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スクラップ、再生樹脂ペレット、リサイクル機械についての課題を解決するプロフェッショナルです

2024環境展・地球温暖化防止展 5/22~24 東京ビッグサイトに出展します

生物多様性の喪失はどのような意味を持っているのか

1    生物多様性と我々の生活

生物多様性とは、多様な生物が存在することをいいます。

生物多様性に支えられた生態系は、人間にとって「資源の供給元」「生きるための基盤」となっています。

すなわち、我々の生活や経済活動は、生態系および生物多様性が豊かに保たれることで成立しているといえます。

2 生物多様性の喪失とは

WWF(世界自然保護基金)は、過去50年で自然と生物多様性の健全性が69%低下したと報告しています[1]

出典:WWFジャパン 「生きている地球レポート2022」

近年、環境分野の専門家だけでなく、経済界も生物多様性の喪失が経済に与えるダメージを懸念しています[2]

生物多様性の喪失により生態系が劣化することで、次のような問題が発生すると考えられています。

  • 漁業資源、観光資源などが減少
  • 災害や汚染の被害が増加
  • 未知の課題発生の不安(自然の摂理が壊れることで想定外のことが発生)

これは、我々の日常の生活にも危険がせまっていることを意味しています。

3    生物多様性の喪失による危機の実例

実際に発生している危機にはどういうものがあるのでしょうか?

日本の生活で身近なものには、例えば、マグロやウナギの値段高騰があります。これは単一種の喪失にあたります。

よく耳にする問題としては、森林の減少、サンゴ礁の減少やマングローブの減少があります[3]。これらはいずれも、種の喪失だけでなく、生態系の喪失につながるより深刻な問題といえます。また、マングローブの減少のように、海洋災害や塩害といった人間の生活へのより直接的な問題を引き起こすものもあります。

20年以上前から世界的に注目されている問題として、ミツバチの減少があります。

花粉媒介者(送粉者)(植物の花粉を運ぶ役目を担っている生物)が減少すると、その花粉媒介者が生息している周辺の植物の生態系が壊れる(農作物が育たなくなる、など)といわれています。

2022年7月のNature誌におけるプリンストン大学の研究者の報告[4]によると「花粉媒介者の減少が、植物の多様性を安定に保つ構造そのものを解明する可能性がある」としています。

花粉を運ぶミツバチ

©インレイ、ニコラス・モリソン
出典:INRAE “Pollinator decline across the globe: the verdict from an international group of scientific experts “

4    生物多様性の喪失の要因は?

では、生物多様性の喪失が起こる要因にはどのようなものがあるのでしょうか?

特定種の減少の要因の最も顕著な要因として、「特定種の乱獲」があげられるでしょう。
また、森林の減少の要因としては、農地開拓による「森林伐採」や自然災害などによる「森林火災」があります。

さらに、近年では、地球温暖化(気候変動)が生物多様性の喪失要因として顕在化していると報告されており[5] [6]、各種条約の締約国会議でも議論されています[7] [8]

地球温暖化により、以下のような生物多様性の喪失が起きるといわれています[9]

  • 気温や海水温上昇による生物の減少、死滅
  • 海水のCO2濃度上昇による海洋生物の減少
  • 温室効果ガス濃度上昇に伴う森林の枯死

地球温暖化によるブナ林の適域、松枯れ危険域の変化の推移出典:環境省 環境白書 平成22年版
(情報元:環境省「温暖化影響総合予測プロジェクト報告書」

5    でもやっぱり課題意識が持ちづらい方へ

ここまで説明してきましたが、「根拠や深刻さが明瞭でない」「課題意識が持てない」という方もいると思います。

「ウナギやマグロが食べられなくなる」ということを受け入れがたいと捉える人はいるでしょう。

一方で、「他の種を食べればいいのでは?」「種に淘汰はつきもの」と思う人もいるかもしれません。

また、我々にとっての損失という観点で、「一つの種の減少による損失」は比較的想像しやすいと思います。

しかし、「複合的な種の減少や生態系の破壊による損失」は瞬時に課題が見えるものではないため想像することが難しくなります。このため、直観的に危機や課題を理解しづらいのだと思います。

生物多様性条約の一文を読むことで、この課題の重要性を認識できると思うので紹介しておきます。

<「生物多様性条約」 前文より>

“生物の多様性の著しい減少又は喪失のおそれがある場合には、科学的な確実性が十分にないことをもって、そのようなおそれを回避し又は最小にするための措置をとることを延期する理由とすべきではないことに留意し、”

(出典:環境省 自然環境局 「生物多様性条約」

→生物多様性条約の締結国(の国民)は、これを遵守する必要がある。
→何らかの危機がせまっていると考えられるなら、我々はその解決に真摯に取り組む必要がある。
→じゃあ自分もできることから何かやっていこう。

課題の重要性について深掘りしたい方には南山大学の研究者が書かれた論説[10]をおすすめします。

6    我々にできること

家庭レベルで取り組めるものにはどういうものがあるでしょうか?

