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プラスチックスプーンの有料化はいつから?いくらになるの?

プラスチックのカトラリー2020年7月1日に「容器包装リサイクル法」が改正されてレジ袋が有料になったのは記憶に新しいところです。

2022年に入ってからプラスチックスプーンの有料化が検討され、2年ぶりに無料のプラスチック配布物が有料化するのではないかと世間を騒がせました。
しかし、年末が近づいた今になっても、多くのコンビニやスーパーマーケットでは無料のままです。

プラスチックスプーンはいつから有料になるか知っていますか?

結論からいうと、今のところ、プラスチックスプーンの有料化が法律で義務化される予定はありません。レジ袋のようにプラスチックスプーンが一斉に有料化することはないといえます。

では、なぜプラスチックスプーンの有料化が噂となったのでしょうか。

令和元年5月に策定された「プラスチック資源循環戦略」では、ワンウェイ(使い捨て)プラスチックの使用を合理化し、使われる資源を徹底的に減らすことが基本原則とされています。
プラスチックのスプーンやフォークといった、使い捨てされるプラスチックのカトラリーがワンウェイプラスチックに該当するためです。

プラスチック資源循環戦略では、ワンウェイプラスチックを2030年までに累積で25%排出抑制すること目標としています。

当記事では以下の順でカトラリーなどの有料化について説明します。

  • プラスチックスプーンの有料化に関する法律
  • コンビニやスーパーのプラスチックスプーンへの対応
  • プラスチック削減効果
  • 私たちができる取り組みなど

是非、この問題に興味を持たれた方は最後までご覧ください。

プラスチックスプーンの有料化に関する法律

今のところプラスチックスプーンの有料化は法律で義務化されておらず、プラスチックスプーンの一斉有料化は、単なる噂で終わりました。

先ほど述べた「プラスチック資源循環戦略」には具体的にプラスチックスプーンの有料化が明示されてはいません。

しかし、2022年4月に策定された「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」略してプラスチック資源循環法に「提供する特定プラスチック使用製品を有償で提供すること」という項目が挙げられています。

特定プラスチックとは無料で提供され、ほとんどが使い捨てされるプラスチック製品のことを指します。具体的には以下の12品目があります。

  • スプーン
  • フォーク
  • テーブルナイフ
  • マドラー
  • 飲料用ストロー
  • ヘアブラシ
  • くし
  • かみそり
  • シャワーキャップ
  • 歯ブラシ
  • 衣類用ハンガー
  • 衣類用のカバー

この中にプラスチックスプーンが含まれています。
特定プラスチック使用製品の量が5t以上の事業者に、排出抑制が求められているのですが、その中にプラスチックスプーンが含まれるのですね。

排出抑制が目的なので、有料化にかぎらず提供方法の工夫が求められるのです。
使用を抑制する手段として、有料化以外にも以下のような方法があります。

  • 景品等を提供(ポイント還元等)する
  • 消費者の意思を確認すること
  • 繰り返し使用を促すこと

また、提供方法の工夫以外にも、寸法の最適化や原料の工夫といった、提供する特定プラスチック使用製品の工夫もあります。

そのため、事業者ごとにプラスチック製品の合理化を検討し、有料化のメリットデメリットを踏まえたうえで、多くの事業者が有料化以外の方法を選んだようです。

プラスチックスプーンの有料化が始まる時期は、各企業が有料化しようと思った時といえます。

「プラスチック資源循環法」については、環境省の公式サイトに分かりやすくまとめられているため、興味がある方は一読してみることをおすすめします。

プラスチックゴミに関する世界の対応

海洋プラスチック問題や温室効果ガス排出による地球温暖化問題は、世界的に大きな問題として取り上げられています。
プラスチックが環境に与える影響について詳しくは「日本・世界のプラスチックゴミ問題の現状」を御覧ください。
プラスチックを減らすことが急務となっており、日本だけではなく様々な国が対策を行っています。

例えば、インドは2018年に「2022年までに使い捨てプラスチックを国内の全州で廃止する」と宣言しており[1]、2022年7月1日からは特定の使い捨てプラスチックの製造、輸入、在庫、流通、販売、使用の禁止が始まっています[2]

