軽くて保温性や保冷性に優れる発泡スチロールは、体積の大半が空気である省資源な素材です。
安価でクッション性、耐水性が高く、加工が容易で、強度があるといった特徴があります。
そのため肉や魚などの食品トレー、食品の輸送箱、家電やOA機器の緩衝材から建築資材といった様々な用途に使用されています。
そして、発泡スチロールは合成樹脂の一種であるプラスチック加工品のため、リサイクルして再びプラスチック製品として使用することが可能です。
しかし、単に燃えるゴミとして捨ててしまえば当然リサイクルされません。
今回の記事では、できる限りリサイクルするための捨て方を発泡スチロールの種類別に紹介します。
発泡スチロールの種類は3種類
- PSP Polystyrene paper (発泡スチレンシート)
- EPS Expanded Polystyrene (ビーズ法発泡スチロール)
- XPS Extruded Polystyrene (押出法発泡ポリスチレン)
写真と共に用途や特徴を説明します。
PSP 発泡スチレンシート
食品容器として使われているのがPSPです。
肉や魚のトレー、ハンバーガーやカップ麺の容器などに使われます。
シート状にした発泡スチロールを型で抜いて作られていて、発泡スチロールトレーや発泡トレーと呼ばれます。
参考記事:PSP専用リサイクル押出機
発泡スチロールでできたトレーは、つまようじが刺さる柔らかさです。
約10倍以上にふくらませて作られているため、体積の90%以上が空気です。[2]
EPS ビーズ法発泡スチロール
発泡させてさまざまな形に成型して作られ、表面に発泡ビーズの模様があります。
おそらく発泡スチロールといわれたら連想するのがこのEPSでしょう。
約50倍程度にふくらませて作られているため、体積の98%が空気です。
ほとんどが空気であるにもかかわらず強度が高いこと、保温性に優れているため食品の輸送箱によく使われています。また、電化製品などを保護するため緩衝材としてもおなじみですね。
また、強度の高さ、輸送の容易さ、加工のしやすさ、耐水性といった性質を活かして土木工事の際の盛り土の代わりといった用途にも利用されてもいます。
参考記事:EPS用 減容機
XPS 押出法発泡ポリスチレン
XPSには極めて高い断熱性や、切断加工がしやすいという特徴があります。
この特徴を生かして住宅やマンションなどの断熱材、畳の芯材などに使われています。
スタイロフォームといった商標で、ホームセンターで売られているのを目にしたこともある方も多いでしょう。
それぞれの発泡スチロールのリサイクルを意識した捨て方とは
石油からつくられたポリスチレン(PS)を発泡させて作られている点は3種類とも同じです。
しかし、作られ方や使い方が異なるため、捨て方が異なります。
発泡スチロールで作られた食品トレーのリサイクル方法2つ
発泡スチロールで作られた食品トレーに代表されるPSPには2種類の捨て方があります。
- リサイクルBOXを利用
- 自治体のゴミ回収サービスを利用
リサイクルBOXを利用した発泡スチロールのリサイクル
食品トレーの処分方法で最もおすすめなのは、スーパーの入口などに設置されているリサイクルBOXを利用する方法です。
発泡スチロールといった樹脂をリサイクルして、質の高いリサイクル品をつくるためには同じ材質の樹脂を集めることが何より重要です。
スーパーのリサイクルBOXは食品トレーのみを集めているため、より品質の良い原材料にリサイクルできるのです。
滋賀県大津市などのように、資源ごみとして回収していてもスーパーなどの店頭回収をすすめている自治体もあります。[3]
リサイクルBOXは完全無料で、ほぼ年中無休で利用できる点もメリットです。
例えば、イオンではリサイクル回収ボックスで回収した食品トレーを、再生トレーなどにリサイクルしています。
出典:AEON
2020年度は約4億6,089万枚、3,226tの食品トレーをリサイクルし、20,325tの二酸化炭素の削減につなげました。[4]
セブン&アイ・ホールディングスでもリサイクル・ステーションで食品トレーを回収しています。
再生トレーにする他、バランスロックなどの建築資材、エコベンチの内材、プランターなどのプラスチック製品にリサイクルしています。[5]
セブン&アイ・ホールディングス傘下のヨークベニマルでは2021年度に、食品トレー114トンを回収したとのことです。[6]
リサイクルBOXに入れられない食品トレーもあるため注意が必要です。
納豆のトレーなど臭いや菌が付いているもの、インスタント麺の容器など汚れが落ちにくいものが該当します。[7]
汚れを完全に落とせる食品トレーをキレイに洗って乾かしてから、リサイクルBOXに入れてください。
自治体のゴミ回収サービスを利用
自治体のゴミ回収サービスを利用すれば、袋代の数十円程度の費用で捨てられます。
近くにリサイクルBOXがない、自宅の近くまで回収に来てほしい、といった場合は資源ごみとして自治体のゴミ回収サービスに出すのも手です。
ただ、発泡スチロールの食品トレーの扱いは自治体によって、以下の3つに分かれます。
- 資源ごみ
- 燃やせないごみ
- 燃やせるごみ
