美しい地球を子供たちに

スクラップ、再生樹脂ペレット、リサイクル機械についての課題を解決するプロフェッショナルです

2024環境展・地球温暖化防止展 5/22~24 東京ビッグサイトに出展します

地球温暖化とは何か

人間の活動によって引き起こされ、地球環境に甚大な影響を及ぼしている地球温暖化。

地球温暖化の現状はどうなっているのか、どのくらい気温が上がっているのか気になる方は、是非このページをご覧ください。
ここでは、地球温暖化の現状や原因、その影響について、わかりやすくまとめました。

ところで、地球温暖化に関しては「温暖化は存在しない」という論者が度々現れてきています。ここではその議論に深入りすることを控え「温暖化は確実に存在する」という前提でまとめています。

筆者は、科学者でもジャーナリストでも、環境活動家でもありません。自然を大切にするという生き方をしている両親の教育を受けて育てられ、(例えほとんど著者の活動が貢献できなかったとしても)少しでも美しい地球を未来に引き継ぐ努力をしなくてはならないと考えている1ビジネスマンです。
その点をご了承いただける方のみ読み進めていただければと思います。

地球温暖化とは

地球温暖化とは、二酸化炭素などの温室効果ガスによって起こる地球全体の気温の上昇のことをいいます。

温室効果ガスは主に天然ガス、石油、石炭などの化石燃料を燃やすことによって発生します。
温室効果ガスが太陽からの熱を吸収し、大気中の熱を閉じ込めることで、地球の気温は上昇します。それによって海面上昇や異常気象を引き起こすなど、地球環境に様々な影響を及ぼします。

国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、1950年代以降のデータを分析し、温室効果ガスによって世界の多くの地域で暑い日や熱波が増加しているという結論を報告しています。[1]

さらに、「今後、猛暑や熱波がより頻繁になり、強度を増し、長期化する可能性が非常に高い(90~100%)」と結論付けています。

地球温暖化の原因

地球温暖化の最大の原因は人間の活動である

地球温暖化の最大の原因は、人間の活動であることにはもはや疑いの余地はありません。

IPCCは、「地球温暖化は人間の活動の結果である」とはっきり断言しています。

IPCCは国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)が設立した組織です。
Intergovernmental Panel on Climate Changeの略称で、国連気候変動に関する政府間パネルと訳されます。

IPCCの報告は、130ヵ国以上の国々の、1,000名を超える科学者が執筆に携わり、2,500名もの査読を経て作成されています。
これは自然科学系の論文を作成されたことのある方であれば、いかに厳密な手続きであるかよくおわかりいただけるでしょう。

IPCCは2021年の第6次評価報告書にて「人間の影響が大気、海洋および陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と断定しています。[2]

出典:BBC ※IPCCの発表をもとに作成
温暖化は人間が原因=IPCC報告 「人類への赤信号」と国連事務総長

「地球が温暖化しているのは人間だけのせいではない」と思うかもしれません。確かに地球の温暖化には、人間の活動以外にも2つの要因があります。

ひとつに太陽活動周期による影響があります。
太陽からの紫外線の放射量は、時間とともに増加したり減少したりします。紫外線の量が最大になる時期には、地球の気温は高くなります。

もうひとつの自然現象は火山活動です。火山噴火によって大気中に放出された二酸化硫黄などのエアロゾルは、光と熱を吸収して散乱させます。その結果、大気が冷却され、地球全体の気温が下がります。

1960年までは、この太陽と地球の揺らぎによる温度変化が主な気温の変動要因でした。しかし、1960年以降の温度変化は急激であり、これは人間活動による温暖化効果の気温上昇によるものです。
気温の変化の10%程度が自然現象(太陽と地球のゆらぎ)によるもので、残りの90%が人間活動によるものであるとIPCCも結論付けています。