また、イギリスでは2022年4月1日にプラスチックに関する新たな税制度、シングルユース・プラスチック規制が導入されました[3]
対象は年間10t以上かつ、再生プラスチックが30%に満たないプラスチック包装を取り扱う事業者です。再生プラスチックの使用を奨励と、プラスチック廃棄物のリサイクルを促進し、埋め立てや焼却を削減することを目的としています。

EUは使い捨てプラスチック製品の流通を2021年までに禁止する法案(特定プラスチック製品の環境負荷低減に関わる指令)を採択し、プラスチック製のスプーンなどの使い捨てカトラリー類を禁止しています[4]

2018年の国連環境計画によると、日本は一人当たりの使い捨ての容器包装廃棄量が世界で二番目に多くなっています[5]
これに対して、一人当たりのプラスチック排出量が少ない国々であっても、このように様々なプラスチックの削減政策を推し進めています。

スーパー大手5社は有料化予定なし

2022年11月現在、以下のスーパー大手5社はプラスチックスプーン含むカトラリー類の有料化は行っておらず、有料化の予定もありません。

  • イオン
  • イトーヨーカドー
  • ライフ
  • ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス
  • バロー

有償化はあくまでプラスチック使用製品廃棄物の排出抑制のための手段であり目的ではないため、カトラリー類の無料提供を各社ともに停止する予定はないようです。

ただ、利便性を損なうことなく廃棄プラスチックを削減するという目的のため、各スーパーマーケットは以下の取り組みを行っています。

イトーヨーカドー、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス、バローはプラスチックカトラリーをバイオマス素材配合の「環境配慮型カトラリー」に変更しています[6]

バイオマスとは動植物から生まれた再生可能な有機資源のことで、トウモロコシやサトウキビなどの植物由来の原料も使用しています。
バイオマス素材を配合した分だけ石油由来のプラスチック使用量が減るため、配合比率がそのままプラスチックの削減率となります。

イオンとライフコーポレーションは、無料配布するカトラリー類をプラスチック素材から紙や木などの環境配慮型素材へ切り替えています[7]
これによりライフコーポレーションは年間で約1700万本のプラスチック製ストロー・スプーンの削減を目指しています。

また、各スーパーともにポスター掲示、レジ等でのカトラリー類の要・不要の確認といった提供方法の工夫も取り入れています。
これにより、無駄なプラスチックスプーンの受け取りが減ると予想されます。必要な時には環境に優しいカトラリー類を無料で受け取って使える点は変わらないため、利便性を損なうことなくプラスチックの削減につながります。

コンビニ大手3社も有償化予定なし

インターネット上ではコンビニでのプラスチックスプーンの有料化を懸念する声が挙がっていましたが、コンビニでも実際に有料化は行われていません。

ただ、コンビニで提供されるプラスチック製のカトラリーも、プラスチックごみ削減の義務化の対象となるため、コンビニ大手各社は脱プラのための対策をとっています。
みなさんも「箸やスプーンはご利用ですか?」といったカトラリー類の要・不要の意思確認を日頃耳にすることも多いでしょう。これはその一環なのです。

セブンイレブンはイトーヨーカドーと同じ株式会社セブン&アイ・ホールディングス傘下のため、イトーヨーカドーと同様の植物由来(バイオマス)の素材を30%配合した環境配慮型カトラリーを全国の店舗で導入しています[8]

ファミリーマートでは、2021年5月からいち早く持ち手の部分に穴が開いたデザインの軽量化スプーンと軽量化フォークを導入していました。現在は100%植物由来の原料を使用した生分解性プラスチックを使用したカトラリーの導入も拡大しています[9]

持ち手の部分に穴が開いたデザインの軽量化スプーンと軽量化フォーク写真引用:ファミリーマート

持ち手部分に穴が開いた軽量化タイプのスプーンはプラスチックの使用量が約12%、フォークは約8%減っていて、スプーンとフォークの合計で年間約87トンのプラスチックの削減効果が見込まれています。
また、ストローにおいては、生分解性プラスチック製ストローと、バイオマス5%配合したストローを選択制で取り扱えるようになっています。

