自社内での廃プラスチックリサイクルは、コスト削減と環境保護への社会的責任を同時に実現する画期的な方法です。
廃プラスチックのリサイクルには、リサイクル業界のみならず各国政府も重要な課題として捉え、積極的に取り組んでいます。
現在、EU委員会をはじめ、ドイツ、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ブラジルなど多くの国々で、業界と政府が一体となってプラスチックリサイクルを推し進めています。
あなたの企業でもプラスチック製品の生産工程で発生するロールやトリム、カット端材などが大量に廃棄物として捨てられているかもしれません。
しかし、これらの廃プラスチックは再利用可能であり、自社内でリサイクルを行うことで処理コストや保管スペースの削減ができます。
こうしたトレンドから、製品素材としてリサイクル材の使用を要請される場合もあり、社内で出た廃プラスチックをリサイクルしようと考えている企業も多くあります。
この記事では、自社内での廃プラスチックリサイクルの具体的な方法やそのメリット・デメリットについて分かりやすく解説しています。さらに、おすすめの機械なども紹介していますので、リサイクルを始めるための参考になることでしょう。
参考記事:社内リサイクルがこけるパターン5つ
自社内での廃プラスチックリサイクルとは?
まず、自社でのリサイクルについて触れる前に、ポスト・インダストリアル・リサイクル(PIR。Post-Industrial Recycle)について説明します。
ポスト・インダストリアル・リサイクル(PIR)とは、プラスチック製品の生産工程で発生する廃プラスチックを再利用することをいいます。
この廃プラスチックリサイクルを自社工場内で行うのが、「自社でプラスチックリサイクルを行う」代表的な例です。
その他の例として、他社から仕入れた材料の梱包材等で、廃プラスチックが大量に発生する場合も、自社でリサイクルが行える可能性があります。
ポスト・インダストリアル・リサイクルの対義語としてポスト・コンシューマー・リサイクル(PCR。Post-Consumer Recycle)という言葉があります。こちらは家庭や市場で使用された製品を回収し再生資源化することを指します。
参考記事:産廃に回していた廃棄物をマテリアルリサイクルする際の問題点
自社でリサイクルをするメリット・デメリット
プラスチック製品の生産工程では、多くの廃プラスチックが発生します。例えば生産工程で発生するロールや、トリム(スリット耳)、カット端材などで、ロス率は通常2~3%といわれています。
これらの廃プラスチックは汚染されていないため、そのままゴミにするのはもったいないです。自分たちの工場でリサイクルして、生産ラインに戻して再利用できれば、環境にやさしいだけでなくコストを削減できます。
そこで、プラスチック製品生産者の間でPIRの自社リサイクルが注目を集めているのです。以下で、自社工場にて廃プラスチックをリサイクルをするメリット・デメリットを説明します。
メリット
処理費用と保管スペースを削減できる
廃プラスチックのリサイクルを外部に委託すると、処理費用と保管スペースがかかります。
リサイクル業者に廃プラスチックを渡す前に自社工場内である程度貯めて、施設内で分類・保管しておく手間がかかります。
十分な量が集まったら、廃プラスチックをリサイクル施設に輸送しなければならず、輸送費や手配業務が発生します。もちろん、リサイクルの委託料も必要です。
また多くの場合、リサイクルされた後はペレットとなり、再度生産に使用するため自社工場に戻さなければならず、その輸送費もかかります。
自社でリサイクルを行うことで、これら多くの工程を省き、処理費用と保管スペースを節約することができます。
製品の品質を一定に保てる
仕入先から材料を購入している場合、同じポリマーでできた材料であっても物性が異なり、高度な機械がないと見分けがつかないこともあります。また、材料が水分や異物を含んでいることもあるため、乾燥やろ過を行う必要があります。
社内で発生した廃プラスチックをリサイクルすれば、自社のものなので素材がなにかは分かっています。また、素材が水分を含んだり異物混入が無いよう管理することも可能です。そのため、100%同じ材料でできたペレットを生産ラインに戻し、製品の品質を保つことができるのです。
各国のプラスチック製品販売規定に適合できる
環境保護の観点から、近年はメーカーのプラスチック製品にリサイクル素材をより多く使用することを求められています。また、ヨーロッパやアメリカでフィルムやポリ袋を販売するときには、政府の規定に従い、規定の量のリサイクル材料を使って製造しなければなりません。
バージンプラスチックの代わりにリサイクルされた材料を使うことで、CO2の排出量を削減し、サーキュラー・エコノミー(当社のプラスチック資源循環コンサルティングサービスはこちら)の構築に貢献しながら、各国でのプラスチック製品販売規定に適合する商品を製造することが可能となります。
