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2024環境展・地球温暖化防止展 5/22~24 東京ビッグサイトに出展します

GX(グリーントランスフォーメーション)とは

1 GXとは

GX(グリーントランスフォーメーション)とは、「化石燃料中心の経済・社会、産業構造をクリーンエネルギー中心に移行させ、経済社会システム全体を変革すること」を指します[1]

日本は、2020年10月に、「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。
これを踏まえ、経済産業省が中心となり、関係省庁と連携して「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定しました[2]

続いて、2021年4月に、「2030年度において、温室効果ガス46%削減(2013年度比)を目指すこと、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けること」を表明しました。
同年10月、この新たな削減目標も踏まえて策定された地球温暖化対策計画が閣議決定されました[3]

これらの「2050年カーボンニュートラル」「2030年温室効果ガス46%削減」の達成に向けた取り組みを経済の成長の機会と捉え、日本は排出削減と産業競争力の向上の実現するための経済社会システム全体の変革を目指すことになりました。この改革がGXと呼称され、GXという用語が2021年頃から経団連や政府で使われはじめました。

2 GXに関する政府の取り組み

2022年7月、政府において、GXを推進するために「GX実行推進担当大臣」が設置されました[4]。設置当初から経済産業大臣が兼任しています。
また、同年、GXの総裁直属機関となる「GX実行本部」が新設され[5]、GX実行推進担当大臣主導で「GX実行会議」[6]などの活動が行われています。

その他、以下のような各省庁(一例)でも独自で会合の開催や各種取り組みがなされています。

  • 経済産業省[7]
  • 環境省[8]
  • 国土交通省[9]
  • 金融庁[10]

各省庁の中でも特にGXを先導している立場となっている経済産業省は、「企業群」が他と連携してGXを実践する場として「GXリーグ」[11]を設立しました。

GXリーグの発足により、政府だけでなく官民が一体となった活動が行われています。

3 GXリーグ

GXに積極的に取り組む「企業群」が、経済社会システム全体の変革のための議論や実践を行う場として「GXリーグ」が設立されました[12]。GXに挑戦する官学と共に、一体となってGXの実現に取り組みます。
GXリーグは、GXへの挑戦を行う企業が、排出量削減に貢献しつつ、貢献した企業がより高く評価され成長できる社会(経済と環境および社会の好循環)を目指しています。

3 GXリーグ GXに積極的に取り組む「企業群」が、経済社会システム全体の変革のための議論や実践を行う場として「GXリーグ」が設立されました 。GXに挑戦する官学と共に、一体となってGXの実現に取り組みます。
出典:GXリーグ設立準備公式WEBサイト https://gx-league.go.jp/about/

また、2022年2月に、経済産業省は「GXリーグ基本構想」を公表しました。
「GXリーグ基本構想」は、GXリーグの実装を進めていくために、GXリーグが目指す世界観、取り組み内容、スケジュールなどについての基本的な指針を示したものです。

2022年末日までに、計658社の企業がGXリーグ基本構想に賛同しています。

2022年9月より、GXリーグ全体を取りまとめている「GXリーグ設立準備事務局」が主導し、現在までに、「GXリーグにおける排出量取引に関する学識有識者検討会」が随時開催されています[13]

また、同年、GXに取り組む企業が適切に評価される仕組みを構築することを目的とした「GX経営促進WG(ワーキング・グループ)」が設立されています。

その他、GXリーグについての詳細な情報は、GXリーグ設立準備公式WEBサイト[14]をご参照ください。

4 取り組み事例

4.1 GXリーグの取り組み

ここでは、GXリーグ賛同企業が、賛同により開始した取り組み、または、従来から実施しているGXリーグの趣旨と合致する取り組みを紹介します。

4.1.1 ソフトバンク

ソフトバンク株式会社は、自社の事業活動や電力消費などに伴い排出される温室効果ガスを2030年までに実質ゼロにする「カーボンニュートラル2030」に取り組んでいます。合わせて、取引先などで排出される温室効果ガスの排出量も含めた「サプライチェーン排出量」を、2050年までに実質ゼロにする「ネットゼロ」の実現にも取り組んでいます[15]

