1. 押出機の価格が気になる理由(導入)
プラスチックリサイクル事業を検討する際、最初に直面するのが「設備投資の大きさ」です。
破砕機・洗浄機・乾燥機・押出機・ペレタイザーなど、多くの設備が必要ですが、その中でも押出機はラインの中核を担う最重要設備です。
押出機の価格は、数百万円〜1億円以上と非常に幅広く、メーカーのサイトを見ても「お問い合わせください」としか書かれていないことがほとんどです。
そのため、導入検討者は次のような不安を抱えます。
- どの価格帯が自社に合っているのか分からない
- 安い機械を買って失敗したくない
- 価格差の理由が理解できない
- 見積もりを比較しても仕様がバラバラで判断できない
実際、安価な押出機を選んだ結果、
「すぐに壊れた」「品質が悪くてペレットが売れない」「停止が多くて採算が合わない」
というケースは珍しくありません。
この記事では、長年リサイクル設備に携わってきたプロの視点から、押出機のリアルな価格相場と、価格差が生まれる理由、投資判断の基準を徹底的に解説します。
2. 押出機とは?リサイクル用途での役割と基本構造
押出機は、廃プラスチックを溶融し、混練し、押し出してペレット化するための装置です。
基本構造は以下の通りです。
- ホッパー(材料投入部)
- スクリュー
- シリンダー
- ギアボックス
- ヒーター
- ダイ(押出口)
リサイクル用途では、新材用押出機と異なり、汚れ・水分・揮発成分を含む材料を安定して処理する能力が求められます。
そのため、脱揮性能・フィルター性能・混練性能が重要になります。
● 単軸押出機と二軸押出機の違い
| 種類 | 特徴 | 価格帯 |
|---|---|---|
| 単軸押出機 | シンプル構造、汎用リサイクル向け | 安価 |
| 二軸押出機 | 高混練・高脱揮、難処理材に強い | 高価 |
用途に応じて適切なタイプを選ぶ必要があります。
3. 【結論】プラスチックリサイクル用押出機の価格相場マップ
押出機の価格は、生産能力(kg/h)・製造国・付帯機能によって大きく3つの価格帯に分類できます。
| 【押出機の価格帯マップ|松・竹・梅】 | ||
| 松(ハイエンド) | 竹(ミドルレンジ) | 梅(エントリー) |
| 6,000万〜1.5億円以上 欧州製(EREMA等) ・高品質ペレット ・高脱揮・省エネ ・難処理材に強い |
2,000万〜5,000万円 日本製・台湾製 ・耐久性・安定稼働 ・部品供給が安定 ・カスタム対応可能 |
500万〜1,500万円 中国製中心 ・圧倒的低価格 ・摩耗・電気系に注意 ・簡易用途向け |
3-1. 松:ハイエンド・欧州製(6,000万円〜1億5,000万円以上)
- 代表メーカー:EREMA、Starlinger
- 特徴:
- 汚れ・水分の多い材料でも前処理なしで高品質ペレット化
- 特許技術による高効率脱揮
- 省エネ性能が高く、ランニングコストが低い
- ターゲット:大手リサイクル業者、ボトルtoボトル用途
3-2. 竹:ミドルレンジ・日本製/台湾製(2,000万円〜5,000万円)
- 代表メーカー:日本製鋼所、芝浦機械、台湾メーカー
- 特徴:
- 耐久性が高く20年以上稼働する例も多い
- 部品供給が安定
- スクリュー設計のカスタマイズが可能
- ターゲット:品質とコストのバランスを重視する企業
3-3. 梅:エントリー・中国製(500万円〜1,500万円)
- 特徴:
- 圧倒的な低価格
- 近年品質は向上しているが、電気系トラブルや摩耗が早い傾向
- ターゲット:初期投資を抑えたい新規参入者
4. 新品押出機の価格相場(処理量別)
| 【新品押出機の価格相場|処理量別】 | ||
| 処理量(kg/h) | 単軸押出機 | 二軸押出機 |
| 50〜150kg/h | 500万〜1,200万円 | 1,500万〜3,000万円 |
| 200〜500kg/h | 1,200万〜2,500万円 | 2,000万〜5,000万円 |
| 1t/h以上 | 3,000万円〜 | 6,000万円〜1億円以上 |
5. 中古押出機の価格相場
| 【中古押出機の価格相場】 | |
| 種類 | 価格帯(目安) |
| 中古単軸押出機 | 300万〜1,000万円 |
| 中古二軸押出機 | 800万〜2,500万円 |
| ※オーバーホール有無で大きく変動 ※年式より「使用履歴」「摩耗状態」が重要 |
|
中古は初期投資を抑えられますが、
スクリュー摩耗・シリンダー摩耗・制御系の寿命に注意が必要です。見えない部分にトラブルが潜んでいる可能性があり、どんなにチェックしても事前に予測できないことがあります。
保証も品質保証や能力保証ではなく、短期間の動作保証に止まることが多いのはそのためです。
中古に関しては、自社に経験が豊かなトラブル対応ができるエンジニアがいない場合は安いからと飛びつくことはお勧めできません。
6. 押出機の価格差が生まれる7つの要因(技術的背景)
| 【押出機の価格差を生む7つの要因】 | |
| 要因カテゴリ | 価格に影響するポイント |
| ① スクリュー種類 | 単軸<二軸(混練性能・脱揮性能) |
