“海洋プラスチック“という言葉を耳にするようになったのは、最近の話ではありません。
私たちが暮らす日本でも、2019年に政府が「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」を策定したり、2020年7月からレジ袋の有料化が義務付けられるなど、プラスチックごみを減らすための対策が私たちの生活の一部になってきていることを実感します。
海を漂うレジ袋に首が絡まってしまい苦しむウミガメの痛々しい写真を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
私たちは、ポイ捨てされたプラスチックごみが海の生態系を壊したり、環境に悪影響を与えていることはイメージとして「なんとなく」わかっていますが、海洋プラスチックの何が問題で、どこから発生しているのか、といった実態や、どういった対策ができるのかといった情報を知る機会は少ないように思います。
当記事では、海洋プラスチック問題を理解して、私たちに何ができるのかを考えるための基本的なポイントを、1.海洋プラスチックごみの概要と人や環境への影響、2.プラスチックごみはどこからやってくるのか、3.プラスチックごみを減らすために私たちができる取り組み、の順に説明していきます。
1.海洋プラスチックごみの概要と人や環境への影響
海洋プラスチックごみは、どこにどれだけあるの?
現在、世界の海には1億5,000万トンのプラスチックごみが存在しており、1年間で新たに480~1,270万トンのプラスチックごみが海に流れ着くと試算されています(EU委員会、2018年)。
中間をとって875万トンとすると、実に年間東京ドーム約20杯分の容積のプラスチックごみが新たに海に流れ込んでいる計算になります[1]。
ちなみに、1億5,000万トンのプラスチックごみのうち海面に浮遊しているものは6,350~24万5,000トン程度で、残りは海底や海中深いところに蓄積しているといわれています(ジョージア大学Jambeck助教授、2015年)。
世界で海洋ごみが最も多いのは、太平洋ごみベルト(Great Pacific Garbage Patch/GPGP)と呼ばれるちょうどハワイとカリフォルニア州の中間あたりにある海域で、約16万㎡のエリア(フランス3つ分の面積)に約8万トンのプラスチックごみが集まっていると試算されています。
出典:「THE PROBLEM: OCEAN GARBAGE PATCHES -the example of the Great Pacific Garbage Patch」(NGO/GAIA FIRST) https://www.gaiafirst.org/the-problem
どんなプラスチック製品が、海洋ごみになっているの?
では、どんな種類のプラスチックごみが世界の海に流れ込んでいるのでしょうか?
前述のEU委員会の発表によると、使い捨てプラスチック製品が49%、漁網などの漁業ごみが27%で大半を占めています。海洋ごみの約半数を占める使い捨てプラスチックの内訳の上位10位は以下のようになっています。
- 飲料用ペットボトルとキャップ
- タバコの吸い殻
- 綿棒
- スナック菓子袋・キャンディーなどの包み紙
- 女性用衛生用品(ナプキン・タンポン等)
- ビニール袋
- カトラリー・ストロー・マドラー
- 飲料カップと蓋
- 風船と持ち手のスティック
- ファーストフード容器を含む食品容器
日本近海で行われた環境省の調査によると、やはりプラスチックボトル、容器やポリ袋、漁網やロープが上位を占めているようです(環境省、2018年)。
出典:エコだね!茨城(環境保全茨城県民会議事務局)https://www.ecodane.jp/plastics-smart/house-trash.html
また、目に見える大きなプラスチック製品のごみだけではなく、「マイクロプラスチック」も問題とされています。
陸上でポイ捨てされたり、不適切な廃棄をされたたばこのフィルターなどは、側溝に落ち河川を伝って海まで漂着する過程で、紫外線による劣化や波・水流の力により粉砕されます。
「マイクロプラスチック」とは、これらのプラスチックが直径5㎜以下の小さな破片となったものを指します。
海洋プラスチックが人や環境へどんな影響を与えるの?