リサイクルBOXに比べるとリサイクル時に質が落ちる可能性はありますが、資源ごみとして収集する自治体では、資源として活用されます。
しかし、資源ごみ以外の区分になっている自治体もあります。
燃やせないゴミとして処分される福井県の福井・美山区域。[8]
可燃ごみとして処分される千葉県千葉市や秋田県秋田市などです。[9]
繰り返しになりますが、発泡スチロールはリサイクルが可能なプラスチック資源です。
ただのゴミとして処分してしまうのはもったいないです。
燃やせないごみや燃やせるごみとして扱われる自治体では、ゴミ回収サービスに出すのはおすすめできません。
可能な限り、スーパーの入口などに設置されているリサイクルBOXに持っていって欲しいです。
発泡スチロールで作られた輸送箱や緩衝材の捨て方4つ
輸送箱や緩衝材に代表されるEPSは、4種類の捨て方があります。
- 家電量販店に持ち込み
- 不用品回収業者に依頼
- 自治体の回収サービスを利用
- 処分場に持ち込み
家電量販店に持ち込み
大型家電などを梱包していた発泡スチロールは、購入した家電量販店に無料で引き取ってもらえます。
自分で家電量販店に持ち込む手間はかかりますが、手っ取り早い方法です。
とはいえ引き取ってくれないケースもあるため、持ち込む前に聞いておくのがおすすめです。
不用品回収業者に依頼
まとまった量の発泡スチロールを回収してくれる不用品回収業者もいます。
最短即日、自宅まで回収に来てくれて、他の不用品もついでに処分できる手軽さはメリットです。
しかし、不用品回収業者は避けた方が無難です。
悪徳業者に引っかかると高額な処分費用を請求されることがあるからです。
また、分解、分別、運搬から処分までしてもらうということは、手間賃がかかるということです
そして、不用品回収業者は回収を生業にしているのであって、リサイクル業者ではありません。最終的にどのように処理されるかはわかりません。不法投棄される可能性すらあります。
不用品回収業者は、お金はかかってもいいから手間をかけたくないときの最終手段だと思ってください。
悪徳業者にひっかからないよう、複数の業者に見積り依頼をし、提携しているリサイクル業者についても質問して業者を選んでください。
自治体の回収サービスを利用
予約や申請の必要がある自治体もありますが、自治体の回収サービスも利用できます。
しかし、基本的に指定袋に入りきらないものは持って行ってもらえません。サイズの大きい発泡スチロールは粗大ごみになります。
山形県山形市のように、袋に入らない・入りきらない発泡スチロールは、粗大ごみの共通収集シール(山形市では60円)を貼って出すことになります。
処分場に持ち込み
粗大ごみの回収を申し込むのが面倒なら、処分場に持ち込むこともできます。
ただし、食品トレー同様に資源ごみとしてリサイクルされるとは限らない点が問題です。
燃やせないゴミとして埋め立てられたり、燃やせるごみとして焼却されたりする自治体も少なくありません。
後述しますが、捨てずにそのまま活用する方法を見つけるのがおすすめです。
発泡スチロールを小さくして普通のゴミとして捨てる方法
普通はリサイクルできなくなるのであまりオススメはしたくないのですが、発泡スチロールを小さくすればゴミ袋に入れて捨てることができます。簡単に発泡スチロールを小さくする方法は3つあります。
- ごみ袋に入れてから割る
- カッターやノコギリを使う
- 電動カッターを使う
最も簡単なのは道具を使わずに割る方法です。
しかし、不用意に割ると発泡スチロールが細かく散らばってしまい掃除が大変です。
ごみ袋に入れてから、手や足で細かく割りましょう。先にカッターで切れ目をいれてから力を加えると、簡単に小さくできます。
カッターやノコギリでも発泡スチロールは切れます。しかし、不快な音が出たり、細かいくずが大量に出たりするのが難点です。
刃を熱湯に浸けて温める、発泡スチロールを濡れ布巾で濡らし静電気を抑える、などの工夫をすると切りやすくなります。
簡単かつキレイに切れるのは、熱で発泡スチロールを切る電動カッターです。ホームセンターはもちろん、100円ショップでも販売されています。
出典:GetNavi web
切るのではなく熱で溶かす!ダイソー「単2型電池式 発泡スチロールカッター」
床にもし細かい発泡スチロールのくずが落ちてしまったら、粘着カーペットクリーナー(コロコロ)で除去するのがおすすめです。
ここまでは家庭で出る発泡スチロールの捨て方について説明してきました。
事業者で大量に発泡スチロールを捨てるなら、売ることもできます。
事業用の大量の発泡スチロールは捨てるのではなく売る
大量の発泡スチロールを処分したいなら、発泡スチロールインゴットや発泡スチロールペレットなどにして売ることもできます。
インゴットとは溶かして鋳型に流し込んで固めたもの、ペレットとは粒状にしたものです。
発泡スチロールはかさばるため、そのままでは輸送コストがかかりすぎます。
減容機と呼ばれる機械を使って圧縮したものを、リサイクルを営んでいる廃棄物処理事業者に買い取ってもらうことができます。
XPSに対応できない減容機の種類もあるため、機械を導入する時は気を付けてください。
発泡スチロールのタイプや状態、リサイクル業者によって買い取り価格は異なるため、複数の業者に見積もりをとることをおすすめします。
