排水処理フロー 検討要素や産業別の参考フローを紹介

排水処理フローを考える際、全体の流れや機器構成を考えるブロックフローを考える所からスタートします。ブロックフローを基にして、各機器に必要な機能や流量を設計していき、PFD(Process Flow Diagram)やP&ID(Piping & Instrumentation Diagram)を作り上げていきます。

この記事では、排水処理フローを設計する際の検討要素や、産業毎の排水処理フロー例を紹介していますので、排水処理フローをどこから考えればいいか分からないという方の参考になると思います。

排水処理の全体概要については、下記記事でまとめて紹介していますので、知識を深めたい方はご覧になってみてください。

排水処理とは 設備やフロー、仕組み、法律について解説

排水処理フロー設計での検討要素

細かく見ると多くの設計要素がありますが、ここでは大きく分けて3つの要素を挙げておきます。

処理物質

処理する排水に含まれる物質を把握することが重要です。大別すると以下のとおりです。

  • 有機物:生活排水や食品工場排水などに多く含まれます。炭素を含んだ化合物です。
  • 無機物:金属イオンや塩類など、炭素を含まない化合物です。
  • 油分:工場排水などに含まれる、油脂類などの物質です。

ここから更に分類を細かくしていき、危険物質や有害物質かどうか、排水処理規制に該当する物質かどうかなどを調査していきます。また、物質によって対処方法が異なり、有機物は生物処理で分解することができ、無機物は膜処理等で除去を検討します。

処理量

処理する排水量を把握し、必要となる機器数や容量を決定します。例えば、排水量の変動が大きい場合、排水処理プロセスを安定させるために排水を一時貯留するクッションタンクを設けたり、処理能力の大きい設備を選定して対応します。

再使用有無

工場の水消費量を抑えるためには、処理水を再利用するかの検討が必要です。
再利用する場合、プロセス品質に合致するよう排水を処理する必要があるため、処理水質の基準が厳しくなることが多いです。

排水処理参考フローの事例

実際の排水処理フローはプロセスによって変わりますが、ここでは産業毎に参考例をいくつか記載しています。どの産業でも、基本的にはpH調整、異物除去、除去異物の脱水を行います。
また水消費量を抑えるため、ランニングコストを考慮しながら再処理水としてプロセスに利用することもあります。

プラスチックリサイクル工場の排水処理フロー

主に原料プラスチックの洗浄廃水、押出機や製品ペレットの冷却水経由の排水を処理します。
埃や土、油、プラスチック片などが排水中に含まれているため、これらを分離して処理を行います。

プラスチックリサイクル工場の排水処理フロー例

工程 機能
油水分離層 排水中に含まれる油と水を分離します。
分離した油は吸着フィルターやスカムスキマーで取り除きます。
排水槽 排水の流量や濃度を均一化します。
排水の急激な変動を抑え、次の処理工程への負担を軽減します。
シックナー 排水中の固形物や微粒子を沈殿させることで、排水中の浮遊物や異物を取り除き、排水を汚れの少ない状態にします。
ろ過フィルター シックナーで除去されなかった微細な固体や異物を取り除きます。
調整槽 排水規制値以下の水質まで浄化されているか、様々な項目を確認します。規制値を満たしていない場合は、薬液等で調整を行います。
スラリー貯留槽 シックナーで発生したスラリーを一時貯留し、
次工程との運転調整を行います。
脱水機 凝集物の水分を減らすことで、産業廃棄物となる脱水ケーキ重量を減らし、処理費用を削減します。脱水機で絞った水は、排水槽に戻し排水濃度を薄めるために再利用します。

また、弊社では下記図のように排水を利用して工場の水消費量を削減する設備のご案内を行っております。詳しくお知りになりたい方は下記記事も参照してみてください。

排水を利用した排水のクローズドループシステム例

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化学工場の排水処理フロー

化学反応速度を調整するため、各機器でpH調整を都度行うことが多く、酸性に大きく振れた液、アルカリ性に大きく振れた液が種々流れてきます。また、化学反応で使用した触媒カスや副生成物など、細かいゴミも流れてきますので、濾過を通して排水をきれいな状態にします。