世界中で問題視されている海洋プラスチックごみですが、実際に何が問題なのでしょうか?例えば、以下のようなポイントが考えられます。
- 絶滅危惧種を含む海洋生物への直接的な被害
- 生態系の破壊による自然の環境保全機能への影響
- 漁獲量の低下
- 人体への被害
海洋生物への被害について、海を漂うビニール袋をクラゲだと勘違いして誤飲したウミガメが窒息死してしまう、消化のできないプラスチックごみを大量に飲み込んだクジラが餓死する、といった例が実際に報告されています。
5㎜以下のマイクロプラスチックを魚や海鳥が餌と間違えて飲み込んでしまい、消化器官に炎症が起こるケースも指摘されています。この中には絶滅が危惧される貴重な海洋生物も含まれる可能性があります。
プラスチックの利用により私たちの生活が便利になる対価として、海に住む生物に健康被害が出たり、最悪の場合は貴重な生命が絶滅の危機にさらされてしまうことを、もう一度考えてみる必要がありそうです。
出典:ナショナルジオグラフィック https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/120900714/
上述の海洋生物への被害をもう少し広い視点で観察してみると、多様な海洋生物が自然の摂理に反して大量に死んでしまうことで、海の生態系のバランスを崩してしまうということも懸念されます。
例えば、マイクロプラスチックをプランクトンの代わりに摂取したサンゴ礁が栄養不足で死んでしまうことで、サンゴ礁生態系が消滅し、海から魚がいなくなってしまうという研究があります。さらに、CO2を吸収して酸素を放出しているサンゴ礁の減少により温暖化がますます加速すると懸念する研究者も います。
このような生態系への影響により、従来獲れていた魚が獲れなくなってしまうことに加え、漁業の現場では漁業網にプラスチックごみが混入することで漁獲量が減ってしまうという問題も起こっています。水産大国日本にとって、水産資源への悪影響は経済的にも社会的にも無視できない問題です。
最後に、人体への影響に触れたいと思います。プラスチックと人間への健康被害の因果関係は、これまでのところ証明されていませんが、各国でマイクロプラスチックの有毒性について様々な調査や議論がされています。
“海洋プラスチック”からの直接的な影響として指摘されているのは、私たち日本人にとっても重要なタンパク質源である水産物に含まれる有害物質の摂取です。マイクロプラスチックを摂取したプランクトンを魚が食べ(場合によってはそれらをさらに大型の魚が捕食し)、それらが私たちの食卓に上ります。マイクロプラスチックが吸着した環境ホルモン等の有害な残留性有機汚染物質(POPs)が、この食物連鎖により濃縮されたかたちで、私たちの体内にも取り込まれ、蓄積されてしまう可能性が指摘されています。
PCB(ポリ塩化ビフェニル)、ダイオキシン、ノニルフェノールといった環境ホルモンは、生殖機能の低下、アレルギー、免疫力の低下、肥満、がんの発症等の健康被害につながるという報告があります。
一般的にプラスチックが自然に分解されるのには400年程度かかるとされています。この間、排出されたプラスチックは海だけではなく広く自然界に蓄積され続け、生態系を壊し、私たちの健康にまで被害を及ぼす威力を高めているのです。
2.プラスチックごみはどこからやってくる?
ここまで、海洋プラスチックごみの実態、どこにどれだけ存在していて・何が問題なのか、というお話をしましたが、次に、年間875万トンものプラスチックごみが、一体どこから・どういった経路で海に行きついてしまうのか、という点について紹介していきたいと思います。
大きく分けて、1. 海や沿岸で排出されるごみと、2. 陸から河川を通して流れ着くごみの2種類に分けることができます。「海洋」プラスチックごみというくらいですから、海やビーチで発生したごみというイメージが持たれがちですが、実は海から発生するごみは実は2~3割程度に過ぎず、7~8割が陸の私たちの生活から発生していると考えられています。
海からのごみ
まず、海から発生するごみにどんなものがあるのかについて解説していきます。全体に占める割合こそ2~3割程度と少数派であっても、無視できない量のプラスチックごみが排出されています。代表的なものがビーチの観光ごみ・漁業ごみ・船舶ごみです。
ビーチの観光ごみ
海水浴客がプラスチックのコップやペットボトル等を浜辺に放置してしまうということが長く問題となっていましたが、現在では環境保護の風潮もあり故意にポイ捨て・放置をする人が減ったように感じます。
しかし、「故意」ではないプラスチックごみ排出のルートもあることを認識しないといけません。浮き輪や子供の砂遊びセットが波で流されてしまったり、設置されたゴミ箱を海鳥が漁りプラごみが散らかってしまう、または屋台や海辺のレストラン・バーで提供された食品容器が風に飛ばされたりというケースです。
漁業ごみ
漁業ごみとは、漁業で使われる網やロープ、またはブイなどが廃棄されたものです。
