イギリスから現地レポ 国民の環境意識は高いのか

今回はイギリスから現地レポートをお届けしたいと思います。

移民の国といわれているイギリス。日本と同じくらいの面積ですが人口は約半分の6千6百万人程です。
その内、外国人の数は950万人(約14%)[1]。日本は286万人(2.25%)[2]なので、この数字からみてもいかに外国人が多い国なのかが分かると思います。

そんなイギリスですが、環境問題に関する意識は非常に高く、国民の個人の取り組み、そして新しい環境政策への順応性が非常に高いと感じます。
スーパーのレジ袋の有料化や、紙ストローやお持ち帰りのフォークやスプーンが木製になったりしたことなどもすんなり受け入れたように思えます。
特に身近なスーパーでは常に新しい企業の取り組みが実施されており、我々消費者は環境問題のトレンドをお店から学ぶことも多いです。

今回はイギリス国民の環境意識も含め、企業の取り組み等をご紹介したいと思います。

イギリス国民は環境の事を考えているのか

イギリス国民は環境についてどれくらい興味をもっているのでしょうか。
リサーチによると、なんと約78%(5人中4人)もの人々が環境問題について関心があるそうです。[3]

小学校の授業でも教育の一環として環境問題を扱っており、リサイクルや海洋プラスチック、フェアトレードの意味等、環境について知り、環境に優しい選択をする重要性を教えています。

環境問題といってもたくさんありますが、畜産業が地球温暖化に影響していることが注目されています。
オックスフォード大学の研究の「肉を食べないことが環境によい」[4]という発表には影響された方は多かったようです。
イギリスは特に動物愛護に熱心ということもあり、ベジタリアンや、ビーガンなどの菜食主義者が増加の傾向にあります。現在イギリス国内で菜食主義の人は14%[5]を占めており、今後も増え続けるであろうとのこと。
菜食主義になるのは簡単なことだとは思いませんが、環境のためなら生活習慣も変えてしまう、ストイックになれる国民性なのかもしれません。

買い物袋有料化は日本より5年早く2015年にスタート

「レジ袋有料化」は大きく日本でも話題に取り挙げられていました。
日本は2020年から有料化が始まったのに比べ、イギリスはその5年前の2015年に有料化をスタートしました[6]
この政策により、買い物袋などプラスチック製品をスーパーなどに卸す業者の売上はなんと95%も下がってしまったそうです。プラスチック業者側にとっては残念な話だと思いますが、政府の買い物袋廃止運動としては大成功。それほどに多くのお店でレジ袋を無料で配っていたということになります。

レジ袋だけでなく、プラスチックのカップやフォーク、そして食器類など一気にプラスチック製品が市場から減り、紙、そして木製の製品が店頭に並び始めました。

この後でもまだ一部の小売店でも買い物袋を無料で提供していたため、政府は更に2021年5月から以前は5ペンス(2023年1月時点で8円)だった袋代を倍の10ペンス(2023年1月時点で16円)へと値上げを決めました。この価格変更以降、国民の意識は「無料の袋はない」との認識に変わったのではないでしょうか。

この有料化によってスーパーからの配達にも変化がありました。
今までは受け渡しの時に無料の買い物袋に入れて受け渡していましたが、価格変更後は会計時に袋が必要な方には袋代が加算され、袋が不要な人には店舗からケースに商品をそのまま入れ玄関先で中身だけを受け渡すようになりました。
玄関先で商品だけを受け取り、台所まで運ぶ手間は増えましたが、今まで配達の度に大量の買い物袋が増え続ける悩みがあった筆者は、逆に無駄な袋がなくなることはとても良いと感じました。

実はイギリスのレジ袋はとても破れやすく、何度も繰り返し使える素材ではありません。2、3回使ったらゴミとなる代物でした。
ゴミ袋として使うにも薄すぎる、再利用できずに破れることがほとんどです。

あとはやはり日本と違い商品サイズも大きいので、少しの買い物でも2、3袋必要なこともあり、一週間分などまとめての買い物ではレジ袋を10袋以上程必要とする人もいました。
有料化対象の小さな袋はそういった人々には不向きだったのでしょう。
レジ前には繰り返し使える大きなエコバッグが販売されています。価格も50ペンス(2023年1月時点で80円)から5ポンド(2023年1月時点で800円)と少し高額ですが、サイズ違いや保冷機能などニーズに合わせた様々なエコバッグがあります。

有名ブランドとコラボしたエコバッグなどは店によっては販売後すぐに売り切れも続出することもあります。そしてこの袋は破れたりすると新しいものに無料で交換してくれます。
また家庭で使わなくなった袋は、店舗でリサイクルしてくれるので、店頭には回収ボックスが設置してあります。
購入された袋は最終的にゴミになるのではなく、お店に持っていくとリサイクルされるという素晴らしい循環システムがあります。