ローソンはファミリーマート同様に持ち手部分に穴をあけ、長さを1.0cm短くするといった工夫を取り入れたプラスチック製カトラリーと、木製スプーンの取り扱いを始めています[10]
どちらを選ぶかは店舗に任されていて消費者の私たちは選べませんが、どちらでも今までに比べるとプラスチック削減になります。

ラスチック製穴開きスプーン・フォーク」の採用とスプーンの「木製」との選択制

引用:LAWSON

有料化プラスチックスプーンは3円~5円ほど

ごくわずかですが、「プラスチック資源循環法」の施行に合わせてプラスチックスプーンなどのカトラリー類を有料化した企業もあります。

スーパーマーケットでは、新潟県を中心に「原信」や「ナルス」などを運営するアクシアルリテイリングが該当します。
バイオマスプラスチックを40%含んだプラスチック製スプーンを小サイズは3円、大サイズは5円に有料化しました[11]

また、洋菓子などを製造販売しているコージーコーナーも有料化しています。コージーコーナーのプラスチック製のスプーン及びフォークの料金は3円になっています[12]

中華料理チェーン「餃子の王将」を運営する王将フードサービスも有料化を導入した一社です。
バイオマスプラスプーン、プラスチックレンゲ1本がそれぞれ5円、デリバリーでは10円となっています[13]

有料化を導入した企業は少ないですが、上記の3ケースから、有料化された場合は3円~5円程度になっていることがわかります。
プラスチックスプーンが有料化するとしたらいくらになるのか気になる方もいるかもしれませんが、前例を踏襲すると、10円以内、最多価格帯は3円~5円程度になると予想されます。

プラスチック削減効果

ここまでスーパーマーケットとコンビニのプラスチック削減方法を見てきましたが、企業努力によりどの位のプラスチック削減効果が期待できると思いますか?
取り組み内容が異なるため、削減目標が重さであったり割合であったりとバラつきがありますが、各社共に数値でのカトラリーにおける削減効果の予定が公開されています。

環境配慮型カトラリーを導入したイトーヨーカドーとセブンイレブンは25%、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスは30%のプラスチック削減になります。
そして、プラスチックから環境配慮型素材へ切り替えをするイオンは年間約150t、ライフコーポレーションは年間約30tのプラスチックが削減される見込みです。

軽量化を行っているファミリーマートはスプーンで約12%、フォークで約8%の削減となり、年間だと87tのプラスチック削減。
ローソンではスプーンで約14%、フォークで約10%、デザートスプーンが約4%の削減となっています。
このコンビニ2社は木製スプーンや生分解性プラスチック製のスプーンの導入により、環境配慮型ではない従来のプラスチックが削減される予定です。

ここで挙げた例以外にも、プラスチックのカトラリー類の削減は進んでいます。

ファミリーマートではプラスチック製フォークの無料配布の終了を予定しており、代わりに竹製の箸を提供するようになります。
ミニストップは店内でしぼり出すソフトクリームのスプーンをプラスチック製からコーンで作ったものに切り替えつつあります。
マクドナルドでは全店でプラスチック製のストローやフォークの利用を原則として取りやめ、年間900tのプラスチックの使用量の削減を見込んでいます。

企業努力によって今までと何ら変わりのない生活をしていても何百t、何千tのプラスチック削減が進むことが分かります。
しかし、本当に私達自身は何も生活を変えなくてよいのでしょうか?

企業努力だけでは限界がある

プラスチックを減らすための企業努力は評価に値しますが、環境配慮型の素材のカトラリー類に変わっても問題は残ります。

植物性由来(バイオマス)プラスチックは原料の由来が植物などであるだけで、石油由来プラスチックと同等の環境への影響のある製品も含まれます。
海に流出した場合は従来のプラスチック同様に、海洋プラスチックごみとなってしまう可能性が残ります。
また、紙や木などの環境配慮型素材のプラスチック代替製品の生産量が多くなることで森林伐採なども懸念されます。