皆さんも釣りをしていて藻や岩に釣り糸が絡まってしまい、仕方なく切り離すしかなかったという経験がある方もいるのではないでしょうか。こうして海川に放流されたプラスチック製の漁網や釣り糸が「ゴーストギア」、つまり漁具の幽霊となって勝手に漁を続け、生態系に悪影響を与えています。
日本で環境省が国内で行った海の漂着ごみ調査によると、重量ベースでは漁網・ロープを含めた漁業関連ごみが全体の59.3%と圧倒的多数を占めています。
旅客船・貨物船・作業船舶からのごみ
最後に、沿岸で運行する船舶からの排出にも触れたいと思います。作業船乗組員の生活ごみがきちんと分別されずに海に投げ捨てられる、また豪華客船が残飯やプラごみを海に不法投棄していた、といったケースが過去に報告されています。
高波で海に投げ出されたコンテナから何万というレゴブロックが海に放出され、それらが何十年もの間、遠く離れた国の浜辺で発見され続けている、という驚くべき事例もあります。
割合にしてみれば微々たるものかもしれませんが、一旦海に放出されてしまえば回収が難しく、自然に分解されることのない(少なくとも数百年という時間を要する)プラスチックの特性を考えると、無責任なプラスチックごみの廃棄や管理は撲滅しなくてはなりません。
陸からのごみ
ここまで海から排出されるプラスチックごみのルートを紹介してきましたが、これらをはるかにしのぐ量のプラスチックごみが陸から排出されている(全体の7~8割ほど)といわれています。海洋プラスチックごみ問題は、海での問題ではなくむしろ陸での問題だと考えるべきであることが示唆されます。
WWF(世界自然保護基金)は、海洋プラスチックごみの陸での発生源として、①埋め立てごみ、②ポイ捨てごみ、③排水から流れ出るプラスチック製品の三つを指摘しています。
①の埋め立てごみは、本来であればリサイクルされるべきプラスチックごみが、埋め立て処理される過程で、風に飛ばされたり、豪雨に流されることで、河川を通じ海へ辿り着いてしまうケースです。
②のポイ捨てごみは、最も私たちの意識が行きやすいトピックではないでしょうか。中身を飲み終え放置されたペットボトルや、何気なくポイっと投げ捨てられたタバコの吸い殻が、雨風で排水溝へ落ち、より低いところにある河川へと移動、そこから海へと流れ出ていくというルートです。
③の排水から流れ出るプラスチック製品とは、歯磨き粉や洗顔スクラブ等に使われるマイクロビーズ(極小サイズのプラスチック)や衣服の繊維に含まれるポリエステル等の化学繊維(成分構成はプラスチックと同じ)のことです。
私たちが歯磨き、洗顔、洗濯をしたりする過程で排水へと流れているという指摘で、下水処理のプロセスでろ過されることなく海に流れ込んでいます。
さらに農業排水にも同様に、肥料等に使用されるプラスチック製のマイクロカプセルが含まれています。
これらに加え、プラスチックペレットやプラスチックくず等、産業からの排出もゼロではありません。工業製品の生産過程や廃棄物の処理過程で適切に処理されなかったり、移動の途中で風に飛ばされ海岸を汚染している、という例も報告されています。
出典:ractor at a landfill site © Steve Morgan / WWF-UK https://www.wwf.org.au/news/blogs/the-state-of-australias-recycling-how-did-we-get-into-this-mess
ここまでは、ある程度目視できるルートで排出されたプラごみの話です。
こういった話を聞くと、「我が家ではきちんと分別しているし関係ない」と思いがちですが、例えば、自宅の庭先に置いておいたバケツやビニールシートが暴風雨で天候等により意図せず海に流れつくこともあります。
ごみ収集場に放置したごみ袋をカラスがぐちゃぐちゃに荒らして中身が外に出てしまっているのも実際よく目にします。
私たちの暮らす日本では、廃棄プラスチックの管理が適切にできているケースがほとんどかもしれません。しかし、「そのつもりがなくても排出してしまっている」ことも現実なのです。一人が排出するのがたった一つのプラスチックごみだとしても、一億二千万人がそれぞれ一つ排出すれば、全体では一億二千万個になります。
プラスチック製品の使用量自体を減らし、環境への負担が少ない代替製品の利用を増やすことも、海洋プラスチックごみ削減対策のひとつとして考えていく価値がありそうです。
出典:公益財団法人 環日本海環境協力センター https://www.npec.or.jp/support/marine_edu/marine_edu02.html
どこの国の責任?
とはいっても、私たちが住む日本では、プラスチックごみの処理は一般家庭でも産業ごみとしても規制により大半がきちんと分別されているし、環境意識が高まった昨今ではポイ捨てをする人も少ないような気がします。では、日本以外の国がプラスチックごみを海に捨てているのでしょうか?
