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2024環境展・地球温暖化防止展 5/22~24 東京ビッグサイトに出展します

「偽エコ」のグリーンウォッシュに注意すべき理由

環境意識の高い消費者が増えてきている昨今、「エコ」や「地球にやさしい」、「サステナブル」といった環境関連の言葉を見聞きすることが増えました。
環境に配慮した商品であれば少し高くても購入する人たちもいます[1]
したがって、エコを主張するのは企業戦略としては間違っていません。

しかし、本当に環境に配慮していれば良いのですが、あたかも配慮したように見せかける偽エコにはデメリットがあります。

消費者が本当にエコなものを選びにくくなるといいたいわけではありません。

もちろん、グリーンウォッシュにより消費者が無意識に環境破壊に加担してしまうのは問題です。
消費者が環境への配慮をうたう商品に不信感を抱くようになってしまう可能性もあります。
また、SDGsの達成が遠のいてしまうといった弊害もあります。

しかし、この記事で知って欲しいのは、グリーンウォッシュをしてしまった側のデメリットについてです。
エコっぽい言葉をつけるとカッコイイし売り上げも上がるから良い、と思うのは考えが足りません。
見せかけだけのエコは見破られてしまいます。

エコなふりが見破られたらカッコ悪いだけでなく、企業にとってわりに合わないほどの汚点になる可能性もあります。

エコなふりをして騙した企業がどうなったかを含め、偽エコであるグリーンウォッシュについて説明します。

グリーンウォッシュとは

グリーンウォッシュとは、環境に配慮していると消費者に誤解を与える偽のエコのことです。
環境にやさしいと見せかけて誤解を与えるほか、環境に有害な側面を隠すことも指します。

英語のGreenwashing(グリーンウォッシング)と同じ意味で、不正行為や偽の情報を使用することを指すWhitewashing(ホワイトウォッシング)をもじって作られました。
Whitewashingに環境や地球にやさしい、環境問題意識が高いといった意味を持つGreenを組み合わせてGreenwashingです。
また、Greenwashingから更に派生した、SDGsに取り組んでいるように見せかけるSDGsウォッシュという言葉もあります。
SDGsは世界中にある差別、貧困、人権問題や環境問題などを2030年までに解決するための計画&目標のことです。

日本ではGreenwashingではなくグリーンウォッシュ(Greenwash)という言葉が使われることが多いです。

ですから、以降は海外のGreenwashingについてもグリーンウォッシュと表記します。

世界中で行われるグリーンウォッシュ

日本では知られはじめたばかりですが、海外では2020年代には既にグリーンウォッシュがはびこっていました。
グリーンウォッシュについて欧州委員会が行った調査によると[2]、世界中の企業のサイトのうち42%に誇張や虚偽があり、約半数にグリーンウォッシュの可能性がありました。
追加で344件の一見怪しげなサイトを調査したところ、59%に主張の裏付けがなかったようです。
また、344件のうち37%において根拠がないのに「意識的」「環境にやさしい」「持続可能」といった、環境に悪い影響を与えないという印象をわざと与えようとしていると判断されています。

具体的なグリーンウォッシュの例

グリーンウォッシュについて、有名な例を5つ紹介します。

世界初のグリーンウォッシュ

世界で最初に行われたグリーンウォッシュは1960年代にホテルの客室に「環境のためにタオルの再利用」をするようお知らせを出したケースといわれます[3]
問題となったのは、環境をうたいつつも洗濯の費用を抑えるのが目的だった点です。
1986年に環境保護主義者のジェイ・ウェスターベルト氏がタオルの再利用運動は、ホテルの洗濯代の節約にしかならなかったことに対する批判的なエッセイを発表しました。
グリーンウォッシュという言葉が広く知られるようになったきっかけでした[4]

トヨタ自動車のグリーンウォッシュ

環境に配慮してハイブリッド車を作っているトヨタ自動車もグリーンウォッシュを指摘されたことがあります。
2008年に欧州の新聞「European Voice」に掲載されたプリウスの広告が以下の2点で問題となりました。

  • 広告にCO2排出量や燃費のデータが載っていなかった
  • 「Zero emissions low」というキャッチコピー

データが載っていないことで根拠が不十分、「Zero emissions low」はCO2排出量がないと誤読されかねない、と批判されたのです。
トヨタ自動車はグリーンウォッシュの指摘を受けて広告を取り下げています[5]

当時、プリウスは2008年モデルの車の中では燃費の良さがトップでした[6]
それでも具体的な数値や明確なキャッチフレーズを載せないとグリーンウォッシュとされてしまうという例です。[7]