家庭で使わなくなった袋は、店舗でリサイクルしてくれるので、店頭には回収ボックスが設置してあります
筆者撮影
お店の外には袋類のリサイクルBoxが設置されています。このお店は買い物袋だけでなく、お菓子の袋やキャンディの袋などもリサイクルしているようです。

イギリス人はギフトへの愛が強い

イギリスの代表的な習慣として知られているプレゼント文化。

誕生日やクリスマス、お祝い事だけでなく、知人宅に遊びにいくだけでも何か小さなプレゼントを贈ったりします。
プレゼント包装においては高級ブランド等でないかぎり店舗では包装をしてくれないので、自分で包装するのが普通です。
それだけにどんな小さな街でも必ずプレゼント用の包装紙やリボン、カード等を売るラッピングの専門店が必ずあり、材料を入手するには全く苦労はしません。

もちろんスーパーにも必ずラッピング用品の売り場があります。クリスマスシーズンにもなるとプレゼントとラッピング用品だけの売り場ができるほどです。
最近はこれらの包装紙やカード類、リボンなどもラメなどの非リサイクル素材の取り扱いを減らし、100%リサイクル可能な素材を使った物が増えてきました。
消費者としてはこういった商品は環境への罪悪感がないので抵抗感なく購入できます。
プレゼントをもらう側も紙類はリサイクルできるのでゴミが増えず喜ばれます。テープ類も最近はリサイクル可能な柄入りの紙テープが増えました。環境に良い漂白していない茶色の紙の包装紙に綿100%の紐を使ったようなレトロなラッピングも流行っています。

ラッピング用品
筆者撮影
スーパーで、リサイクル可能な素材を使った包装紙。なんと紙だけでなくフィルムはサトウキビ製でした。

日本の風呂敷のアイデアも取り入れたりしています。
イギリスの手作りサイト等では、FUROSHIKIという商品が既に販売されており、風呂敷専門のお店や[7]、ユニクロまでも風呂敷を販売しています。[8]
風呂敷を使ったワインの包み方や使い方などの本も英語で出版されているのをよく見かけるようになりました。日本の昔ながらの伝統的な物を大切にする文化が世界に認めらていることは大変うれしく思います。

食品の包装も紙が多い。その背景とは

実はイギリスではスーパーの商品にも紙の包装が使われています。

フルーツを入れている箱等も最近は紙製のものが増えてきました。
野菜売り場には小さな紙袋か、何度も使えるメッシュ地の袋が置かれています。皆その袋にバラ売りの野菜を入れて計量して購入します。

筆者撮影 野菜売り場にあるメッシュの野菜と果物入れ巾着袋。1つ30ペンス(2023年1月時点で48円)。

野菜売り場にあるメッシュの野菜と果物入れ巾着袋

パン売り場も紙袋が主流。シリアルの一種でポーリッジと呼ばれるイギリスの朝食の定番のオーツ麦ですが、紙の箱にそのまま入っています。その他小麦粉や砂糖などもほとんどが紙包装。
もう一つ驚くのは生理用品。上質ブランドはプラスチックでカバーされて個包装ですが、スーパーのオリジナルブランドなどはそのまま直に箱入りの物もあります。こういった紙が多く使われている背景にはイギリスのリサイクル事情が関係しています。

ハム売り場です。最近はプラスチックトレイではなく、紙と混合のパッケージが増えました
筆者撮影
これはハム売り場です。最近はプラスチックトレイではなく、紙と混合のパッケージが増えました。

イギリスでは家庭から出るリサイクルゴミの分別はかなり緩く、特に紙類は資源ごとの分別の必要はなく、リサイクル製品としてまとめて集荷してくれます。
新聞や段ボールだけでなく、封筒や広告ビラ、空き箱、段ボール、卵の紙ケース、包装紙など紙類は回収してくれます。紙類はほぼリサイクルとなるので、家庭ゴミもとても少なくて済みます。

こういった背景から買い物の際には紙の梱包やリサイクル可能な製品を選ぼうと心がける、そしてそれが購入の際の消費者の決め手となる。
自由な選択ができるという環境も個人個人の環境保護意識を高めているのではないでしょうか。

環境保護に対する企業の取り組み

環境に関する意見は人それぞれです。ですが選択肢があるなら環境に良い方がいい。
お金を使うなら、賛同できる企業へお金を使いたいという想いでお店を選んでいる人も多いです。
そして企業としての取り組みも宣伝となって集客につながっているのも事実です。ここでは面白い取り組みをしている企業をご紹介します。

