このページは、新たに設置した押出機が立ち上がらなくて困っている方のための記事になっています。
- 押出機の運転ボタンを押したけど、動かなくて焦っている。
- 制御盤をよくよく見ると、ランプが一切ついていない。
- 運転画面(タッチパネル)を触っても起動する雰囲気がない
そんな方が、この記事を読むことによって、押出機が動かない原因がわかり対応できるようになります。
この記事の目次
クリックすると該当箇所に移動します。
- あなたが陥っているシチュエーションと対策
- 押出機の構成
- トラブル対策の方針
- ブレーカーにケーブルがつながっているか確認する
- ブレーカーをONにする
- ブレーカーがONにならない原因を確認する
- 工場内の電源系統を確認する
- まとめ
あなたが陥っているシチュエーションと対策
この記事で扱うシチュエーションと対策は以下の通りです。
シチュエーション
- 電源ランプがついていない
- タッチパネルなど運転画面がついていない
原因
- ブレーカーにケーブルがつながっていない
- ブレーカーがONになっていない
対策
- ブレーカーにケーブルがつながっているか確認する
- ブレーカーをONにする
※制御盤内の状況ではブレーカーがONにできないこともあります。
上記を実施しても状況が改善しない場合は、以下もさらに確認していきましょう。
詳細な対策
上記以外のシチュエーションで困っている方は以下の記事をまずは読むのをおすすめします。
では、次に押出機の構成を確認していきましょう。
押出機の構成
トラブルの原因をつきとめるには、まずは押出機の全体像を知っておく必要があります。
かなり簡略した図ですが、ざっくりイメージをつかんでいただければと思います。
では、画像の説明をしていきます。
画像右端にある分電盤(配電盤という名前で管理していることもあります)から押出機の制御盤へ電源が供給されます。
制御盤には押出機の状態を知らせるランプ、タッチパネルが設置されており、押出機の主な機器であるスクリュー用モーターを動かすためにケーブルで接続されています。
制御盤から各種センサーにケーブルが接続されており、レベル、圧力、温度などを測定し、押出機の状態を監視しています。
ここまでが押出機全体の構成になります。
制御盤には分電盤や電気室から電源が供給されていることが多いです。
今回、あなたが直面しているトラブルに関する範囲を画像の赤枠で囲っています。
具体的には、制御盤、分電盤、電気室になります。
以下が制御盤のイメージです。
制御盤によって様々ですが、おおまかなランプと運転画面(タッチパネル)の用途、配置のイメージは以下の通りです。
現段階では、分電盤と電気室は制御盤に電源を供給する装置という理解で問題ありません。
トラブルの対策の方針
では、次からはトラブルの対策についてです。
具体的な対策は以下の通りです。
- ブレーカーにケーブルがつながっているか確認する
- ブレーカーをONにする
まずは、上記2つを確認しましょう。それでも「ランプがつかない」、「運転画面(タッチパネル)がつかない」場合は次の2を確認しましょう。
- 工場全体の電源系統を確認する
- ブレーカーがONにならない原因を確認する
では、それぞれ見ていきましょう。
ブレーカーにケーブルがつながっているか確認する
当たり前ですが、ブレーカーに正しくケーブルが接続されていないと押出機に電源が供給されません。
まずは、ブレーカーにケーブルが接続されているか確認しましょう。
具体的には上の写真のようにブレーカーの上側にケーブルがつながっているかです。
ケーブルがつながっていれば問題ありません。
(制御盤内の一番大きなブレーカーを通常メインブレーカーと呼びます。)
仮につながっていない場合は、ブレーカー上側のケーブルをつなげる必要があります。
ケーブルをつなげるためには、資格が必要なので工事業者に相談しましょう。
また、上記の画像の通り、制御盤内にはメインブレーカー以外にもブレーカーがたくせん設置されています。
制御盤内のメインブレーカーへのケーブルはあなたの工場で接続しますが、そのほかのブレーカーは制御盤を作っている業者が製作時にケーブルを接続します。
そのため、メインブレーカーとは異なり、ほかのブレーカーにケーブルがつながっていないということはほぼありませんが、念のため一つずつ確認するのをお勧めします。
ブレーカーをONにする
先ほどの写真の通り、制御盤内にはブレーカーがたくさん設置されています。
すべてのブレーカーがONしていないと押出機を運転できないので、すべてのブレーカーがONになっていることを確認しましょう。
具体的には上の写真のようなブレーカーにはスイッチがあり、すべて「ON」になっていることを確認しましょう。
上の写真は三菱電機製ブレーカーでよく使われているものです。
ほかのメーカーのブレーカーもありますが、見た目は同じようなものが多いので焦らず「ON」しているかを確認しましょう。
すべてONにしたら制御盤面上のランプやタッチパネルがついているはずなので、見てみましょう。
上の写真は三菱電機製ブレーカーがOFFになっている状態です。
ON、OFFの表記だけではなく色も違うためわかりやすくなっています。
「あれ、ブレーカーをONしようとしてもONにならない…」といったことが起こります。
そのような場合は、次の項目を確認しましょう。
ブレーカーがONにならない原因を確認する
ブレーカーをONしようとしてもONにならないときは、制御盤内の配線や機器のどこかに異常があるということです。
具体的には、以下の写真のようにブレーカーがONとOFFの間にあるような状態です。
このような状態を「ブレーカーがトリップした」といいます。
制御盤メーカー、ブレーカーメーカー、工事業者など専門知識を持った人には、「ブレーカーがトリップしている」と説明した方が早いので、そのように説明しましょう。