オランダの環境団体The Ocean Cleanupによる2019年のデータでは、海へのゴミの流入はアジア諸国からの流入が81%を占めるとされており、中でもフィリピン・インド・マレーシアが三大排出国となっています。
ランキング | 国 | 世界比率 | 年間排出量(トン) |
1位 | フィリピン | 36.38% | 356,371トン |
2位 | インド | 12.92% | 126,513トン |
3位 | マレーシア | 7.46% | 73,098トン |
4位 | 中国 | 7.22% | 70,707トン |
5位 | インドネシア | 5.75% | 56,333トン |
6位 | ブラジル | 3.86% | 37,799トン |
7位 | ベトナム | 2.88% | 28,211トン |
8位 | バングラデシュ | 2.52% | 24,640トン |
9位 | タイ | 2.33% | 22,806トン |
10位 | ナイジェリア | 1.9% | 18,640トン |
ourworldindata.orgのデータより独自に作成
出典:ourworldindata.org https://ourworldindata.org/grapher/plastic-waste-emitted-to-the-ocean?country=BGD~CMR~PHL~CHN~IND~NGA~BRA~LKA
日本は1,835トンで世界の海洋プラスチックごみ排出順位で37位となっています。私たち日本人が生活の中に溢れかえるプラスチック製品を、きちんと分別して処理している結果のように見受けられます。でも実は、そう単純な話でもないようです。
日本はプラスチックごみの処理方法のひとつとして、国内での処理だけではなく、資源として海外に輸出もしています。2020年の総廃プラ排出量は約822万トンで、うち約82万トンを海外に輸出しました。実に10%が海を渡っているのです。
財務省のデータでは、輸出相手国は第一位がマレーシアで26万1,000トン、第二位がベトナムで17万4,000トン、第三位が台湾で14万1,000トンとなっています。過去には中国が最大の輸出先相手国でしたが、廃プラ処理に伴う環境汚染・労働問題への対策に乗り出した中国が2017年から段階的な輸入規制を行ったことから、日本の輸出先が東南アジアにシフトしたという経緯があります。
これらの東南アジア諸国も徐々に輸入規制を導入していることに加え、廃棄物の国境移動を国際的に規制しているバーゼル条約が改正され、2021年から「リサイクルに適さない汚れたプラスチックごみ」の輸出には輸入国の同意が必要になったことで、日本によるプラごみの輸出量は7年連続で減少しています。
しかし、過去の廃棄・輸出分も含め、私たちがしっかりと分別したつもりのペットボトルも、知らないうちに、想像もつかないルートで海洋ごみとなり生態系を壊している可能性はあります。一度手元を離れてしまったプラスチックごみの、その行先まで追跡することはできないのです。
3.プラスチックごみを減らすために私たちができる取り組み
これまで海洋プラスチック問題について、その問題と原因を詳しく説明していきましたが、ここからどうすればプラスチックごみの海への流出を減らすことができるのか、私たちが出来る取り組みについて考えていきたいと思います。答えはずばり、「回収」・「リサイクル」・「使わない」の3つです。
海・川・街での回収活動
まず回収について、プラごみの回収活動に参加することは、直接的に海洋プラスチックの削減につながります。
プラごみの発生源を根絶しなければ、地道なごみ拾いなんて大した削減に繋がらないと考える方も多いかもしれません。意識して街を歩いてみると、「きちんと分別して処分している」はずの日本でも多くのプラごみがあることに気が付くはずです。
一人の人が一日一つプラごみを拾ったとしたら、社会全体でどれだけの量を回収できるでしょう。渋谷区の人口約22万人が一人一つの空ペットボトル(平均20gと想定)を拾えば、一日で4.4トン相当、一年で1,606トン(=ジャンボジェット機4.5機分の重量)のプラスチックごみが回収できます。
また、ごみ拾いイベント等には、プラスチックごみが環境にもたらす様々な問題を広く周りの人に知ってもらう・意識してもらうという効果もあります。2022年5月には環境省と日本財団が協賛しコスプレをしてごみ拾いをする「コスプレde海ごみゼロ大作戦!!2022」を実施、約400人が参加して渋谷の一斉清掃活動をし、話題を呼びました。趣味やレジャーの一環として、各自治体やNGOが主催する清掃活動に参加してみるのもいいかもしれません。
リサイクル
プラスチックを資源として循環させることで、廃棄される量を減らすという考え方です。大まかに分けて以下3通りのリサイクル方法があります。