人間の活動が地球温暖化の原因であることは疑いがないところなのですが、近年ではさらに、人口爆発が地球温暖化に拍車をかけています。

世界の人口が10億人に達したのは西暦1804年頃といわれています。しかし、2011年に70億人になり、2022年に80億人となりました。
人類が誕生してから人口が10億人になる(1804年)までには数十万年かかりました。それに対してわずか11年で同じ10億人が増えたことになります。

増えた人口を養うために、開発、農業、林業によって森林やそのほかの自然環境が破壊されています。
森林は、温室効果を抑制する自然界の最大の装置といえますが、急速に破壊されています。

人口増加に伴い、消費されるエネルギーや排出される温室効果ガスは増え続け、地球温暖化は加速する一方です。

世界のエネルギー期限CO2排出量と実質GDPの推移
出典:環境省
パリ協定を踏まえた世界の潮流

地球温暖化の影響とは

昔は、桜は入学式が行われる4月上旬頃が満開だったのに、最近では3月下旬になっていることも皆さんお気づきだと思います。

また、埼玉県熊谷市で気温40℃超えを観測したり、ゲリラ豪雨が街を襲ったりと、昭和の頃には考えられなかった異常気象が発生しています。個人的な話をすると、冬に毎年凍結し、子どもたちがよくスケートをして遊んでいた近所の寺の池は、今では全く凍ることがなくなりました。

このように温暖化は身近に感じられるものとなっていますが、影響は思いもよらないほど広い範囲に及んでいます。ここでは様々な影響を見ていきましょう。

氷河・氷床の溶解、海面の上昇

地球温暖化がもたらす影響のひとつが、氷が溶け海面が上昇することです。

極地の氷が溶け北極のシロクマの生息がおびやかさかれていることは有名ですね。

北極域の海氷域面積は、1979年以降減少しています。

海氷域面積の長期変化傾向(北極域)
出典:気象庁
海氷域面積の長期変化傾向(北極域)

1979年から2021年まで1年当たり8.9[7.6~10.2]万平方キロメートルの減少が認められています。これは北海道の面積(8.3万平方キロメートル)に匹敵します。
北極の温暖化に伴って、グリーンランドの氷床の減少が続いており、海面上昇の一因になっています。

またスイス連邦工科大チューリヒ校とスイス当局は、アルプスを抱えるスイスにある氷河の体積が2016年までの85年間で半減したとの研究結果を報告しています。2万枚を超える写真の分析から推計し、16年時点と比較すると2022年現在までにはさらに12%減少しているとのことです。
氷河の後退により、過去の遭難者の遺骨が発見されるケースが増えているそうです。[3]

こうした氷の溶解や、気温が上がって水が膨張することによって引き起こされるのが海面上昇です。海面が上昇すると、砂浜や干潟が侵食されて居住地が失われたり、沿岸部の生態系が破壊されたりといったことに繋がります。

異常気象や大規模自然災害の発生

気温の上昇は、干ばつやその他の異常気象を引き起こします。
大気の温度が上がると、水の蒸発が多くなり降水量が増えます。巨大台風が近年増えたり、日本海側では災害級の大雪が数多く見られたりするようになっています。

地球の平均気温の上昇により、異常気象が頻発するようになりました。
熱波、洪水、ハリケーン、山火事、雹(ひょう)などがこれにあたります。

熱波は地域によっては人体に危険な気温をもたらし、乾燥とあいまって大規模な火災の原因にもなります。

2019年12月のオーストラリアにおいて、国土全体に及ぶ大規模火災が発生しました。その原因の1つとなったのが、異常ともいえる熱波。日中の最高気温が45℃に達した都市もありました。
この大規模火災は鎮火するまでに約半年を要し、11万k㎡(北海道の面積が約8万k㎡)が焼けてしまいました。

オーストラリアの大規模火災
出典: The New York Times
https://www.nytimes.com/article/hurricane-of-fire.html

同時に、豪雨や洪水といった水害の脅威も増しています。
そして、水害の危険性は低所得国ほど高くなっています。
世界銀行が2022年に発表した報告書では、世界で水害リスクにさらされている人の数は18億人超にのぼります。そのうち約9割にあたる約16億人は所得の少ない国に集中しているのです。[4]