マクドナルドのグリーンウォッシュ

続いては世界的に有名なファーストフードチェーンのマクドナルドのケースです。マクドナルドは2018年にイギリスの全店舗でプラスチック製のストローを「環境にやさしい」紙製のストローに切り替えました。
紙製のストローは導入当初は100%リサイクル可能とされて喝采を浴びました。
しかし、飲みやすさのために紙ストローを強化したため、リサイクルできなくなってしまいました。
紙ストローは廃棄されることになり、グリーンウォッシュであると批判されました。
怒り狂った消費者はプラスチック製ストローの復活を求める嘆願書を出し、51,000 人が署名したとのことです[8]
しかし、プラスチックストローは復活していません。
日本でも2022年10月から紙ストローへの切り替えが始まりました[9]

H&Mのグリーンウォッシュ

スウェーデンのアパレルメーカーであるH&Mもグリーンウォッシュを指摘されています。
H&Mは2019年の「H&M Conscious コレクション」が問題視されました。
「H&M Conscious コレクション」は100%オーガニックコットン、テンセル、リサイクル ポリエステルなどの持続可能な素材を全てのラインナップに使用したと発表していました。
しかし、リサイクル素材の含有量などの具体的な情報が欠けていたのです。
H&Mはノルウェーの消費者監視機関から指摘を受けてしまいました[10]

アディダスのグリーンウォッシュ

アディダスは2021年に次世代スニーカーの「スタンスミス」にグリーンウォッシュを行ったとフランスの広告監視機関ARPPから指摘を受けました。問題となったのは以下の2点でした。

  • 「50%リサイクル」というキャッチコピー
  • 「End Plastic Waste」という文字からなるロゴ

「50%リサイクル」はスニーカーの50%がリサイクル材料で作られていると誤解されかねない点が問題でした。
また、「End Plastic Waste」という文字からなるロゴはプラスチック廃棄物を無くすと誤認識させてしまうことが問題でした[11]
リサイクルされている部位についてアスタリスクをつけて詳しく書いてあっても、分かりにくいことでグリーンウォッシュとされてしまった例です。

有名なグリーンウォッシュの例をあげてきましたが、どう思われましたか?

名前の知られた大企業であるために大きく取り上げられているのかもしれませんが、私はかなり細かい点でも指摘されていると思います。
わざと消費者をだまそうとして行われているというより、結果的にグリーンウォッシュになってしまったと感じました。

ここまでは、規制が強化される前の有名な例です。

企業のイメージが損なわれたり、投資家からの信頼を失ったりはしたかもしれませんが、罰金などはありませんでした。
2021年ごろから、グリーンウォッシュに対する規制が厳しくなりました。

グリーンウォッシュに対する規制

欧米が先駆けとなり、世界中でグリーンウォッシュに関する規制が始まっています。

イギリスでは2021年に公正取引委員会にあたる競争・市場庁(CMA)が「グリーンクレームコード」を発表しました[12]
「グリーンクレームコード」は環境に配慮していると主張するときの指針です。

グリーンウォッシュが起こらないようにするだけでなく、罰則を設ける国も現れました。
グリーンウォッシュに初めて罰金や懲役といった具体的な罰則を科した国はフランスです。フランスでは同年の2021年に消費法典と「気候・レジリエンス」法が改正され、グリーンウォッシュの罰則が設けられました。

違反した企業は平均年間売上高かグリーンウォッシュ関連費用の80%を上限とし、最高1,500,000ユーロが罰金として科せられます。企業の役員は最高で2年の懲役および30万ユーロの罰金を科される可能性もあります[13]

そして、アメリカでは実際にグリーンウォッシュによる罰金が請求されています。

アメリカの連邦取引委員会(FTC)は2022年4月にウォルマートに300万ドルのグリーンウォッュペナルティ(罰金)を科しました。ウォルマートは世界最大のスーパーマーケットチェーンです。
レーヨンから作られている繊維製品を、竹から作られて環境に優しく製造されたと偽ったのが理由です。
同じような「偽の竹のグリーンウォッシュ」でデパートを運営するコールズ社も250万ドルの罰金を科せられました[14]。いかにも、この商品は環境に良いと思わせる、グリーンウォッシュらしいケースですね。

また、2022年5月にはアメリカの証券取引委員会 (SEC) がバンク・オブ・ニューヨーク・メロンにグリーンウォッシュの罰金150万ドルを科しました[15]
全ての投資対象がESGに該当すると嘘をついたことがグリーンウォッシュに該当します。
ESGとは環境、社会、企業統治の頭文字からなる言葉で先進的な企業がとりいれている企業方針です。
ESGを重要視する企業に投資する「ESG投資」が機関投資家を中心に人気が高いことから、アメリカでは大きな話題となりました。

日本でのグリーンウォッシュに関する動き

日本では環境省がグリーンウォッシュ債権を出回らないようにするために、グリーンボンドガイドラインを発表しています[16]
グリーンボンドとは、国内外の環境問題の解決に関係する事業に要する資金を調達するために発行する債券を指します。
また、グリーンウォッシュ債権とは、環境問題の解決に関係していないのに、環境問題の解決をすると偽って投資家からお金を借りるとき証書のことです。
罰金や懲役といった強い規制は導入されていませんが、徐々にグリーンウォッシュへの規制が広がっているところです。

