このページは、新たに設置した押出機が立ち上がらなくて困っている方のための記事になっています。
- 押出機の運転準備のためにヒーターをONにしたけど全然温まらない
- ヒーターの温度をうまくコントロールできない
上記のような状況のためのガイドとなっています。このような状況でお困りの方は是非参考になさってください。
この記事の目次
クリックすると該当箇所に移動します。
- 陥っているシチュエーションと対策
- 押出機の構成
- トラブル対策の方針
- ヒーター電源をONする
- ヒーターの必要電圧と供給している電源電圧を確認する
- ヒーターが断線していないか確認し、断線していたらヒーターを交換する
- 温度調整システムを確認する
- まとめ
陥っているシチュエーションと対策
この記事で扱うシチュエーション、原因と対策は以下の通りです。
シチュエーション
- 押出機の運転準備のためにヒーターをONにしたけど全然温まらない
- ヒーターの温度をうまくコントロールできない
押出機運転の第一歩はヒーターで押出機を温めることです。
それができないと原料を溶かすことができずに、樹脂の製造ができません。
押出機にとってヒーターはかなり重要な機器なので、確実にトラブル対応していくようにしましょう。
原因
- 電源がかかっていない
- ヒーターへの供給電圧不足
- ヒーターが断線している
- 温度調整システムの設定が合っていない
対策
- ヒーター電源をONする
- ヒーター必要電圧と電源電圧を確認し、適切な電源電圧を供給する
- ヒーターが断線していないか確認し、断線していたら交換する
- 温度調整システムを確認する
本記事のシチュエーション以外で困っている方は以下の記事をまずは読むのをおすすめします。
では、次に押出機の構成を確認していきましょう。
押出機の構成
トラブルの原因をつきとめるには、まずは押出機の全体像を知っておく必要があります。
かなり簡略した図ですが、ざっくりイメージをつかんでいただければと思います。
では、図の説明をしていきます。
画像右端にある分電盤(配電盤という名前で管理していることもあります)から押出機の制御盤へ電源が供給されます。
制御盤には押出機の状態を知らせるランプ、タッチパネルが設置されており、押出機の主な機器であるスクリュー用モーターを動かすためにケーブルで接続されています。
制御盤から各種センサーにケーブルが接続されており、レベル、圧力、温度などを測定し、押出機の状態を監視しています。
今回、あなたが直面しているトラブルに関する範囲を画像の赤枠で囲っています。
主にセンサー類と制御コントローラー部です。
それぞれのセンサーの役割について説明しましょう。
※あくまでも一例なので、詳細は押出機メーカーに確認しましょう。
- ホッパーレベル計:ホッパーが満タンになったら原料供給を止めるためにあります。
- スクリュー温度計:正しく成形するために温度を監視しています。また、温度計の測定値からヒーターの出力をコントロールしています。
- スクリュー圧力計:スクリュー内詰まりなど機器の状態を監視しています。
- スクリュー用モーター電流計:モーターの状態を監視しています。
また、センサー以外にもヒーターが設置されており、ヒーターでスクリューが設置されている筒(シリンダー)を加熱しています。
押出機に設置されているヒーターは以下のイメージです。
専門用語としては「バンドヒーター」といい、押出機のシリンダーにまかれています。
なにかあったら押出機をすぐに止めないといけない場合があります。
そのようなときのための非常停止ボタンというものが制御盤にも設置されているので確認しておきましょう。
トラブルの対策の方針
では、次からはトラブルの対策についてです。
具体的な対策は以下の通りです。
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では、それぞれ見ていきましょう。
ヒーター電源をONする
当たり前ですが、電源をONしていないとヒーターは加熱しません。
まずは、ヒーター用電源がONになっているか確認しましょう。
ヒーター用電源の切替スイッチは以下のものがあるので、制御盤内から探してみましょう。
- ブレーカー
- サーキットプロテクター