パキスタンは2022年の夏に歴史的な水害に見舞われました。「国土の3分の1が水没する」という深刻な事態です。[5]

全人口の15%に相当する3,300万人が被災し、犠牲者は1,500人を超えました。
パキスタン政府は水害の原因は地球温暖化にあるものとし、「地球全体の温室効果ガスの1%しか排出していないのに、このような被害をこうむるのは不公平である」と訴えています。[6]

以下は、国連のグテーレス事務総長が、甚大な洪水被害があったパキスタンのカラチで記者会見を行った際に残したコメントです。

「私は世界中でたくさんの人道的な災害を目にしてきた。だがこれほどの規模の気候による虐殺をみたことはない」
「パキスタンを通して未来が垣間見えた。想像を絶する規模の気象のカオス(混乱)が永久に、どこでも起きる、そんな未来だ」[7]

この未来は地球に住むすべての人にとって、他人事ではないということなのです。

日本においては、気象庁気象研究所が2020年に公表した過去40年分の台風データによると、前半期間1980年~2000年の20年間と、後半期間2000年~2020年を比べた場合、後半期間は前半期間に比べ、台風が東京に接近する頻度が1.5倍に増えたと報告されています。[8]
さらに、台風の進む速度も36%遅くなっています。これは台風の被害にさらされる時間が長くなることを意味し、近年台風の被害が大きくなっている傾向を裏付けているといえます。

地球温暖化は降水量の増加だけではなく、その逆の干ばつをもたらすこともあります。
東京大学や国立環境研究所などの研究チームは、2050年には地球温暖化により、世界各地で深刻な干ばつの発生が常態化するという予測をまとめました。[9]
これまでは異常な干ばつと考えられてきた異常気象が普通になるという予測です。2022年、スペインが500年ぶりとされる大干ばつに見舞われましたが、これは序章にすぎないかもしれません。

地球温暖化にともなう生物多様性の喪失

地球温暖化は生物種の絶滅にもつながります。
気温が上昇すると、特定の気候に適応していた動物や植物が、適した環境を求めて移動せざるを得なくなります。
その結果、その地域にいなかった動植物が現れることで生態系が大きくかき乱され、特定の種の絶滅につながる可能性があります。

地球温暖化によって影響を受ける可能性のある生物種の例をあげればきりがありません。
トナカイ
たとえば北極圏とその周辺で暮らしているトナカイ。地球温暖化によってツンドラの氷の張る時期や降雪量が変わると、ツンドラに訪れる夏のタイミングが変化し、十分な食料にありつけなくなる危険性があります。
また、トナカイの天敵である蚊が増加し、病気を広めてトナカイを絶滅に追いやる可能性も指摘されています。

また、中国の山脈に住むジャイアントパンダは、温暖化によって食料とすみかの両方を失う危機に直面しています。

ジャイアントパンダは竹林をすみかとし、竹を食べて生きています。実に、食物の99%を竹でまかなっています。

竹は種類によって身をつける時期が違っていて、数十年おきにしか花を咲かせないものもあります。そのため温暖化で気候が変化すると、生育できなくなる種があると指摘されています。
パンダ
パンダにとって竹林の竹が失われることは、住む場所と食べ物の両方を奪われることを意味します。特殊な食性のため、竹林の代わりとなるすみかもありません。温暖化はパンダにとって深刻な脅威なのです。

また影響を受けるのは陸の生き物だけではありません。温暖化は海の生き物たちにも深刻な影響を与えます。

海洋熱波という現象が科学者の間で注目を集めています。
海洋熱波とは、海水温が通常より高い状態が5日以上続くことを指します。

温暖化によって発生した熱の90%は海に吸収され、水温が上昇します。
海洋熱波は数か月継続することもあり、この海水温の高温化によりプランクトンが死滅します。
そのプランクトンを食べる魚やさらに魚を食べるアザラシも減少、ザトウクジラの出生数が75%減少したという観測もあるとのことです。