デメリット
技術と設備の導入コスト
プラスチックリサイクルを自社で行う場合、高度な技術と専用の設備が必要です。
生産プロセスの環境によっては、プラスチックの分別や洗浄、粉砕、再生加工などのプロセスを適切に行うための機械や設備が必要となる場合があります。
これらの機械や設備は高価であり、初期投資が大きな負担となることがあります。特に、最新のリサイクル技術を導入する場合は、より高額なコストがかかることがあります。
人材と運営の管理コスト
プラスチックリサイクルは専門的な知識と技術を持つ人材が必要です。リサイクルプロセスには機械操作や適切な品質管理が求められるため、熟練したスタッフの確保が重要です。
適切な人材の採用や育成にはコストと時間がかかり、工場運営には継続的な監視と管理が必要であるため、これらに対するコストも考慮する必要があります。
リサイクルペレット外販時の市場変動リスク
リサイクル製品の需要や価格は常に変動するため、リサイクルしたペレットを自社内で消費せず外販する場合は、需要変動に対応するための戦略が必要です。競合他社との競争やリサイクル技術の進化による市場リスクも考慮しなければならず、不確実性やリスクを抱える可能性があります。
廃プラスチックの一般的なリサイクル方法
マテリアルリサイクル
プラスチックをプラスチックのまま再利用する方法です。プラスチック素材を原料として再生し、新たなプラスチック製品を製造するプロセスを指します。
廃プラスチックは回収されたあと、破砕や洗浄、乾燥といった工程を経て、細かい破片のような状態の「フレーク」、さらにはフレークを溶かして粒状にした「ペレット」に加工されます。
フレークあるいはペレットに加工されたプラスチックは、その後工場で溶かされ、さまざまな製品に生まれ変わります。
廃棄物となるプラスチックを再生することで、原料費の低減や廃棄コストの削減ができます。
サーマルリサイクル
プラスチックを燃やして出た熱を利用する方法です。蒸気タービン発電の熱源や、施設内の暖房や給湯に利用されることが多いです。
サーマルリサイクルは「リサイクル」というものの、プラスチックを燃やしており再生利用しているものではありません。
そのため海外では、サーマルリサイクルはリサイクルとはみなされていません。
ただし燃料として利用するため、燃料費の削減、廃棄物の減容が見込めます。
ケミカルリサイクル
化学的なプロセスを利用してプラスチック廃棄物を分解し、元のモノマー単位に戻す方法です。プラスチックをナフサなどの熱分油にする熱分解法や、熱分解で合成ガスを生成するガス化法などがあります。
ただし、ケミカルリサイクルはまだまだリサイクル効率が悪く開発途中の技術です。国内では札幌プラスチックリサイクルが実施していましたが、容リ法の入札優先制度による原料不足等の影響で2011年に解散しています。現在でも世界中の企業がプロセス開発を行っています。
ケミカルリサイクルが標準技術となるにはまだ時間がかかるため、自社内で廃プラスチックをリサイクルする場合は、マテリアルリサイクルかサーマルリサイクルのいずれかが選択肢となります。
ここでは「リサイクル」することを考え、マテリアルリサイクル中心で考えていきましょう。
社内リサイクルされる廃プラスチックはどのようなものか?
社内でリサイクルされるプラスチックの一例として、プラスチック製品を製造・加工する際に発生するプラスチック端材や不良品があります。例えば下記のようなものです。
- レジ袋のカット端材
- フィルムやポリ袋のトリム
- 使用後のポリ袋
- ビニール紐
- 編みバッグ
- インフレーション整形や射出成形の際にピンチオフされた部分
社内リサイクルにおすすめのマシン
廃プラスチックの種類によって、最適な機械は異なります。
適切な機械を使用することで、適正な品質のリサイクルペレットの製造や高効率なリサイクルが可能となります。ここでは性能と価格のバランスに優れるPOLYSTAR社のプラスチックリサイクル用機械を紹介します。
カットコンパクター内蔵 Repro-Flex
フィルム材などをペレットにリサイクルする機械です。
Repro-Flexは、カッターコンパクター[1]を内蔵し、切断・押出・ペレタイズの各工程を1台に集約しており、ワンストップでリサイクルを行うことができます。
フィルムや袋の廃棄物、ストレッチフィルム、多層フィルム、リグラインド、洗浄・乾燥したフィルムかすなど、幅広い材料のリサイクルに対応します。
このモデルでは、リサイクル工程に入る前に材料をカットする必要がありません。また供給が安定しているため、均一なペレットを生産することができます。
[1]押出プロセスの前にプラスチック材料を切断・圧縮・減容し、生産効率を高める機構。
空冷式押出機 Repro-Air
空冷式の押出機で、幅広い材料のリサイクルに対応します。