Marks&spencer

Little shop(リトルショップ)キャンペーン
筆者撮影
9歳の子供の手で撮影。ミニ買い物カートも購入可能。

イギリス国内に1000店舗以上展開する大型小売店で、イメージ的には成城石井のような高級なスーパーといった感じです。
Marks&spencerは店で回収した袋や紙類などのリサイクル資材を使って店で実際に売られている商品のミニチュアを作り、一定額購入者に期間限定で配るLittle shop(リトルショップ)キャンペーンを始めました[9]
このミニチュアは子供が遊ぶだけではありません。大人の間でもコレクターアイテムとしても大人気でした。

遊び飽きて不要になったミニチュア商品を回収する箱が店内に設置されており、またリサ  イクルして違う商品を作るとのこと。
子供も大人も買い物を通してリサイクルを学ぶとても興味深いキャンペーン。今年もこのキャンペーンが実施されることを願っている筆者であります。

Morissons

イギリスの4大スーパーの一つであるMorissonsは、有料に切り替えられるべきプラスチックのレジ袋すらも廃止し、全て紙袋に切り替えました。
これは他のスーパーにはなかった取り組みなのでとても話題となりました。
Morissonsは袋だけではなく、サイズや形が悪いだけで店舗には並ばず廃棄されてしまう規格外の野菜を仕入れ、店舗で難あり品として少し安く売っています。
このような食品ロスを減らすといった環境をテーマに、他のスーパーにはない切り口で販売戦略を展開しています。

Morrisonsの丈夫な紙袋
筆者撮影
高さも35㎝あって、しっかりした紙質で何度も使える。この紙袋はイギリス製との印字があります。輸送による資源消費も考慮されているのでしょう。

Iceland

Icelandというスーパーでは自社ブランドの野菜と果物売り場に関しては2023年には全てのプラスチック包装をやめると明らかにしました。
その試みとして、店内ではプラスチックを全く使わない売り場を設けました。
この売り場では土にかえる素材を使ったフルーツのトレイや、植物由来成分の野菜を束ねるゴム、食物繊維を使ったミカンなどを入れる網を試験的に使用しています。
その後に利用者へアンケートを取り、政府へ情報をシェアするという試みを行っています。[10]

まとめ

それぞれの国において、外国人の数も違いますし国民性の違いは様々です。ですが外国人も含めイギリス国民がこれほど環境への意識が高いことに本当に驚きました。

政治経済面などでは国籍や文化の違いで皆が同じ方向を向くことは難しいと考えられる中、環境問題に関しては国籍が違っても思う方向性は同じようです。
おのおのが正しい、取り組みたいと思う選択肢がある環境がそろっているため、様々な政策の変化などにも抵抗なく順応することが可能なのではないかと思います。

未来の子供たちのために、そしてこの地球で生きていくために、我々大人が環境を考えている企業や小売店を応援することが必要なのではないでしょうか。こういった会社を応援することで日本の小売店も変わり、環境に優しい未来が広がるのではないかと私は思います。

執筆:園山茅


[1]Population of the UK by country of birth and nationality: 2020
https://www.ons.gov.uk/peoplepopulationandcommunity/populationandmigration/internationalmigration/bulletins/ukpopulationbycountryofbirthandnationality/2020

[2] Nippon.com 日本人人口、初の50万人超の減少 : 外国人比率2.25%に上昇
https://www.nippon.com/ja/japan-data/h00791/

[3] British public increasingly concerned about environmental impact of food
https://uk.news.yahoo.com/british-public-increasingly-concerned-about-environmental-impact-of-food-112357193.html

[4] Plant-based diets could save millions of lives and dramatically cut greenhouse gas emissions
https://www.oxfordmartin.ox.ac.uk/news/201603-plant-based-diets/

[5] How many vegetarians and vegans are in the UK?
https://www.finder.com/uk/uk-diet-trends

[6] Carrier bags: why there’s a charge
https://www.gov.uk/government/publications/single-use-plastic-carrier-bags-why-were-introducing-the-charge/carrier-bags-why-theres-a-5p-charge

[7] Furoshiki Wrap Company
https://furoshikiwrapcompany.co.uk

[8] UNIQLO
https://www.uniqlo.com/uk/en/content/furoshiki.html

[9] Find out how we’ve made this year’s minis from more sustainable materials
https://www.marksandspencer.com/c/food-to-order/little-shop/learn-about-sustainability

[10] Iceland greengrocer: Supermarket launches in-store plastic-free aisle
https://www.packaging-gateway.com/news/iceland-greengrocer-plastic-free-aisle/

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