海洋熱波はその頻度と強度を増し、海洋に生息する生態系をまさに「メチャクチャに」してしまう懸念が高まっています。
2020年9月に「サイエンス」に掲載された論文では、海洋熱波は地球温暖化により発生が20倍に増加したと結論づけています。[10]

漁業は世界のどの地域においても、持続不可能な状態になりつつあるとも考えられています。

また地球温暖化により、サンゴが大きなダメージを受けます。
海水温の上昇はサンゴ礁の白化や死滅を引き起こし、海の中の環境をガラッと変えてしまいます。

白化したサンゴ
出典:The Ocean Agency

サンゴが死に、サンゴとともに生きている魚も住めなくなってしまうのです。

人間による乱獲や農地・都市開発などの影響もあるものの、温暖化も生物多様性を失わせる大きな要因となっているのです。

一方の議論で、温暖化が進めば寒冷地の生物は減少するものの、温暖な地域の生物が増えたり、新しい新種が現れたりするという、生物多様性上昇論を唱える論者もいます。
しかし、実際には生物種の数は大きく減っているのが真実です。生物多様性上昇論も一理ありますが、現在この現代で起きている絶滅のスピードは、かつてないスピードです。
約6,500万年前の白亜紀に巨大隕石が地球に衝突したときに、全生物の75%が絶滅したことは有名です。しかし、このときの速度よりも、現在の生物の絶滅の速度ははるかに速いものとなっています。
1日に約100種類の生物が絶滅しており、このペースで行くと30年程度で地球上の生物の約4分の1が姿を消す計算です。この絶滅の速度は恐竜時代の約4万倍に相当します。[11]

地球温暖化の経済的コスト

地球温暖化を防ぐためには多大な経済的コストがかかります。
しかし、このまま温暖化が進行し続けた場合、さらなるコストを支払わなければならなくなる可能性が高いのです。
地球温暖化を防ぐことは、単に倫理的な問題ではなく経済的問題でもあるのです。

気候変動が引き起こす生物数の減少による被害は甚大なものです。
世界経済フォーラム(WEF)は自然破壊で世界の国内総生産(GDP)の半分に相当する44兆ドル(約6,300兆円)が影響を受けると試算しています。[12]
様々な産業が自然環境に依存しており、それぞれの産業への影響度から試算された数値です。

では具体的にどのような影響があるのでしょうか。

水害による経済的損失

前述の通り、地球温暖化は豪雨や大雪といった水害の原因となります。水害による経済的な損失は莫大なものです。

世界気象機関(WMO)は、豪雨による洪水や干ばつなど気象関連災害の被害額は過去50年間で5倍になったと報告しています。50年間の死者は200万人超、損失は3兆6400億ドル(約465兆円、年間平均10兆3千億円)と推定されています。[13]

2022年に開催された国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP27)は、気象災害で「損失と被害」を受けた途上国を支援する基金の創設を決めました。
温暖化に伴う海面上昇による低地にある国や地域の土地の消失、豪雨や竜巻などの災害による被害が対象となります。
1991年に島しょ国が海面上昇の被害を支援する仕組みを求めたのが発端といわれています。支援に必要な金額は数千億ドル(数十兆円)にのぼります。[14]

日本の例を挙げると、東京都は将来の豪雨や海面上昇による被害に備えるために、6兆6千億円を投じて防波堤をかさ上げすることを発表しました。

全長60kmの防波堤のうち、将来高さが不足すると予測される30kmをかさ上げします。最新の予測では、地球温暖化で降雨量が増加し、海面が2100年までに最大60センチメートル上昇するとのことです。東京都の計画は、この予測に対応したものです。

また東京都は、雨水や川の水を一時的に貯める調節池を、2030年までに新たに150万立方メートル分整備する計画を打ち出していましたが、これを前倒しし洪水を防ぐとのことです。[15]
こういった対策費用も経済的損失といえるでしょう。