Repro-Airは、そのコンパクトなサイズと簡単な操作が特徴で、インフレーション成形機や製袋機などの生産ライン近くに設置できるメリットがあります。
Repro-Airは、水を一切使いません。ダイヘッドでは空冷式ホットカットを採用しており、製造されたペレットはすぐに生産ラインに戻すことができます。
HDPE、LDPE、LLDPEフィルムや、生産工程で発生するロール、トリム(スリット耳)、カット端材、印刷の少ないフィルムなどのリサイクルに適したモデルです。
複数のロールをニップローラーで同時に投入することで、ギロチンカットの前処理を行うことなく処理することが可能です。
破砕機内蔵型押出機 Repro-One
破砕機内蔵型押出機のRepro-Oneは、PPヤーン、PP織物、PP不織布、または硬質プラスチックなどをリサイクルできます。
Repro-Oneは破砕、押出、ペレタイズの工程を一つのマシンで行うことができるため、省スペース・省エネ・省力化を実現できます。
破砕機を内蔵しているため熱履歴が少なくなり、材料の劣化を最小限に抑えることができます。
プラスチック粉砕機
樹脂ダンゴや成型不良品を粉砕できる粉砕機です。
廃プラスチックを押出機に投入する際、プラスチック塊の状態では入れることができないため、事前にある程度の大きさまで細かくする必要があります。
運用リスクを考えて押出機と粉砕機を分けて使いたい、粉砕機だけで運用することも想定している場合などは、単独で粉砕機を購入されるのもいいかもしれません。
様々な種類を取り揃えておりますので、詳しくはお問い合わせよりご連絡をお願いいたします。
社内リサイクルでのPOLYSTAR導入事例
2022年6月、トルコのイスタンブールにある、フレキシブルパッケージとメッセンジャーバッグの製造会社Sürmeli Plastikは、POLYSTAR社のリサイクルライン「Repro-Flex100」を導入し、生産時に出る廃プラスチックのリサイクルを開始しました。
同社はフレキシブルパッケージ、バッグ、ギフト包装、シュリンクフィルム、ファイル袋などの生産時に出た廃プラスチックをリサイクルしてペレットを作り、再び生産ラインに戻したり市場で販売して利益を得ています。
まとめ
自社内での廃プラスチックリサイクルとは、プラスチック製品の生産工程や製造ラインで発生する廃プラスチックを再利用し、リサイクルする取り組みを指します。
廃プラスチックのリサイクル方法はマテリアルリサイクル、サーマルリサイクル、ケミカルリサイクルの3つがありますが、自社内リサイクルではマテリアルリサイクルが選ばれることが多いです。
この自社内での廃プラスチックリサイクルには、処理費用と保管スペースを節約するなどのメリットがある一方、技術と設備の導入コストや管理コストがかかるといったデメリットがあります。
世界各国でリサイクルに対する意識が年々高まっている中、生産材料にリサイクル材を使用しているかどうかを求められることが増えています。
他社からリサイクル材を購入して対応することも可能ですが、割高になる可能性が高いため、これを機に自社内での廃プラスチックリサイクルを検討してみてはいかがでしょうか。
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POLYSTARでは、世界110カ国のプラスチック生産者様の進化するご要望にお応えし、様々なプラスチックリサイクルソリューションをご提供しています。
自社の工場でリサイクルを始めたいお客様は、総代理店の我々ファー・イースト・ネットワークまでお気軽にお問い合わせ下さい。
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Q&A
質問 | 回答 |
自社で廃プラスチックのリサイクルを行うメリット・デメリットはなんですか? | メリットは、処理費用と保管スペースの削減、リサイクルペレットの材料が元々製品なので製品品質を一定に保てる、各国のプラスチック製品販売規定に適合できることなどです。 デメリットは、技術と設備の導入コスト、人材と運営の管理コスト、リサイクルペレットを外販する場合は市場変動リスクがあるということです。 |
自社で廃プラスチックのリサイクルを始めるにはどのような設備が必要ですか? | 基本的には押出機とコンベア類があればリサイクル可能です。自社の生産工程から発生したものなので、キレイな状態であるため洗浄工程など不要な場合が多いです。 ただし、廃プラスチックの状態によっては粉砕機や破砕機、洗浄機、脱水機等の前処理設備が必要となります。 |
廃プラスチックをリサイクルしたペレットを外販する場合、どのようなところに販売するのでしょうか? | ユーザーへの直接販売、コンパウンダー(プラスチック特性を整えて成形加工メーカーに販売する会社)、商社やブローカーなどが販売先として挙げられます。 しかし相手が求める品質に合わせたり、販売量を一定に保つと行ったことが必要となるため、初めはアドバイザーと一緒に進めることを推奨します。 |