以下に家庭ですぐに実践可能な取り組み例を紹介します。

食の取り組み: 持続可能な水産物を購入

水産資源の持続的利用、環境や生態系の保全に配慮している生産者や事業者を第三者が審査し認証する水産エコラベルという仕組みがあります。水産エコラベルの認証ロゴマークの付いた水産品を選んで購入することで、水産資源を守る事業者を経済的に応援しつつ生態系保全に貢献できます[11]
日本で主に活用されている水産エコラベル認証
出典:環境省 環境白書 令和4年版
(元情報:水産庁 「水産エコラベルをめぐる状況」

エネルギーの取り組み: エネルギー消費の削減など

一般的な地球温暖化に対する取り組みを家庭で行うことで、生物多様性の喪失を抑制することが期待できます。具体的には、家庭の生活において以下のような取り組み(一例)ができるでしょう[12]

  • エアコンの設定温度や利用時間を見直す。
  • 移動にはなるだけ公共交通機関を利用する。
  • エコバッグを利用する。

7    まとめ

生物多様性の喪失について説明をしました。

我々の生活や経済活動は、生態系および生物多様性が豊かに保たれることで成立しています。また、生物多様性は地球温暖化と密接に関連しているとも報告されています。もはや、生物多様性の喪失は、他人事ではなく我々の生活に身近な問題になってきていると認識を改める必要があるでしょう。

我々が取り組めることは限られていますが、でも今すぐに取り組めることはたくさんあります。

先のことはともかく、まずは、日常でできることを一つ一つ実践してみるのはどうでしょうか。

その一歩が、未来の我々の危機を防ぐだけでなく、国や世界で持続可能性のある社会を実現することにつながるかもしれません。

松本拓矢

松本拓矢

電機/家電メーカー2社(18年)に勤務し、黒物から白物まで、カーネルからアプリまで、広範囲なソフトウェア開発に従事。2019年に「らびっじ・らぼ」を開業。家事・育児・仕事をマルチにこなす兼業主夫として日々奮闘中。


[1] 参考:WWFジャパン 「生きている地球レポート2022」
https://www.wwf.or.jp/activities/lib/5153.html#section2

[2] 参考:WEFグローバルリスク報告書2022年版、p.14、p.23
https://www3.weforum.org/docs/WEF_Global_Risks_Report_2022_JP.pdf

[3] 参考:環境省(2011) 環境白書 平成23年版 「第2節 拡大する生物多様性の損失」
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h23/html/hj11010302.html

[4] 参考:Princeton University (2022), “Princeton research shows how the decline in pollinators can ripple across ecosystems”
https://www.princeton.edu/news/2022/08/08/how-decline-pollinators-ripples-across-entire-ecosystems

[5] 参考:環境省 「IPBES生物多様性と生態系サービスに関する地球規模評価報告書 2019」(要約)、p.31
https://www.iges.or.jp/jp/publication_documents/pub/translation/jp/10574/IPBESGlobalAssessmentSPM_j.pdf

[6] 参考:環境省(2022) 環境白書 令和4年版 「第3節 生物多様性の損失」
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r04/html/hj22010103.html

[7] 参考:外務省(2022) 「国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27) 結果概要」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ch/page1_001420.html

[8] 参考:環境省(2022) 「生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)第二部、他開催について』
https://www.env.go.jp/press/press_00932.html

[9] 参考:環境省(2010) 環境白書 平成22年版 「第2節 生物多様性と地球温暖化」
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h22/html/hj10010302.html

[10] 参考:鈴木真(2010年) 「生物多様性の概念と価値―哲学的分析―」、南山大学社会倫理研究所 『社会と倫理』 第24号 論説
https://rci.nanzan-u.ac.jp/ISE/ja/publication/se24/24-09suzuki.pdf

[11] 参考:環境省(2022) 環境白書 令和4年版 「第2節 グリーン社会実現のためのライフスタイル変革」
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r04/html/hj22010302.html

[12] 参考:岡山県 新エネルギー・温暖化対策室 「家庭でできる地球温暖化防止のとりくみ(ゼロカーボンアクション30など)」
https://www.pref.okayama.jp/page/detail-22010.html

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