国内の企業では、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)がグリーンピースにグリーンウォッシュを指摘されています[17]
「2050年カーボンニュートラル」を宣言しているのに、大規模石炭火力発電所への融資を継続しているためです[18]
カーボンニュートラルとは、大気中に排出される温室効果ガスと大気中から除去される温室効果ガスが同じ量となる状態を指します。
投融資の一貫性を保つためにグリーンウォッシュ抑制策を定款に記載するよう、株主提案にて環境NGOから求められてもいます[19]

同じように環境関連の方針を出しつつ化石燃料事業への関与を継続している三菱商事、JERAの株主である東京電力ホールディングスと中部電力も同様にグリーンウォッシュとなる可能性があります。

大きく取り上げられるのは大企業のケースですが、身近なところでは消費者に気づかれているケースもあるでしょう。
なぜなら、若い世代は前提を疑って考える、クリティカルシンキングを身に付けるように教育されているからです。

小学生ですら学校からタブレットが貸し出されて、インターネットで書かれている内容を精査できる時代です。
環境意識が高い賢い消費者だけでなく子供にすら、偽りのアピールは暴かれかねません。

エコはおしゃれというイメージもある中、知らずにグリーンウォッシュをしてしまって指摘をうけたら恥ずかしいです。
それに、悪質なグリーンウォッシュだとネット上で炎上でもしたら目も当てられません。

「環境にやさしい」「地球にやさしい」「エコ」「エコフレンドリー」「エシカル」「サステナブル」「持続可能」etc.

曖昧な耳に心地よい言葉を安易に使うことは、グリーンウォッシュと非難される可能性があります。

カッコ悪いアピールにならないよう、環境への配慮をアピールするときには、デザインや文言、PRの方法などが現実と異ならないようにしてくださいね。


[1] 【アンケート調査結果】エシカル、スローファッション、サステナブルなど、環境配慮に関するキーワード認知度は約20%
https://fumikoda.jp/blogs/journal/200303-ethical-questionnaire

[2] Screening of websites for ‘greenwashing’: half of green claims lack evidence
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_21_269

[3] What Is Greenwashing? How It Works, Examples, and Statistics
https://www.investopedia.com/terms/g/greenwashing.asp

[4] What Is Greenwashing?
https://www.businessnewsdaily.com/10946-greenwashing.html

[5] Toyota zero emissions ad ruled misleading
https://friendsoftheearth.eu/press-release/toyota-zero-emissions-ad-ruled-misleading/

[6] e燃費アワード2007-2008
https://e-nenpi.com/award/award20072008/

[7] EPA-DOE Release Fuel Economy Lists for 2008 Models – Numbers reflect new fuel economy testing methods
https://www.epa.gov/archive/epapages/newsroom_archive/newsreleases/4008dd8a8032bd8685257372004ed1a7.html

[8] McDonald’s paper straws cannot be recycled
https://www.bbc.com/news/business-49234054

[9] プラスチック対策
https://www.mcdonalds.co.jp/sustainability/environment/paper_cup/

[10] H&M called out for “greenwashing” in its Conscious fashion collection
https://www.dezeen.com/2019/08/02/hm-norway-greenwashing-conscious-fashion-collection-news/

[11] ADIDAS – AFFICHAGE – PLAINTE FONDÉE
https://www.jdp-pub.org/avis/adidas-affichage-plainte-fondee/

[12] Green Claims Code – get your green claims right
https://www.alterna.co.jp/59878/

[13] L’écoblanchiment, une pratique à hauts risques
https://www.lemondedudroit.fr/decryptages/84569-ecoblanchiment-pratique-hauts-risques.html

[14] Walmart, Kohl’s Respond to FTC’s $5.5M Penalty for ‘Misleading’ Eco Claims
https://topclassactions.com/lawsuit-settlements/consumer-products/household/walmart-kohls-to-pay-5-5m-over-false-eco-friendly-bamboo-sheets-claims/

[15] SEC fines BNY Mellon $1.5m for ESG misstatements
https://www.funds-europe.com/news/sec-fines-bny-mellon-15m-for-esg-misstatements

[16] グリーンボンドガイドライン
https://greenfinanceportal.env.go.jp/bond/guideline/guideline.html

[17] SMBCの新石炭投融資方針は、新経営理念に矛盾
https://www.greenpeace.org/japan/nature/press-release/2020/04/16/13337/

[18] 気候変動への対応(TCFD提言への取組)
https://www.smfg.co.jp/sustainability/materiality/environment/climate/

[19] 内外の環境NGOによるアジアでのガス火力事業推進の日本企業4社への株主提案。うち、三井住友フィナンシャルグループには、定款に「グリーンウォッシュ抑制策」の明記を求める(RIEF)
https://rief-jp.org/ct1/124268

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