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2024環境展・地球温暖化防止展 5/22~24 東京ビッグサイトに出展します

日本・世界のプラスチックゴミ問題の現状

ここ数年、カフェで提供されるプラスチック製のストローが紙製に切り替わったり、レジ袋が有料化されたりと、プラスチックゴミ問題は私たちの生活においても身近になっています。

とはいえ、マイバッグを忘れたらレジ袋を買ってしまったり、プラスチックのカトラリーが差し出されたら受け取ってしまったりという方も、私を含めて多いのではないでしょうか。

この記事では、受け身のプラスチックゴミ対策からもう一歩踏み出すことを考えている人に向けて、日本と世界のプラスチックゴミ問題の現状について解説します。

プラスチックゴミはどのくらいの量なのか?

世界全体では?

そもそもプラスチックゴミはどのくらい存在しているのでしょうか?

環境省発行の資料によると、世界全体で1950年以降生産されたプラスチックは83億トンを超えていますが、そのうち63億トンがゴミとして廃棄されました。[1]

毎年排出されるプラスチックゴミの量も増加傾向にあります。2015年には新たに3億トンものバージンプラスチック(リサイクルされた素材ではなく、未使用の素材から作られたプラスチック)ゴミが発生しました。[2]

海に目を向ければ、年間少なくとも800万トンものプラスチックゴミが海に流出しています。これはゴミ収集車にプラスチックゴミを満載して、1分毎に海に捨てているのと同じ量です。このままの状況が続けば、2050年にはプラスチックゴミの量が魚の重量を上回るとまでいわれています。[3]

ケニアのワタミュビーチに打ち寄せられたプラスチックゴミ。
ケニアのワタミュビーチに打ち寄せられたプラスチックゴミ
出典: 海洋プラスチック問題について |WWFジャパン

日本では?

日本では、2015年から2020年にかけて、毎年800万トン以上を超えるプラスチックゴミが排出されました。2020年には、総排出量822万トンのうち14%にあたる112万トンが、リサイクルせず単純焼却・埋め立てされています。逆に、86%は「リサイクルされている」ということになります。[4]

リサイクル率が86%と聞くと高いように感じますが、実際にはリサイクルされるプラスチックのうち約71%は、後述する「サーマルリサイクル」という方法で処理されています。こちらは海外ではリサイクルとみなされておらず、国際的な視点に立つと日本のリサイクル率はこの数字よりずっと少ないといえます。

さらに、2015年に世界のプラスチックゴミの半数近くを占めたプラスチック包装に関しては、日本は一人あたりの排出量が米国についで世界第2位。[2]日本人が生活の中で、いかに多くのプラスチックを使っているかを思い知らされます。

プラスチックゴミ問題が深刻な理由

このように日々大量に廃棄されているプラスチックですが、プラスチックゴミがもたらす主な問題は以下の4点です。

石油の枯渇

加工しやすく、便利だからといって際限なくプラスチックを使用し続ければ、プラスチックの原料である石油資源を枯渇させます。
2018年のエネルギー白書によれば、採掘できる残りの石油の量を2016年の石油生産量で割ると、50.6年でした。[5]
つまり、このペースでは21世紀中に石油がなくなってしまうということです。

赤穂発電所|関西電力の火力発電所
出典:赤穂発電所|関西電力の火力発電所

プラスチック製造において、人類の主要なエネルギー源である石油が消費されます。

地球温暖化

石油由来のプラスチックは、「製造時」と「焼却時」に地球温暖化の原因となる二酸化炭素を発生させます。またハワイ大学の研究では、プラスチックは劣化する過程でも温室効果ガスであるメタンとエチレンを放出すると報告されています。[6]

前述の通り、日本の2020年のプラスチック有効利用率は86%とされています。しかし、そのうち約71%が欧米基準ではリサイクルに含まれない「サーマルリサイクル」です。

サーマルリサイクルとは、プラスチックゴミを焼却してその際に発生する熱エネルギーを、温水プールや発電などに利用するというものです。サーマル「リサイクル」とはいうものの、実際はプラスチックを燃やしています。その際に温室効果につながる二酸化炭素が発生してしまうことです。

温室効果ガスの影響

出典:東京大学大気海洋研究所 気候システム研究系 地球温暖化問題

ゴミ埋め立て地の寿命

日本では2000年に容器包装リサイクル法が施行されましたが、その背景にはゴミの埋め立て地の寿命が近づいているということがありました。

令和4年版の環境白書によると、2020年度末時点で一般廃棄物の最終処分場の残余年数は全国平均で22.4年、産業廃棄物の最終処分場の残余年数は16.8年でした。このままのペースだと約20年で、日本の埋め立て地は埋めつくされてしまうということです。[7]

