熟練工は他の重要な作業に集中することができます。
定量供給機を購入する際のポイント
ホッパータンク容量
プラスチックリサイクルに用いられる原料は嵩比重が小さいものが多く、ホッパータンク容量が大きくなりがちです。
原料補充の手間をどれだけ減らしたいか、現場スペースはどれくらい空いているかなど総合的に検討しながらホッパータンク容量を決定します。
供給スクリューの能力
生産プロセス全体に合わせ、供給スクリューの速度を適切に調整可能か確認します。
後工程でのトラブル時などに全工程を停止しなくとも対応できるよう、最大供給能力だけでなく最低供給能力も確認しておくといいでしょう。
供給精度
定量供給機を複数材料の混合目的で使用する場合、フィーダー精度の確認をおすすめします。
供給のばらつきをどこまで許容できるのか、製造条件から逆算して決めておきましょう。
定量供給機を導入時する際の注意点
初期投資
定量供給機の購入と設置において、大容量または特殊なシステムの場合、多額の費用がかかることがあります。この初期投資は、先に述べたようなメリットと天秤にかける必要があります
メンテナンスと維持管理
最適な性能を確保するために定期的なメンテナンスを必要とします。スクリュー、ホッパー、モーターなどのコンポーネントは、クリーニング、点検が必要であり、時間の経過によって交換の必要性も生じるため、安定して運用するまである程度の習熟を要します。
既存設備との適合性
定量供給機を導入するにあたり、既存機械との取り合いや設置スペース、運用方法の見直しを検討する必要があります。場合によってはメリットよりもデメリットが上回る可能性もありますので、慎重に検討を進めることをおすすめします。
定量供給機の導入事例
大型定量供給機 2万リットルの貯留タンク
導入したクライアントの工場では、24時間PPの切削を行っています。その切削くずをブロアで集め、粉砕機で粉砕したものをタンク内に貯留しています。
切削は24時間行われますが、押出機は日中の8時間しか稼働しないため、2万リットルの大型のタンクを設置し貯留量を確保しています。
粉砕したPPは軽くブリッジを起こしやすいですが、タンク内の撹拌翼がブリッジ防止の役割を果たしています。
以前の貯留タンクでは頻繁にブリッジが起きていましたが、定量供給機の導入後はブリッジを一切起こさずに定量供給が可能となりました。
大型定量供給機 1万リットルの貯留タンク
大型の粉砕機で粉砕したPP材(比重が軽い)を1万リットルの貯留タンクに入れます。
その材料を撹拌しながら、押出機に定量で供給していきます。
こちらの例でも比重が軽い材料をブリッジさせることなく、定量で押出機に供給することができ、製品品質の安定化と人員の省力化に貢献しています。
小型定量供給機 2,000リットルの貯留タンク
人員の確保にご苦労されている会社からのリクエストで、材料投入を極力省力化したいというご要望がありました。
破砕する品物は漁網(HDPE)で、漁網を破砕する特殊な粉砕機とセットでご提案をさせていただきました。この特殊な粉砕機で粉砕した漁網を2,000Lのタンクに保管し、ブリッジしないように撹拌しながら押出機のカッターコンパクターへつながるベルトコンベアに定量で供給することができます。
まとめ
定量供給機は、決められた分量の原料(スクラップやペレット)を連続的に次工程に供給する装置です。この装置は、原料の特性や用途に応じて精密な計量と供給を自動的に行うため、手作業に頼らず確実な供給を実現し、製品の品質向上や省人化といった大きなメリットをもたらします。
定量供給機の測定方式には重量式と容積式の2つがありますが、プラスチックリサイクル現場では容積式のスクリュー方式がよく用いられています。
定量供給機の導入メリットとして、原料を一定量で連続的に供給することで生産の安定化・製品品質の安定化が図られ、ホッパータンク内での撹拌によりブリッジの防止や材料の均質化が可能です。また、既存作業を行っていた熟練工は他の重要な作業に集中することができます。
定量供給機を導入する際のポイントとして、ホッパータンク容量や供給スクリューの能力、供給精度などが挙げられます。初期投資やメンテナンス、既存設備との適合性も注意が必要です。導入を検討する際には、メリットとデメリットを総合的に考慮し、適切な判断を行うことが重要です。
弊社では大型機から小型機まで定量供給機の導入実績がございますので、購入を検討している方はお問い合わせより是非ご連絡ください。
弊社取扱いの定量供給機仕様と参考価格
混合容量:1バッチあたり2,000 ~ 20,000リットル(ご要望の大きさで制作します)
混合時間:5~15分
混合比率:1/100
3,000L以下、10,000Lより大型のサイズは個別にお問い合わせください。
定量供給機(リボンミキサータイプ)の参考価格(本体価格、税抜き、設置費用含まず)
タンク容量 | 価格 |
4,000L | 500万円 |
6,000L | 600万円 |
10,000L | 850万円 |
※上記価格は参考価格です。為替相場、鋼材価格相場などにより変動します。
正式な価格については都度のお見積りをご依頼ください。
Q&A
質問 | 回答 |
定量供給機はどのようなプラスチック材料に対応していますか? | ペレットから顆粒、リグラインド、フレークなど、さまざまなプラスチック材料に対応可能です。原料性状によってはメーカーで設計変更を行います。 |
プラスチックリサイクルにおける定量供給機の選び方は何を考えればいいですか? | ホッパータンク容量や供給スクリューの能力、供給精度などを考慮して、プラスチック原料や工場オペレーションに合った仕様を満たす機械を選ぶことが重要です。 |
定量供給機のメンテナンスはどのように行うのですか? | 定期的なメンテナンスが必要で、スクリューやホッパータンク、モーターなどのクリーニングや点検が必要です。オイル等の消耗品の補充や、パーツによっては累計使用時間毎に交換が必要な場合もあります。 |