渇水による経済的損失

20世紀は石油の時代といわれました。石油資源を巡って国家間の紛争が多発したためです。
これに対して21世紀は、水を巡って紛争が起こる「水の時代」になると予言されています。
地球温暖化は、地域によっては深刻な渇水をもたらします。

地球上にある淡水の約20%をたたえるロシアのバイカル湖の例を見てみましょう。2015年の1月、ロシア当局はバイカル湖の水位が過去最低水準にまで低下したと警告しました。

湖水の工業利用も原因として指摘される一方、もう1つの原因が干ばつであるとされています。

バイカル湖の水をめぐっては、地元住民と大企業との争いが続いています。[16]
このような水の利権を巡っての争いが激化することが予想されているのです。

ドイツでは2022年夏、猛暑によりライン川の水位が極端に低下しました。
これにより、ライン川を主要な輸送経路としていた火力発電用の石炭の物流が滞るという事態を招きました。
ケルン経済研究所の附属機関であるiwdの試算によれば、2018年の水位低下による経済損失は、50億ユーロ(7082億円)に昇ったとされています。[17]

農産物の収穫量の減少

地球温暖化による農産物への被害もあります。
農研機構の推定では、地球温暖化が過去30年間に与えた世界全体での穀物生産被害は、平均すると年間424億ドル(約5兆4千億円)であるとされています。[18]

これはあくまでとうもろこし、米、小麦、大豆だけが集計対象となっており、他の商品作物を含んでいないことに留意が必要です。

さらにもう1つ、コーヒーの愛飲家には耐えがたいかもしれない例を紹介します。

コーヒーの一大産地であるブラジルでは、良質なコーヒーを栽培できる地域の標高が、昔に比べて高地へと移行していることが報告されています。
また、以前は低標高のコーヒー栽培地でみられた「さび病」も、より標高が高い地域で見られるようになってきているとのことです。

米ワールド・コーヒー・リサーチ(WCR)は、2050年までにブラジルなどのコーヒー豆の栽培適地の6割が失われ、コーヒー生産量が大幅に減る恐れがあるとのレポートを発表しています。[19]
日本のキーコーヒーやアメリカのスターバックスも危機感を強め、森林の保護などを通じてコーヒー豆の安定供給のための対策を検討し始めています。

漁獲量の減少

前述の海洋熱波などの影響によって、漁獲量の減少が生じています。
例えば2008年に約35万トンだったサンマの漁獲量は、2019年には10万トンを割り込み、2020年には10分の1以下の3万トンまで減少しています。

サンマだけではありません。
たとえばサケ、スルメイカの漁獲量は、2014~2019年の5年間で74%も減少しています。
漁獲量の減少について水産庁は2021年6月の検討会で「地球温暖化や海洋環境変化などに起因する資源変動」としています。[20]
温暖化によって、海の生き物たちは甚大な被害を被っているのです。

健康被害

地球上にいるあらゆる動物の中で、
最も人間を殺しているのは何でしょうか?

それは蚊です。

人間を殺している動物ランキング
引用:The Gates Notes:The deadliest animal in the world
https://www.gatesnotes.com/health/most-lethal-animal-mosquito-week

年間72万人以上が、蚊が媒介する伝染病によって亡くなっているのです。

マラリアやデング熱、黄熱病、日本脳炎などの病原菌やウイルスは、蚊に刺されることによって感染します。
マラリアの被害は大きく、2021年のWHOの統計によれば、年間2億4,700万人が感染し、60万人以上が死亡しています。[21]
命が奪われなかった場合でも、数日間は重篤な症状のために活動ができなくなります。

