海洋プラスチック 対策検討のため対馬を現地視察 

今回、ある大学と企業からの依頼で海洋プラスチックの漂着がおそらく日本一である対馬に行ってまいりました。

目的は、対馬に漂着するプラスチックゴミをリサイクルすることです。

伊藤忠商事をはじめ、様々な企業がこの海洋ごみのリサイクル素材を使った商品を手掛けるようになっているのはニュースで見ていました。

果たしてその実態はどのようなものか、現地視察で体感したいということでの訪問です。

羽田から福岡、そしてプロペラ機で対馬へ向かいます。

上空から見た対馬はきれいな海と緑です。この高さからはまだ海洋プラスチックごみは認識できません。

到着後にラーメン屋を発見して昼食です。九州だけあって、福岡系のとんこつのラーメンでした。

さて、いよいよ本題です。

訪問したのは一般社団法人CAPPAさんです。「対馬の海岸と海を守り将来世代に引き継ぐための活動を行う」ことを目的としています。

弊社も「美しい地球を子供たちに」を企業理念としていますので、非常に共感するところです。

環境学習やボランティア、イベントなどを通じて海洋プラスチック問題の啓発をしています。

上野代表理事からお話を伺い、現在の対馬の状況を伺いました。

以下、お話のメモです。

対馬市主催 日韓ビーチクリーンアップ活動は15年間継続している
日韓海岸清掃フェスタはCAPPA主催で実施
今後は中国や台湾とも交流を重ねたい

上野理事長が自ら西の海岸へ連れて行ってくださいました。

このようなひどい海洋プラスチックごみが沿岸に30キロ以上続くそうです。500mほどしか歩きませんでしたが、その酷さを理解するには十分でした。

なぜ対馬は日本一の海洋プラスチックごみが漂着するのか?

その理由は、九州と韓国の間の対馬海峡の真ん中に位置しているためです。

対馬海流が運んだ漂流海洋プラスチックを見事にキャッチしてしまいます。

しかし、人間もそうですが長所は短所、短所は長所にもなり得るわけです。

この対馬でリサイクルシステムを確立すれば、海洋プラスチックをより減らせるはずです。

漂流する海洋プラスチックを回収する拠点としては最適とも言えるロケーションなのではないでしょうか。

対馬の海岸への海洋ごみ漂着物

対馬にはどこの国から海洋ごみが来る?

40%韓国 30%中国 日本もあります

漂着物の割合は?

50%は木材

対馬の森林放置でイノシシ(3万頭)とシカ(4万頭)が増え、森林が荒廃していることも原因で細かい対馬島内の流木も多い。

発泡スチロール27%

中に不純物 鉄くぎがある可能性あるので全部割って確認している。
中国製は古いものに新しいものをかぶせているのでこれも確認が必要。

ロープなどが巻き付いているので、手で切って回収しなくてはならない。

発泡スチロールがこのように劣化していると、砂が中に入り込み、リサイクルの妨げになる。
また、当然細かくなったプラスチックはマイクロ化してしまう。

PETボトル 13%

軽くて漂着しやすい。キャップだけというのも多い。ボトルのバーコードで漂着物の割合の推定。韓国が多い。

テトラポットの合間にたくさんのPETボトルです。とるだけでも大変です。

プラスチックブイ 15%

韓国と中国のブイが多い(文字表記でわかる)

漁網 9%

大きなものが流れてくる。海岸に埋まっているようになっているのですなだらけ。どうにもならないので埋め立て処理。除去も人力では無理⇒重機使用。あるいは見える部分のみを切断している。

缶・ビン

日本のものが多い。缶は60%日本製。びんは一部シーグラス化。

韓国の文字。何故か缶は日本のものもたくさんありました。

 

シーグラス化したびん。CAPPAさんの飾り棚で。プラスチックよりは数段いいですね。

その他

あなご筒・ふた

あなご筒(黒)はかなりたくさんあります。ちなみに対馬はあなごが名物で夜はたいへん美味しくいただきました。


ポリタンク(青) 韓国のノリ消毒で使われるもの。おそらく故意に海に投棄されている。海水が入っても浮くので遠くに流れ着きます。これも多いです。そして、これが一番リサイクルしやすいアイテムです。


雑プラスチック
生活プラ

企業の取り組み

伊藤忠商事:調査中
ファミリーマート:調査中 レジカゴに使用。対馬のファミリーマートで。


テラサイクル:以前から材料として購入している「海洋プラスチック材料」
P&JのJOYの容器
テクノラボ:コースタ-作成  対馬市から60kg販売した

対馬の回収と処理システム

回収

メインは対馬の漁協が閑散期などに補助金で海岸の海洋ごみを回収する
漁協が有償回収したプラ 1,685立法メートル/年 比重0.2(対馬市計算)
有償回収 1.5億円/年の税金が使われている
CAPPAもボランンティアでのイベントを実施するが

運送

集められたクリーンセンター(中部中継所)に海洋ごみを運ぶ

分別

クリーンセンターで分別
CAPPAでも分別する
フレコンに分けている

クリーンセンター中部中継所

1名センター長 契約社員4-5名
作業内容:分別(色別に分別) 破砕(硬質プラスチック) 減容(発泡スチロール)
発泡スチロールも表面の砂を削るのは大変な作業

問題点

✅ 対馬に漂着した32,000立法メートルがあるので、とても取り切れていない。

✅ 北から南まで海岸線が82キロあるので非常に長い。沿岸の距離は190キロ。

✅ 掃除しても3か月したら元に戻る

✅ 海岸の漂着物がMAXになると、次の台風などで再漂流して海に流れる

✅ 回収のためのマンパワーない。分別やセンターでの処理もマンパワーがない。

 

対馬の綺麗な海をバックに記念撮影、、、といいたいですが、、、

バックの海岸は延々30kmにわたり海洋プラスチックで埋め尽くされています。

なんとか、自分のプラスチックリサイクルのキャリアを活かして解決に向けて少しでも前進できればと思いました。

その2へ続きます。

村井健児

株式会社ファー・イースト・ネットワーク 代表取締役
慶應義塾大学経済学部卒業、三菱銀行(現三菱UFJ)にて法人融資、株式会社宣伝会議にて環境雑誌に関わる業務を経て、2002年からプラスチックリサイクル業界で経験を積む。
2006年株式会社ファー・イースト・ネットワーク創業。プラスチックフクラップ売買、再生樹脂ペレット売買、リサイクル用機械・プラントの輸入販売を行う。

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