- マテリアルリサイクル(再生利用):廃プラスチックをプラスチックのまま原料として新しい製品に再生する方法
- ケミカルリサイクル(化学的再生法):廃プラスチックに化学処理を施して油化/ガス化/細分化しエネルギーや原料として再利用する方法
- サーマルリサイクル(エネルギー回収):廃棄物を焼却処理する時に発生する熱をエネルギーとして再利用する方法
プラスチック廃棄物がすべてリサイクルされているわけではなく、単純焼却や埋め立て処理されるものもありますが、日本では上述の3つのいずれかのリサイクル方法で全体の約86%のプラごみが有効利用されています[2]。
この数字を確実に伸ばしていくために私たち一を人ができることは、まずしっかりと分別・回収することです。個人で正しい分別・回収の仕方を意識して見直すことで、社会全体でのプラスチックを資源としてリサイクルする循環のシステムを浸透させることができるのです。
プラスチックの使用量を減らす
最後に、最も効果的である取り組みは、プラスチック製品の使用量自体を減らすということです。
日本では2020年7月からレジ袋の有料化がされましたが、この取り組みはまさにプラスチック製品の利用を減らすという意識を社会全体に浸透させるための意味合いがあるとされており、現在では買い物の際マイ袋を持って出かけるのが私たちの日常になりつつあります。
マイ袋の持参だけではなく、以下のことを意識してみることで、私たちの生活から排出されるプラスチックごみの絶対量を大幅に減らすことができます。
- ペットボトル製品を買わずに、マイボトルを利用
- 外食の際にプラスチック製のスプーン・フォーク等を使用しない
- シャンプーや洗剤の詰め替えを使用
- ビニールの傘袋を使わない・持参の折り畳み傘カバーを使う
- 使い捨てラップの使用を減らす
- オフィスでのプラスチック製使い捨てコップの使用をやめ、マグカップを利用
- 過剰包装を断る
また、「使わない」という取り組みだけではなく、自然に分解される代替製品(リサイクル紙、バイオプラスチック)の利用を推進する、「置き換える」という考え方も、環境保護の効果と生活をする上での利便性を両立させた実利的な解決策だといえます。
私たちが日常の消費活動をしながら快適に生活をする上で、お弁当容器や化粧品の包装紙といった使い捨てプラ素材を完全に排除することは困難でしょう。しかし、その使い捨て製品が環境にやさしい素材でできていれば、少なくとも自然に放出されるプラスチックによる自然への負荷は減ります。
環境に優しい代替製品の利用は企業や事業者の努力によるところが大きいですが、私たち消費者が積極的にこれらの製品を選ぶことで、企業側が環境に負担をかけない梱包素材・容器・製品等を採用する動機づけが高まっていくのではないでしょうか。
買い物バッグや食品容器等「入れ物」の部分だけではなく、毎日使用する生活用品等の「中身」も自然に分解される代替素材でできた「プラスチックフリー」を選ぶことができます。
例えば、衣類。化学繊維ではなく、天然繊維を使用した衣服を購入すれば、洗濯の際に下水から河川や海へ流れ出てしまうマイクロプラスチックを減らすことができます。歯ブラシも持ち手やブラシ部分がプラスチックでできている従来の製品ではなく、竹などの天然素材を使用したものや、サトウキビ等の有機素材を原料としたバイオプラスチックを使用したエコ歯ブラシを使うことでプラスチックごみの排出量削減につながります。
身近なところにも、サスティナブルなライフスタイルを実現する選択肢がたくさんあるのです。
まとめ
海洋プラスチックの問題点・発生源・対策について説明をしました。
安くて、使い捨てができ、汎用性に富んだプラスチックは、第二次世界大戦後、急激にその利用が広がり、私たちの生活を便利なものに変えてくれました。しかし、正しく処分をされずに自然界に残ってしまった廃棄プラスチックの環境被害と有害性に人類が気付き始めたことで、「プラスチックフリー」社会の実現に向け、世界中で人々の意識が少しずつ変わっているように見受けられます。
ここで私たちがもう一度考えなければならないこと。それは、私たちの暮らす日本からも、「そのつもりがなくても」プラスチックが海に排出され続けているという事実を認識し、ペットボトル一つでもその排出量を減らすために、プラスチックという素材の利用を見直すことではないのでしょうか。
[1] プラスチック1㎥の重さを0.35t、東京ドームの容積を1,240,000㎥として計算。
[2] 参照:一般社団法人循環利用協会「プラスチックリサイクルの基礎知識 2022」https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf1.pdf