温暖化によって蚊の生息域が広がることで、現在マラリアの被害が大きく出ていない地域にも、感染が広がる可能性が強く懸念されています。

地球温暖化の抑制と今後の展望

この100年で地球の気温は急激に上昇しました。
産業革命以前と比較すると、地球の気温は1度以上上昇しています。

これはわずかな差に思えるかもしれませんが、このような上昇がもたらす影響は非常に大きいものです。

もし現在の傾向が続けば、今世紀末には気温が4℃以上上昇すると予測されています。このような気温の上昇は、これまでに述べてきたような様々な影響を加速させるのです。

出典:全国地球温暖化防止活動推進センターがIPCC第5次評価報告書をもとに作成

2015年のパリ協定(COP21)では、産業革命前に比べて「気温上昇を1.5度までに食い止める」という目標が定められました。

1.5度の上昇でも大きな影響はあります。しかしこれは、「環境への影響を食い止めるにはこのラインを死守するべきだ」という最低限の目標なのです。

地球温暖化を食い止めるためには、ありとあらゆる取り組みが必要です。

公共交通機関を利用する、エネルギー効率の良い機器を採用する、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを利用する、輸送エネルギーを少なくする地産地消を進める、エネルギー消費の多い食肉ではなく植物を食べるようにする、CO2を吸収するために植林をする、CO2を貯留する技術を開発するなど多面的な取り組みが求められます。

しかしこのような取り組みは、残念ながら進んでいるとはいえません。

2022年の第27回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP27)は、「化石燃料を段階的に廃止する」という合意に至れずに閉幕しました。このことに失望する声も多いです。

産業革命以降に排出されたCO2は約2兆4,000億トン。パリ協定で合意した目標を達成するためには、2兆8,000億トンまでに排出量を抑える必要があります。

しかし、2019年までにすでに2兆4000億トンが排出され、残りの排出枠は4,000億トンしかありません。これから10年間でその枠を使い切るとすると、年平均は400億トンです。今のままのペースでは、2030年にも排出量が超過する見込みとなっています。[22]

主要告別エネルギー起源Co2排出量の推移
出典:環境省
気候変動問題の解決に向けて

CO2の排出量は抑制されるどころか、排出量が非常に多い中国、インドをはじめその他の発展途上国では増加に向かっています。

また、ロシアのウクライナ侵攻がパリ協定の遵守への大きな逆風となっています。
エネルギー危機により、エネルギーとしての石炭利用がまた多くなりつつあるのです。
CO2を大量に発生する石炭発電は、なくなる気配はまったくありません。
世界のエネルギーの内訳推移
出典:資源エネルギー庁
世界的なエネルギー価格の高騰とロシアのウクライナ侵略

石炭の需要はまだ旺盛で、ピークには達していないとみられています。

米コンサルティング大手のアクセンチュア社が行った調査によると、CO2の排出をゼロにすると宣言した企業の59%が、このままでは2050年までに排出量ゼロを実現できないと報告しています。

しかも、そもそもこの宣言を出しているのは、世界の企業全体の3分の1にとどまっていることも理解する必要があります。[23]

まとめ

地球温暖化の現状と、その影響について解説してまいりました。

地球温暖化を食い止めるための多国間の取り決めであるパリ協定から7年以上が経過したものの、協定が遵守されているとはいえず、地球温暖化は更に加速している状況であることもご理解いただけたかと思います。

この現状に対して、一人ひとりができることは限られているかもしれません。
しかし、「どうせ無理だから」と何もしないよりは、問題の解決に向けて努力をするべきであると考えます。

自分の身の回りで、節電などのできることをする、温暖化に対してポーズだけではなくきちんと取り組んでいる企業の製品を選ぶといったことには意義があるでしょう。
また、これから育つ世代も含めた啓蒙活動をおこなうことによって、温暖化を食い止めるための技術の進歩もあるかもしれません。

進歩は黙っていても誰かがやってくれるわけではなく、それを応援する社会の土壌があって成り立ちます。
一人ひとりが主体的に考えて実践する、そして進歩を模索する個人や企業を応援することこそが、唯一の解決策なのではないでしょうか。