- ヒューズ
それぞれ、電源容量(いくつまで電流をかけていいか)とコストで選定しています。現段階では、そういうものがあるんだという理解で大丈夫です。
電源関連のトラブルについて詳しく調べたいという人は以下の記事がおすすめです。
初心者向け、押出機立ち上げ時のトラブル~電源ランプ、運転画面がつかない~
ブレーカー
まずは、ブレーカーです。
上記がONの状態です。
上記がOFFの状態です。
サーキットプロテクター
次にサーキットプロテクターです。小さいブレーカーのようなイメージです。
上記がONの状態です。
上記がOFFの状態です。
ヒューズ
最後にヒューズです。
ヒューズはブレーカーやサーキットプロテクターとは少し見た目が変わります。
それぞれの違いはあまり気にせず、そういうものがあるんだという認識で大丈夫です。
上記がガラス菅ヒューズです。
また、以下のようにガラス菅ヒューズが飛んだ時は目で確認できます。
次はセラミック菅ヒューズです。
上記がセラミック菅ヒューズです。
セラミック菅ヒューズはガラス菅ヒューズと違って、見た目でヒューズが飛んだということは分かりません。
飛んだかどうかを確認するためには以下のようなテスターを使う必要があります。
上記は日置電機(HIOKI)製のテスターで、ごく一般的なデバイスです。
テスターを使ったセラミック菅ヒューズが飛んだかどうかの確認方法は以下の通りです。
上記の通り、導通確認モードにした上で、テスターの先端をヒューズの両端にあてて「ピー」という音がなるかどうかで判断できます。
ガラス菅ヒューズやセラミック菅ヒューズは上記のようなヒューズホルダーの中に設置されています。
最後に警報用ヒューズです。
他のヒューズとは異なり、ヒューズが断線した時に警報信号を出すタイプです。
こちらも以下のようなヒューズホルダーに設置されています。
(設置というか差すイメージです。)
警報用ヒューズが飛んだ場合は、以下のイメージの通りヒューズの丸い穴から白色などの部品が飛び出てきます。
電源ケーブルが接続されているか確認する
ブレーカーやサーキットプロテクターをONしても電源が入らない場合は電源ケーブルが正しく接続されていない可能性があります。
ケーブルが接続されているか確認しましょう。
上記がブレーカーへの配線接続イメージです。
次にサーキットプロテクターへの配線接続イメージです。
最後にヒューズホルダーへの配線接続イメージです。
それぞれに対して配線が接続されているか確認しましょう。
ヒーターの必要電圧と供給している電源電圧を確認する
それを確認するためには現場設置されているヒーターの仕様を確認しましょう。
ヒーターの仕様を確認する
ヒーターの仕様(電源電圧単相100Vの場合)
上記の表(電源電圧100Vの場合)では、電圧100Vをかければ1000W出力される抵抗(ヒーターそのもの)を選定し、その時には電流10Aが発生するという読み方になります。
逆に言うと、100Vの電圧をヒーターに供給しないと設置されているヒーターは1000Wを出力しないということになります。
抵抗の欄と電線のサイズはヒーターや電線そのもののサイズを表すものなので、あまり気にしなくて大丈夫です。
電流の値はヒーターが正常に稼働しているかを確認するための目安に使うことが多いです。
ヒーターの仕様(電源電圧単相200Vの場合)
上記の表(電源電圧200Vの場合)では、電圧200Vをかければ1000W出力される抵抗(ヒーターそのもの)を選定し、その時には電流5Aが発生するという読み方になります。
つまり、電圧が100V仕様のヒーターには100Vの電圧をかける必要があり、200V仕様のヒーターには200Vの電圧をかける必要があります。
仕様通りの電圧がかかっているか確認する
ヒーターの仕様を確認したら、次は仕様通りの電圧がヒーターにかかっているか確認しましょう。
具体的には以下の手順です。
- 電源系統図でヒーターへの供給電圧を確認する
- 実際に制御盤内の該当端子台で電圧を確認する
では、それぞれ見ていきましょう。
電源系統図でヒーターへの供給電圧を確認する
押出機にはヒーターだけではなく様々な機器やセンサーが設置されており、それぞれ電源が必要です。
その中で、「どの機器にどんな電源がかかっているのか」をまとめたのが電源系統図になります。