2015年度から2020年度にかけては、毎年40万トン以上ものプラスチックが埋め立てられています。[4]
埋め立て地を使い切る前に、プラスチックの使用について考える必要がありそうです。

海洋プラスチック問題

プラスチックゴミ問題が深刻なのは、廃棄された後に分解されないまま残り続けることです。分解されずに海に流れ着いたものは海洋プラスチックゴミとなります。

海洋プラスチックゴミは生態系に甚大な影響を与えます。鳥や海洋生物がプラスチックゴミを誤って食べたり、捨てられた漁網に絡まるなどして傷つき、命を落としています。[8]

捨てられたプラスチックの漁網がからまったウミガメ。写真家が見つけなかったら死んでいた可能性が高いとみられます。捨てられたプラスチックの漁網がからまったウミガメ
出典:For Animals, Plastic Is Turning the Ocean Into a Minefield

マイクロプラスチック問題

目に見える大きなプラスチックゴミ以外に「マイクロプラスチック」という問題もあります。

海洋に廃棄されたプラスチックは紫外線などの影響によって劣化し、砂と触れ合うことによって、どんどん細かくなっていきます。こうして大きさが5mmよりも小さくなったプラスチックをマイクロプラスチックと呼びます。

マイクロプラスチック

マイクロプラスチックは、製造の過程で添加された有害な化学物質を含むほか、海中で汚染物質を吸着します。細かくなったマイクロプラスチックを魚が食べ、その魚を人間が食べることで、人体に害が及ぶ可能性が懸念されています。

マイクロプラスチックが人間に健康被害を及ぼしたという具体的な事例はまだ見つかっていませんが、このリスクについては考える必要があると思われます。

日本学術会議の提言によると、プラスチックにはノニルフェノール、ベンゾトリアゾール類、ベンゾフェノン類、フタル酸エステル類といった、内分泌攪乱作用や生殖毒性を持つ添加剤が含まれています。

それらの添加剤を人間が取り込むリスクについては、これまでも考慮はされていました。しかしそれは「飲食に使うプラスチックからの直接の曝露」のみであり、マイクロプラスチックを取り込んだ魚介類を人間が食べることによる健康被害については、十分な調査がなされていないといいます。[9]

つまり、細かくなったプラスチックゴミに含まれている有害物質を魚介類が食べ、その魚介類を食べた人間に健康被害が出るという可能性が、現時点では否定できないということです。

まとめ

プラスチックゴミの現状について知ると、このまま手を打たなければ、「子どもや孫に美しい地球を残せない」というレベルの話ではないことに気づきます。
むしろ、「自分が生きてている間に地球はどうなってしまうのだろう」という危機意識を持つのではないでしょうか。

今日から少しでも、プラスチックゴミを出さないよう気をつけてみませんか?「自分ひとりがやっても…」と考えるのではなく、「なにもやらないよりはやったほうが良い」と見方を変えてみましょう。まずはプラスチックの過剰包装やカトラリーの提供に対して、「いりません」と意思表示することから始めてみてはいかがでしょうか?

最後までご覧いただきありがとうございました。

ファーイーストネットワーク

ファー・イースト・ネットワーク編集部

(株)ファー・イースト・ネットワークは、「他社ではできないリサイクル」を行うことで、地球環境の改善を目指す企業です。2004年からリサイクルビジネスを行ってきた経験をもとに、地球環境に関するさまざまなコラムを執筆し皆様にお届けします。


[1]環境省「プラスチックを取り巻く国内外の状況<第3回資料集>https://www.env.go.jp/council/03recycle/y0312-03/y031203-s1r.pdf

[2]Single-use plastics: A roadmap for sustainability | UNEP – UN Environment Programme
https://www.unep.org/resources/report/single-use-plastics-roadmap-sustainability

[3]Industry Agenda The New Plastics Economy Rethinking the future of plastics | WEF
https://www3.weforum.org/docs/WEF_The_New_Plastics_Economy.pdf

[4]2020年 プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況 マテリアルフロー図 | 一般社団法人プラスチック循環利用協会
https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf2.pdf

[5]平成29年度 エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2018)PDF版 │ 資源エネルギー庁https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2018pdf/whitepaper2018pdf_2_2.pdf

[6]Double trouble: plastics found to emit potent greenhouse gases
https://www.unep.org/news-and-stories/story/double-trouble-plastics-found-emit-potent-greenhouse-gases

[7]令和4年版 環境・循環型社会・生物多様性白書(PDF版)https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r04/pdf/full.pdf

[8]For Animals, Plastic Is Turning the Ocean Into a Minefield
https://www.nationalgeographic.com/magazine/article/plastic-planet-animals-wildlife-impact-waste-pollution

[9]提言「マイクロプラスチックによる水環境汚染の生態・健康影響研究の必要性とプラスチックのガバナンス」
https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-t288-1.pdf

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