化学工場の排水処理フロー例

工程 機能
均質化 処理が安定するよう、排水の状態を均質にします。
pH調整 凝集剤に適したpHに調整します。
凝集 凝集剤を用いて排水中の汚れを塊にします。
沈殿 汚れの塊と水とを分離します。
貯留1 分離した水を一時貯留します。
粗濾過 排水中にまだ含まれている汚れを粗く取り除きます。
貯留2 濾過した水を一時貯留します。
精密濾過 排水中にまだ含まれている汚れをより細かく取り除きます。
貯留3 濾過した水を一時貯留し、排水前の成分検査等も行います。
汚泥 沈泥した汚れの塊を一時貯留します。
脱水機 汚泥を脱水し、水と固形分(スラッジ)に分離します。
スラッジは産業廃棄物として処分されます。

医薬品工場の排水処理フロー

有機溶媒等も多く取り扱うため、専用の回収ラインと、通常排水とでラインを切り替えて処理を行います。取り扱いが厳しく管理されている薬品も多く、対策費も高額となるため、プロセス開発段階から排水処理をどのように行うか意識しながら設計が行われます。

医薬品工場の排水処理フロー例

工程 機能
均質化 処理が安定するよう、排水の状態を均質にします。
pH調整 pHを中性にして無害化します。
貯留1 pH等の状態監視や、工程安定化のため一時貯留します。
貯留2 排水前の成分検査等を行います。
廃液タンク 有機溶媒等を貯留しておき、タンクローリー車で回収します。

鉄鋼工場の排水処理フロー

冷却や洗浄で使用する水にはゴミが多く含まれるため、異物除去は必須となります。異物は沈降させて取り除くこともありますが、浮上させて取り除く方が多く感じます。

工程 機能
均質化 処理が安定するよう、排水の状態を均質にします。
pH調整 凝集剤に適したpHに調整します。
一次沈殿 凝集剤を用いて排水中の汚れを塊にします。
貯留1 工程安定化のため一時貯留します。
二次沈殿 一次沈殿で取り除けなかった細かい汚れを取り除きます。
貯留2 排水前の成分検査等を行います。
汚泥 沈泥した汚れの塊を一時貯留します。
脱水機 汚泥を脱水し、水と固形分(スラッジ)に分離します。

メッキ工場の排水処理フロー

メッキは対象素材やメッキ種により、高酸性から高アルカリ性まで大きく条件が変わりますので、排水のpH調整が必須です。排水温度が高い場合もあるので、静置時間が短い場合は冷却箇所を設け、排水を冷やしてから放流する場合もあります。

メッキ工場の排水処理フロー例

工程 機能
均質化 処理が安定するよう、排水の状態を均質にします。
pH調整1 全体的なpHを大まかに調整します。
pH調整2 pHの微調整を行います。
清澄機 スラッジと液体と分離します。
スラッジ濃縮タンク スラッジを濃縮し、スラッジの脱水効率を高めます
タンク上部から溢れる水(オーバーフロー)は、均質化工程で排水を薄める水に再利用されます。
フィルタープレス スラッジを脱水し、水と固形分を分離します。

食品工場の排水処理フロー

食品加工中に発生する異物や、製品パッケージ等の混入を除去するためスクリーンを設ける場合があります。排水処理そのものとは関係ありませんが、臭気対策装置を備えている場合が多いです。

食品工場の排水処理フロー例

工程 機能
スクリーン 大きな異物を除去します。
均質化 処理が安定するよう、排水の状態を均質にします。
pH調整 pH調整を行います。
異物除去浮上 空気等を吹き込み、異物を浮上除去します。
スラッジタンク スラッジ収集を行います。
フィルタープレス スラッジを脱水し、水と固形分を分離します。
活性炭 有害物や微量に残った異物を除去します。

まとめ

排水処理フローを考える際は、排水中に含まれる処理物質、処理量、水消費量抑制のため排水を再利用するかなどを検討します。

同じ産業であっても、製造プロセスにより排水処理プロセスも異なります。しかし、基本的にはpH調整、異物除去、除去異物の脱水は共通です。

この記事で紹介した排水処理フロー以外でも対応可能な処理もありますので、ご相談したい方はお問い合わせよりご連絡をお願いします。

Q&A

質問 回答
排水処理フローではどのような技術や装置が利用されますか? ろ過装置、沈殿槽、活性汚泥、浄水槽、逆浸透膜などが利用されます。
排水処理フローの運用における法令や規制はありますか? 工場や事業所から公共用水域へ水を排出する際に、排出量や排水成分が特定施設に該当する場合は、排水が適切に処理され定められた基準値を満たしていることを証明する書類を都道府県や地方自治体へ提出する必要があります。
排水処理フローを効果的に管理するためのポイントは何ですか? 定期的なメンテナンスと清掃、処理プロセスのモニタリングと改善、適切なトレーニングと教育が重要です。


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