電源系統図のイメージは以下の通りです。
上記の電源系統図の例だと、ヒーターには100Vがかかっていることが分かります。
では、次に実際にヒーターに100Vがかかっているか確認しましょう。
実際に制御盤内の端子台で電圧を確認する
「電圧をどうやって測定すればいいの?」という人もいるはずです。
電圧測定にはテスターというデバイスが必要になります。
テスター
上記は日置電機(HIOKI)製のテスターで、ごく一般的なデバイスです。
色んな人が持っています。
値段も5,000円程度で購入でき、電源電圧だけではなく各種信号の確認や断線しているかどうか(導通の確認)ができます。
テスターを使った電源電圧確認イメージ
以下のヒーター配線イメージでテスターを使った電源確認方法を確認しましょう。
サーキットプロテクターから制御盤内の端子台を経由してヒーターへ100Vを供給しているはずなので、端子台でテスターを使って電源100Vがかかっているか確認できます。
制御盤内の端子台に100Vの電圧がかかっていたら、制御盤内の配線には問題ないことと言えます。
それでもヒーターが加熱しない場合は、制御盤からヒーターの間で断線している可能性が高いです。
ヒーターが断線していないか確認し、断線していたらヒーターを交換する
次に、制御盤からヒーターの間での配線を見ていきましょう。
上記は先ほどと同じ例ですが、サーキットプロテクターで端子台を経由してヒーターに電圧をかけている構成です。
端子台で必要な電圧がかかってることを確認できたら、次にヒーターの断線の可能性が高いです。
断線を確認する際にも先ほどと同じようにテスターを使います。
ヒーター用電源は電圧が高く感電死のリスクがあるため、以下の手順を守り複数人で確認しながら実施しましょう。
また、施工業者や電源操作に慣れている人に立ち会ってもらうのをお勧めします。
- サーキットプロテクターの電源をOFFにする
- サーキットプロテクターから来ている配線を端子台から外す
- ヒーター側の端子台でテスターを導通確認モードにして断線しているか確認する
上記の手順で該当端子台を当たったときに、「ピー」という音がすれば断線していないことが分かります。
もし、「ピー」という音が鳴らない場合は、断線していることになるので、ヒーターの交換が必要になります。
以下がテスターの導通確認モードの概要です。
温度調整システムを確認する
ここまでで電源や断線について確認しました。
大半のヒーター関連のトラブルは解消できると思います。
それでもヒーターがうまく加熱しない場合は、温度調整システムが原因の可能性が高いです。
ヒーターの温度調整システムのイメージは以下の通りです。
温度調整には様々な方法があります。
一般例は以下の通りで、温度調整の精度、コスト、目的と運転員構成に応じて押出機メーカーが選定しています。
主に上記の4種類ありますが、それぞれには一長一短があります。
押出機のような機器では最後のアナログ制御が多い印象です。
それぞれの制御の初期設定(タイマーなら設定時間、アナログ制御なら温度に応じたヒーターへの出力量、応答時間など)が適切ではない場合は、ヒーターそのものに問題がなくても設定温度に到達しない(または、すごく時間がかかる)可能性があります。
その場合は、ヒーターの稼働状況を整理して押出機メーカーに相談するようにしましょう。
具体的には以下の通りです。
- 設定温度
- ヒーターをONした時間(何時間温めていたか)
- 到達した温度
上記を具体的に説明することで、押出機メーカーの対応も早くなると思います。
まとめ
「押出機の運転準備のためにヒーターをONにしたけど全然温まらない」、「ヒーターの温度をうまくコントロールできない」という時のトラブルについて説明しました。
電源がかかっていなかったり、断線しているといった原因が考えられます。
それ以外にも、温度調整システムの設定が原因として考えられます。
その場合は、押出機メーカーに相談しながら解決していくことになります。
今は問題なく動いていても、今後トラブルが発生する可能性もあります。
その時のために、この記事をお気に入りなどに保存してトラブルが発生した時にすぐに対応がとれるようにすることをおすすめします。