具体的には、「基地局使用電力の再生可能エネルギー化」「CO2排出量低減を可能とする次世代電池の開発」「無人航空機を用いた環境負荷の少ない通信インフラの開発」などに取り組んでいます。

ソフトバンク株式会社は、自社の事業活動や電力消費などに伴い排出される温室効果ガスを2030年までに実質ゼロにする「カーボンニュートラル2030」に取り組んでいます。
出典:ソフトバンク https://www.softbank.jp/corp/sustainability/special/netzero/

4.1.2 日本取引所

東京証券取引所は、2022年9月に、経済産業省からの委託事業「カーボン・クレジット市場の技術的実証等事業」として試行取引を行うカーボン・クレジット市場の実証を開始しました[16]
カーボン・クレジット市場は、カーボンニュートラルのための排出量の市場であり、温室効果ガスの削減量や吸収量をクレジット(排出権)として売買する取引市場のことです。
日本取引所グループでは、中期経営計画2024の重点施策の一つとして「社会と経済をつなぐサステナビリティの推進」を掲げており、本実証を1つの契機とし、カーボンニュートラルの実現に貢献していきたいとしています。

4.1.3 小田急電鉄

小田急電鉄株式会社は、2050年に小田急グループのCO2排出量実質「0」の達成に向けて、「小田急グループ カーボンニュートラル2050」を策定しました[17]
本指針の実現に向けた取り組みとして、2021年10月から翌年2月まで、一部区間のロマンスカーの使用電力を再生可能エネルギー由来の電力(非化石証書付き)に置き換え、「ゼロカーボン ロマンスカー」として運行しました。
また、現在、全ての特急ロマンスカーを実質的にCO2排出ゼロで運行しています。

小田急グループ カーボンニュートラル2050
特急ロマンスカー
出典:小田急電鉄 https://www.odakyu.jp/sustainability/carbon-neutral/

4.1.4 ベネッセ

株式会社ベネッセホールディングスは、温室効果ガス排出量削減について、2030年目標、2050年目標を設定し、脱炭素化移行計画を推進しています[18]
具体的には、「商品・サービスのデジタル化による紙資源の削減」「古紙、再生紙を利用した紙づくりによる環境負荷低減」「配送に鉄道コンテナを利用した環境負荷低減」などに取り組んでいます。

株式会社ベネッセホールディングスは、温室効果ガス排出量削減について、2030年目標、2050年目標を設定し、脱炭素化移行計画を推進しています
出典:ベネッセホールディングス
https://benesse-hd.disclosure.site/ja/themes/148

4.2 GXリーグ以外のGXの取り組み

企業主体であるGXリーグ以外のGXの取り組みとして、大学および自治体の取り組みを紹介します。

4.2.1 東京大学

東京大学は、2021年10月に、GXの実現に向けた東京大学の最初の取組みとして、日本の国立大学として初めて「Race to Zero」[19]に参加しました。
さらに、2022年10月、2050 年までに温室効果ガス排出量実質ゼロを達成するための行動計画として「UTokyo Climate Action (CA)」を策定し、削減目標に向けて以下のような取り組みを行っています[20]

  • 東京大学の温室効果ガス排出量を算定し、傾向等を分析
  • 排出削減に向けた取組を紹介
  • 年に1回以上の目標および行動の更新
  • その他(省エネ推進、意識の啓発、学生交流活動、情報発信、など)

4.2.2 四国大学

四国大学は、2022年5 月に、学内の印刷削減を目的とした「エコプリントGX(グリーントランスフォーメーション)実証実験」を行いました[21]
同年11月には、徳島県や四国電力社なども参画した「四国大学 GREEN TRANSFORMATION(GX)シンポジウム」を開催しています。

また、2021年10月から、ペーパーレス化に向けてNTTデータ四国が提供するペーパーレスシステムmoreNOTEを導入し、年間に換算すると約27万枚の紙を削減[22]できたとしています[23]

徳島県議会も同システムを導入しており、徳島県内で横断的にGXの取り組みが積極的に行われています[24]

四国大学は、2022年5 月に、学内の印刷削減を目的とした「エコプリントGX(グリーントランスフォーメーション)実証実験」を行いました
ペーパーレスシステムmoreNOTEによるCO2削減効果などの表示画面

