排水処理で用いる薬品 pH調整剤や凝集剤について解説

排水処理では排水のpHを調整したり、排水中に浮遊している懸濁物質を取り除いたりするために様々な薬品が使用されます。薬品を使うことで、排水をキレイな状態にし、工場外へ排水出来る状態に整えます。

この記事では、下記のような様々な薬品について、使用目的や特徴について解説しています。

目的 薬品 特徴
pH調整 硫酸(希硫酸)
  • pHを酸性側にする。
  • 安価、中和反応速度が早い。
  • 混ざりにくい、硫酸カルシウムが析出して異物になる。
塩酸
  • pHを酸性側にする。
  • 硫酸カルシウムが析出しない。
  • 硫酸よりも高価、毒性のある塩化水素が発生する。
炭酸ガス
  • pHを酸性側にする。
  • pHが酸性側に傾きすぎない。
  • 強塩基性排水の中和は難しい。
水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)
  • pHを塩基性側にする。
  • 中和反応早い、汚泥量少ない。
  • 析出させた金属水酸化物が再溶解する場合がある。
水酸化カルシウム(消石灰)
  • pHを塩基性側にする。
  • 汚泥の脱水性が良い、金属水酸化物が再溶解しない。
  • 中和反応に時間がかかる、汚泥量は比較的多い。
凝集 硫酸アルミニウム(硫酸バンド)
  • 使用pHは5~8。
  • 安価、熱に強い。
  • 形成フロックが軽く沈殿しづらい、比較的pHが降下しやすい。
ポリ塩化アルミニウム(PAC)
  • 使用pHは5~8。
  • 凝集性に優れる、除濁性に優れる。
  • 比較的高価、熱に弱い。
塩化第二鉄
  • 使用pHは4~12。
  • 形成フロックが重く沈みやすい。
  • pHが降下しやすい。
アルギン酸ナトリウム(アルギン酸ソーダ)
  • 使用pHは7~12。
  • 無機系の排水に使用。
水溶性アニリン樹脂
  • 使用pHは4~8。
  • 有機系の排水に使用。
ポリアクリルアミド(PAM、PAA)
  • 使用pHは4~8。
  • 懸濁物濃度が高い排水に使用。

排水処理の全体概要については、下記記事でまとめて紹介していますので、知識を深めたい方はご覧になってみてください。

排水処理とは 設備やフロー、仕組み、法律について解説

弊社で取り扱っている排水処理設備は、下記記事リンクよりご覧になれます。
詳しく知りたい方は、お問い合わせよりご連絡をお願いします。

排水処理設備 廃プラ洗浄の水処理を低コストで行うには

pH調整に用いる薬品

pHとは、水溶液が酸性なのか、塩基性(アルカリ性)なのかを示す指標です。基本は0~14までの数値で示し、7が中性、7よりpHが小さくなるほど酸性寄り、7よりpHが大きいほど塩基性寄りです。

pHによって、排水処理中に行う凝集剤などの化学反応が上手く進行しなかったり、環境影響から一般排水として下水等への放流が禁止されているため、薬品を用いて排水のpHを適切な値に調整します。

酸性側へのpH調整に用いる薬品

硫酸(希硫酸)

希硫酸(濃度の薄い硫酸)水溶液状態で使用し、pHを酸性側に傾けるため、主に塩基性排水の中和に使用されます。

安価で中和反応速度が早いといったメリットがあります。一方で、投入量の調整管理が必要、比重が重く排水と混ざりづらい、排水中のカルシウムと反応して硫酸カルシウム(石膏)が析出するといったデメリットもあります。

取り扱い者の資格や、硫酸濃度によっては消防署や労働基準監督署へ届け出が必要となるため、排水処理設備への導入を検討する際には、メーカーと相談しながら採用可否を判断しましょう。

塩酸

塩酸水溶液状態で使用し、pHを酸性側に傾けます。

硫酸と比較して高価で、揮発性が高く塩化水素が発生するため取扱に注意が必要ですが、硫酸カルシウムのような析出物が出ないため、カルシウムの多い排水で選択肢に入る場合があります。