| ② スクリュー材質 | 窒化鋼<肉盛り<バイメタル(耐摩耗) |
| ③ 処理能力 | モーター・ギアボックスの大型化 |
| ④ 対応材料 | フィルム・高含水率・異物混入材は高性能機が必要 |
| ⑤ 脱揮性能 | ノンベント<真空ベント<ダブルベント |
| ⑥ フィルター方式 | 手動<自動(連続運転・省人化) |
| ⑦ メーカー・国別 | 中国<日本・台湾<欧州 |
6-1. スクリュー本数(単軸 vs 二軸)
二軸は混練性能が高く、複合材・汚れ材に強いが高価。
6-2. スクリュー材質(耐摩耗)
- 窒化鋼:安価だが摩耗に弱い
- バイメタル:高価だが寿命が数倍
6-3. 処理能力(kg/h)
処理量が増えるほど、モーター・ギアボックスが大型化し価格が上昇。
6-4. 対応材料
フィルム・高含水率材・異物混入材は高性能押出機が必要。
6-5. 脱揮性能(ベント)
真空脱揮・ダブルベントは価格が上がるが、品質に直結。
6-6. フィルター(スクリーンチェンジャー)
- 手動:安価
- 自動:高価だが連続運転が可能で省人化に寄与
6-7. メーカー・国別
欧州>日本・台湾>中国の順で価格が高い傾向。
7. 本体だけでは動かない!見落としがちな「隠れたコスト」
押出機本体の価格だけではラインは完成しません。
総予算は本体価格の1.5〜2倍が目安です。
| 【押出機導入時の隠れコスト一覧】 | |
| カテゴリ | 内容 |
| 周辺設備 | 粉砕機/供給機/冷却水槽/チラー/ペレタイザー/サイロ /消耗品予備 |
| 工事費 | 電源工事/配管工事/搬入・据付費 |
| ランニングコスト | 電気代/人件費/消耗品 |
| 総予算の目安 | 本体価格 × 1.5〜2.0倍 |
● 必須周辺設備
- 粉砕機
- コンベア・供給機
- 冷却水槽・チラー・クーリングタワー
- ペレタイザー
- サイロ・袋詰め設備
● 工事費
- 電源工事(キュービクル増設)
- 配管工事
- 搬入・据付費
● ランニングコスト
- 電気代
- 人件費
- 消耗品(スクリーン、スクリュー、ギアオイル、ペレタイザー刃、粉砕機刃、スクリーンチェンジャー用金網ほか)
8. 「新品 vs 中古」どちらを選ぶべきか?
| 【新品 vs 中古|どちらを選ぶべきか】 | ||
| 項目 | 新品押出機 | 中古押出機 |
| 初期投資 | 高い | 安い |
| 納期 | 4〜8ヶ月 | 即納 |
| 摩耗リスク | 低い | 高い |
| カスタマイズ性 | 高い | 低い |
| 長期稼働性 | 高い | 制御系に注意 |
● 中古のメリット
- 初期投資が安い
- 納期が早い
● 中古のデメリット
- 摩耗状態が見えない
- 樹脂との相性問題
- 制御系、電気部品の寿命リスク
長期稼働を前提とするなら新品が有利です。
9. 投資回収(ROI)を最大化する考え方
押出機は「安い機械を買う」ことが目的ではありません。
どれだけ早く投資を回収できるかが重要です。
● 例:安価機 vs 高品質機の比較
| 【ROI比較|安価機 vs 高品質機】 | ||
| 項目 | A社(中国製) | B社(日本製) |
| 初期投資 | 1,000万円 | 3,000万円 |
| 月間稼働日数 | 20日 | 25日 |
| ペレット単価 | 80円/kg | 120円/kg |
| 総利益比較 | 短期は有利 | 1〜2年で逆転 |
→ B社は初期投資が高くても、1〜2年で利益が逆転するケースが多い。
10. 用途別|押出機の適正価格帯
| 【用途別|押出機の適正価格帯】 | |
| 用途 | 価格帯(目安) |
| 小規模(社内循環) | 600万〜2,500万円(〜200kg/h) |
| 中規模(ペレット販売) | 1,500万〜6,000万円(300〜500kg/h) |
| 高付加価値(食品・自動車) | 3,000万円~1億円以上(二軸・高脱揮・自動化) |
● 小規模(社内循環)
- 〜200kg/h
- 600〜2,500万円
● 中規模(ペレット販売)
- 300〜500kg/h
- 1,500〜6,000万円
● 高付加価値(食品・自動車)
- 3,000万円~1億円以上
- 二軸・高脱揮・自動化が必須
11. 見積もりで必ず確認すべき項目
- 見積範囲(本体・周辺機器・工事費)
- 試運転・保証内容
- 消耗品価格
- 納期
- アフターサービス体制
12. 失敗しないメーカー選び:最重要は「テスト加工」
押出機選定で最も重要なのは、実機テストです。
- 自社材料を持ち込む
- 実際に押出してみる
- ペレット品質を確認
- 生産能力・電力消費を実測
テストを渋るメーカーは避けるべきです。ただし、特殊な構成の押出機はテスト機が存在しない場合もありますので確認が必要です。
13. まとめ:最適な価格は「あなたの原料」が決める
押出機の価格は500万円〜1億円以上と幅広いですが、
正解は「高い機械」でも「安い機械」でもありません。
あなたの材料を、目標品質で、安定して、採算が合う形で再生できる機械
これこそが、あなたにとっての適正価格です。















