村井健児

株式会社ファー・イースト・ネットワーク 代表取締役
慶應義塾大学経済学部卒業、三菱銀行(現三菱UFJ)にて法人融資、株式会社宣伝会議にて環境雑誌に関わる業務を経て、2002年からプラスチックリサイクル業界で経験を積む。
2006年株式会社ファー・イースト・ネットワーク創業。プラスチックフクラップ売買、再生樹脂ペレット売買、リサイクル用機械・プラントの輸入販売を行う。

[1] 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第 6 次評価報告書
第1作業部会報告書(自然科学的根拠)政策決定者向け要約(SPM)の概要(ヘッドライン・ステートメント)
https://www.env.go.jp/content/900501857.pdf

[2] 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第 6 次評価報告書
https://www.meti.go.jp/press/2021/08/20210809001/20210809001-1.pdf

[3] 産経新聞 スイス氷河、85年間で半減 2万枚超の写真分析
https://www.sankei.com/article/20220903-AKWTX263SRMJ7KE6CPTDQCX53I/

[4] 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE060E40W2A700C2000000/

[5] WWF パキスタンで発生した大規模な洪水被害
https://www.wwf.or.jp/activities/activity/5135.html

[6] GREENPEACE パキスタンの洪水被害 気候変動が自然災害を悪化させている
https://www.greenpeace.org/japan/campaigns/story/2022/09/07/59064/

[7] 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD283IG0Y2A920C2000000/

[8] 気象庁気象研究所 過去40年で太平洋側に接近する台風が増えている
https://www.mri-jma.go.jp/Topics/R02/020825/press_release020825.pdf

[9] 東京大学 プレスリリース
https://www.t.u-tokyo.ac.jp/press/pr2022-06-29-001

[10] 日本経済新聞 熱くなる海 生物の大量死招く「海洋熱波」が増加
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD279YV0X20C22A9000000/

[11] 山形大学 野生生物種の絶滅
https://www.id.yamagata-u.ac.jp/EPC/13monndai/17syu/syu.html

[12] 国際農研 世界経済フォーラム: 自然へのリスク増大 (Nature Risk Rising)
https://www.jircas.go.jp/ja/program/program_d/blog/20200727

[13] REUTERS 気象災害が過去50年で5倍増、気候変動が影響=世界気象機関
https://jp.reuters.com/article/climate-change-un-idJPKBN2FY0G7

[14] 日本経済新聞 損失と被害(ロス&ダメージ)とは
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA203BS0Q2A121C2000000/
日経ESG 「損失と被害」で成果を上げたCOP27
https://project.nikkeibp.co.jp/ESG/atcl/column/00005/120100288/

[15] 東京都 TOKYO強靭化プロジェクト
https://www.seisakukikaku.metro.tokyo.lg.jp/basic-plan/2022/12/images/7df3bb4af79f45194fee0ee8ca3337ce.pdf

[16]バイカル湖の水位が最低水準に、ロシア当局が警鐘 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
https://www.afpbb.com/articles/-/3037150?ctm_campaign=txt_topics

[17] 日本貿易振興機構 ライン川の水位低下が輸送に影響、ドイツ産業の安定供給を脅かす
https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/08/56a4bdecae136d1d.html

[18] 国立環境研究所 地球温暖化による穀物生産被害は過去30年間で平均すると世界全体で年間424億ドルと推定
https://www.nies.go.jp/whatsnew/20181211/20181211.html

[19] 日本経済新聞 コーヒー1杯が映す、世界の分断と融合 産地に異変
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC05BCY0V01C22A2000000/

[20] 環境省 秋冬の味覚に危機?地球温暖化の影響と“地産地消”という選択https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/weather/article03.html

[21] 厚生労働省 マラリアに注意しましょう!
https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/useful_malaria.html

[22]温室効果ガス、迫る排出限界 「1.5度目標」30年にも超過: 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA149H00U2A111C2000000/

[23] アクセンチュア最新調査――CO2の排出削減を現在の2倍以上のペースで進めない限り、ほぼ全ての企業でネットゼロ目標の達成は困難
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000369.000019290.html

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