ただし、排水のpHが強塩基性でなければ、後述の炭酸ガスでpH調整を行う方をおすすめします。

炭酸ガス

炭酸ガスを排水中に吹き込むことで、pHを酸性側に傾けます。

硫酸や塩酸と違い、過剰投入しても排水が酸性側へ偏り過ぎない、取扱時の届け出が基本不要(炭酸ガスボンベが何百本というレベルでなければ)といったメリットがあります。

一方で、ボンベ圧力の管理が必要、強塩基性排水の中和は難しいといったデメリットもありますので、硫酸や希硫酸との使い分けや併用を導入時に検討します。

塩基性側へのpH調整に用いる薬品

水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)

フレーク状の水酸化ナトリウム 出典:埼玉薬品㈱

使用することでpHを塩基性側へ傾けるため、主に酸性排水の中和に用いられます。
水溶液状態のもの、固形のものがあり、事業者がどのように使用したいかによって使い分けしますが、基本的には水溶液状態のものを購入して使うことが多いです。

中和反応速度が早く、汚泥量も比較的少ないため、よく使用されています。ただし、金属水酸化物の再溶解が起こる可能性があるため、排水処理プロセスを見て薬品選定を行う必要があります。

水溶液で購入する場合、様々な濃度で販売されているため、排水処理システムで使用する濃度に合わせて選ぶことが可能です。ただし、劇物(人体に悪影響を及ぼす化学物質)であり、眼の損傷や皮膚の薬傷を引き起こすため、取り扱いに注意が必要です。

水酸化カルシウム(消石灰)

水酸化カルシウム 出典:近藤石灰工業㈱

粉体状態のもの、スラリー状態(固体粒子と液体との混合物)のものがありますが、粉体は使用時に飛散するためスラリー状のものが好まれます。

排水処理中に発生する汚泥の脱水量が良い、金属水酸化物の再溶解を防止できる、劇物でないというメリットはありますが、デメリットとして水酸化ナトリウムと比較し汚泥量が増える(=汚泥処理費用が増える)、中和反応に時間がかかるといったことがあるため、第一選択肢としては中々挙がりません。

pH調整というよりは、フッ酸処理や、鉄管サビ由来の赤水防止で用いられることが多いです。

その他の薬品

排水を塩基性側へ傾けたい場合、上記2つの薬品が用いられますが、pHの微調整や反応時間調整、全体プロセスの最適化の観点から、他には下記のような薬品が用いられます。

  • 酸化カルシウム(生石灰)
  • 炭酸ナトリウム
  • 炭酸カルシウム

凝集に用いる薬品

非常に小さい粒子(コロイド粒子など)は、帯電等の影響で沈殿・浮上がゆっくりとしているため、凝集剤を用いてフロック(塊)を形成し、沈みやすい状態にして排水処理を進めます。

無機系凝集剤

小さいフロック(基礎フロック)を形成するために使用されます。

硫酸アルミニウム(硫酸バンド)

硫酸アルミニウム 出典:浅田化学工業㈱

排水処理全般でよく使用される薬剤です。水溶液または粉末の状態で使用します。使用pHは5~8の間ですが、効果を発揮したい場合はpH6~7の間となります。

安価で熱に強いといったメリットがありますが、形成されるフロックが軽く沈殿しづらい、後述のPACよりもpH降下しやすいというデメリットがあります。また、液体は腐食性があるため、接液部は耐食性のある材料を選定するようにしましょう。

ポリ塩化アルミニウム(PAC)

PAC溶液 出典:CHEMATE

硫酸バンドよりも凝集性が良く、こちらもよく使用される薬剤です。硫酸バンドと同じく、使用pHは5~8の間ですが、効果を発揮したい場合はpH6~7の間となります。

硫酸バンドよりも高価で熱にも弱いですが、凝集性に優れ、pH降下も硫酸バンドより少なく、除濁性に優れるといったメリットがあります。硫酸バンドと同様に、液体は腐食性があるため設備材質は注意が必要です。

塩化第二鉄

使用pHが4~12と広く、有効pHも5~11と幅広いpHで使用できるのが特徴です。

形成されるフロックが重いため沈みやすいですが、pHが下がりやすいので中和剤として塩基性薬品を多く使用する、薬品が腐食性を持つといったデメリットがあります。塩化第二鉄の液体も腐食性があるため、取扱いには注意が必要です。