出典:富士ソフトmoreNOTE(モアノート) https://www.morenote.jp/archives/2392/

4.2.3 滋賀県

滋賀県では、2050年までに温室効果ガスの排出量と吸収量がほぼ同じ状態となる「CO2ネットゼロ」の達成を目指し、県民生活の豊かさ、地域や経済の持続的な発展などにもつなげる「CO2ネットゼロ社会づくり」を推進しています[25]

滋賀県では、2050年までに温室効果ガスの排出量と吸収量がほぼ同じ状態となる「CO2ネットゼロ」の達成を目指し、県民生活の豊かさ、地域や経済の持続的な発展などにもつなげる「CO2ネットゼロ社会づくり」を推進しています
出典:滋賀県 https://www.pref.shiga.lg.jp/ippan/kankyoshizen/ondanka/305161.html

「CO2ネットゼロ」の実際のアクションとして、専用サイト「ゼロナビしが」[26]を開設し、滋賀県域における温室効果ガスの排出量と吸収量の現状の数値をリアルに掲示しています。

2022年4月には、「滋賀県CO2ネットゼロ社会づくりの推進に関する条例」が施行されました。

また、企業や家庭に対する補助金制度の導入、キャンペーンやイベントの実施(一例を後述)やそれらのSNSへの発信などの各種活動を積極的に行っています。

  • キャンペーン
    • 冬の省エネ・節電取組推進キャンペーン(2022/ 12/1~2023/1/31)[27]
    • わたしがやってみたCO₂を減らす工夫キャンペーン(2023/1/23~2/29)[28]
  • イベント
    • しがCO2ネットゼロフェスタ(2023/1/14)[29]

5 まとめ

GXについて説明をしてまいりました。
GXが目指す「2050年カーボンニュートラル」「2030年温室効果ガス46%削減」は、果たして実現可能なのでしょうか。

「2050年カーボンニュートラル」に関しては、各種アプローチ[30]が議論されていますが、筆者の感覚的な意見としては、社会システムの大幅な変革を行わないと達成は厳しいと思っています。
例えば、発電(エネルギー生成)のアプローチについて考えると、(よく海外からも批判されているように)「火力発電を絶対やめる」などを必達目標(目標設定と行動から現実を変える)にしないと厳しいのではないかと思います。
ただし、社会全体の電気の使いすぎも同時にやめないと成立しないので、シンガポールのような公共交通機関中心の社会を実現していくなどの施策も合わせて必要になると思っています。

「2030年温室効果ガス46%削減」に関しては、温室効果ガス排出量[31]をもとに算出すると、コロナ禍などで産業活動が低迷している状態でなんとか目標達成できる状況といえます。
今後、経済を立て直しながらの目標達成はさらに難しくなると予想できます。
さらに、物価、為替などで産業だけでなく国民全体の気持ちも沈んでおり、「何かを成し遂げよう」というにはタイミングが悪いかもしれません。

ここまでネガティブな言葉を綴りましたが、筆者の考えとしては、「今まで真剣に取り組んでこなかったのなら、まずちゃんと考えようとすることがとても意義深い」ことだと思っています。
また、目標達成に至らなくとも、希望を捨てずに将来の目標達成を目指すなら、「今の取り組み自体に価値があり、今の取り組みのアウトプットが、次の取り組みに必ず活きる」と思っています。
先を見て嘆かずに目の前のできることを粛々とやるというのは、どんな課題に対しても最も優れたアプローチだと思いたいです。

松本拓矢

松本拓矢

電機/家電メーカー2社(18年)に勤務し、黒物から白物まで、カーネルからアプリまで、広範囲なソフトウェア開発に従事。2019年に「らびっじ・らぼ」を開業。家事・育児・仕事をマルチにこなす兼業主夫として日々奮闘中。


[1] 参考:環境省 脱酸素ポータル 「GX(グリーントランスフォーメーション)」
https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/topics/20221018-topic-34.html

[2] 参考:経済産業省 「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/ggs/index.html

[3] 参考:環境省 脱酸素ポータル 「地球温暖化対策計画が閣議決定されました」
https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/topics/20211028-topic-15.html