上記写真のようにブレーカーがONとOFFの間にあったとしても、制御盤内の回路が原因ではない場合もあり、ブレーカーの構造上、ブレーカーがトリップしたような状態にいる場合もあります。
まずは、それを確認していきます。
一度、OFF側に強めに押し込み、トリップを解除します。
そのあとに再度ブレーカーをONしてみましょう。
ONになれば、一旦回路は問題ないと判断できます。
ただし、再発する可能性はあるので、同じタイプのブレーカーの予備を買っていつでも交換できるように準備しましょう。
それでも、ONにならない場合は制御盤内の回路や機器が原因でトリップした可能性があります。
ブレーカーかトリップする原因は以下の4つになります。
- 過電流:電流が想定以上に流れている状態
- 電源短絡:ブレーカーのケーブル同士が接触している
- 漏電:電気が本来流れるべきではない金属ケースなどに流れている
- 地絡:電気が地面に流れている
この記事ではあまり細かく書きませんが、上記の4つに共通しているのは、電流が想定以上に流れているため、機器破損・焼けつきや火災の原因になるということです。
それぞれの原因はいろいろありますが、大まかには以下の通りです。電源地絡、漏電、地絡は細かくは違いますが、似ている部分があるので今回はひとくくりにします。
原因 | 対処 | |
過電流 | 1つのブレーカーに接続している機器が多い ※専門用語としては、「ブレーカーの容量より負荷側の容量が多い」と表現します。 |
・容量の大きいブレーカーに交換する ・ブレーカーを増やして、1つのブレーカーに接続されている機器を減らす |
電源短絡・漏電・地絡 | ブレーカーに接続されているケーブルの導電部同士が接触している ※ケーブル同士だけではなく金属、水と接触しても同じことが起きます。 |
・導電部が露出していない新しいケーブルに交換する ・導電部が露出しないようにケーブルをつなげる ・水がかからないように屋内に設置する ・応急処置として、一度、ブレーカーをOFFに入れて、導電部が露出している部分にビニルテープを巻く |
新たに制御盤を設置する場合は、過電流によるブレーカートリップは起きにくいので、そういうものがあるのだな..という程度で問題ありません。
過電流とは異なり、制御盤を新規で設置した場合でも、施工不良により電源短絡・漏電・地絡は発生する可能性があります。
電源短絡・漏電・地絡に共通していることは、ケーブルの導電部(金属部分)が露出して、導電部が別の導電部(ケーブルの導電部、制御盤の金属板、水など)に接触していることが挙げられます。
この問題へ正しい対処をするためには、ケーブルの構造を知る必要があります。
ケーブルの構造
このページで言っているケーブルは専門用語としては「電線」ということが多いです。
電線の構造は以下の通りです。
まずは、横からみたイメージ図です。
次に断面のイメージ図です。
最後に実際の写真です。
先ほどの説明の通り、導電部が他の電線の導電部、金属、水などに触れると、電源短絡・漏電・地絡を起こす可能性があるので、制御盤内に導電部が露出していないか注意深く確認しましょう。
導電部が露出していない状況・露出している状況
「導電部が露出していない状況、導電部が露出している状況ってどういう状態?」と思うはずです。
露出している状況はまずはないので、まずは、導電部が露出している状況は以下の写真の通りです。
次に導電部が露出している状態です。
露出している状態は、施工不良でありその場で直しますので例示できる画像はありません。そのためイメージ図で示します。
仮に、露出している部分を見つけたら以下の応急処理をしましょう。
- 制御盤内のすべてのブレーカーをOFFする
- 露出部分が隠れるように家庭にでもあるビニルテープを巻く
上記はあくまでも応急処置です。
ビニルテープはなにかの拍子ではがれてしまうため、新たに電線を引き直すように計画しましょう。
工場内の電源系統を確認する
「ブレーカーのケーブルがつながっているのを確認したし、全ブレーカーもONした。なのに、制御盤のランプが点灯しない」ということもあります。
その場合は、制御盤に電源を供給している分電盤や電気室内のブレーカーがONになっていない可能性が高いです。
そのため、以下の対応をしていきましょう。
- 工場内の電源系統を確認する
- 押出機用制御盤に供給している電源ブレーカーをONする
「電源系統って何?」という人もいると思います。
電源系統とは、「どこからどこへ電源を送っているか」、「電源を使っている機器は何か」を整理したものです。
制御盤を新たに設置する際には、電源系統を図面に起こして電源を管理します。
電源系統図は以下のようなものです。
上記の電源系統図の説明ですが、工場内の電気室に400Vブレーカーがあり変圧器で電圧を400Vから200Vへ下げ、分電盤に電源を送っています。
次に、分電盤内の200Vブレーカーを経由して、押出機制御盤内のメインブレーカーに電源を送っています。
最終的には、モーター、センサー、ランプ、リレー回路で電源を使っていることが電源系統図で確認できます。
先程も出した以下の写真が制御盤内のメインブレーカーになります。
先ほどの電源系統の場合は、押出機制御盤のメインブレーカーがONになっていても、分電盤や電気室内のブレーカーがONになっていない限りは、制御盤には電源が供給されないということがわかります。
まとめ
押出機の立上げた時の電源ランプがつかない、運転画面(タッチパネル)がつかない時のトラブルについて説明しました。
普段はあまり意識しませんが、制御盤に電源が正しく供給されていない押出機は動きません。
また、電源を供給されている電線の導電部が露出していると感電、火災、機器故障のリスクがあがります。
今は問題なく動いていても、今後トラブルが発生する可能性もあります。
その時のために、この記事をお気に入りなどに保存してトラブルが発生した時にすぐに対応がとれるようにすることをおすすめします。