また、軽量化スプーンは使用されているプラスチック、ひいては原料の石油の使用が抑えられるだけで、燃やした際に地上になかった二酸化炭素が放出される点は変わりません。
200近い国や地域の代表がクリーンエネルギーに関する議論を行うCOP27でも、酷暑や山火事、洪水といった気象変動と、石油などの燃料から排出される二酸化炭素の関係が話題にされています。

根本的な解決につながるのは、やはり、我々が使う使い捨てのスプーンなどの本数を減らすことではないでしょうか。
たとえ無料であっても不要なスプーンやフォークは辞退する、なるべく使い捨てのカトラリーの必要な飲食を避けるなど、消費者として使い捨てのカトラリーの使用を減らす方法はあります。

環境省が推進した「みんなで減らそう レジ袋チャレンジ」広報によると、1週間レジ袋を使わなかった人の割合は、レジ袋有料化前の2020年3月時点では約3割、有料化後の令和2年11月時点では7割となっています[14]。つまり、心がけ次第で減らせるということなのです。

レジ袋と同様に、プラスチックスプーンも有料化が導入されれば更に効果が高まると予測されます。しかし、有料化でなくてもよいはずなのです。
一人一人の意識を変えていけばプラスチックの排出量はもっと減らせるはずです。

この記事が、日々の生活のちょっとした気づきとなり、カトラリーをはじめとしたプラスチック削減に繋がる一助となれば幸いです。


[1] India sets pace in global race to beat plastic pollution
https://www.unenvironment.org/news-and-stories/press-release/india-sets-pace-global-race-beat-plastic-pollution-0

[2] India imposes ban on single-use plastics. But will it be enforced?
https://www.washingtonpost.com/world/2022/07/01/india-single-use-plastic-ban-pollution/

[3]Policy paper Introduction of Plastic Packaging Tax from April 2022
https://www.gov.uk/government/publications/introduction-of-plastic-packaging-tax-from-april-2022/introduction-of-plastic-packaging-tax-2021

[4]Circular Economy: Commission welcomes Council final adoption of new rules on single-use plastics to reduce marine plastic litter
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/IP_19_2631

[5]Single-use plastics: A roadmap for sustainability
https://www.unep.org/ietc/ja/node/53

[6] イトーヨーカドーのプラスチック対策について
https://www.itoyokado.co.jp/__resources__/d73fafa9-77d5-4485-8210-aff56ee4249c.pdf

U.S.M.Holdings 環境配慮型資材(植物由来のバイオマス配合カトラリー・レジ袋)、全店導入のお知らせ
https://www.usmh.co.jp/wp-content/uploads/2021/05/us_20210531_150.pdf

バローHD ENVIRONMENT SOCIAL GOVERNANCE
https://valorholdings.co.jp/sdgs/sustainability-vision2030/

[7] カトラリーを紙・木に切り替え、店頭回収ペットボトルがトップバリュ商品に!
https://www.aeon.info/wp-content/uploads/news/pdf/2022/02/220217R_3.pdf

ライフ 統合報告書2022
http://www.lifecorp.jp/vc-files/pdf/ir/integrated_report/2022.pdf

[8] 植物由来の素材を30%配合したカトラリーを全国のセブン‐イレブンに順次導入
https://www.7andi.com/company/news/release/21260.html

[9] プラスチック資源循環促進法にともなうプラスチック削減の取り組みについて
https://www.family.co.jp/company/news_releases/2022/20220309_01.html

[10] 「プラスチック製穴開きスプーン・フォーク」の採用とスプーンの「木製」との選択制を導入
https://www.lawson.co.jp/company/news/detail/1447768_2504.html

[11] ワンウェイ(使い捨て)プラスチック対応のお知らせ

ワンウェイ(使い捨て)プラスチック対応のお知/

[12] 2022年4月1日(金)よりスプーンとフォークを有料とさせていただきます
https://www.cozycorner.co.jp/news/page_717.html

[13] プラスチック資源循環促進法の施行に伴う「バイオマスプラスプーン ・ プラスチックレンゲ」有料化等のお知らせ
https://kabuyoho.jp/discloseDetail?rid=20220317507482&pid=140120220317507482

[14] みんなで減らそう レジ袋チャレンジ
http://plastics-smart.env.go.jp/rejibukuro-challenge/

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