[4] 参考:自民党 「GX担当大臣・スタートアップ担当大臣を新設」
https://www.jimin.jp/news/information/203968.html

[5] 参考:自民党 「GX実行本部が初会合」
https://www.jimin.jp/news/information/204385.html

[6] 参考:内閣官房 「GX実行会議」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gx_jikkou_kaigi/index.html

[7] 参考:経済産業省 「グリーントランスフォーメーション推進小委員会」
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/green_transformation/index.html

[8] 参考:環境省 「炭素中立型経済社会変革小委員会」
https://www.env.go.jp/council/06earth/yoshi06-22.html

[9] 参考:国土交通省 「国土交通省グリーン社会実現推進本部」
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_fr_000148.html

[10] 参考:金融庁 『「産業のGXに向けた資金供給の在り方に関する研究会」施策パッケージの取りまとめについて』
https://www.fsa.go.jp/news/r4/singi/20221213.html

[11] 参考:GXリーグ設立準備公式WEBサイト
https://gx-league.go.jp/

[12] 参考:経済産業省 「GXリーグ基本構想」
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/GX-league/gx-league.html

[13] 参考:GXリーグ設立準備公式WEBサイト 「TOPIC」
https://gx-league.go.jp/topic/

[14] 参考:GXリーグ設立準備公式WEBサイト 「ABOUT GX LEAGUE」
https://gx-league.go.jp/about/

[15] 参考:ソフトバンク 『ソフトバンクのネットゼロ』
https://www.softbank.jp/corp/sustainability/special/netzero/

[16] 参考:日本取引所グループ 『カーボン・クレジット市場の実証開始について』
https://www.jpx.co.jp/corporate/news/news-releases/0060/20220922-01.html

[17] 参考:小田急電鉄 『小田急グループの環境』
https://www.odakyu.jp/sustainability/carbon-neutral/

[18] 参考:ベネッセホールディングス 『気候変動への対応』
https://benesse-hd.disclosure.site/ja/themes/148

[19] 国連気候変動枠組み条約事務局(UNFCCC)が展開する2050 年までに温室効果ガス排出量実質ゼロを達成するための行動を呼びかける国際キャンペーン。

[20] 参考:東京大学 「グリーントランスフォーメーション(GX)」
https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/actions/gx.html

[21] 参考:四国大学 「エコプリント GX実証実験開始に伴うセレモニーについて」
https://www.shikoku-u.ac.jp/docs/20220517GXprint.pdf

[22] 2021年9月から1月まで運用した時点での試算、かつ、2022年2月時点での見通し。

[23] 参考:富士ソフトmoreNOTE(モアノート) 「四国大学」
https://www.morenote.jp/archives/2392/

[24] 参考:富士ソフトmoreNOTE(モアノート) 「徳島県議会」
https://www.morenote.jp/archives/2588/

[25] 参考:滋賀県 「CO₂ネットゼロ社会づくりの取組」
https://www.pref.shiga.lg.jp/ippan/kankyoshizen/ondanka/305161.html

[26] 参考:ゼロナビしが
https://zeronavi.shiga.jp/

[27] 参考:ゼロナビしが 「冬の省エネ・節電取組推進キャンペーン」
https://zeronavi.shiga.jp/shiga-co2-netzero-movement/campaign/first-campaign/

[28] 参考:ゼロナビしが 「わたしがやってみたCO₂を減らす工夫キャンペーン」
https://zeronavi.shiga.jp/campaign2301/

[29] 参考:ゼロナビしが 「しがCO₂ネットゼロフェスタ」
https://zeronavi.shiga.jp/shiga-co2-netzero-movement/promotional-period/2023/01/14/85/

[30] 参考:経済産業省 「クリーンエネルギー戦略 中間整理」
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/green_transformation/pdf/20220519_1.pdf

[31] 2020年度の温室効果ガス排出量5.1%減(コロナ禍影響あり)で、これを10年継続すれば51%減達成。なお、前年度は2.9%減(コロナ禍前)。
参考:環境省 「2020年度(令和2年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について」
https://www.env.go.jp/press/110893.html

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