行ってはいけない発泡スチロールの処分方法
行ってはいけない発泡スチロールの処分方法についてもお伝えします。
- 自宅で燃やす
- 溶かして処分
「ほとんど空気でできているなら、燃やしたり溶かしたりすれば良いのでは?」と考える人もいるかもしれません。
しかし、燃やすのも溶かすのも、やらないで欲しい処分方法です。
自宅で燃やす
発泡スチロールは体積のほとんどを空気が占めています。
水素と炭素でできていて塩素は含まれないので、燃やしても有害なダイオキシンも出ません。しかし、害はなくても黒い煙と非常に不快な臭いが出て近所迷惑になります。
野焼きは禁止されている自治体も多く犯罪になることもあります。自宅で発泡スチロールを燃やすのは控えてください。
溶かして処分
発泡スチロールは灯油やガソリンなどの油、除光液や油性のカラースプレーなどに含まれるアセトンに溶けます。
溶かすと体積が小さくなるため捨てやすいと思うかもしれません。
しかし、ガソリンの引火点は-40℃以下、灯油の引火点は約40℃、アセトンの引火点は-18℃と低く、火災の危険があります。[10]
引火点とは火を近づけたときに燃えだす温度のことです。
更に、アセトンは吸い込むと頭痛やめまいを引き起こしたり、意識を失ったりすることもある有害物質です。危険なので溶かして処分するのは絶対にやめてください。
捨てずに活用
ここまで発泡スチロールの捨て方を説明してきましたが、本当にその発泡スチロールは捨てるしかないのでしょうか?
家庭ででた発泡スチロールは、ちょっとした工夫をすることで、発泡スチロールのまま使えるケースもあります。
箱型ならそのまま保冷剤を入れてクーラーBOX、お湯を入れたコップを入れて発酵器、などに活用できます。小さめならネットに入れれば植木鉢の鉢底石としても活用できます。
また、発泡スチロールはDIY用として売られているほど加工がしやすいのも特徴です。
板状なら冬に窓や壁に貼って断熱材として使用できますし、レンガ風の壁もDIYで作れます。
先ほど紹介した電動カッターを活用すれば、アルファベットの雑貨やモニュメントにもなります。また、子どもの工作の材料として使うことも可能です。
事業者の場合はそのまま活用するのは難しいかもしれません。恒常的に大量に破棄する場合は減容機を導入し、インゴットにすることがおすすめです。
弊社でも発泡のスチロールインゴットを買い取りしています。4トン以上まとまった量であれば当社の負担にて引取りが可能です。
参考までに発泡スチロールの買い取りについて詳しくまとめた記事を紹介しておきます。発泡スチロールインゴット買取について
最後に
捨てないで再度資源として使うためにどうするか?発泡スチロールのリサイクルについてはまだ充分とはいえないかも知れませんが、整備が進みつつあります。
できる限りリサイクルの仕組みを活用して、再資源化、あるいは再利用を心がけたいものです。
[1] 発泡スチロールとは
https://www.jepsa.jp/styrofoam/type.html
[2] 身近なプラスチック「発泡スチロール」とは?種類や特徴・ゴミの分別方法まで完全網羅
https://www.tonegawa-s.co.jp/blog/industry/styrofoam/
[3] プラスチック製容器包装
https://www.city.otsu.lg.jp/material/files/group/41/7-pura.pdf
[4] 資源循環
https://www.aeon.info/sustainability/environment/reuse/
[5] 環境保全における取り組み
https://yorkbenimaru.com/img/company/pdf/04_2021.pdf#page=7
[6] セブン&アイグループで取り組む資源回収
https://www.7andi.com/company/news/release/2205271400.html
[7] 店頭に持参いただく際のお願い
https://www.fpco.jp/esg/environmenteffort/fpco_recycle/appeal.html
[8] 福井・美山区域版 ごみの分け方・出し方便利帳
https://www.city.fukui.lg.jp/kurasi/kankyo/kgomi/gomile_d/fil/benrif.pdf
[9] 千葉市 可燃ごみの分け方・出し方
https://www.city.chiba.jp/kankyo/junkan/shushugyomu/kanengomi.html
秋田市 ごみの分け方・出し方
https://www.city.akita.lg.jp/kurashi/recycle/1006071/1010211/1006253.html
[10] 燃料等の物理的性質 他
https://www.tank-hiiragi.co.jp/pages/88/
アセトン
https://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.display?p_card_id=0087&p_version=2&p_lang=ja