有機系凝集剤(高分子凝集剤)

基礎フロックをつなぎ合わせ、より大きな粗大フロックを形成するために使用されます。粗大フロックを作ることで、排水中不純物の沈降速度を早めます。

薬品の最適添加率がありますので、使用時は過剰投入とならないようにしましょう。

アルギン酸ナトリウム(アルギン酸ソーダ)

アルギン酸ナトリウム 出典:山東潔晶集団有限公司

使用pHは7~12付近です。

無機系の排水処理に用いられ、金属水酸化物(鉄やアルミニウムなど)と反応します。

水溶性アニリン樹脂

使用pHは4~8付近です。

排水中の懸濁物が有機系(藻類、バクテリアなど)の場合に有効で、下水処理場や塗装工場、食品工場などで用いられます。

ポリアクリルアミド(PAM、PAA)

使用pHは4~8付近です。

排水中の懸濁物濃度が高く、アルギン酸ソーダ等のアニオン(陰イオン)系の高分子凝集剤が使用できない酸性排水で選択されます。

まとめ

排水処理で使用する薬品には様々な種類があり、目的に応じて最適なものを選択します。以下に、主要な薬品をまとめます。

目的 薬品 特徴
pH調整 硫酸(希硫酸)
  • pHを酸性側にする。
  • 安価、中和反応速度が早い。
  • 混ざりづらい、硫酸カルシウムが析出して異物になる。
塩酸
  • pHを酸性側にする。
  • 硫酸カルシウムが析出しない。
  • 硫酸よりも高価、毒性のある塩化水素が発生する。
炭酸ガス
  • pHを酸性側にする。
  • pHが酸性側に傾きすぎない。
  • 強塩基性排水の中和は難しい。
水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)
  • pHを塩基性側にする。
  • 中和反応早い、汚泥量少ない。
  • 析出させた金属水酸化物が再溶解する場合がある。
水酸化カルシウム(消石灰)
  • pHを塩基性側にする。
  • 汚泥の脱水性が良い、金属水酸化物が再溶解しない。
  • 中和反応に時間がかかる、汚泥量は比較的多い。
凝集 硫酸アルミニウム(硫酸バンド)
  • 使用pHは5~8。
  • 安価、熱に強い。
  • 形成フロックが軽く沈殿しづらい、比較的pHが降下しやすい。
ポリ塩化アルミニウム(PAC)
  • 使用pHは5~8。
  • 凝集性に優れる、除濁性に優れる。
  • 比較的高価、熱に弱い。
塩化第二鉄
  • 使用pHは4~12。
  • 形成フロックが重く沈みやすい。
  • pHが降下しやすい。
アルギン酸ナトリウム(アルギン酸ソーダ)
  • 使用pHは7~12。
  • 無機系の排水に使用。
水溶性アニリン樹脂
  • 使用pHは4~8。
  • 有機系の排水に使用。
ポリアクリルアミド(PAM、PAA)
  • 使用pHは4~8。
  • 懸濁物濃度が高い排水に使用。

弊社で取り扱っている排水処理設備は、下記記事リンクよりご覧になれます。
詳しく知りたい方は、お問い合わせよりご連絡をお願いします。

排水処理設備 廃プラ洗浄の水処理を低コストで行うには

Q&A

質問 回答
排水処理で使用する薬品を選ぶにはどのような基準がありますか?

下記のような基準があります。

  • 排水性質(pH、COD、BOD、SS など)
  • 処理したい物質の種類(有機系、無機系など)
  • 排水処理能力
  • 薬品のランニングコスト
  • 薬品の安全性
  • 薬品処理後の水質
排水処理で使用する薬品はどのような形態が多いですか? 取扱いやすい溶液状態で購入する場合が多く、ポリタンク、ローリー車、タンク保管など、使用量に応じて事業者で考えます。粉体状の薬品もありますが、飛散したり排水に溶かす必要があるため、運用検討が必要です。
排水処理で使用する薬品の種類や量はどのように決めていきますか? 排水サンプルを作成し、薬品種の組み合わせや量を複数水準でテストし、最適な薬品を選定していきます。


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